ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』が開幕、ペヤンヌ&安藤のコメント到着
写真:宮川舞子
劇作家・演出家・AV監督としても活動するペヤンヌマキと女優の安藤玉恵。同い年の2人が2017年に始めた新シリーズ、ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*「男女逆転版・痴人の愛」公開ゲネプロが行われた。
1925年に出版された谷崎潤一郎の不朽の名作「痴人の愛」を男女逆転し、現代版にして描く本作は、40歳独身女性の"私"=洋子が、バーで出会った美少年ナオミを家に住まわせ、理想の男に育てようとするが……というストーリー。
写真:宮川舞子
今までのブス会*ではリアルでシニカルな女性同士の<あるある>会話を描いてきたペヤンヌマキにとって、今回は初の原作ものであり、文学作品への挑戦でもある。他にも口語ではない台詞、抽象的な舞台セットを使っての演出、一人多役の演出など、『挑戦の連続だった』という。
まるで能舞台のような白木に欄間がある舞台セット。チェロ演奏の浅井智佳子が現れ、チェロの演奏を始める。続いて黒いドレスを着た安藤玉恵が現れると「私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる、私と彼の関係について、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、ありのままの事実をお話してみようと思います」と原作さながらに語り始める。
写真:宮川舞子
母の命日、墓参の帰りに神保町のバー「ダイヤモンド」に寄った主人公の洋子が、馴染みのマスター(山岸門人)と話していると、ずぶ濡れの男が現れる。パーカーのフードを取るとそれは美しい顔をした少年ナオミ(福本雄樹)で、洋子はその横顔に釘付けになるのだった。洋子はナオミを美術展に誘い、自分の家に来ないかと提案する。ナオミを自分好みの「立派な男」に育てようとする洋子とナオミの、お伽話のような楽しい生活が始まるのだが……。
写真:宮川舞子
原作「痴人の愛」を生かしながらも、随所に男女逆転をしたことで生じる男女の性差 が描かれている。劇中の「そもそも今の日本の<結婚>という制度は、女にとっては決して愉快なことではなく、いいことでもありせん。」という言葉にはペヤンヌマキの現代を生きる40代女性としての実感が込められているようだし、ナオミを立派な男に育てる、という意味合いひとつとっても、原作ではあくまで妻として、自分の服従物として美しく賢くしたいという意味あいであったが、洋子が言うところの少年ナオミを「立派にする」には、いい大学へ行かせる、社会的成功収めさせないと満足できない、といった想いが含まれているようだ。
過去さまざまなインタビューで自ら『場末キャラが多い』と語る安藤は確かにこれまでのブス会*ではサバサバした<執着>が全くない役を演じていた。<執着>の化身となってしまう今回の洋子役は安藤にとっても『全く理解できない役、自分からは遠い役』とのことだが、目の前の<洋子>を見ているととてもそうは思えない。観客が心配してしまうほど<痴人>化が進み、ナオミに惑溺し、狂っていく。
写真:宮川舞子
唐組所属、今回が初の外部団体への出演となる福本雄樹のナオミはなるほど「炯炯として強くすさまじい」眼光の鋭さが特徴だ。15歳であどけなかったナオミが悪に転じていく様を、色気たっぷりに演じ洋子を惑わせる。
写真:宮川舞子
前述のバーのマスター、ナオミの友人の浜田、洋子同僚の山本役など、洋子とナオミを取り巻く男4役を演じる山岸門人も、抑えた演技ながら立場の違う4役を演じ分け、作品に色を添える。
写真:宮川舞子
チェロ演奏の浅井智佳子は今回が初めての劇伴。『台本を読むのも初めてで、リハーサルじゃなくて<稽古>という響きも新鮮』とのことだが、今回は演奏だけでなく作曲や編曲も担当し、もう一人の洋子と言ってもいい作品の中核を担っている。
写真:宮川舞子
ナオミが行水する背中、ナオミが着る白いシャツ、黒いシャツ、ナオミと浜田の「ふれあい」のシーンなど随所にペヤンヌの視覚的フェティシズムが垣間見えるが、本作で特に注目したいのが安藤玉恵の<声>である。少し低い、ハスキーだが艶のある安藤のモノローグとチェロの音色が合わさり、確かに今までとは一味違った「新しいブス会*作品」だと感じられる1時間40分。
は前売り券がほぼ完売しているが、当日券は全ステージ発売予定。こまばアゴラ劇場にて12月19日まで。
写真:宮川舞子
<生誕○周年記念ブス会*とは>
脚本家・演出家・演劇ユニット「ブス会*」主宰のペヤンヌマキが、同い年の女優・安藤玉恵と立ち上げた新しい舞台のシリーズ。「生誕40周年ブス会*」を皮切りに、節目の年に公演を行っていく予定。「男女逆転版・痴人の愛」は7月にギャラリーしあんでプレイベントリーディング公演を行い、12月、満を持しての本公演となる。
<ペヤンヌマキ コメント>
古典作品のアレンジ、チェロの生演奏、古民家でのリーディング公演を経ての本公演。今回の企画は、私にとって初めての挑戦づくしでした。
同い年の安藤さんと節目の年にタッグを組むシリーズを始めるに当たって、女優・安藤玉恵の魅力を余すところなく伝えたいという思いが、自然と私をそうさせたのかもしれません。そして、これほど安藤さんのポテンシャルの高さを思い知らされたのは、約20年の彼女との付き合いの中で今回が初めてでした。
40歳の今の私の全てを安藤さんに託した作品です。どうぞ劇場で体感してください。
<安藤玉恵コメント>
企画をもらった時に、これは面白いことになりそうだと、思った気持ちが初日を迎える今も続いています。リーディングを経ての本公演、原作からの引用と、ペヤンヌさんの加筆の部分が絶妙に混ざりあうのが小気味よく、2017年の『男女逆転版・痴人の愛』になりました。私は譲治さんになりきれるかしら?舞台上でのナオミとのやり取りが楽しみです。
■脚本・演出:ぺヤンヌマキ(原作:谷崎潤一郎『痴人の愛』)
■出演:安藤玉恵 福本雄樹(唐組) 山岸門人 / 浅井智佳子(チェロ演奏)
■日程:2017年12月8日(金)~19日(火) 計16ステージ
■タイムテーブル:
12月8日(金)19時30分 ※プレビュー公演
12月9日(土)休演日★過去作品上映
12月10日(日)14時/18時
12月11日(月)14時/19時30分
12月12日(火)19時30分
12月13日(水)14時/19時30分
12月14日(木)休演日
12月15日(金)19時30分
12月16日(土)14時/18時
12月17日(日)14時/18時
12月18日(月)14時/19時30分
12月19日(火)14時
※開場は開演の30分前、受付開始は開演の45分前
○一般シート(入場整理番号付自由席)前売4000円/当日4500円
○ブスシート(入場整理番号付自由席/1~2列目ベンチ席)前売4000円/当日4500円
※プレビュー公演=一般シート・ブスシート共に前売3800円/当日4300円
★上映会(入場整理番号付自由席)前売・当日共に 1500円
■問い合わせ ブス会* 080-7943-2251(10:00~20:00) info@busukai.com
■ブス会*公式HP http://busukai.com