蜷川実花with EiM、京都・北野天満宮で『時をこえ、華ひらく庭』開幕――梅苑の季節を体感する異世界
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『KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 -時をこえ、華ひらく庭-』 撮影=浜村晴奈
KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 -時をこえ、華ひらく庭- 2026.2.1(SUN)~5.24(SUN)京都・北野天満宮
梅の名所・北野天満宮を舞台に、アーティストの蜷川実花with EiMが手掛ける『KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 -時をこえ、華ひらく庭-』が5月24日(日)まで開催されている。アート&カルチャーイベントとして2016年にスタート。同フェスティバルは毎年、多彩な文化プログラムを展開し、2026年に10周年を迎えるにあたり、蜷川実花と『大阪・関西万博』でテーマ事業プロデューサーを務めた宮田裕章をはじめ、各分野のスペシャリストが集るクリエイティブチームEiMが参加することとなった。
会場となる京都市上京区の北野天満宮は947年に創建。全国に約1万2000社ある天満宮の総本社で、学問の神様・菅原道真を祀った、京都を代表する神社のひとつだ。桃山文化の象徴でもある豪華絢爛な御本殿は豊臣秀頼が造営したもので、国宝にも指定されている。春には道真が愛した梅が約1,500本・50種が咲き誇り、秋にはもみじ苑で紅葉やライトアップを楽しめるなど、歴史と建築、自然の美を堪能できるスポットとしても人気を集めている。
■季節の移ろいが体感できる「光と花の庭」
入口の奥に見える「光と花の庭」
そんな由緒ある北野天満宮の象徴でもある梅苑「花の庭」に入ると、1つ目の作品「光と花の庭」が目の前に広がる。美しい梅が咲き誇るなか、蜷川実花自身が手作りしたパーツを用いた約1,200本ものクリスタルが、白・赤・ピンクの梅の花と共演する大規模インスタレーション作品だ。自然光や天候、風によって瞬間ごとに表情が変わり、梅の開花状況によっても作品の印象が大きく変化する“季節の移ろい”を体感できる仕掛けとなっている。
梅とのコラボレーションが楽しめる
取材日は梅の開花は二分咲き程度だったが、蕾が芽吹く前の静かな美しさを楽しむことができた。夜には梅苑がライトアップされ、クリスタルが星空のように煌めき、より一層幻想的な空間が広がっていた。満開の頃や散り際、昼~夕暮れ、夜と、訪れるたびに異なる体験ができるため、ぜひ何度でも足を運んでみてほしい。
■命の循環を表現した「残照」
命の循環を表現する「残照」
もうひとつのインスタレーション作品「残照」は、梅苑から少し歩いた先にある史跡御土居の茶室「梅交軒」で展開。椿や桜など鮮やかに咲く花と、色褪せて枯れた花を組み合わせ、命の儚さや循環を表現している。こちらも訪れる時間や視点によって異なる表情を見せる。どちらの作品も撮影が可能だが、クリスタルや梅の花、造花に手を触れるのは禁止されているので注意したい。
どこもかしこも写真映えするアート空間
■歴史的建造物とグッズが共演、初のイマーシブ公演も
豊富なオリジナルグッズ
今回の会場内特設グッズショップでは、会場でしか手に入らないオリジナルアイテムが販売されている。手ぬぐいや生八つ橋など京都のメーカーとコラボした商品のほか、蜷川が撮影した北野天満宮の梅の写真がデザインされたオリジナルTシャツやポストカードなども展開。蜷川の世界観を存分に楽しめるラインアップとなっている。
3月20日(金・祝)からはイマーシブ公演『花宵の大茶会』も上演される。約400年前に豊臣秀吉が境内で開催した“一日限りの伝説の茶会”北野大茶湯を“幻の二日目”として現代に蘇らせるもの。来場者は特別な宴に招かれた客人となり、日本のイマーシブシアターをけん引してきたダンスカンパニーDAZZLEと蜷川実花with EiMが生み出す声なき物語を体感する。舞台と客席の境界線はなく、驚くほど近い距離で美しいダンスを堪能でき、世界観に没入できる。
