話題騒然の英国ロイヤルバレエ団『不思議の国のアリス』アンコール上映が1月5日より一週間限定で、各日の上映時刻も発表

2018.1.5
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英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson


バレエ初心者にして「バレエとは、こんなにも面白いものなのか」と興奮を抑えられなくなり、それどころかバレエ通さえも「こんなにも豊かで楽しいバレエが可能なのか」と驚愕してしまうバレエ作品。それがバレエ「不思議の国のアリス」(Alice's Adventures in Wonderland)なのである。あくまでバレエの伝統をしっかりと踏まえながらも、もはやバレエを超えた極上のエンターテインメントの域に達している。そこでは、舞踊はもとより、音楽、美術、文学、演劇、映像などすべての表現要素が最新形で結晶化されている。これぞ、21世紀の大英帝国が生み出した舞台芸術の魔法と呼んでも差し支えないだろう。


そんなバレエ『不思議の国のアリス』が「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」として日本全国の映画館で上映されたのが、ついこの間、2017年12月のことだった。忽ち評判を呼び、TOHOシネマズ日本橋では連日が完売する盛況ぶりだった。観ることのできなかった人が続出、一度観た人からも「もう一度観たい」という声が多数あがった。そこで、2018年1月5日(金)から11日(木)までの一週間限定で、TOHOシネマズ日本橋にて異例のアンコール上映が行われることとなったのだ。そして、このほど、その上映時間が次の通り、ようやく明らかとなった。

1/5(金)・9(火)~11(木) 19:00
1/6(土) 12:45
1/7(日)・8(月) 11:30

予約は、鑑賞日の2日前より劇場サイトおよび劇場窓口にて予約が可能だ。詳しくは、こちら

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」で上映されるバレエ『不思議の国のアリス』は、2017年9月~10月にロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスにおいて、英国ロイヤル・バレエ団により上演された舞台である。英国等では2017年10月23日に映画館で生ライブ中継された。

本作品は2011年に英国ロイヤル・バレエ団により初演、当初2幕(現在、DVDやブルーレイで購入できるヴァージョン)だったが、2012年までにアリスとハートのジャックのパドゥドゥーが追加されて現在の3幕に改訂された。同バレエは、2013年に英国ロイヤル・バレエ団の来日公演でも上演され、こちらも完売により追加公演が打たれるほどの人気ぶりだった。

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

さて、このバレエ『不思議の国のアリス』、原作は言わずもがなの、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)。英国人数学者チャールズ・ドジソンが前述のペンネームで1865年に発表した児童小説であり、世界ナンセンス文学史上の金字塔である。このファンタジーの物語の骨格はそのままに、言語遊戯の要素を抜いて、現実と夢そして時空を超えた新たな恋物語として台本を再構築したのが、英国人劇作家のニコラス・ライト(Nicholas Wright)だった。そして、その世界を舞踊的身体表現によって巧みに現前化してみせた天才振付家こそ、クリストファー・ウィールドン(Christopher Wheeldon)なのだった。しかも彼はこの作品において、バレエをベースとしつつも、コンテンポラリーダンスやタップダンス、さらにはパペットやプロジェクションマッピングなどの要素も取り入れて、徹底的に現代的なエンターテインメントに仕上げてみせたのだ。

ウィールドンは、1973年生まれ現在44歳の英国人振付家である。1991年、英国ロイヤル・バレエ団にダンサーとして入団(同年ローザンヌ国際バレエ・コンクールで金賞を受賞)、1993年にニューヨーク・シティ・バレエに移籍後、1997年より振付を手掛けるようになる。2007年にバレエ・カンパニー「モルフォーセス」を設立し、数々の意欲作を発表。また、サンフランシスコバレエ団、ボリショイバレエ団、そして英国ロイヤル・バレエ団などから振付を委嘱されるようになった。元々の出身母体である英国ロイヤル・バレエでは2011年にバレエ『不思議の国のアリス』、2014年にバレエ『冬物語』を発表した。

その一方で、ウィールドンはミュージカルの分野でも注目すべき仕事を行っている。2014年にガーシュインのミュージカル『パリのアメリカ人』を演出&振付、パリで初演後、2015年ブロードウェイに進出、トニー賞ミュージカル部門で最優秀振付賞を受賞した。なお、同作品ではバレエ『不思議の国のアリス』のスタッフでもあったナターシャ・カッツ、クリストファー・オースティン、ボブ・クロウリーもそれぞれトニー賞の最優秀照明賞、最優秀編曲賞、最優秀舞台美術賞を受賞している。

ときに、バレエ『不思議の国のアリス』の魅力的要素としてまず特筆したくなるのが、非常に美しく、それでいて機知に富む音楽だ。これを手掛けたのが、ジョビー・タルボット(Joby Talbot)。1971年生まれ現在46歳の英国人作曲家。今回の『不思議の国のアリス』ではオーケストラの約三分の一を打楽器群が埋め尽くすという大胆な楽器編成で、スピード感や躍動感が聴く者の心を躍らせる。ちなみに、タルボットは、日本でもヒットしたアニメ映画『『SING/シング』(2017年)の音楽をはじめ、『銀河ヒッチハイク・ガイド』、『ペネロピ、『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日』、『リトル・ランボーズ』、『バーク アンド ヘア』など数多くの映画音楽を手掛けてきた。また、バレエの分野では、ウィールドンとの仕事(『不思議の国のアリス』『冬物語』等)以外に、英国ロイヤル・バレエ団振付家ウェイン・マクレガー(Wayne McGregor)との仕事も有名である。たとえば、英国ロイヤル・バレエ団の『Chroma』(2005年)や、パリ・オペラ座バレエのために作られた『Genus』 (2007年) などがそれにあたる。そうしたタルボットだけに、身体の動きや情景に連れ添う音楽を作ることはお手の物といった趣が感じられる。

