雪組新トップコンビ望海風斗&真彩希帆『ひかりふる路(みち)』『SUPER VOYAGER!』ゲネプロレポート
『SUPER VOYAGER!』 -希望の海へ- (撮影/森好弘) (c)宝塚歌劇団
11月初旬、宝塚大劇場で雪組公演ミュージカル『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』、レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』ー希望の海へーが開幕した。開幕初日に行われたゲネプロの模様をお届けする。
■ミュージカル『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』(作・演出/生田大和)
望海風斗&真彩希帆、雪組新トップコンビ大劇場お披露目公演!
ブロードウェイ・ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』『ジキル&ハイド』から日本で製作された『デスノート THE MUSICAL』、ホイットニー・ヒューストンへの楽曲提供まで、世界的に活躍する作曲家フランク・ワイルドホーンが、雪組に全曲書き下ろした話題の新作ミュージカル『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』。ワイルドホーンといえば、名曲ゆえに高い歌唱力を要する「難曲揃い」でも知られるが、雪組新トップスター望海風斗&真彩希帆をもってすれば、そんな心配も杞憂に終わった。作・演出の生田大和によるオリジナル戯曲もストレートな英雄譚には終らない試みに溢れ、楽曲と魅力的な主人公との相乗効果で骨太な人間ドラマを立ち上げる。1幕ものでは「惜しい」と思わせる、見(耳)応え満点の歴史エンターテインメントだ。
革命の勝利に沸くロベスピエールたち (c)宝塚歌劇団
1789年、フランス。革命を勝利へと導いたジャコバン派の革命家ロベスピエール(望海風斗)は、次代の指導者として下層市民から熱狂的な支持を集める。しかし、彼が標榜する「誰もが平等に愛し合える世界」の実現には、ここからが本当の戦いだった。元貴族のマリー=アンヌ(真彩希帆)は革命の“犠牲者”として密かにロベスピエール暗殺の機会を狙い、ブルジョワジーから支持されるジロンド派のマノン・ロラン夫人(彩凪翔)と元オータン司教のタレーラン・ペリゴール(夏美よう)は笑顔の裏で密談を交わす。さらに、ジャコバン派内にも反対勢力が影を潜め、ロベスピエールの側近ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト(朝美絢)は同志ジョルジュ・ジャック・ダントン(彩風咲奈)の不正を指摘する。そんな折、フランスは諸外国から宣戦布告を受けてしまう。戦争の足音が近づき、内外からの圧力と期待を一身に受けたロベスピエールは、やがて使命感を思わぬ方向へと加速させていく……。
宝塚では『1789』で理想に燃える青年として、『スカーレット・ピンパーネル』では恐怖政治の独裁者として描かれてきた実在の革命家マクシミリアン・ロベスピエール。本作では、時代の寵児として頂点を極めた彼がなぜ、人生を反転させたのかにスポットが当たる。制作発表の場で「たとえ悪党を演じても、その役の内側に潜む魅力を引き出し、圧倒的な歌唱力で計り知れない興奮へと誘える人」と望海風斗の魅力について語っていた作・演出の生田大和。さすがは『ドン・ジュアン』で望海風斗の底知れぬ魅力を引き出した作家と言えるだろう。本作では史実を丁寧に紐解きつつ、そこへ真彩希帆演じる架空のヒロインとの愛を絡めることで、主人公の心情に多面的な彩りとリアリティをもたせる。愛と使命、過去と未来、善と悪……。立場や状況により相反するテーマがプリズムのように煌めく、人間真理に迫る物語を完成させた。
左から、タレーラン(夏美よう)とマノン・ロラン夫人(彩凪翔) (c)宝塚歌劇団
望海風斗は理想に燃え愛を知り、現実と理想の狭間で苦悩するロベスピエールを迫真の演技で体現する。刻々と心情を変化させるスピーディーな展開にも、雄弁な楽曲とドラマティックな歌声で観客を無理なく物語へと引き込んでいく。とりわけ、群衆を歓喜の渦へと誘う主題歌「ひかりふる路」は幕開き5分で感涙必至! 鳥肌ものの名曲だ。また、真彩演じるマリー=アンヌとの運命のデュエット曲「今」は、それが愛とも知らず<ただ君の笑顔だけでいい♪>と歌うロベスピエールの純真さが無敵で、暗殺を誓ったマリー=アンヌに「彼の瞳に映る私は汚れている」と感じさせるほど。そこでの愛の繋がりが確かであっただけに、中盤のデュエット曲「葛藤と焦燥」は、意見を違えた二人の鬼気迫る掛け合いに息を呑んだ。改めて望海風斗&真彩希帆の実力の高さに、唸らされることになるだろう。
