花總まり 浦井健治ら出演、韓国発のミュージカル『破果 パグァ』製作発表会見~日本版ならではの化学反応に期待

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(左から)一色隆司、イ・ジナ、武田真治、花總まり、浦井健治、中山優馬、熊谷彩春 (撮影:吉田沙奈)

(左から)一色隆司、イ・ジナ、武田真治、花總まり、浦井健治、中山優馬、熊谷彩春 (撮影:吉田沙奈)

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韓国文学において前例のない、“60代の女性殺し屋”を主人公に据えた悲哀の物語でベストセラーとなったク・ビョンモによる小説『破果』(パグァ)。ニューヨークタイムズの「注目すべき本100選」にも選定され、世界13ヵ国で翻訳された。韓国本国でミュージカル化され(2024年3月初演)、演出にイ・ジナ、⾳楽にイ・ナヨン、台本にチャン・へジョン、イ・ジナといった実力派クリエイターが集結。観客の心を揺さぶる傑作として大きな反響を呼んだ。

そして2026年3月、待望の日本公演が新国立劇場・中ホールにて上演される。主演の女殺し屋・爪角(チョガク)役に挑むのは花總まり。数多くのミュージカルに出演してきた彼女が、初めての殺し屋役に挑む。かつて彼女に家族を殺され、復讐を誓う青年・トゥ役に浦井健治。さらに、中山優馬、熊谷彩春、武田真治ら個性豊かな面々が顔を揃える。

公演に向け、花總まり、浦井健治、中山優馬 、熊谷彩春、武田真治と演出・一色隆司、韓国版演出のイ・ジナによる製作発表会見が行われた。

 

まずはNHKエンタープライズの澤田隆司より「約12年前に韓国で出版された話題作の舞台です。原作を読みましたが非常に緊張感のあるストーリーで、どんな作品になるのか私自身楽しみにしています。韓国で上演されたヒット作を、我々の製作委員会で上演することになりました。日本を代表する俳優陣が揃ってくださったので大変期待できますし、自信を持ってお届けできる作品になると思います」と挨拶。

NHKエンタープライズ・澤田隆司

NHKエンタープライズ・澤田隆司


続いてキャスト陣と演出の一色が登壇した。本作は、女性暗殺者と彼女への復讐心を燃やす青年を中心に据えた物語。アクション初挑戦の花總(女殺し屋・爪角役)は「まさかここに来てアクションに挑むことになろうとは」と緊張した面持ちを見せる。「出演が決まってから、自分で調べてアクションスクールに行きました。そこはゴリゴリのスタントマン育成所だったのですが、最初はわかっていなかったので、殺し屋を演じるにはこれくらいやらなきゃダメなんだ……! と思っていて(笑)。今はアクションをつけてくださる方にお願いして基礎的なことからやっています。レッスンは一人ですが、実際は誰かと戦うので、少し緊張しています。体に染み込んだ暗殺者に見えるように頑張りたいです」と意気込む。

花總まり

花總まり

浦井(青年・トゥ役)は「僕の中で花總さんはトップスター、エリザベート様の印象が強いので、だいぶお転婆なアクションシーンをやられるのだなと(笑)。でも、花總さんにとっても新しい挑戦を日本のお客様に楽しんでいただけるような、とても貴重な時間になると思います。トゥは爪角に影響されつつ憧れを抱いている役なので、憧れ続けながら楽しく挑みたいです」と語った。

浦井健治

浦井健治

武田が演じるのは、若い爪角を育てるリュウと、爪角が新たな人生を考えるきっかけとなるカン博士。リュウを演じる上でのトレーニングについて聞かれると、「まだ特別なことはしていませんが、筋トレをしていたことで役を掴めたのかなと(笑)。でも筋トレは割とのんびりさんがやることで、アクションはスピードが求められると思うので、そこは磨いていきたいです」と答える。

