美術館を擬人化してみた~「東京都庭園美術館」編~【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.11 とに~(アートテラー)

コラム
アート
2017.12.19

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美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、アートを発信する「アートテラー」のとに~さんによる『【美男化プロジェクト】Mr.ミュージアム』第3弾です。


軍艦、刀剣、城、お米……さまざまなモノが擬人化されている昨今。本企画は、日本全国の美術館・ミュージアムを擬人化していく『【美男化プロジェクト】Mr.ミュージアム』です。毎回イケメン男子の姿となったミュージアムたちが、自己紹介をしながらその館の魅力や展示をお伝えします。今回は「東京都庭園美術館」編です。

 
イラスト=yukimone

イラスト=yukimone

皆さま、こんにちは。

私は、東京都庭園美術館です。

白金台の地で、かれこれ35年近く、美術館としての日々を過ごしております。

東京都庭園美術館本館  正面外観

東京都庭園美術館本館  正面外観

私のことをお話しさせて頂くからには、やはり本館の建物について避けて通るわけにはいきませんね。

日本国内にはたくさんの美術館がありますが、おそらく私ほど、建物の内装を褒めて頂ける美術館は他にないでしょう。

もちろん褒めて頂けるのは、大変喜ばしいのですが、ごくまれに、「展示されている美術品が邪魔で、建物に集中できない!」というご意見が寄せられることも。

おそらく、そういうご意見が寄せられる美術館も、私をおいて他にないでしょう。フッ……。

東京都庭園美術館本館大客室

東京都庭園美術館本館大客室

東京都庭園美術館本館大食堂

東京都庭園美術館本館大食堂

もはや展示されている美術品以上に、美術品ともいえる本館の建物。

その歴史は古く、1933年(昭和8年)に皇族である朝香宮鳩彦殿下ご夫妻の邸宅として竣工したと聞いております。

若き日にフランスに留学されていた殿下は、当時のフランスで全盛期だったアール・デコ様式に魅せられたそうで、自邸を建設する際に、わざわざフランス人の芸術家に主要な部屋の設計を依頼したのだそうですよ。

そのため、建物のいたるところに、ルネ・ラリックら当時気鋭であったフランスのデザイナーによるアール・デコの装飾が施されているのです。

それと、主に2階部分、朝香宮家のプライベートスペースは、宮内省内匠寮の技師たちによって設計されています。

日本古来の高度な職人技による素晴らしいアール・デコ装飾も、見ものですよ。

東京都庭園美術館本館 大客室シャンデリア"ブカレスト"ルネ・ラリック作

東京都庭園美術館本館 大客室シャンデリア"ブカレスト"ルネ・ラリック作

東京都庭園美術館本館 二階廊下

東京都庭園美術館本館 二階廊下

さて、それだけ贅をこらした建物ですから、1947年に朝香宮家が退去したあとも、あの吉田茂首相の公邸や国賓公賓来日の際の迎賓館などとして、使用され続けました。

その後、なんだかんだあって、東京都のものとなり、美術館として一般公開されることが決まります。

それが、1983年のこと。竣工から実に50年の月日が流れていたのですね。

……と、今でこそ日本を代表するアール・デコ建築として、自他ともに認める本館の建物なわけですが。

実はお恥ずかしながら、開館してしばらく、私自身は、その魅力に気づいていませんでした。

何せ、築50年の建物ですからね。むしろ、ちょっとコンプレックスに感じていたくらいでして。

私の名前が「東京都宮廷美術館」でもなく「東京都アール・デコ美術館」でもなく、「東京都庭園美術館」である理由も、そのあたりにあります。開館当時は、旧朝香宮邸ではなく、完全に庭園のほうを推していました。

もうひとつカミングアウトしますと、当時の私は、他の美術館さんのようなホワイトキューブの展示空間に少しでも近づこうと、いろいろと内装をいじってしまいました。

そうそう、アール・デコの壁紙を剥ぎ取ってしまった部屋もありましたっけ。若気の至りというヤツでしょうかね(苦笑)。

ちなみに、その部屋の壁紙ですが、2014年のリニューアルオープンの際に、ようやくオリジナルに近いものに復元させることができました。いやはや、若き日の失敗を取り戻すのに、だいぶ時間がかかってしまいましたね。フッ……。

皆さまは、くれぐれも私のような失敗はしませぬように……って、なんだか『しくじり先生』みたくなってしまいました。

東京都庭園美術館 本館 殿下居間

東京都庭園美術館 本館 殿下居間

そういう過去があったものですから、今の私は、なるべくかつての姿、かつての空気感に近づき、その状態をこの先ずっと保ち続けたいと考えています。それは建物に限らず、庭園も。

何といっても、東京都“庭園”美術館ですからね。

今年からは、日本庭園内にある朝香宮鳩彦殿下自らが命名した茶室「光華」が一部見学可能になっています。庭園にお立ち寄りの際には、そちらも是非ご覧頂けましたら幸いです。

東京都庭園美術館庭園

東京都庭園美術館庭園

東京都庭園美術館 茶室 光華

東京都庭園美術館 茶室 光華

そして、旧朝香宮邸の歴史を守り伝える一方で、パフォーマンスやワークショップを開催してみたり、現代アートの展覧会を開催してみたり、常に新しい風を吹かせていけたらとも考えています。

今ちょうど開催中の展覧会『装飾は流転する』では、まさにそんな新しい「私」の姿を見てもらえるでしょう。

新しいことにチャレンジするのは大事ですからね。

というわけで、Instagramもはじめてみました。良かったら、是非フォローしてくださいね。

https://www.instagram.com/teienartmuseum/
 

イベント情報
装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法

 会期:2017年11月18日(土)~2018年2月25日(日) 86日間
 会場:東京都庭園美術館
 休館日:第2・第4水曜日および年末年始(2017年12月27日(水)~2018年1月4日(木))
 開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで。)
      11月23日~25日は20:00まで開館
 公式サイト:http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/171118-180225_decoration.html


 
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