京都国立博物館、2018年は「池大雅」と「刀剣」! 京博の特別展が明かされた記者会見をレポート
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京都国立博物館(以下、京博)が11月22日に記者会見を開き、2018年の春と秋に開催する特別展の内容を明らかにした。
キーワードは「京都で生まれた巨匠と名匠」。2018年4月7日(土)から5月20日(日)まで『池大雅 天衣無縫の旅の画家』を、9月29日(火)から11月25日(日)まで『京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ』を開催する。
京博では、これまでにも『円山応挙』展(1996年)、『伊藤若冲』展(2000年)を開催しており、来春の特別展で池大雅をとりあげることで、18世紀京都画壇の三巨匠を網羅することとなる。また『京のかたな』展で初の本格的な刀剣展に挑むこととなり、現在開催中の『国宝』展に次ぐ新たな話題となりそうだ。
会見には、佐々木丞平(京都国立博物館館長)、福士雄也(京都国立博物館学芸部研究員)、伊藤信二(京都国立博物館企画室長)、末兼俊彦(東京国立博物館学芸部研究員)が登壇し、各展の趣旨と見どころを紹介した。
85年ぶり、そして過去最大規模の池大雅展
円山応挙、伊藤若冲など個性派画家がしのぎを削った江戸時代中期の京都画壇。その活況のなかで、与謝蕪村とともに「南画の大成者」と並び称されるのが池大雅(1723~76)だ。
京都銀座の下級役人だった父のもとに生まれた大雅は、7歳で書を学び始める。その才能は早くから開花し、万福寺の僧たちから「神童」と絶賛したというエピソードもあるほどだ。後に日本文人画の先駆者とされる柳沢淇園の教えを受けながら画業を重ね、「楼閣山水図」「十便図」などの名作を生み出した。
楼閣山水図屏風(左隻) 東京国立博物館
国宝 楼閣山水図屏風(右隻) 東京国立博物館
当時、日本ではまだ浸透していなかった中国絵画の新様式をベースに、それまでにない独自の画風を確立して一世を風靡した大雅。その作品は、きわめて謙虚だったと伝えられる人柄を象徴するかのように寡欲で恬淡。清新で衒(てら)いのない明るさに満ちている。
三岳紀行図屏風(部分) 池大雅筆 京都国立博物館
柔軟で芯の通った線描、みずみずしい色彩感覚、おおらかで雄大な空間表現。江戸時代を彩る数多の画家のなかでも最も魅力的であり、かつ最も重要な画家の一人である。しかしながら、大雅の回顧展は国内では長らく開催されておらず、近年ではむしろ海外で注目を集めていた。
昭和8年(1933)の『池大雅遺墨展覧会』以来、実に85年ぶりの大回顧展となる本展では、大雅の初期から晩年にいたる代表作(国宝2件、重文13件)を中心とした作品約150点を公開することで、あらためてその天性の才を掘り起こす。さらに、画家としての大雅のみならず、当時から愛された人間・大雅の魅力にも迫る。
蘭亭曲水・龍山勝会図屏風(左隻) 静岡県立美術館 大雅芸術のひとつの到達点を示す記念碑的作品。重文に指定されている。
蘭亭曲水・龍山勝会図屏風(右隻) 静岡県立美術館
さらに、大雅が日本各地を訪ねた「旅の画家」であることをふまえ、その体験に基づく風景表現に注目し、彼の旅が絵画制作に果たした役割についても検証する。
「南画は全般的に人気があるとはいえない。だからこそ、いま、魅力を伝えたい。風、光……19世紀末の後期印象派を思わせるような表現が大雅の魅力のひとつ。“南画”、“文人画”を出発点とするのではなく、作品そのものの魅力をぜひ味わってほしい。」(福士)
京博120年にして初挑戦の刀剣展
刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞』のヒットにより、昨今若い女性のあいだでも注目が高まっている刀剣。
「刀剣ブームで刀剣への注目が高まっているが、もともと刀剣は日本の歴史において確固たる地位を築いてきた。重要文化財の一割弱を刀剣が占めている点からも、刀剣が日本文化に与えた影響は大きい。」(伊藤)
平安時代から近代に至るまで多くの刀工が工房を構え、数多の名刀を生み出してきた王城の地、京都。京都で製作された刀剣は、常に日本刀最上位の格式を誇り、公家、武家を問わず珍重され、とりわけ江戸時代以降は武家の表道具として、大名間の贈答品として取り扱われてきた歴史がある。
京のかたなの誕生。それは京都が混乱の極みにあった平安時代末期にさかのぼる。貴族社会の混乱に乗じる形で武士の力が増大し、その軍事力を背景に古代から中世への転換点となった時代。武士の台頭とかたなの発祥には密接な関係があるといえる。
多くの名工を出した刀工の一派、山城鍛冶は平安時代から鎌倉時代にかけて比肩なき繁栄を極めた。鎌倉幕府の崩壊、南北朝の動乱、備前鍛冶や美濃鍛冶といった他勢力の隆盛という苦難の時代を乗り越え、群雄割拠の時代を迎えた桃山時代に再び活気を取り戻し、その系譜を引く一派は江戸時代で絶頂期を迎えた。
本展では、現存する京都=山城系鍛冶の作品のうち、国宝指定作品のほぼ全てと、王貞治氏が所蔵していた刀をはじめとする著名刀工の代表作を中心に約200点を展示。平安時代から平成に至る山城鍛冶の技術系譜と、日本文化に与えた影響を探る。
刀 銘九州肥後同田貫上野介(王貞治佩用)九州国立博物館(九州国立博物館提供・落合晴彦氏撮影)
また、各時代の刀工たちが地域社会でどのような立場、環境のもと、創作活動を行ったかも紹介。刀工たちの地位向上にかかわった後鳥羽上皇ゆかりの品や、上皇自らの作と伝える「菊御作」、さらに、公家や武家の肖像画や肖像彫刻にあらわされている武装と、それに類似する刀剣を提示することで、当時の習俗を再現する。
あわせて、刀に関わる近世京都の文化も紹介。伊藤若冲筆の「伏見人形図」や、千種有効や酒井抱一といった、本業の傍ら作刀を行った公家や大名の作品も取り上げ、武家文化だけでなく、公家・町衆を含めた京文化の中で、刀工たちが果たした役割に迫る。
2018年も、やはり国宝は見逃せない
開催中の特別展『国宝』展は来場者が50万人を突破し話題となっている京都国立博物館。今回発表された両企画でも国宝の展示が予告されており、2018年も引き続き「国宝」は京博の重要なキーワードとなりそうだ。
「できるかぎりみなさまにより深く理解していただけるような展覧会を目指している。たっぷりとご鑑賞いただきたい。」(佐々木)
日時:2018年4月7日(土)~5月20日(日)
開館時間:午前9時30分~午後6時(金・土曜日は午後8時まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日※4月30日(月・祝)は開館、翌5月1日(火)休館
会場:京都国立博物館 平成知新館
http://www.kyohaku.go.jp/
日時:9月29日(火)~11月25日(日)
開館時間:午前9時30分~午後6時(金・土曜日は午後8時まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日※10月8日(月・祝)は開館、翌9日(火)休館
会場:京都国立博物館 平成知新館
観覧料:一般1500円 大学生1200円 高校生700円
http://www.kyohaku.go.jp/