武田真治

武田真治

続いて殺し屋・ユン役を演じる中山が「これまでのアクション経験も活かして精一杯やりたいです。武田さんとは一度アクション稽古でご一緒させていただいて……」と話しだすと、武田が「(中山は)すごかった! カンパニーのなかでも頭ひとつ抜けたアクションを見せてくれて」と称え、一色が「謙遜しているけど、武田さんもすごかったですよ」と称賛する。武田は「もっとスキルアップしたいですし、アクションは役者同士の相性のようなものもある。チームワークや人間性が試されるので、しっかりと頑張りたいと思います」と改めて意気込んだ。

中山優馬

中山優馬

さらに、若い頃の爪角を演じる熊谷は「私もアクションの舞台は初めてなので、決まってすぐにボクシングとアクションとアクロバットを習い始めました。若い爪角は丸々1曲を使って成長を見せるハードなナンバーがあるので、私も爪角のようにどんどん成長したいです」と気合を入れた。

熊谷彩春

熊谷彩春

本作の魅力について、一色は「花總さんの最大の魅力は、心に響く歌声。この作品をやろうと言われた時に、花總さんじゃなきゃダメだよねというくらいの意気込みでオファーしました。花總さんが決まったあとは素敵な方々が引き寄せられるように集まってくださいました。また、韓国版の演出を手がけたイ・ジナさんと去年初めてお会いした時、好きにやっていいと言ってくださって。嬉しいけれど、素晴らしい実績を持つ方にそう言われるとすごくプレッシャーがあります。そういった経緯もあり、日本版では人間模様や心の行き違い、繋がりなど新たな要素を盛り込み、韓国版とは違うアプローチをすることにしました」と、一部違う内容になっていることを明かす。

一色隆司(演出)

一色隆司(演出)

さらにここで、韓国において本作の演出を手掛けたイ・ジナが登壇した。彼女は、『ジーザス・クライスト・スーパースター』「ヘドウィッグ』『西便制(ソピョンジェ)』『イン・ザ・ハイツ』等々、韓国で数々のヒット作を手掛けてきた韓国ミュージカル界を代表する超一流の演出家だ。

日本での上演に対する気持ちを聞かれると、「まずは日本で上演されることが光栄です。この作品の良さを理解してくれたこと、素晴らしい役者さんが集まってくれたことにも感謝しています。韓国初演の際、ミュージカルにするのが容易ではない作品ということで、心配の声がありました。今回どんな形の作品になるのか、日本ではどんな反響があるのか、すごく楽しみにしています」と笑顔で語った。

イ・ジナ(韓国版演出)

イ・ジナ(韓国版演出)

キャストからイ・ジナへの質問コーナーでは、花總が「ベストセラー小説が舞台化した作品ですが、ミュージカルは韓国の方にどのように受け止められているのでしょうか」と尋ね、イ・ジナは「韓国で披露された時は、新しい挑戦として受け入れられました。私が今までやっていた作品とも違っていて、多くの方々が半信半疑で、この作品で何を伝えるのだろう? と疑問を持って観に来られました」と明かす。

熊谷の「この物語を通して、イ・ジナさんが伝えたい一番大切なメッセージはありますか?」という質問には、「私としては、普段創作をするときに、メッセージを伝えることよりも演出スタイルを大事にしています。特にこの作品の場合は、小説によってメッセージは十分伝わっていると思います。ですから、以前にもこれからもない独特なスタイルを創ることを重視しました」と答える。

一色は「韓国でもいろいろお話しましたが、文化的な部分を盛り上げたい、主人公と男性陣の関係性がもっと濃密だといいなと思いました。その辺の表現は韓国では難しいのでしょうか」と尋ねる。対してイ・ジナは「韓国では、初演ということもあって原作に忠実であることを重視しました。自分としては主人公周りの関係性はもっと盛り上げたかったけれど、まずは原作重視で。今回は一色さんやキャストの皆さんの解釈も加わるでしょうし、日本らしさも出ると思うので非常に楽しみです」と笑顔を見せた。

