松田理奈が子供たちとのコラボで魅せる『OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」』写真付きレポート

レポート
クラシック

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

画像を全て表示(11件)

“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.11.26 ライブレポート

クラシック音楽をもっと気軽にーー日曜の昼のひと時を音楽とともに過ごす『サンデー・ブランチ・クラッシック』。
今回登場したのはヴァイオリニストの松田理奈と画家・中山晃子のコラボレーションによる『松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」』だ。これは音楽とモダンアートによるコラボレーションで異ジャンルのアーティストと子供たちとのコミュニケーションを通して、アーティストたちは新たな表現の可能性を探るとともに、子供やその親たちにもアート体験を楽しんでもらおうという、新感覚のコンサートだ。

3回目は“客席体験”も

『OTOART』は「子供の感性を通して芸術表現の可能性を引き出す」ことをコンセプトとしており、子連れで楽しめるコンサートだ。この日も会場には小さな子供を連れた親子連れが多く、いつもとは違った雰囲気。そしてこれまでは子供たちをステージ前に集めての演奏&パフォーマンスだったが、3回目となる今回は子供も客席からステージを観賞するというスタイルが採られた。

ステージ上にはピアノの向こうにプロジェクター。そして右手には絵の具など画材が並んだテーブルが置かれ、中山が描いた絵がスクリーンに映し出される。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

時間となり松田と中山が登場。1曲目はエルガーの「愛の挨拶」だ。
「エルガーがピアニストである奥さんにプロポーズした時の曲。それゆえピアノ(奥さん)とのコンタクトがたくさん盛り込まれている」と松田が後に説明した通り、甘く、しっとりと幸せな旋律が奏でられる。そこにプロジェクターに映し出される赤や白の絵の具。2色が曲に合わせてマーブル模様のように溶け合っていく。スクリーン上の絵の具は音楽によって生を吹き込まれたかのように自在に動き、また音楽の方もプロジェクターの光が演奏家に反射し、音が色彩を放つようだ。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

ピンクとブルーの「シャコンヌ」

1曲を終えたところで、『OTOART』ならではのプログラムに入っていく。
「この曲の最後の部分を真っ白な状態で弾きますので、みんな何色で聴いてみたいか、味付けをしてください」と松田。その曲とはヴィターリの「シャコンヌ ト短調」で、子供から上がったリクエストは「ピンク!」。

ト短調の物悲しい雰囲気に満ちたヴィターリの「シャコンヌ」が、なんとなくハッピーそうな響きを持って奏される。そこに文字通り中山のアーがト色を添える。プロジェクターにピンク色が出てくるかと思いきや、流し込まれる絵の具は赤、続いて白。それらが曲の中で混ざり合っていくという、コラボレーションによる「ピンクのシャコンヌ」が完成した。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

続いて出された「味付け」はブルー。まさに「シャコンヌ」にはぴったりの色で、重々しい苦しみもがくような音色の演奏に中山が濃い、ダークなブルーの色を添える。と、会場のどこかから子供の「こわい!」という声。子供の感性は実に素直だ。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

合わせ鏡の中で曲と色とともに遊ぶ

そして3曲目。「鏡の中に入ってみましょう」と子供たちに呼びかける松田。曲はペルトの「鏡の中の鏡」。
松田曰く“ラの音を中心に、音が合わせ鏡の中に映るように広がる”曲で、ステージ上のスクリーン前には鏡が4枚セットされる。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

演奏が始まるとともに客席にいた子供たちが次々とステージに上がり、鏡をのぞき込んだり、音に合わせて動いてみたり。スクリーンに映し出される中山の色彩が鏡の前で遊ぶ子供たちや鏡に反射して、キラキラと輝く。音と光と色と動きがプリズムを通して様々な色を醸しだすような、そんな世界が広がる。

松田理奈プロデュース OTOART vol.3「MUSIC × ALIVE PAINTING」

この『サンデー・ブランチ・クラシック』は食器が響いたり、子供が声を上げてもOKという気楽なクラシックイベントだ。しかし今回の演奏中に騒ぎ走り回る子供はおらず、松田&中山のパフォーマンスに見入っていた。

最後に「子供たちも演奏会を静かに聴けました。これを機に、親御さんたちも自信を持って、また音楽を聴きに来てください」と松田が語りかける。なるほど、この企画は普段音楽を聴きに行きたくても行けない、小さな子供を持つ親御さんたちの応援の意味合いもあったのかと気づかされた。

子供たちに楽しみながらプレ・コンサート体験を

演奏後、松田と中山両名にミニインタビューを行った。

――今回の『OTOART』は3回目となりますが、とくに工夫したことはありますか。

松田:1、2回目と違い、今回はちゃんと座席で聴く、プレ・コンサート体験にしてみました。受け身ポジションで音楽を聴きステージを共有するという体験をしてもらおうかと。

