新鋭から常連まで大集結 恒例カウントダウンイベント『GT2018』全アクトのレポと写真、セトリを大公開
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KEYTALK
Livemasters Inc. countdown "GT2018"
2017.12.31~2018.1.1 Zepp DiverCity(TOKYO)
2017年12月31日、Livemasters Inc.主催のカウントダウン・ライブイベント『GT2018』が開催された。このZepp DiverCity(TOKYO)で同イベントが開催されるのは、今回で6年連続となり、すっかり年末の風物詩として定着しつつあるが、今年のキーワードは“次世代の台頭”だったように思う。
そのことをよく象徴していたのが、最初の4組によるアクトだ。2018年が戌年であることにかけているのかいないのか、この日のトップバッターはSaucy Dog。ライブパフォーマンスが最終的な決め手となり、2016年年末に『MASH FIGHT! vol.5』のグランプリを受賞した彼らだが、2017年は全国各地、様々な会場で演奏を重ねてきた。石原慎也(Vo/Gt)はそんな一年を「失敗をたくさんした年」と振り返っていたが、3人それぞれの良さをまっすぐ育て、奇を衒わず“良い曲をクリアに届ける”方向に突き進んでいっていることに、このバンドの芯の強さが感じられる。特に「煙」、「Wake」、そして「僕たちにとって一番大切な曲」と語られた「いつか」を連続で演奏した後半戦は、食い入るようにステージを見つめるオーディエンスの姿も。2018年におけるさらなる飛躍を感じ取った人も多かったのでは。
SHE'S
2組目に登場したのはSHE’S。軽妙な関西弁でトークするMCも健在だったが、『GT』初登場だったということもあり、また、この日は井上竜馬(Vo)憧れの人物・細美武士との共演ということもあり、本人たちは緊張していたとのこと。しかし、壮大なサウンドスケープを描く「Un-science」による爽快な幕開けから、オーディエンスの心をしっかりと掴んでみせた。その後は、「Freedom」の疾走感でグッとアクセルを踏み、「White」の清廉な旋律で場の空気を引き締めると、「Flare」で再び燃え――と充実の一年を象徴するようにバラエティに富んだアプローチに臨む4人。音を直接オーディエンスにぶつけるのではなく、会場全体をしっかりと“鳴らす”ような、より大きな会場を見据えた響かせ方をしていた点からも、バンドの前のめりな意思を読み取ることができた。
SHE'S
2016年の段階ではどのフェスで見かけても初々しさがあり、肩に力が入っている印象もあったサイダーガールだが、この日のステージはここ一年での成長を感じさせてくれるものだった。王道のギターロックを邁進する姿勢はそのままに、16ビートで駆け抜ける「メッセンジャー」、メジャーデビュー曲「エバーグリーン」、サンバのリズムを織り交ぜたダンスナンバー「メランコリー」と、セットリストはグッと彩り豊かに。全体的にサウンドの幅が広がっていたが、その変化に貢献していたのが主に今年リリースの楽曲だった点に、今の彼らが抱く自信のほどが表れていたように思う。オーディエンスを煽るフジムラ(Ba)の熱血っぷりに対してYurin(Vo/Gt)がサラッと「すごくクサいこと言うよね」なんてツッコむくだり(そしてその横で微笑んでいるのが知(Gt)である)など、それぞれのキャラクターが自然に表れていたMCの温度感も良かった。
サイダーガールと昨年3月にツアーをまわっていたHalo at 四畳半は、四畳半ならぬ午後4時半に演奏開始。3年連続出演となる彼らは、この『GT』は「次の一年、どんなバンドになっていくのかを決める場所」だと意気込んでいたが、その言葉に遜色なし。泣きのギターソロと男気溢れるボーカルが躍動すれば、上物を突き上げるようにベースが唸り、ドラムのビートを合図にアンサンブルが一層白熱する。1曲目からして気合いが漲っていたが、その熱は最後まで冷めず。元々絵面的に分かりやすい“盛り上がり”の景色を生み出すタイプの音楽をやっているバンドではないが、熱心にステージを追うオーディエンスの姿を見る限り、彼らなりのやり方は広く深く伝わりつつあるようだ。渡井翔汰(Vo/Gt)から「何年かかるか分からないけど、絶対あんたを、ワンマンライブでこの場所に連れてくる!」と宣言していたが、いや、そう遠くない未来に叶うのでは。