「今日初めてお会いしたキャストの皆さんの印象はいかがですか?」という質問には「実は、個人的に原作を読んでトゥよりリュウさんが魅力的だと思いました(笑)。ふさわしい方(武田真治)がキャスティングされていて、ありがたいです。武田さんに韓国語を覚えていただいて、次の韓国公演に出演していただきたいです!」とお茶目に答え、武田は「嬉しくて涙が出そう。確かに魅力的な役をいただいたので、今の言葉を撤回されないように頑張ります」と喜ぶ。

また、中山を見て「格好良すぎてアイドルかと思いました」と驚き、「浦井さんは、すでに色々な表情が見えます。少年の純粋さ、爪角への執着心や愛も見える気がする。韓国のトゥとは違う、花總さんとの化学反応を期待しています。中山さんは韓国のユンと違ってとってもハンサムなので、どう描かれるのか楽しみにしています」と印象を語る。さらに「一色さんに聞きたいのですが、みなさんのハンサムさはキャスティングにおける重要なポイントだったんでしょうか?」と逆質問。一色は「韓国版や原作にはない部分ですが、ロマンスの要素を少し強めたいなと思ってキャスティングしました」と答えていた。

イ・ジナから自らの印象を聞いて照れ笑いする浦井と中山

イ・ジナから自らの印象を聞いて照れ笑いする浦井と中山

続いて、マスコミとの質疑応答が行われた。

――花總さんがこの作品のオファーを受けた一番の理由を教えてください。

花總 最初にストーリーを読んで即決しました。こういう役をいただけるとは思ってもみませんでしたし、爪角というキャラクターにもアクションにも魅力を感じました。やったことがないので不安も大きいですが、「やってもらいたい」と言っていただけたのは幸せなこと。今までのイメージと違う私を見たいと言ってくださったことに感謝しなければいけないですよね。ぜひお受けしたいと思いましたし、これから先、自分がどんな役をやっていくかはわからないのですが、今この役をやれるのは自分にとってのプレゼントのような感じ。大きな壁に立ち向かうことになると思いますが、挑戦しなければと思いました。

――爪角の魅力はどこにありますか?

花總 想像して創っていかなければいけませんが、若い頃からこういう道を歩むことしかできなかった彼女が抱えてきたもの、押し殺してきたもの、忘れられなかったもの、思い出させてもらったものなど、全てが深い。彼女が孤独に抱えてきたもの全て、演じる上で魅力に感じます。これを本当に表現できたらどれだけ充実感を得られるだろうと。やっている間は無我夢中なので、終わった時に自分の中に何が残るかワクワクさせてくれる役です。

――意外なことに、浦井さんとは初共演なんですよね。

花總 ここにきてやっと浦井健治様とご一緒できる!と嬉しかったです。周りの方からは「けんちゃんは面白いよ」と情報をいただいています。

浦井 先ほどようやく“けんちゃん”と呼んでくださいました。(花總さんからは)“花ちゃん”と呼んでね、と言われているのですが畏れ多いです。

花總 (笑)。作中では追われる立場ですが、最後の方でがっぷりお芝居させていただきます。私の中にいる陽気なけんちゃんがどんな顔でトゥとして私を見るのかが楽しみです。

浦井 光栄です。最後の方は、爪角から人生を学ぶシーンでもある。説得力を持たせられるような役作りをしたいです。

本格ミュージカル初共演について語る花總と浦井

本格ミュージカル初共演について語る花總と浦井

――中山さんが演じるユンも、花總さんの演じる爪角に憧れる役ということですが、どんなところに憧れますか?

花總 いやいや! まだ顔を合わせたばかりなので、憧れられては……(笑)。

中山 いえいえ、ずっと拝見していましたから、共演できることにとても喜んでいます! “花ちゃん”って呼んでもいいですか?

花總 はい!

中山 花ちゃんについていきます!