ダンスカンパニー・DAZZLE主宰の長谷川達也による一夜限りの「奉納の舞」
内覧会では一足先に、DAZZLE主宰の長谷川達也による一夜限りの「奉納の舞」が披露された。クリスタルが輝く幻想的な空間のなかでの舞は圧巻。公演は会場を風月殿に移し、約60分間、歩きまわりながらイマーシブ公演を体験する。公演
■“華”と“わびさび”を合わせた美意識空間
左から、松井孝治京都市長、橘重十九北野天満宮宮司、蜷川実花、宮田裕章、西脇隆俊京都府知事
内覧会と同日に行われたメディア・関係者向け発表会には、蜷川と宮田が登壇。蜷川は「北野天満宮の梅苑はとても素晴らしくて、以前から何度も足を運んで写真を撮りに来ていた場所」とつながりを明かし、宮田は「千年を超える歴史の中で、様々な文化の中心地でありながら新しいものを生み続けてきた北野天満宮の歩みや敬意を忘れずに、今回のアートインスタレーションとイマーシブ公演を計画した」と語る。
クリスタルのアートは、道真が11歳の時に詠んだ「月夜見梅花」にある、梅の花を輝く星になぞらえた「梅花似照星」に着想を得たもの。またイマーシブ公演は晩年の歌「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と、この地の歴史と共鳴する要素を取り入れている。さらに「『時をこえ、華ひらく庭』というタイトルには、伝説の茶会・北野大茶湯を、現代の私たちが再解釈し、“華”と“わびさび”を合わせた美意識の中で空間を作りたいという思いを込めている」と続けた。
可憐に咲く梅の花
「光と花の庭」について蜷川は「約1,200本のクリスタルの手作りパーツを用いていて、一本一本の並び順までデザインし、思いを込めて制作した。屋外の自然光のなかで展示するのは、私たちの作品としても珍しく、刻一刻と変わる空の色や光を受けて変化するクリスタルの表情を楽しんでほしい」と語る。梅のつぼみが花開いていく変化も作品のテーマのひとつで、自然とアートの融合を体感できる展示となっている。
夕日に照らされたクリスタル
夜に輝くクリスタル
クリスタル作品は、宮田が『大阪・関西万博』で手掛けたシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」との共通点も感じられる。宮田は「今回は蜷川実花 with EiMの作品として、より蜷川さんの手作りの部分が色濃く出ています。自然をリスペクトしながら展示をすることで、“心の揺らぎ”と“自然の揺らぎ”が響き合う空間になっています」と語り、「“命の輝き”が時間や天気、季節の変化とともに楽しんでいただける作品になっている。長い開催期間の中で、多くの人に楽しんでもらえるはず」と期待を寄せた。
夜は妖しい表情を見せる「残照」
さらに「残照」について、蜷川は「これまでのシリーズのなかでも最高傑作になったはず。咲き誇る花、枯れた花で“生と死”や時間の経過を表現。造花はあえて枯れた状態にエイジング加工したもの。咲き誇りながら枯れて落ちる花、枯れてなお圧倒的に美しい花。枯れたり朽ちることは必ずしもネガティブなことではない。花も人の人生も同じ。その美しさにも注目してほしい」と述べた。
ダンスカンパニー・DAZZLE主宰の長谷川達也による一夜限りの「奉納の舞」
3月からのイマーシブ公演『花宵の大茶会』は、蜷川にとって「30年を超えるキャリアのなかでも、イマーシブ公演は初めての挑戦」だという。蜷川は「“どんなるんだろう?”と、ワクワクするばかり。これまでにない新しくおもしろい公演になると確信しています」と語り、宮田も「北野天満宮で公演を行う意義を体感してほしい」と期待を寄せた。
取材・文=黒田奈保子 撮影=浜村晴奈
イベント情報
企画/制作/運営:株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ
協賛:株式会社JTB/株式会社イープラス
後援:京都府/公益社団法人京都府観光連盟/公益社団法人京都市観光協会/
公益財団法人京都伝統伎芸振興財団(おおきに財団)