他方、目を見張らせる舞台美術と衣裳を担当したのは、名匠ボブ・クロウリー。1952年アイルランド生まれの天才舞台美術家である。トニー賞ノミネーションの常連であり、実際の最優秀舞台美術賞受賞作も『アイーダ』『ヒストリー・ボーイズ』『コースト・オブ・ユートピア』『ワンス』、そして今年日本で上演される『メリー・ポピンズ』などミュージカル、ストレートプレイを問わず、枚挙にいとまがない。それにしても『アリス』の原作をよりポップに炸裂させた美術と衣裳は、強烈無比である。アリスのすみれ色の衣裳、ハートの女王、チェシャ猫、芋虫、もみの木……列挙していたらキリがないほど、ヴィジュアル・イメージが豊かすぎる洪水である。数あるボブ・クロウリーの仕事の中でも『アリス』こそは最高傑作に挙げられるべきものと断言できる。


これら完全無欠のスタッフワークと共に、もちろん声を大にして語らずにはいられないのが、英国ロイヤル・バレエ団の出演ダンサーたちである。初演でもアリス役を演じたローレン・カスバートソンのなんという、端正で可愛らしく優雅にして清々しくお茶目な演技。そして、マジシャン/マッドハッターを演じるスティーヴン・マックレーの超絶的タップには打ちのめされそうになる。圧巻はハートの女王のラウラ・モレーラ。あるバレエのパロディシーンでは、凄まじい顔芸と共に高度な踊りをスラプスティックにこなす。その他、ダンサーの魅力点を語り始めたら、これまた止まらなくなってしまうので、気になる向きには観てのお楽しみとしておこう。なお、こちらから、キャスト表がダウンロードできるので、観に行く際には参考にしていただきたい。

<ストーリー>
ある晴れた日の午後、家族でガーデンパーティに参加していた少女アリス。庭師の青年ジャックにタルトをあげたのに、アリスの母は彼が盗んだと誤解して騒動に。そんな中、両親の友人ルイス・キャロルが突然白いウサギに変身。彼を追いかけてウサギの穴に入ったアリスが迷い込んだ不思議な国で出会ったのは、魅力的なハートのジャック。チャーミングな彼に心を奪われるアリスだったが、タルトを盗んだと彼を追うハートの女王、帽子屋のマッドハッター、おかしな侯爵夫人らが入り乱れて大混乱。


「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」の上映では、開演前後や休憩後に入る解説や関係者インタビューも気が利いている。英国演劇界きっての名優サイモン・ラッセル・ビール(ナショナルシアターライブ『リア王』などでおなじみ!)も登場し、初演で侯爵夫人を演じた思い出を語るのは演劇ファン必見であろう。

なお、バレエ『不思議の国のアリス』は、今年2018年11月に新国立劇場オペラパレスにおける「2018/2019シーズン開幕バレエ公演」として、新国立劇場バレエ団により上演されることがアナウンスされている。 アリス役には、小野絢子と米沢 唯が、そして、ハートのジャック役には福岡雄大と渡邊峻郁が、振付のクリストファー・ウィールドンによってキャスティングされた。これは、今年の日本のバレエ界において最も注目される公演となるだろう。

そのPVも12月にyoutubeにアップされたので、ここに改めて紹介する。

 
イベント情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン
『不思議の国のアリス』アンコール上映

 
■振付:クリストファー・ウィールドン
■音楽:ジョビー・タルボット
■指揮:クン・ケセルス
■出演:
ローレン・カスバートソン(アリス)
フェデリコ・ボネッリ (ハートのジャック)
ジェームズ・ヘイ(ルイス・キャロル/白ウサギ)
*エドワード・ワトソンから変更
ラウラ・モレーラ(ママ/ハートの女王)
*ゼナイダ・ヤノウスキーから変更
スティーヴン・マックレー(マジシャン/マッドハッター)
■上映劇場:TOHOシネマズ日本橋
■上映日程:2018年1月5日(金)~1月11日(木)
1/5(金)・9(火)~11(木) 19:00
1/6(土) 12:45
1/7(日)・8(月) 11:30
■<上映時間 計:3時間13分>
解説+インタビュー(18分)
第一幕(48分)
休憩(10分)
解説+インタビュー(10分)
第二幕(29分)
休憩(10分)
解説+インタビュー(15分)
第三幕(53分)

■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
■劇場サイト:https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do

新国立劇場2018/2019シーズン開幕バレエ公演
『不思議の国のアリス』〔新制作〕

 
■上演日程:2018年11月
■上演回数:6回(予定)
■会場:新国立劇場オペラパレス
■出演:新国立劇場バレエ団
■振付:クリストファー・ウィールドン
■台本:ニコラス・ライト
■音楽:ジョビー・タルボット
■美術・衣裳:ボブ・クロウリー
■照明:ナターシャ・カッツ
■映像:ジョン・ドリスコール、ジェンマ・キャリントン
■パペット:トビー・オリー
■マジック・コンサルタント:ポール・キエーヴ
■共同制作:オーストラリア・バレエ
■公式サイト:http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_010527.html