土屋太鳳が初舞台となる『プルートゥ PLUTO』を語る~「ダンスも芝居も内なる表現」

2017.12.8
インタビュー
舞台

土屋太鳳 (撮影:中田智章)

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浦沢直樹とストーリー共同制作者の長崎尚志が、手塚治虫の鉄腕アトム「地上最大のロボット」をリメイクし誕生したのが漫画『PLUTO』(小学館刊)。2015年には世界的振付家シディ・ラルビ・シェルカウイの演出・振付のもと、初の舞台化が実現した。ダンス、音楽、映像、パペットなど、多彩な表現で、独特な世界観を紡いだのが舞台『プルートゥ』だ。今回はヘレナとウランの二役に土屋太鳳を迎え、新たな地平に挑むという。土屋にとって初舞台となる本作について、意気込みを聞いた。

——『プルートゥ』の出演が決まった時の感想と、2015年版の感想を教えてください。

ちょうどNHKの朝ドラ『まれ』を撮っていたので、生の舞台は観劇できなかったのですが、今年(2017年)1月2日に放送しているのを夜中にたまたま見ました。最初、何だろう?って見始めたら、ダンスとお芝居が融合していて、視覚的な刺激をもらえる不思議な作品だと思いました。その頃、マネージャーさんから出演のお話をいただいて。嬉しく感じながらも、これが初舞台だ!という実感はあまりなかったです。お話に引き込まれていたから、逆に自然な流れの気がしました。

——ダンスを学ばれている視点からこの作品の凄さを教えてください。またダンサー・俳優として活躍している森山未來さんとの共演に当たって楽しみにされていることは?

コンテンポラリーダンスは形がなく、自分の感情を表す踊りだと思います。ダンサーお一人お一人が空気感と自分の渦を『プルートゥ』の世界で作っていらっしゃる。プルートゥには見えない怪物のイメージがあります。森山未來さんとはワークショップで1回だけお会いしましたが、ダンサーさんとも役者さんとも違うタイプで、動きがすごく洗練されていて、森山さんこそ怪物だ!って思いました(笑)。でも実際にお話したらすごく気さくな方で、ホッとしましたね。

——森山さんと一緒だったワークショップの内容を教えてください。

私がどういう人間か、どのようなダンスが踊れるのかを、シディ・ラルビ・シェルカウイさんが見たいということで2日間行われました。1日目は森山未來さんと大植真太郎さん、湯浅永麻さんとご一緒でした。改めて、ダンスは動いていると自分の感情が内から出てきて、その感情を大事にすることで動きにつなげていくものだと実感できました。ただ、やればやるほど自分のできなさを痛感しましたね。とはいえ、自分の心と向き合う感覚は、やはり好きだなぁと思いました。そして、筋肉痛がすごかったです(笑)。

——演出・振付のラルビさんの印象は?

2015年のインタビューで、ダンスもお芝居も同じ価値とおっしゃっていて。ラルビさんはダンス優先、お芝居優先ではなく、全部同等に考えて作られる方なのだなぁと。私はよくダンスやりたいの?お芝居やりたいの?どっち優先?と聞かれるのですが、私自身もあまり優先順位は決めたくはないんです。ダンサーさんと比べると私はまだ未熟ですし、お芝居だからこそできる表現もあります。だからラルビさんのお話にはすごく共感しました。これからちゃんと食らいついていきたいなと思っています。

——演じる役はヘレナとウラン。二役に対して、また個々の役への思いを教えてください。

二役という感じがまだしないです。二人とも戦いの中で、時代と環境に巻き込まれてしまう人たち。家庭や大切な人の命と思いを守りたいと思っている部分が、共通しています。まずは二役と意識せずに、ヘレナとウランがどうやって生きていくのか、愛する人を守る姿に集中していけたらと思っています。ウランは人の気持ちを敏感に感じ取るタイプで、私自身もちょっとした表情や空気で感じるところがあるので、自分のアンテナを精一杯出して、現場の雰囲気を吸収して、ウランにつなげていけたらいいなと思います。

——手塚治虫さんの作品に触れたことはありますか?

手塚治虫先生の作品は、『ブラックジャック』が好きで読んでいました。また『PLUTO』の作者である浦沢直樹先生の『20世紀少年』がすごく好きで、漫画も映画も見ました。ラルビさんが『PLUTO』は聖書みたいだとおっしゃっていて、すごくわかる気がしました。『PLUTO』には今、世界が直面している問題が色々と入っているように思います。

——初舞台ということで、準備していることはありますか。

体力づくりです。まずは自分にできることから。今までやってきた踊りを家で練習したり、走ったり、あと発声練習。舞台の現場に入って、体力面で迷惑をかけないように、少しずつやっています。1日5キロは走っています。(記者から、へえ!と驚きの声が上がると)でも、2.5キロ行って、2.5キロ帰ってくるだけなので。

