花總まりインタビュー~ミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』でカルメン役に挑む!
花總まり (撮影:荒川潤)
オーストリア皇妃エリザベートの生涯を描いたミュージカル『エリザベート』や、イギリスの偉大な女王エリザベス1世が女王に即位するまでの激動の日々を描いたミュージカル『レディ・ベス』など、数々の大作ミュージカルでヒロインを演じ続けている花總まり。宝塚歌劇団のトップ娘役時代から変わらない、その高貴な持ち味と気品ある美しさで「当代の姫役者」としての地位を確立している。
そんな花總が、2018年3月~4月にミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』で、ヒロイン・カルメンを演じることになった。オペラのタイトルロールでも有名な、奔放で妖艶、燃えたぎるような生命力を放って生きる女性カルメンを、花總は宝塚時代にも『激情~ホセとカルメン』(脚本:柴田侑宏、演出・振付:謝珠栄)の中で演じたことがある。今回は、同じ謝珠栄の演出ながら、振付・台本・作詞=高橋知伽江、原作=小手伸也による、新たな邂逅となる。そんな、新しい作品で再びカルメン役と向かい合う花總に、舞台への思いや意気込みを聞いた。
■良い意味で皆様の期待を裏切るようなカルメンを演じたい
──宝塚時代にも演じている思い出の役でもあると思いますが、今回はカルメン役にどう取り組もうと?
カルメンには、野性的で、愛に対しても自分の感情に正直に、自由奔放に生きている魅力的な女性という、一般的なイメージがあると思います。私自身も宝塚時代に『激情~ホセとカルメン』で、今回と作品は違うのですが、同じカルメンを演じた時に、やはり、そうした一般的によく知られているカルメン像を目指して取り組んでいました。でも、あれから年月を経て、もう一度カルメンが演じられるということになった今は、もっと彼女を深めたいという気持ちが強いです。もちろん宝塚時代にも一生懸命に役を深めようとしていたのですが、今回は、タイトルも『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』ですから、ロマ族として生れ育った彼女の持っている強さや悲しみを、もっと深く知りたいです。彼女の中に、そうした様々な感情があるからこそ、ホセと出会ったことによって、苦しいまでの切ない恋が生まれてきたのだと思いますので、演出の謝珠栄先生と、たくさんお話をして掘り下げていきたいですね。特に、今回カルメンを再び演じることが発表になった時に、宝塚時代に私が演じた役の中でも「カルメンがとても好きだった」とか「もう一度観たい役だった」というファンの方たちからの声や反響がとても大きく、それはプレッシャーでもあるのですが(笑)、今の私だからこそできるカルメンをぜひ表現したいです。
──当代の姫役者である花總さんにとって、カルメンのイメージは一見遠いもののようにも思われますが。
わかりませんよ(笑)。
──でもそれだけに、観る方に強い印象を残していたのですね。
私がこれまで演じてきた女性たちは、誰もが必死に生きていました。それはどんな立場の女性でもそうなのですが、特にカルメンについては、ロマ族であるという、生まれながらに背負っている運命があり、その中で燃えたぎるような情熱を持って生きて、愛している。その姿が、傍目には痛みさえ伴うほどの魅力になっていて、観客の皆様にも強い印象を残せていたのかなと思います。ですから、今回の機会にもっともっとカルメンを深く知って、良い意味で皆様の期待を裏切るような、より深いカルメン像をお見せしたいです。
■ホセ役の松下優也との共演から生まれる化学反応を楽しみに
──ホセは、カルメンにとってどんな存在だと捉えていますか?
まずカルメンは、ホセを真剣に愛したと思っています。今まで彼女の周りにいた男性たちに対するのとは違う感情が生まれたがゆえに、色々なドラマが起こっていくわけですからね。やはりカルメンにとって、ホセは唯一無二の特別な存在ですね。
──今回、そんなホセを演じる松下優也さんにはどんな印象を?