――「シャコンヌ」のリクエストにピンク色はびっくりしましたが、子供向けのコンサートでこの曲をセレクトすることにも驚きました。

松田:実は「ピンク」は想定外でしたので慌てました。 でもそのあと次のお子さんがブルーと言ってくれたので、視覚的・音楽的な感覚で変化が出せました。同じ曲で空間が変わるということを、どこまで表現できるのか、奏者としては挑戦でした。「シャコンヌ」を選んだのは、相手が子供だからわかりやすい音楽で寄り添いに行くのではなく、クラシックの品格、アート性を保ちたいと思って正面から子供達と対峙したかったからです。子供にとってはシャコンヌが難しい曲だ、なんて予備知識は全く無いので。

インタビュー中の様子

――中山さんは選曲などは事前に聞いていらっしゃるのでしょうか。

中山:はい。呼吸を合わせやすい選曲にしてくださったので、事前に意識を共有することができました。

松田:それぞれ立ち位置や役割を決めるのではなく、互いが発したものが空間で融合した形になりました。私の場合、普段はピアノとヴァイオリンがコンタクトを取りながらやっているんですが、そのコンタクトの中で融合したものがお客様に届く音になるわけです。お客様に届いたときにベストとなるように、と思って弾いています。そうしたことを異ジャンルのアーティストの方ともできるんだ、それが気持ちいいんだということがわかりました。今回は本当に楽しかったです。

ペインティング用の投影機

――「鏡の中の鏡」は見ていてもとても楽しかったです。

松田:鏡の中の世界とともに、ステージに上がった時の空気も体験してもらおうと。でも楽曲を通して、私がやりたいと思っている、子供の感性が“垣根”を取ってくれるという、理想の形が一つ見えたと思いました。

つまり、クラシック音楽って日に日に古くなるもので、それを演奏する音楽家はある意味研究職なんですよね。そういう古くなっていくものに対して、個々のアーティストたちがもがき、何かを求めながら演奏活動をしているのですが、一方でモダンアートは現代、つまり真逆の一にあるんです。その真逆を向いているものに、子供の自由な発想や感性を通すことで、その垣根を取り払い融合させ、新たな発見や可能性を見つけたい。

また子供が取り払ってくれるのは、ステージとお客さんとの垣根でもあるんです。子供のフラットな感性で発信される反応を通して、大人も何か感じる。親御さんたちも今日は子供の姿を通して舞台を感じていたはずです。そうした相互のリレーションというのか。それが私がどうにかしてやりたいと考えている企画のなかにあるんです。

中山:クラシック演奏の「研究職」という言葉にはしっくりきました。第1回の時はどうコンタクトを取るのか、絵の具の質感をどうするとかいろいろ考えましたが、でもトーン、リズム、コントラストやコンポジションなど、美術用語と音楽用語は同じだったりする。視覚と聴覚の垣根を一旦取ってみて、松田さんの音楽からアウトプットされたものを私が拾い出して色彩として出し、それを感じた子供たちの集中力が私たちに返ってきて……という変化の循環を、みんなで共有する経験ができている。ジャンルは関係なしにコラボレーションを楽しんでいます。

松田:いろいろな要素が倍増していくんですよね。単に“×2”ではなく、どんどん増えて連鎖の玉手箱のように発展していく。

インタビュー中の様子

――今後のご予定は。

松田:この活動をしていく中で、ある幼稚園の園長先生から、「このメンバーでうちの幼稚園で演奏してほしい」と言われたんです。またいろんなアートとのコラボにもトライして、いろんなバージョンを提供していきたいです。第4回も今、いろいろ考えているところです。

中山:『OTOART』のプロジェクトは松田さんを中心に、いろいろなアートとコラボレーションしながら、ひとつひとつ研究検証していくプロジェクトなので、私は3回参加させてもらって良かったです。一緒にやっていく中ですごく勇気をもらえました。

松田:私も本当に楽しかった。本当にいろんな新しいことを得させていただきました。

――コンサートの最後に「親御さんも自信を持ってコンサートデビューを」という言葉が印象的でした。

松田:ステージを身近に感じてほしいんです。やはりクラシックは敷居が高く感じられてしまう。今日来たお客様も、昨日の夜まで不安がっていたそうなんです。「もし子供が騒いじゃったらどうしよう」とか、「子連れでヴァイオリンの曲なんて聴けるんだろうか」とか。でも子供たちはちゃんと聴いていた。親御さんが自信を持ってくれたのかなと。お母さんたちが緊張すると子供も緊張しちゃうし、逆に親がリラックスしていると子供もリラックスする。お母さんたちは曲を聴きながら、絶対我が子の顔を見ていたと思います。「この子こんな聴き方するんだ」と。このコンサートは子連れで来やすいですし、ここで慣れていただいて、次はコンサートデビューをと(笑)。

――未来の観客ですね。本日はありがとうございました。

松田理奈、中山晃子

取材・文=西原朋未 撮影=山本れお

サンデー・ブランチ・クラシック情報
12月24日
鈴木舞/ヴァイオリン&加藤大樹/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

1月8日
樋口達哉/テノール
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円


1月14日
文代fu-mi-yo/声楽家
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

1月28日
實川風/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?