——舞台に対して憧れを持っていたそうですが。

小学校の劇の会で、4年生の時に酔っ払い役を演じて、他の人になるってすごくいいなと思いました。映像を主にやっていましたけど、心のどこかでいつか舞台をやりたいという本能みたいなものがあった気がします。また漫画の『ガラスの仮面』が大好きで、小学校の頃からずっと読んできました。バレエや日本舞踊で舞台に立ったことはあるのですが、お芝居では観客の皆さんとのコミュニケーションをしたことがないので、憧れがありました。舞台は生で同じことを演じるので、毎日いかに工夫できるか、恐れもありますが、舞台に立ったらどんな気持ちになるのだろう?とドキドキしています。

——『ガラスの仮面』のマヤと亜弓なら、ご自身はどちらタイプだと思いますか。

難しいんですよ。私は先日「ガラスの仮面展」に行きましたが、マヤと亜弓のどちらが「紅天女」にふさわしいかの投票では、マヤに入れました。姫川亜弓もすごくいいんですよね。ライバルを愛し、努力家で。本当は両方好きです。私はマヤの役作りを真似したりするんですよ。朝ドラの「おひさま」で足を怪我して使えない役の時には、マヤみたいに足を結びました。月影先生も大好きです。(声色を真似て)「マヤ、恐ろしい子!」って(笑)。

——これまで観劇した舞台作品で印象的だったものは?

宮本亜門さん演出の『金閣寺』と、蜷川幸雄さん演出、柳楽優弥さん主演の『海辺のカフカ』。どちらも主人公を抱きしめたくなるような感覚にさせられました。

——小さい頃から運動神経抜群で、小学校の運動会や区立中学校の連合陸上大会で大活躍。体育系の高校、大学に進まれたと聞いて、やっぱり!と。

運動会、すごかったなぁ。懐かしいです。中学ではバスケ部でした。高校では芸能活動を主にやりたくて、他に繋がることはないかと思っていたらダンス部を見つけて。「お願いします!」という元気の良い挨拶と、みんなで踊る迫力に胸を打たれて入部しました。高校ではオリジナルの創作ダンスに取り組み、全国大会にも出場しました。

——どんなダンス作品を作ったのか、教えてください。

高1では「駆け抜ける獅子の日にかけて」という、武士をテーマにした作品。アクロバティックな技が多かったです。高2では「アブストラクト 思考するキャンバス」。各自のカラーがあって、伸びる生地を使い、抽象画を描くような作品でした。高3では「踏みだし、見上げた世界は…」という、一番モダンっぽい作品です。当時はきついと感じることが多かったけど、いかに忙しい中、テストで100点を取るかにチャレンジしていました。楽しかったです。

——最後にメッセージをお願いします。

全力で食らいついていこうと思います。それしかできないし、難しいことでもありますが。『プルートゥ』は政治的なストーリーでもあり、濃密な作品です。私自身は日常にもあることかな、と感じていて。人に対する愛情や憎しみから生まれる迷いや恐れ。子供が大人に成長する時にぶつかる壁だとも思います。見てくださる方が、この作品と大切な人と重ねてもらったりできるよう臨みたいです。

取材・文=三浦真紀  撮影=中田智章

公演情報
シアターコクーン・オンレパートリー2018
手塚治虫 生誕90周年記念
鉄腕アトム「地上最大のロボット」より
『プルートゥ 
PLUTO
 
■原作:『PLUTO』(浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション  小学館)
■演出・振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
■出演:
森山未來、土屋太鳳、大東駿介、吉見一豊、吹越満、柄本明
上月一臣、大植真太郎、池島優、大宮大奨、渋谷亘宏、AYUMI、湯浅永麻、森井淳、笹本龍史
■企画:Bunkamura
■製作:Bunkamura/TBS
■公式サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_pluto/​
<東京公演>
■日程:2018/1/6(土)~1/28(日)
■会場:Bunkamuraシアターコクーン
■主催:Bunkamura/TBS
■東京公演助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
※本公演は東京文化プログラムの対象事業です。

 
<大阪公演>
■日程:2018/3/9(金)~3/14(水)
■会場:森ノ宮ピロティホール
■主催:朝日放送/サンライズプロモーション大阪
■問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
http://www.kyodo-osaka.co.jp

 

[欧州ツアー]海外公演助成:平成29年度文化庁国際芸術交流支援事業
 
<イギリス・ロンドン公演>
■日程:2018/2/8(木)~2/11(日)
■会場:Barbican Theatre

 
<オランダ・レーワルデン公演>
■日程:2018/2/15(木)~2/17(土)
■会場:Stadsschouwburg De Harmonie
(欧州文化首都レーワルデン2018 招聘作品)

 
<ベルギー・アントワープ公演>
■日程:2018/2/22(木)~2/24(土)
■会場:deSingel Red Hall
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