「稽古場でも本番でも笑い続けた」~『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』哀川翔・青木さやか・大空ゆうひが語る

2017.12.4
インタビュー
舞台

(左から)青木さやか・哀川翔・大空ゆうひ (撮影:中田智章)

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2015年の初演で、観客を爆笑と感動の渦に巻き込んだ衝撃のミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』(脚本:倉持裕、原案・作詞・演出:ラサール石井、作曲・音楽監督:玉麻尚一)が、2017年12月14日からKAAT神奈川芸術劇場、来年3月2日からはTBS赤坂ACTシアターなど全国6会場で再演される。仕込みからバラシまで、舞台制作の裏側とその人間模様を描いた“バック・ステージもの”の傑作だ。主演の舞台監督・加賀美賢治役=哀川翔、制作・本庄まさこ役=青木さやか、女優・真昼野ひかる役=大空ゆうひが、初演の思い出や作品に懸ける想いを語ってくれた

--製作発表の会見では、久しぶりに劇中ナンバーを歌われましたね。いかがでしたか。

哀川 いやいや、歌はあまり得意じゃないの(笑)。まあ、どうせ俺が適当に歌っても、誰も気づかないから大丈夫。でもちゃんと歌ったよ。

--コーラスの厚さが半端ないので、真ん中で歌われていて幸せでしょう?

哀川 すごい圧だよ。稽古場に入って最初、みんなの歌声がでかくて驚いたんだから(笑)。朝のウォーミングアップもすごいのよ。俺は準備運動とか普段から何もやらない派。部活は体育会系だけど、全くやらずに本番やるタイプ(笑)。

青木 (哀川)翔さんは初演の稽古途中までジーパンでしたよね?

哀川 みんなジャージ着てて、なぜ?って思ってた。だって俺たち(一世風靡セピア)は、スーツで踊っていたから。

青木・大空 あー!(納得)

哀川 だから、なぜジャージに着替えるのか散々文句言っていたけど、1週間後には俺も着てた(笑)。自分は『HEADS UP!』が2回目の舞台で、しかも初ミュージカル。どんな環境なのか全くわからなくて。ただ、プロのすごさを目の当たりにして、面白かったなぁ。こうやって舞台はできていくんだ、みんなすげえなぁ、ほんとに完成するのかなぁって1ヵ月間思いながら見てた。

青木 私は稽古場で翔さんの隣の席でしたが、本当に楽しんで稽古を見ていて。よく笑っているなぁ、台詞覚えたほうがいいんじゃないですか?!と(笑)。

哀川 そうなんだけど、それくらい面白かったの。俺には心の声がないから、そのまま出ちゃう。

青木 本番中もずっと笑っていましたよね。

哀川 俺がこれだけ面白いんだから、お客さんは相当面白いはずだと思ってた。大概、創るほうはいくら面白いことをやっても、大して面白くないものだけど、『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』は面白かったもの。何回見ても面白い。その空気感はお客さんにも伝わったと思うし、様々な分野のプロが集まって今回の舞台を仕上げていったところにすごく価値がある気がしたな。

--青木さんも、もはや制作さんにしか見えないです。

青木 嬉しい! 最近、制作さんとよくお話しするようになって。なぜ制作になられたのかを聞くと、もともと舞台に魅了されてこの世界に入られている方ばかりなんですね。普段は話さないけど、聞いてみると皆さん、舞台に対する強い思いがあって。人によっては、演者よりも強い熱がある。

哀川 きっと演者より強い想いを持ってるよ。じゃないと、裏で人を支えるってできないもん。

--お稽古を見届けて、次の日の仕込みしてとか、裏方さんは本当にハードワークだと思います。

哀川 これだけやってるという自負はすごくあると思う。それも含めて、面白いコミュニケーションがとれているなと思った。

大空 初日を開けるまでのドラマは、裏では芝居以上にいろんなことが起こるんです。それって、裏方さんに聞かなければ絶対に喋らない。それをラサール石井さんが作品にしたわけで、裏方さんにとっては、わかる! いつもそうだよね! ということかと。前回、カーテンコールで演出部の人たちも舞台に上がったんです。皆さん、すごい困惑顔でした(笑)。反応がみんな純粋で、絶対に表に顔を見せたくない。その影に徹する姿勢がカッコいいんです。

--橋本じゅんさんの演じる大道具さんみたいに、見切れないことが大切。裏方の美学ですね。

哀川 その確固とした気持ちが舞台を仕上げていくんだなと思いますね。気持ちがはっきりしないうちは中途半端になってしまう。はっきりすると、プロとしての戦力内に変わっていく。

青木 翔さんは最初から裏方の気持ちがわかってらっしゃる方だと感じました。いろんなことがおできになるんですよ。何か作り上げることが好きですよね?

