go!go!vanillas ピュアな好奇心を胸に、飽くなき冒険は続く「これからも俺たちの音楽で一緒にバカしようぜ!」
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas「FOOLs」Tour 2017
2017.12.2 Zepp Tokyo
SEは、アルバムとライブに共通するオープニングトラックとして制作された「We are go!」。青と緑が混ざったような光に照らされたステージ後方の壁面上に、赤いレーザー光線が“FOOLs”という文字を描き出す――というアルバムジャケットのアートワークをリアルタイムで再現するような演出に早速フロアから歓声が上がった。そして牧 達弥(Vocal / Guitar)、長谷川プリティ敬祐(Bass)、ジェットセイヤ(Drums)、柳沢 進太郎(Guitar)が登場。1曲目「サクラサク」を炸裂させた直後、「さあさあさあ! バカになってロックンロールパーティーだ!」と牧が投げかければ、柳沢がイントロのフレーズを繰り出し、「ヒンキーディンキーパーティークルー」に突入。ステージ上でCO2が噴射され、白い煙に包まれながらグルグル回ってはしゃぐメンバーの姿を見ていたら、こちらまでつられて笑顔になってしまった。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
アフリカ系のリズムと赤・黄・緑色の照明が好相性な「ニューゲーム」までの3曲を聴いてまず、音量のバカでかさに大笑いした。メジャーデビューから3年。フルアルバムは3枚リリースし終え、ニューカマーと呼ばれる時期も過ぎつつある。バンドにおける初期衝動というものは年々薄れていくものだと思っていたが、この4人、go!go!vanillasが鳴らすサウンドはどこまでも瑞々しいままだった。彼らのライブはこれまでにも何度も観てきたが、今までで一番“これからが楽しみだ”と思えるような内容だったのは、レコードの針を落とすあの瞬間のような、あるいは仲間同士で集まって初めて音を合わせたあの瞬間のようなときめきを絶やさないまま、このZepp Tokyoを堂々と鳴らしきる姿を見ることができたから。もっと言うと、そういう部分を大切にしたまま、さらに大きく成長していくバンドの姿を想像することができたからだ。ライブを観ている最中、何故だか、4年前初めて『SHAKE』を聴いた当時のことを思い出さずにいられなかったのも、おそらく同様の理由だろう。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
今年7月にリリースしたアルバム『FOOLs』を携えた、計25公演にわたる全国ツアーのファイナル公演。『FOOLs』がメンバー自身の考える“バニラズらしさ”=好奇心に基づいて音楽を研究していくことを体現したアルバムだとしたら、「音楽愛を好きなように全力でぶつける」ことが今回のツアーのテーマだったという。音楽的な振れ幅をさらに大きくさせたアルバムだっただけに、その全収録曲を演奏したこのツアーは、メンバーにとっても挑戦が多かったことだろう。しかしシリアスさやストイックさを見せることはせず、ライブはひたすらハッピーに。大会場ならではの特効やホーンセクション&ダンサーを導入した演出も盛り込みつつ、“バカやる時は思いっきり自由に”という方向に振り切っていたことがこの日のステージの大きな特徴だった。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
当サイトでもレポートした初日公演から約3ヶ月。その間に一番大きく変化していたのはリズム隊で、以前と比べグルーヴが深くなり、むせ返るほどの大きなうねりを生み出すような場面もあった。そのため、バンドサウンドは全体的にガッシリとした佇まいになり、土台が頼もしくなったがために上物の自由度が増した印象。柳沢の弾くギターフレーズはさらに華やかになり、ここ最近バニラズが強化してきたコーラスもより鮮やかに映えるようになった。そして、我を忘れるような興奮を聴き手にもたらす音像のなかで、一際特異な存在感を放つのが牧のボーカル。レコーディングにも参加したFIRE HORNSがゲストとして登場した「FUZZ LOVE」が特に顕著だったが、バンドサウンドの分厚さに埋もれることもなく、かといって無理な張り方をして他(た)を気圧すこともないが、言葉の一つひとつが平然と浮かび上がってくるという、とても不思議なバランスなのである。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
2階席にいても空調をもっと効かせてほしいと思うほど、場内は熱気に満ちている。そんななか、勢い余ってMCの最初の一言を噛みまくる牧、フロアを煽るその声にどんどん熱がこもっていくプリティ、いつになく語気を強めて柳沢が唄い上げた「ストレンジャー」、ほぼシャウトに近いテンションでのセイヤ・ボーカル曲「Ready Steady go!go!」――と4人それぞれの昂揚感もダイレクトに伝わってきた。ここまでの前半戦はアッパーチューンがほとんど。全体として”テンションが振り切れてこそバカ”的な温度感で限界突破を繰り返していくような感じがあったが、チルアウトできるようなセクションを必ず用意するのがワンマンライブにおけるこのバンドのやり方である。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