TOTALFATは初っ端から「夏のトカゲ」を投下、あっという間にダイバー続出。ここまでの4組によって“歌モノにじっくりと聴き入る”という流れが出来上がりつつあったが、そんなフロアの空気を痛快にぶち破ったのが『GT』常連組のTOTALFATだった。最新アルバム『FAT』収録曲で現在のモードを提示しつつ、ライブ定番曲も網羅、さらに戌年に因んで「Revenge of Underdogs」も演奏。そんななか、Jose(Vo/Gt)は「悲しかったこと、悔しかったこと、イライラしたこと、全部思い出せ! 俺のシャウトでぶっ飛ばしてやる!」と叫び、Shun(Vo/Ba)はまだ見ぬ同志をライブハウスに連れてくるために2018年は活動していきたいのだ、と語っていた。ハコの中で吐き出される雑多な感情を一手に引き受け、雑種のパーティーチューンでかっ飛ばす。懐の深い佇まいに、彼らがライブバンドと呼ばれる所以を改めて実感させられた。
地道なライブ活動が実り、昨年12月には渋谷CLUB QUATTROをソールドアウトさせるまでになったSIX LOUNGE。とはいえ『GT』初登場だし、この規模の会場でのライブ経験はないようだし、ましてやTOTALFATが盛り上げ倒した直後。普通ならば怯んでしまう条件が揃っていたわけだが、「いつも通り、俺らは好きなライブハウスで思いっきり鳴らすつもりで来てます!」というヤマグチユウモリ(Gt/Vo)の発言通り、彼らは愚直なロックンロールを堂々と鳴らしてみせた。特に「プラマイゼロ」以降の展開は圧巻。膝から崩れ落ちるようにして掻き鳴らすイワオリク(Ba)も、繰り出す音全てが弾丸のように鋭いナガマツシンタロウ(Dr)も、凄まじい声量で唄い叫ぶヤマグチも、文字通り全身全霊の状態でラストシーンを迎える。何者をも恐れず、ただ己に勝つために、自身の信じた音楽を鳴らすのみ。毅然とした姿の若者たちを観て、目の覚めるような思いをした人も多かったことだろう。
イベントも折り返し地点に達したところでBIGMAMAが登場。前半戦は、緊迫感のある曲をMCなしで連投。例えば「荒狂曲“シンセカイ”」ではアウトロを伸ばして軽いセッションを繰り広げていたり、「Flameout」はギターをフィーチャーしたアレンジになっていたりと、ロックバンドとしての肉体性で魅せる場面が多く、ストイックな空気が続く。後半戦では、金井政人(Vo/Gt)が「大みそかにここを選んだあなたに、GTに」と伝えてから始めた「SPECIALS」、年末にふさわしい「No.9」などを披露。全体的に言葉少なではあったが、この並びは明確に聴き手に向けられている印象もあり、昨年10月の武道館公演でも語られた“聴き手を不幸から遠ざける”という意思は十分読み取ることができた。「“いい年になりますように”じゃなくて、自分の力でいい年にしていきましょう」(金井)と残してステージを去った彼らは、さて、今年どんな姿を見せてくれるのだろうか。
「去年も出させていただきました。ただハッキリ言って、俺の人生の中で一番悔しい日でした」と寺口 宣明(Gt/Vo)が告白していたIvy to Fraudulent Gameは、華麗なるリベンジを果たしてみせた。1曲目は、緻密に練られたバンドアンサンブルと同期やサンプリングパッドによる機械音との絡み合いが絶妙な「水泡」。その後、本能のままにフロアを煽る寺口を筆頭にドライブしていく「劣等」、分厚い轟音で場内の空気を塗りつぶしてみせた「E.G.B.A.」を連続で演奏し、音源とはまた異なる、ライブならではのアグレッシブな一面を印象付けていく。曲間MCにおけるメンバー同士のフランクな語り口などもワンマンライブと変わりない様子。そうして自分たちのペースでステージに臨むことができていたこと、さらに「革命」などの昨年リリースした楽曲群がステージングの幅を広げる役割を担っていたことが勝因と考えられるだろう。その自信を手に、2018年、さらに飛躍する予感。
これまでは主にクライマックスに披露されていた「オドループ」を1曲目に配置、それ以外はほとんど2017年下半期にリリースされた曲、という構成のセットリストからも自信のほどが伺えたフレデリック。「2017年、全てを出しきりませんか?」と三原健司(Vo/Gt)が投げかけたあと、MCを挟まずに全7曲を連続で演奏した。昨年夏のフェスでもこういった構成でステージに臨んでいた彼らだが、この“ストイックだけど楽しい”ような空気感がバンドに合っているのか、ここ数ヶ月で彼らのライブは飛躍的に洗練されていっている。例えば、全員一斉に刻むリズムが徐々に変容していったり、ドラムの一発で空気を一転させたり……と曲同士の繋ぎ方も多彩で、おそらくその引き出しの多さがオーディエンスに新鮮な感動をもたらすのだろう。曲数を重ねるごとにフロアのテンションがどんどん上がっていったのも印象的だった。