哀川 作業をじっと見ているのが好きで、関係ないのに結構見ていたりする。俺は主役だけど、主役だから特別どうこうじゃないです。歌と踊りはこうやって!と言われるから、その通りやればいい。じゃあ俺がやることを考えると、今日一日をいかに円滑に回すかが一番の使命。トラブっているところを見て、こうすればいいんじゃない?みたいな。

--その考え方は、制作向きかも。

哀川 映画の現場でもそうなんだけど、ここをクリアしたらOKというポイントがあって、それを探すのに、結構時間かかるんですよね。揉めたポイントを完全に把握しないとダメだから、2時間じっと見ている。俺はお腹が減るのが一番嫌だから、何か飯持ってこい!というのは得意です(笑)。

大空 ケータリングは毎日、充実していましたね。

哀川 いっぱいいる仲間に、稽古中だから何か持ってきてくれって、毎日電話してました。今回も地方公演があるので、全国の仲間たちにお世話になります。

--『HEADS UP!』が成功した理由は何だと思われますか。

哀川 一番はラサールさんの想いの強さ。バックステージものでミュージカルをやるという想いが、まずありました。いいとこ取りのキャスティングで大丈夫?ってよく言われて、俺はその意味がわかっていなかったけど、稽古を見たらキャストそれぞれの立ち位置がすごく良くて。その大勢のキャストを集結させる、踊りを通して上手いことミックスさせる作業を、振付の川崎悦子先生がきっちりやった。このコンビネーションの勝利だと思います。踊りも歌もみんなプロで、みんな攻めてて、この作品を成功させようという思いと歯車がきちんと回り、俺を笑わせてくれたことがお客さんに伝わった。

青木 翔さんのおっしゃる通り、ラサールさんの熱意あってこそ。舞台をあまり知らないママ友たちが観にきてくれたんですけど、みんなものすごく楽しんで帰ってくれました。子供たちも2年前のことなのに覚えていて、誰が見ても、6歳の子供でもわかる。声に出して笑えて、泣けて楽しめるエンターテインメントだということが成功の理由かと。もう1回見たいという人もすごく多いです。

大空 私もラサールさんがずっと温めていらっしゃった想い、舞台愛が成功の理由だと思います。これだけ面白い倉持裕さんの脚本と玉麻尚一さんの素敵な音楽、それを捌く振付の川崎悦子先生という布陣が素晴らしかったです。カンパニーとしては、翔さんが稽古場に入っていらっしゃっただけでみんなの心が明るく解放されて、作品の明るいエネルギーにつながった。みんなのエネルギーがいいほうに集まったんじゃないかしら。

哀川 舞台は演者たちがある程度楽しまないと。上手い料理作ってやるぜ!という思いがないと美味しくならないのと一緒で、俺らはこんなに盛り上がってるぞ!という空気感をプロとして醸し出せれば、お客さんは喜んでくれる。それをいかに出すかがプロの仕事。それは今回、成功した一つの要因だな。

青木 哀川さんのシーンで、お客さんがすごく盛り上がるところもありますよね。

哀川 照明がお客さんを照らすようになっていて、舞台上から盛り上がる様子がすごく見えるのよ。あれは感動するね。結局、皆さんに喜んでいただけるのが一番だからエンターテインメント性は大事。特にミュージカルは冷静に考えるとおかしいでしょ。今踊っていて、こんな大変なのに歌まで歌うのかい!って(笑)。