復讐のため主人公に近づくマリー=アンヌ(真彩希帆) (c)宝塚歌劇団
真彩希帆は、ロベスピエールが本能的に惹かれる愛に育った女性マリー=アンヌを演じる。元貴族としての気品と温かみを保ちつつ、冒頭では復讐に燃える表情でも魅せた。彩風咲奈は豪放磊落さが短所にも長所にもなるロベスピエールの同志ダントン役。チャーミングな笑顔で女性をはべらせ、大きな演技で物語に弾みをつける。同じく“革命トリオ”のひとりカミーユ・デムーランには、本作が退団公演となる専科の沙央くらま。心優しいジャーナリストを前半ではとぼけた風味で演じ、ロベスピエールと対峙する後半のシリアスさを際立たせた。
中央で仲間と勝利の美酒に酔う、ジョルジュ・ジャック・ダントン(彩風咲奈) (c)宝塚歌劇団
華のある存在感で目を惹いたのが、月組から組替えの朝美絢。側近ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュストを演じるが、過度にも思える彼の忠誠心がロベスピエールにどんな変化をもたらすのかも見ものだ。果たして、マクシミリアン・ロベスピエールとは何者だったのか。真実の一端が、この物語から垣間見えるかもしれない。
恐怖政治を宣言するロベスピエール (c)宝塚歌劇団
■レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』 -希望の海へ-(作・演出/野口幸作)
望海風斗の魅力が詰まった希望溢れるショーの旅へ、“新生雪組号”が出航!
新生雪組の“船出”を盛大に祝福する、豪華絢爛なレヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』ー希望の海へー。自他ともに「宝塚ヲタク」を認める作・演出の野口幸作が、同じく幼いころから宝塚歌劇を愛し、歴代男役スターの魅力を研究し尽くしている望海風斗の「男役の美学」を多彩な切り口で表現する。主なテーマは、望海風斗の名前にちなんだ「希望」「海」「風」「北斗七星」の4つだ。
観客参加型のプロローグ (c)宝塚歌劇団
幕開けは、望海船長が錨に乗って星空から登場する。「寒いんだろ、こっちへおいで…」を皮切りに、溢れ出す胸キュンワードの洪水に早くも溺れそう。プロローグは野口の強いこだわりで観客参加型の演出に。組子らが続々と客席に降りたち<僕らは目覚めた 雪の朝に♪><愛し合おう 希望の海で♪>と主題歌『SUPER VOYAGER!ー希望の海へー』をポンポンを振り上げ歌い踊る。その後も、爽やかなマリンルックから葉巻をくゆらす孤高のマフィア、クラシカルな白燕尾姿の紳士まで、観客の「見たい場面」に全力で応える望海。そんな頼もしい望海に寄り添う真彩希帆は、デュエットダンスでは初々しく華やかに舞い踊り、高音が美しく響く歌唱でも魅了した。
黄色いジャケット姿でセンターを張る彩風咲奈 (c)宝塚歌劇団
彩風咲奈はジャジーな調べに乗って、ダンス、ダンス、ダンス! カラフルな男役を従え、ダンサーとしての魅力を存分に発揮する。飛んで跳ねてターンして。激しい動きにも絶やさない、いたずらっぽい笑顔がトレードマークだ。彩凪翔は望海風斗と女性を奪い合うジゴロ役が強烈。熱い視線に溢れる男の色香は、とても1幕でマノン・ロラン夫人を演じていた同一人物とは思えない。また、三角関係のヒロインを男役の朝美絢が演じる。ショーでは永遠輝せあも女役で望海風斗とペアダンスを踊るなど、それぞれの男女の演じ分けも見ものだが、本領発揮は彩凪翔、朝美絢、真地佑果、永久輝せあの4人が「暴風雪 ブリザード」を名乗り歌い踊るロックナンバーだ。ワイルドな美男子らに「2階席ー!」と煽られ、観客もライブ会場さながらに盛り上がる。その他、見所満載。本作は東京宝塚劇場の新春公演でもあり、年末年始は雪組公演で大いに盛り上がろう。
(c)宝塚歌劇団
取材・文=石橋法子 撮影=森好弘
■作・演出:生田大和
レヴュー・スペクタキュラー『SUPER VOYAGER!』ー希望の海へー
■作・演出:野口幸作
■出演:望海風斗、真彩希帆 ほか
<宝塚大劇場>
2017年11月10日(金)~ 12月15日(金)
<東京宝塚劇場>
2018年1月2日(火)~2月11日(日)
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