イタリアの若き新・三大テノール「イル・ヴォーロ」が初来日! 陽気な貴公子たちの歌声は聴き逃せない

2017.11.28
レポート
クラシック

イル・ヴォーロ(左からジャンルカ、イニャツィオ、ピエロ) 撮影:西原朋未


今、世界中で話題のイタリアの若きテノールたちのユニット「イル・ヴォーロ」が初来日した。11月29日に東京、12月1日に川崎でコンサート「ノッテ・マジカ ~魅惑の夜~」を行う。レパートリーはオペラのアリア、カンツォーネ、ポップスとジャンルを越えて幅広く、2015年にリリースしたアルバム『グランデ・アモーレ』はビルボードのクラシック、ラテン・ポップ部門で共に1位を記録している。数年前、彼等を目に留めたプロデューサーが「まるで45歳のテノール歌手のように歌う」と言ったその確たる歌声はもちろん、貴公子然たる容姿も相まって、イタリアはもとより、ヨーロッパ、北米、南米で話題沸騰中のユニットだ。日本でもフィギュアスケートの羽生結弦選手がエキシビションでイル・ヴォーロの曲を使用するなど、じわじわと話題となっている。

このほどアジアで初のコンサートとして日本を訪れた彼らが登場した記者会見は、愉快な冗談が飛び交う、イタリアらしい雰囲気に溢れたものとなった。

■今まさに世界を飛翔するイタリアン・ユニット

イル・ヴォーロはジャンルカ・ジノーブレ(22歳)、イニャツィオ・ボスケット(23歳)、ピエロ・バローネ(24歳)の、3人のユニットだ。それぞれが子供の頃から三大テノールに憧れ歌手を目指し、イタリアの人気オーディション番組に別々に出場したところ、番組ディレクターの「三大テノールのようなユニットを作る」というアイデアによりユニット結成に至った。さらに彼らの活動がイタリア音楽界の大御所トニー・レジスの目に留まり、イタリア人として初めてアメリカのメジャーレーベルと直接契約。あれよあれよという間にヨーロッパ、アメリカ、南米のチャートに踊り出て、一躍イタリアを代表する世界的なアーティストに成長し、イタリア語の「VOLO(飛ぶ)」というその名の通り、飛翔を続けている。2016年はフィレンツェのサンタクローチェ広場で「祖父母の代からファンだった」という憧れの三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴと共演。2017年は世界45都市57公演を行う予定で、今回の日本公演は彼等にとって初のアジア上陸となる。

このほど会見が行われたのはイタリア大使館の公邸。イタリア共和国ジョルジョ・スタラーチェ駐日大使が「イタリアの宝といっても過言ではない」というのも納得するほどだ。

スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

■三者三様、陽気で冗談好きな貴公子たち

イタリアらしい濃いめのイケメン貴公子たちはそれぞれに陽気。「歌のパートはどのように決めるか」という質問に対し「まずは心理セラピーでそれぞれの性格を分析して……」と冗談を飛ばすなどさすがイタリア人であり、またある意味油断も隙もない(笑) 。「人を笑わせる、というイタリアの伝統が若い世代に生きていてうれしく思う」と言うスタラーチェ駐日大使のフォローが絶妙だ。

冗談を飛ばし合うイル・ヴォーロの3人 撮影:西原朋未

そんな彼等のキャラクターはそれぞれに三者三様。ジャンルカは「まるで日本人のように完全主義者」(イニャツィオ談)。ピエロは「こうと決めたらやり抜く」意志の強さがあり、イニャツィオは陽気でポジティブ。「月が曲がったように起きた朝(イタリア語で寝覚めの気分が悪い)時も、イニャツィオが陽気にしてくれる」(ピエロ談)というムードメーカーだ。

ジャンルカ・ジノーブレ 撮影:西原朋未

今回の来日公演に当たり「イタリアは世界中に愛されている国。料理や車だけではなく、音楽で知られている。そのイタリアの音楽を私たちの歌で日本で披露できるのはうれしい」とジャンルカ。

コンサートはは昨年フィレンツェで行われたプラシド・ドミンゴと共演した「三大テノールに捧げるコンサート」をベースとしており、「非常に名誉に感じている」と話す。オペラのアリアをはじめ、イタリアのカンツォーネ、ポップスなどジャンルを越えた音楽が披露される予定だ。

イニャツィオ・ボスケット 撮影:西原朋未

■ジャンルを越えたイタリア音楽の素晴らしさを伝えたい

このジャンルを越えた「イタリア音楽の素晴らしさ」を伝えることが、まさにこのユニットが目指すところ。そもそもイタリアのオペラは時代の流れとともに今でこそ「クラシック」「芸術」として一段高いところに置かれている感があるが、基本は誰もが歌えて楽しめる「歌芝居」だ。「3人とも祖父母の代から三大テノールの大ファン」とピエロが語る通り、イタリア人の生活シーンに溶け込んでいるのがオペラであり、オペラ歌手なのだ。ピエロは「自分達の世代がこうした(多ジャンルの歌を歌うことで)若い世代にイタリアの音楽の素晴らしさを伝えていきたい」と話す。

ピエロ・バローネ 撮影:西原朋未

とはいえ「30代、40代のヴィジョンは」という問いに対し、「イタリア人だから先のことは考えません。今日をいつも最後の日と思い、エンジョイして生き抜く」とイニャツィオ。

その言葉通り、彼等は日本滞在も思い切りエンジョイしている様子。「アメリカナイズされていない」本物の寿司を味わいご満悦のようで「毎日食べたい」(イニャツィオ)とも。また今回は東京と川崎での公演となるが、「日本はヴァカンスにもいいところだと思った。田舎の古い町や歴史にもふれたいし、京都にも行ってみたい」(ジャンルカ)と話す。

そして最後は3人のコーラスでお礼の挨拶。その歌唱力とハーモニーは迫力満点で「やはり本物!」と圧倒された。ぜひ本公演も期待したい。

イル・ヴォーロ、スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

取材・文・撮影=西原朋未

公演情報
Il VOLO(イル・ヴォーロ)
Notte Magica ~魅惑の夜~

 
■日程・会場:
11月29日(水)18:30~ 
Bunkamuraオーチャードホール
12月01日(金)18:30~ 川崎市スポーツ・文化総合センター
  • イープラス
  • IL VOLO
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