J(S)Wが愛される理由、その神髄を見せつけた渋公ライブ

レポート
音楽
2015.10.2

画像を全て表示(11件)

JUN SKY WALKER(S) 『Special Live~Back to 1988.11.26~』
2015.9.20 渋谷公会堂


いくつもの奇跡が折り重なり、この日を迎えた。解散したバンドが、再び向き合うこと。再び向き合った仲間が、変わらぬオリジナリティを打ち出せること。そしてこの日、彼らは一時閉館となる渋谷公会堂のステージで、27年前と同じセットリストでライブを行なった。何が一番の奇跡かと言うと、それが恐ろしくフレッシュで、胸の底から熱くなる時間だったということだと思う。そんな偉業、簡単にできることじゃない。

演奏する4人の後ろに大きなロゴマークがあるのみという、いたってシンプルなステージ。セットも当時を再現したそうだが、つまりは若くしてヒットメーカーだった彼らのライブに必要なのは、音と歌とパフォーマンスだけだったことを物語る。一曲目の「ひとつ抱きしめて」でその歌と演奏が放たれた瞬間、その威厳は今も守られていることが判明した。そして「見せかけだけのデコレーション!」と大合唱が起きる「カステラ」、パンクロックならではのぶっきらぼうなコーラスが男気を煽る「BAD MORNING」など人気ナンバーが並ぶたびに、その曲をむさぼるように聴いていた当時の自分を懐古する。それこそイヤホンをしながら見ていた街の景色までが脳裏をかすめていく。おそらくどんな曲でもイントロで反応し、拳をあげながら歌える観客みんながそうだったのだろう。そして同時に、例えば「ガラスの街」のように、真新しい感触を与える曲もある。当時は歌詞に出てくる争いや寂しさが誰かのモノだったけれど、今ではとてもリアルに自分の立ち位置を考えさせられたりもした。

アグレッシブなサウンドとパワフルなボーカルで魅了するライブの中で、J(S)Wが愛される理由を痛感したのが、中盤で披露された「声がなくなるまで」「いつも二人で」といったバラード。他に類を見ないビブラート強めの喉使いで、圧倒的な存在感を出す宮田和弥の歌声。その声はことさらバラードでは色気を増し、曲と聴き手を確固たる一対一の関係性に持っていく。高熱を帯びながらも静かに流れる時間を過ごしたファンは、「みんなの目がさ、あの頃の目をしてんだよ」という宮田の言葉に怒涛の歓声で応える。まさにこのライブが昔を懐かしむ時間ではなく、今楽しむために行われていることを実感した。

J(S)W代名詞のひとつでもある、腕を大回転させる森純太のストローク。楽曲に奥行きを与える寺岡呼人のアルペジオ。駆け出したくなるような疾走感を出す小林雅之のロール。本編ラスト「いつもここにいるよ」とアンコール用「全部このままで」の順を間違えるハプニングはあったものの、もはやその2曲が聴けるなら何の問題もない。それどころか、予定を変更して聴かせた新曲「希望の詩」も、大トリにふさわしい人気ナンバー「MY GENERATION」も同じ熱量で演奏されたことに驚きと感動を覚えた。情熱的で遊び心満載なロック魂と、信じた方向に突き進む彼らの生き様。そのふたつを体感した観客の表情も、ライブ前よりはるかに活き活きとしていた。そしてきっとJ(S)Wというバンドは、これからさらなる奇跡を迎えていく。

文=川上きくえ

SET LIST
『Special Live~Back to 1988.11.26~』2015.9.20 渋谷公会堂
01. ひとつ抱きしめて
02. 夢に向かって
03. SUICIDE DAY
04. カステラ
05. BAD MORNING
06. 遠くへ行かないで
07. ガラスの街
08. I Wanna Dance
09. 翼をひろげて
10. 傾いた世界
11. 声がなくなるまで
12. いつも二人で
13. 望み
14. あきらめたくない
16. だけど1人じゃいられない
17. ななしの詩
18. すてきな夜空
19. 全部このままで
EN1. カステラ(レゲエver.)
EN2. 変身
EN3. 明日がこなくても
EN4. いつもここにいるよ
EN5. 希望の詩(新曲)
EN6. MY GENERATION

 

リリース情報
アルバム『Back Bad Beat(s)』
2015年11月18日発売
【初回限定盤】(2CD+DVD)
 QAIR-30007 ¥4,300+税
【通常盤】(2CD)
QAIR-10019 ¥3,700+税
<Disc 1>オリジナルアルバム (CD)
<Disc 2>ライブアルバム (CD)
2015年9月20日@渋谷公会堂で行われたSpecial Live -Back to 1998.11.26- を収録したライブ盤
<Disc 3>DVD※初回限定盤のみ
2015年5月23日日比谷野外音楽堂で開催された“J(S)W 27th Anniversary LIVE!!”~The Next Step~から新曲を含む選りすぐったライブ映像や貴重なリハーサル風景などを収録予定​

 

ライブ情報
『J(S)W TOUR 2015 ~The Next Step~』
9/22(火・祝)千葉 LOOK
9/23(水・祝)水戸 LIGHT HOUSE
9/24(木)郡山 CLUB #9
9/26(土)KLUB COUNTER ACTION 宮古
9/27(日)石巻 BLUE RESISTANCE
10/2(金)高崎 club FLEEZ
10/10(土)柏 DOMe
10/12(月)岐阜 CLUB ROOTS
10/14(水)京都 磔磔
10/15(木)大阪 BIG CAT
10/17(土)出雲 APOLLO
10/18(日)周南 LIVE rise
10/20(火)松山 W studio RED
10/22(木)高知 X-pt.
10/24(土)福岡 DRUM Be-1
10/25(日)鹿児島 CAPARVO HALL
10/27(火)広島 Cave-Be
10/28(水)岡山 IMAGE
10/30(金)名古屋 Electric LadyLand
11/1(日)HEAVEN'S ROCK Kumagaya
11/3(火・祝)札幌 cube garden
11/5(木)北見 ONION HOLL
11/8(日)弘前 Mag-Net
11/10(火)山形 MUSIC SHOWA Session
11/12(木)金沢 AZ
11/26(木)LIQUIDROOM
11/27(金)LIQUIDROOM


 
シェア / 保存先を選択