2年ぶりにカウントダウンアクトを務めるのはKEYTALK。音出しを終えるとメンバー全員ステージに残ったままライブ本編がスタートだ。「バミューダアンドロメダ」「UNITY」「Love me」とさりげなく初期曲も織り交ぜた選曲でオーディエンスを喜ばせつつ、3曲演奏しても10分を切るという相変わらずの疾走感である。そして中盤には、1月24日リリースの新曲「ロトカ・ヴォルテラ」、そしてメジャーデビュー曲「コースター」と、ツインボーカルの掛け合いが持ち味である2曲を連投。「MONSTER DANCE」で問答無用にオーディエンスを踊らせ、一年間を振り返るMCをしていたところでカウントダウンコールが巻き起こり、フロアからはクラッカーが、そしてステージからはテープキャノンが一斉に発射された。そこでスタートした2018年最初の一曲は「Summer Venus」。開放的なサウンドとともにフロアは再び沸騰し、またステージからはアルカラ・稲村、BIGMAMA・東出、TOTALFAT・Kubotyらが肩を組みながらダイブしていき――と何ともカオスな空間が出来上がっていたところまで含めて、KEYTALKらしく愉快な年越しだった。
また、TOTALFATからIvy to Fraudulent Gameまでは、『GT』常連組と期待の新鋭とが交互に登場する流れでバンドが繋がっていったが、その間にあたる世代のKEYTALKやフレデリックが花形の時間帯を担当していたことにも触れておきたい。普段ライブを行っている会場よりも遥かに大きなZeppを鳴らすことから始まり、自分たちなりの魅せ方を見つけ、磨き、やがて“鉄板”と呼ばれるような頼もしい存在に。そういう“縦”の流れが感じられたのが今年の『GT』における最大のポイントだったのかもしれない。
そして鉄板と言えば、この二人の酔いどれアコースティックセッション。年明け直後の時間帯に登場することが恒例になっているのだが、そのことを細美は不服に思っているらしく、
細美「俺はGTに言いたい、カウントダウンをやらせてくれと」
ホリエ「チルタイムなんだよ」
細美「じゃあチルにさせないように、レーザー入れて」
という流れに。二人の頭上に虹がかかり、場内が異様な雰囲気に包まれる中、長渕剛「乾杯」(モノマネ込み)で盃を交わしていよいよスタートだ。ここでホリエが一旦退場。そのあとはthe HIATUSやELLEGARDENの楽曲を細美一人で、そしてMONOEYESの楽曲をスコット・マーフィーとの二人編成で演奏。「Melodic Storm」でホリエ&TOTALFAT・Buntaが合流すると、今度はしばらくホリエソロの時間。
「コーラスが欲しい」というホリエの要望に応じて(というか袖にいた細美に半ば引きずられる形で)スコットが再登場しハモるなどのレアな場面も挟みつつ、ラスト3曲は細美&ホリエコンビで唄い上げ、昨年同様、ゆず「夏色」での「ウォッホー!」コールで締め括った。――と一気に書いてしまったが、特に印象深かったのは、冒頭の日本酒イッキが効いたのか、細美が例年以上に酔いがまわっている様子だったこと(ホリエ曰く「どんどんテンポがまったりしていっている」)。そして、その状態でオーディエンスに対して繰り返し言っていた「今年一年、お前らにとって良い年であってほしい」という言葉。和やかな空気に続々と披露される名曲群、そして何よりもストレートなメッセージ。このコーナーが多くのオーディエンスに愛されている理由はそういうところにあるように思う。
深夜2時をまわり、トリ前の時間帯に登場したcinema staffは、飯田瑞規(Vo/Gt)が「あけましておめでとう、楽しんで!」と挨拶してスタート。その爽やかさとは裏腹に、直後に続いたのは、昨年5月リリースの『熱源』収録の「熱源」、そして「返して」。聴く者の耳に最速で届く切れ味鋭いサウンドと、聴く者を翻弄させてやまない変拍子を用いた展開で以って、早くもオーディエンスを覚醒させた。「西南西の虹」ではゲストとしてアルカラ・稲村太佑(Vo/Gt)が登場。稲村はどうやら歌詞を把握しておらず結局飯田がほとんど唄うというオチだったのだが、両者の声の相性は抜群だったため、もう少し頑張ってほしかったのが正直なところ(笑)。そしてラストは「海について」。『熱源』が原点回帰作だったことを考えれば、インディーズ期の集大成的大作で彼らが年内最後/新年最初のライブを締め括ったことは興味深い。細やかな旋律の隅々にまで4人の情熱は行きわたっていた。