―― 一色さんがキャストの皆さんに期待することを教えてください。

一色 このキャストで見たくないわけないですよね。僕のイメージ通りの皆さんが集まってくださっているので、あとは役になり切って、すごく大変な歌やアクションを頑張っていただけたら。花總さんは「こんな花總まり見たことない!」をテーマにしています。見たことのない一面を見せてくれることに期待しています。浦井さんとは初めてご一緒しますが、かっこいいいでたちの中にピュアさや鋭さがあります。彼の心の奥底に潜んでいたものがお客様に届くならば、ラストシーンが泣けるものになると思います。

武田さんはムードメーカーでアクションもできるしオールマイティ。だから二役でもあるのですが、一つひとつの役をとても深く掘り下げていただけたら嬉しいです。中山さんはすごいんですよ。ドラマでも殺陣を一瞬で覚えるし、すごく器用。それを忘れて無我夢中になってくれるようなキャラクターを一緒に作れたら。熊谷さんには、花總さんの若い頃だと意識しすぎずにやってほしいです。人間の成長の中の一つのステージを演じるので、そのステージでどんな人間だったかを見せたい。遠慮せず目一杯やってほしいです。

本作は2026年3月7日(土)~22日(日)東京・新国立劇場 中ホール、3月27日(金)~29日(日)大阪・梅田芸術劇場メインホール、4月4日(土)~5日(日)福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホールで上演される。

取材・文=吉田沙奈

公演情報

ミュージカル『破果』


【出演】
花總まり 浦井健治
中山優馬 熊谷彩春
秋野祐香 大泰司桃子 東倫太朗
今村心音 新井海人 コイタ奈央美 下道純一 志村倫生
中西彩加 *蛭薙ありさ 矢澤梨央 *若林佑太 渡部又吁 (五十音順 *スウィング)
武田真治

【翻訳・訳詞】 高橋亜子
【演出】 一色隆司
【音楽監督】 甲斐正人

<オリジナル韓国版>
【演出】イ・ジナ
【音楽】イ・ナヨン
【台本】チャン・へジョン、イ・ジナ

【東京公演】
■日程:2026年3月7日(土)~3月22日(日)
■会場:新国立劇場 中劇場 
■料金:全席指定席 S席14,800円(税込)A席9,800円(税込)
 
 
<e+貸切公演:アフタートークあり> (完売)
■日程:2026年3月19日(木)
開演:18:00~
■会場:新国立劇場 中劇場 (東京都)
※終演後はMCに韓流ナビゲーター田代親世さんをお迎えして花總まりさんと浦井健治さんのアフタートークショーを開催。
 
 
【大阪公演】
日程:2026年3月27日(金)~3月29日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
■料金:全席指定席 S席14,800円(税込)A席9,800円(税込)B席7,800円(税込)
 
【福岡公演】
■日程:2026年月4月4日(土)~4月5日(日)
■会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
■料金:全席指定席 S席14,300円 A席9,900円 B席6,600円 U-25当日引換券5,500円(税込)
■主催:インプレサリオ/KBC
■共催:久留米シティプラザ(久留米市)
■企画製作:ミュージカル『破果』 製作委員会

※車椅子でのご観劇をご希望されるお客様は、「一般S席」のを購入後、ご来場前日までに下記お問い合わせ先へご連絡くださいますよう、お願いいたします。また、車椅子スペースには限りがございますため、ご購入のお座席でご観劇いただく場合もございます。予めご了承くださいませ。
※ご購入後の返金・クレーム及びお席の振替は一切お受けできません。予めご了承ください。 ※本公演のは「不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売いたします。主催者の同意のない有償譲渡は禁止されています。
 
【問い合わせ】
東京・大阪公演:ぴあ株式会社 information2@pia.co.jp
※件名に『ミュージカル破果』、本文に氏名、電話番号、お問い合わせ内容を記載の上、ご連絡ください。

 
福岡公演:インプレサリオ info@inpresario-ent.co.jp
TEL:092-600-9238(平日11:00~15:00)
※公演名、氏名、電話番号、お問い合わせ内容を記載ください
 
■公式HP: https://musical-pagwa.jp/
■公式X: @musical_pagwa
 
Original work Gu Byeong-mo's novel "HAKA 破果"
Script & Lyrics by Hyejeong Jang, Gina Lee Music by Nayoung Lee
Original Production by PAGE1
 
■主催:ミュージカル『破果』 製作委員会
【NHKエンタープライズ/ブルーミングエージェンシー/h.stage/Air Media/ニッポン放送】
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