プリティの愛猫と牧の愛犬にまつわるMCを挟んだあと、「この時間だけは俺の犬を愛してください!」(牧)と鳴らされたのは、余白を効かせた「グッドドギー」のシンプルなサウンド。直後の「サウンドエスケープ」では、シャボン玉とスモークが幻想的な雰囲気を演出するなか、浮遊感あるサウンドを甘美に響かせた。ふとフロアを見渡すと、先ほどまでは腕を高く突き上げ、ピョンピョンと飛び跳ねていたオーディエンスも、穏やかな音の波に身を委ねている様子。今までとは異なるやり方で新鮮な響きをもたらしたこの中盤戦は、リリース時のインタビューで牧が言っていた“リアクションがなくても響くもの”(=目に見えて分かりやすい盛り上がり方を必要としない音楽)を体現していた。バンドとして新たな領域に踏み入れている感触があったため、この路線であと何曲か聴きたかったのが正直なところだが、その辺りに関しては次回以降に期待したい。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
「自分の好きなように楽しんでほしい」という旨を牧がオーディエンスに改めて伝えた上でクライマックスへと突入していく。MV同様“平成代表”の女性ダンサーと“昭和代表”の男性ダンサーが登場、バラバラの振り付けに興じる様子が直前のMCのメタファーのように思えた「平成ペイン」。仰向け状態でオーディエンスに支えられながらギターを掻き鳴らす牧、衝動的にステージ前方へ乗り出したがゆえに噴き出すCO2をダイレクトに浴びまくっている柳沢など、抑えきれない感情を露わにしたメンバーの姿が印象的だった「デッドマンズチェイス」。FIRE HORNS+ダンサー8名がオンステージ、ゴージャスな編成で再構築された「エマ」。「バイバイカラー」では牧がハンドマイクに持ち替え、ステージング面でも新鮮さをもたらす。
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
「自分が頑張らなきゃやられてしまう、パワーの必要な街」(牧)であるここ東京に集まったオーディエンスへ「カウンターアクション」を届けたあと、牧は、自分自身も「いろいろな音楽を知りたい」という気持ちから上京してきた身であること、さらに「このバンドめっちゃいいんだよ!」と友達に勧める時と同じような感覚でバンドを始めたのだということを語りながら「こんなにたくさんの人と繋がれたと思うと嬉しいです!」と喜びを伝えていた。ここまで書いてきたように、サウンド面においても演出面においても新たな試みの多いライブだったが、それらの根底にあるのがメンバーのピュアな好奇心であるという点はあの頃からずっと変わりやしない。そんなことがまっすぐに伝わってきたライブだったからこそ、本編ラスト「おはようカルチャー」の<僕は君の歌を謳う>、そしてリリース以来ライブ終盤に披露され続けている「ギフト」の<太陽の子 綺麗なその目/曇らせないように僕は歌を唄ってる>というフレーズが、変わらずに進化していくバンドの姿をそのまま映し出しているように思えたのだ。
「これからも俺たちの音楽で一緒にバカしようぜ!」という牧の去り際の一言をはじめ、メンバーが「これからもよろしく」的な発言をする場面が多かったこともまた象徴的だった。誰かの顔色なんて伺う必要はない。自分のやりたいようにやって、共鳴しあえる仲間に出会えて、一緒に大笑いすることができたら最高じゃないか。人の波に揉まれ、多忙な日々で消耗しているうちに色褪せてしまいがちな、シンプルで大切な気持ち。それを忘れずに鳴らしていてくれるのが、そうして私たちの心にカラフルな潤いをもたらしてくれるのが、go!go!vanillasというバンドなのだ。
既にニュースもリリースされている通り、来年3月からはアンコールツアーと称して対バン形式で全国をまわるバニラズ。次の“ゴーゴーの日”に開催される新木場STUDIO COAST公演まで、いや、もっともっと先の先まで、彼らの飽くなき冒険は続いていく。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas 2017.12.2 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
2017.12.2 Zepp Tokyo
01.サクラサク
02.ヒンキーディンキーパーティークルー
03.ニューゲーム
04.FUZZ LOVE
05.ラッキースター
06.ストレンジャー
07.Ready Steady go!go!
08.パペット
09.グッドドギー
10.サウンドエスケープ
11.平成ペイン
12.デッドマンズチェイス
13.エマ
14.バイバイカラー
15.カウンターアクション
16.マジック
17.おはようカルチャー
[ENCORE]
18.ナイトピクニック
19.アクロス ザ ユニバーシティ
20.ホラーショー
21.ギフト