そして大トリを務めるのはアルカラ。アルカラといえば、昨年秋に田原和憲が事実上の脱退。結成15周年にして思わぬ事態に見舞われたものの、各ライブでSSGH(スペシャルサポートギターヒーロー)を迎えて活動中。この日はfolca・為川裕也とともにステージに臨んでいた。ということで、1曲目「夢見る少女でいたい。」から複雑奇天烈な曲展開も、それを難なく鳴らせる腕っぷしも、思いっきり炸裂。そして2曲目に「チクショー」を演奏したかと思えば、「初めての人も絶対知ってる曲をお届けします」というくだりで同曲を3連発(うち1回はcinema staff・辻友貴が乱入)するぶっ飛んだ展開もあり。そして昨年に引き続き、「春の海」をメンバー全員でアカペラしてオーディエンスの初笑いをもかっさらっていく(非常にシュール)。「俺らは前しか見てないから。前しか見てないってことは、前に道があるってことよ!」という稲村の言葉通り、“相変わらず元気にやっている自分たち”の姿を見せることによって、アルカラは3年連続の大役を全うしてみせたのだった。
そしてアンコールの「交差点」はKuboty(不測の事態に陥った際、一番に連絡をくれたのだという)とcinema staff・辻を交えたトリプルギター編成で轟かせ、去り際には稲村が、自身のツアーに駆けつけたLivemasters Inc.・岩下氏からもらったというお茶漬けの素を水無しでイッキ。ハチャメチャではあるが、オーディエンスやバンドメンバー、そして関係者に対する仁義を重んじるこのバンドらしい、素晴らしい締め括りにして、新年の始まりを祝うライブだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=木村康之、佐藤広理、高田梓、安藤みゆ
1. グッバイ
2. ナイトクロージング
3. ロケット
4. マザーロード
5. 煙
6. Wake
7. いつか
1. Un-science
2. Freedom
3. White
4. Flare
5. Over You
6. 遠くまで
7. Curtain Call
1. メッセンジャー
2. エバーグリーン
3. ドラマチック
4. スワロウ
5. アイヴィー
6. メランコリー
7. オーバードライブ
1. ステラ・ノヴァ
2. カイライ旅団と海辺の街
3. クレイマンズ・ロア
4. アメイジア
5. ユーフォリア
6. リバース・デイ
7. モールス
1. 夏のトカゲ
2. スクランブル
3. Delight!!
4. 宴の合図
5. Revenge of Underdogs
6. PARTY PARTY
7. Place to Try
8. DA NA NA
1. 朝焼けプロムナード
2. STARSHIP
3. メリールー
4. ふたりでこのまま
5. プラマイゼロ
6. トラッシュ
7. 俺のロックンロール
8. 僕を撃て
1. 荒狂曲“シンセカイ”
2. Flameout
3. ファビュラ・フィビュラ
4. BLINKSTONEの真実を
5. 最後の一口
6. SPECIALS
7. CRYSTAL CLEAR
8. No.9
9. MUTOPIA
1. 水泡
2. 劣等
3. E.G.B.A.
4. 青写真
5. 革命
6. 故郷
1. オドループ
2. KITAKU BEATS
3. パラレルロール
4. まちがいさがしの国
5. かなしいうれしい
6. たりないeye
7. TOGENKYO
1. バミューダアンドロメダ
2. UNITY
3. Love me
4. Monday Traveller
5. ロトカ・ヴォルテラ
6. コースター
7. MONSTER DANCE
[COUNT DOWN]
8. Summer Venus
9. マスターゴッド
10. MATSURI BAYASHI
1. 乾杯/長渕剛
2. 西門の昧爽/the HIATUS
3. Radio/the HIATUS
4. RUN RUN/MONOEYES
5. Two Little Fishes/MONOEYES
6. Make a Wish/ELLEGARDEN
7. My Instant Song/MONOEYES
8. Melodic Storm/ストレイテナー
9. シーグラス/ストレイテナー
10. REMINDER/ストレイテナー
11. 灯り/ストレイテナー×秦 基博
12. I Don't Want to Miss a Thing/エアロスミス
13. 金星/ELLEGARDEN
14. ROCKSTEADY/ストレイテナー
15. 夏色/ゆず
1. 熱源
2. 返して
3. 希望の残骸
4. Karakuri in the Skywalkers
5. シャドウ
6. 西南西の二次
7. theme of us
8. great escape
9. 海について
1. 夢見る少女でいたい。
2. チクショー
3. チクショー
4. チクショー
5. アブノーマルが足りない
6. 半径30㎝の中を知らない
7. 嘘つきライアー
8. さ・あ・な
9. やいやいゆいな
10. 春の海(アカペラ)
11. キャッチーを科学する
12. やるかやるかやるかだ
[ENCORE]
13. 交差点