まだお会いした回数も少なく、本格的にお稽古に入っていった時には、全く違う印象を持つのではないか?とも思っていますが、私の中ではクールな方というイメージがありました。でも、テレビで拝見したら関西弁でお話をされていて、まずそれが私にとってはひとつのギャップでした(笑)。これから松下さんのホセと実際にお芝居をしていく中でも、新たな発見や驚きがもっとたくさん出てくるでしょうから、そこからどんな化学反応が起きるのかをとても楽しみにしています。
──フライヤーにおける、瞳のクローズアップの写真がとても印象的ですが、こちらにはどんな意図が?
謝先生から「目を利かせて欲しい」という要望があって、いくつかパターンを撮った中から、生まれたものです。できあがったものを見て私自身「あ、目が勝負なんだな」と思いましたし、やはり舞台でも目の使い方はとても重要なので、特にカルメンを演じるにあたっては「目は口ほどにものを言う」という言葉にもある通りに、そういう目の持ち主になりたいなと思います。
■素晴らしいスタッフ、キャストと一致団結して見応えある舞台に
──演出家・振付家としての謝珠栄さんについては?
謝先生は本当にパワフルな方で、きっとお稽古もすさまじいものになると思います。例えば先生は、違うと思われたら躊躇なく「それはおかしい」とおっしゃいます。先生の思いや感情が稽古場にどんどんあふれて、エネルギーがぶつかってくるので、こちらも時間を忘れてお稽古に没頭することができます。そういう先生とまたご一緒できるので、私自身が予想もしていないような、新しいものをきっと先生が引き出してくださるだろうと期待しています。昔から私の良いところも苦手なところも全部、先生はご存知ですから、私もはじめからすべてをさらけ出していけるんです。そこから、きっと良いものが生まれると思います。
──最近は映像作品にも出演されましたが、改めて舞台作品との違いなどはどう感じましたか?
演じるということにおいては、舞台も映像も同じなんだというのを知ることができました。ただ、映像作品に臨む役者さんたちの、1カットに向かう瞬発力というものは本当にすごいと思いました。舞台は一度幕が開けば、3時間なら3時間持続する力が必要ですが、映像は、時間の流れなどもバラバラになってその一瞬一瞬に全力をぶつけなければならない。そういう力の入れ方の違いには、難しさもありました。あとは、やはり舞台は生ですから、その緊張感と同時に、お客様の空気がダイレクトに伝わる良さがあります。カーテンコールなどでは、お客様の笑顔を直に目にすることができて「あぁ、楽しんでいただけたんだな」と肌で感じられるのが、ライブならではの醍醐味ですね。
──では、そんなライブであるこの作品について、改めて意気込みと、楽しみにされている方たちに向けてメッセージを。
今、再び女優としてカルメンを演じられる喜びを感じると同時に、私自身もまだ見たことのないようなカルメンになりたいと思っています。謝先生をはじめ、素晴らしいスタッフやキャストの方々が集結しているので、これは絶対に見応えのある作品になると思います。一致団結して頑張りますので、ぜひ劇場にいらしてください。
ヘアメイク/鈴木麻衣子
スタイリスト/滝沢真奈
ドレス、ピアス/CH CAROLINA HERRERA 銀座店 03-6274-6957
取材・文=橘涼香 写真撮影=荒川潤
花總まり/松下優也/伊礼彼方/KENTARO/太田基裕/福井晶一/団時朗
一洸/神谷直樹/千田真司/中塚皓平/宮垣祐也
■演出・振付:謝珠栄
■台本・作詞:高橋知伽江
■原作:小手伸也
■音楽監督・作曲:玉麻尚一
■作曲:斉藤恒芳
■公式サイト:http://www.umegei.com/schedule/666/
■会場:東京芸術劇場 プレイハウス
■日時:2018/3/23(金)~2018/4/8(日)
■アフタートークショー
・3月29日(木))13:30公演終了後 登壇者/花總まり 松下優也
・3月30日(金)13:30公演終了後 登壇者/松下優也 伊礼彼方 KENTARO 太田基裕
■会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
■日時:2018/4/11(水)~2018/4/21(土)
■アフタートークショー
・4月12日(木)13:00公演終了後 登壇者/松下優也 伊礼彼方 KENTARO 太田基裕
・4月13日(金)13:00公演終了後 登壇者/花總まり 松下優也