--お好きなナンバーやシーンはありますか。

哀川 オープニングのアッキーの歌はシビれる。やばいね。俺、結構真面目に影コー(影コーラス)やってた。

青木 全員でやりましたね。

哀川 袖から見ていると本当面白いの!みんな、あのシーンを見ると、やべえ! ミュージカル来ちゃった!って不安に思うらしいよ。完全にレビューだもの。それから人間ドラマが始まって、ホッとして入り込んでいく。

青木 翔さんと大空さんの大人のデュエットナンバーはいかがですか。

哀川 いいですよ。完璧です(即答)。

青木 「ドルガンチェの馬」の歌を歌いながら、帰っていくお客さんが多いみたい。すぐ覚えるメロディなんですね。「馬、馬♪」のフレーズでお客さんの興奮が伝わってきますよ。

--青木さんが歌う、「は売れている」の曲も泣かせのナンバーです。

青木 そうですよね。本物の制作さんに聞いたら、「本当にを売ってしまったのだから、上演しないと困ります」って言っていましたから。そんな想いを込めて歌いました。

--男性のナンバーは夢を追いかけるみたいなものが多いけど、女性のナンバーは現実的ですね。

青木 制作はお金などの現実的な部分を担っていますからね。

哀川 俺たちスタッフの心情と制作のそれは全く違うよね。

青木 だから制作さんは女性が多いのかな?

哀川 女性のほうがシビアにものを言えるからじゃない? 男はまあいいかってカッコつけたりするけど、女性はお金もパッパッと扱える。

大空 私は「古い劇場」がすごく好きです。いかにもミュージカルの五重唱で、『ウエスト・サイド・ストーリー』を意識して作られたとか。すごくカッコいい曲なのに、内容は「劇場、古い劇場、予算がない~!」と切実なのがおかしくて(笑)。

--歌稽古は大変でしたか。

哀川 毎日、歌稽古していたよ。毎日、新曲ができて、「別部屋来て!」って。みんな覚えるのが早いんだよ。一回歌稽古したら、即歌えるんだもん。すごいよね。そういうところに感動できるのがまたいいよね。俺はでっかい魚釣って感動させることぐらいしかできないから。人を感動させることは大事で、そこにいる人たちが言葉に出さなくても何かしら感動しているのが素敵な舞台だと思う。

--最後に作品が気になる読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

哀川 ミュージカルファンはもちろん、舞台を観たことがない人でも楽しめる舞台です。1回では見切れないくらい盛りだくさんで、2度3度いらっしゃるお客様もいます。まずは試しに1度来てみてください!

大空 お子様から高齢の方まで、皆さんが楽しめます。ラサールさんの舞台愛とお客様への愛が伝わる作品です。歌いながら帰れるミュージカル、ぜひ劇場へ足をお運びください。

青木 アッキーがすごい空気を作る歌から始まって、今(拓哉)さんのおバカな顔も見られて、大空さんの登場シーンもすごく素敵。それらをすべてまとめているのは翔さんです。翔さんの明るさがパァッと出ている作品ですので、ぜひ見にきてください。

取材・文=三浦真紀  写真撮影=中田智章

公演情報
ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』
 
■脚本:倉持裕 
■原案・作詞・演出:ラサール石井 
■作曲・音楽監督:玉麻尚一 
■振付:川崎悦子
 
■出演:
哀川翔 相葉裕樹 橋本じゅん 青木さやか 池田純矢
今拓哉、芋洗坂係長、オレノグラフィティ、陰山泰、
岡田誠、河本章宏、井上珠美、新良エツ子、外岡えりか、
福永吉洋、大竹浩一、森内翔大、香月彩里、谷須美子、伊藤結花、小林佑里花、
大空ゆうひ 中川晃教
 
【神奈川公演】
■日時:2017年12月14日(木)~17日(日)
■会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>

 
【東京公演】
■日時:2018年3月2日(金)~12日(月)
■会場:TBS赤坂ACTシアター

 
【富山公演】
■日時:2018年1月20日(土)
■会場:オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)

 
【長野公演】
■日時:2018年1月26日(金)~27日(土)
■会場:サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール

 
【大阪公演】
■日時:2018年2月2日(金)~4日(日)
■会場:新歌舞伎座

 
【名古屋公演】
■日時:2018年2月15日(木)~16日(金)
■会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール

 
■公式サイト:http://m-headsup.com/
■公式twitter:@KAATHEADSUP

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