ブルガリア国立歌劇場日本公演『カルメン』を指揮、若きマエストロ 原田慶太楼に聞く
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原田慶太楼(撮影:中田智章)
アメリカのシンシナティ交響楽団やアリゾナ・オペラのアソシエイト・コンダクターを務めるなど、コンサートとオペラの両方で活躍する若きマエストロ、原田慶太楼。2017年はブルガリア国立歌劇場にデビューし、新演出の『カルメン』を成功に導いた。そして、今年2018年10月、原田は、ブルガリア国立歌劇場日本公演の『カルメン』の指揮を執る。
ブルガリア国立歌劇『カルメン』 ©Sofia National Opera & Ballet
原田は、1985年、東京生まれ。音楽を学ぶために17歳で単身アメリカに渡った。
「僕は東京生まれの東京育ちですが、幼いときからインターナショナル・スクールに通っていました。インターナショナル・スクールの中学・高校ではミュージカルをやっていて、舞台で歌ったり、オーケストラで演奏したりしました。『ウエスト・サイド・ストーリー』や『サウンド・オブ・ミュージック』などなどです。そこで将来、ミュージカルのピット・ミュージシャンになりたいと思ったのです。サックスから始めて、フルート、クラリネット、バスーン、ホルンなども勉強しました。それで、ピット・ミュージシャンになるにはアメリカで勉強するのがいいだろうということで、高校2年生のときに、アメリカに渡って、ミシガン州の芸術高校に入りました」
原田慶太楼(撮影:中田智章)
指揮者になったきっかけは、17歳のとき、交際したいと思っていた女性の母親から「世界的な指揮者になるのだったら、娘と付き合ってもいい」と言われたからであった。原田はすぐにその学校で教えていた名匠フレデリック・フェネルのもとで指揮を学び始めた。
「インターネットで指揮者の動画を見て、ゲルギエフやテミルカーノフやビシュコフなどのロシアの指揮者たちに魅力を感じたのです。高校卒業後、すぐにサンクトペテルブルクに行って、名教師ムーシンの弟子にプライベートで指揮を学ぶようになりました。その後、モスクワでも先生を紹介してもらって、20歳のとき、モスクワ交響楽団を指揮して、プロ・デビューしました。曲はラフマニノフの交響曲第2番でした」
その後、憧れていたロリン・マゼールに手紙を書いて弟子入りし、2009年に、音楽祭がひらかれるキャッスルトンの彼の家に住み込むようになった。
「マゼールに『世界的な指揮者になるにはオペラを振れないとダメだよ。そして、言葉ができないとダメ』と言われて、オペラをがんばるようになりました。2010年に、タングルウッド音楽祭でレヴァインのアシスタントをすることになったのですが、レヴァインが病気で振れず、ドホナーニと僕とで『ナクソス島のアリアドネ』を指揮しました。それがプロ・オペラ・デビューになりました」
原田慶太楼(撮影:中田智章)
こうしてオペラとコンサートの両方で活躍するようになった原田は、昨年11月、ブルガリア国立歌劇場の『カルメン』の指揮者に抜擢された。そして今年10月の日本公演でもそれを振る。
「(2017年)11月に新演出の『カルメン』を振って、ブルガリア国立歌劇場にデビューしました。それがヨーロッパでのオペラ・デビューにもなりました。劇場総裁のプラーメン・カルターロフの新演出ということでヨーロッパ的にも注目される公演で、6公演は直ぐに完売でした。追加公演もありました。僕はもうブルガリアにいなくて振れなかったのですが。レビューはすべてポジティヴでした。
ブルガリア国立歌劇『カルメン』 ©Sofia National Opera & Ballet
この『カルメン』は日本に持っていくことになっていたので、カルターロフはビゼーの魂を残しながらも日本の能を取り入れたいと考えました。そして能とギリシャ劇を混ぜたシンプルな舞台になりました。コーラスも仮面を被っています。第3幕の後、ホセは故郷に帰るわけですが、故郷でホセとミカエラの間で起きたことを第4幕冒頭で再現して見せたりもします。ビゼーの書いた音楽以外のもの(他人の書いたレチタティーヴォ)は全部止めて、セリフを使います。僕はフランス語が得意なので、僕がセリフの台本を書いて、それをカルターロフに見てもらいました。カルターロフとのコラボレーションで、新しい『カルメン』を作ることができたと思います。カルメン役のナディア・クラスティヴァは、ブルガリア国立歌劇場出身で、カルメンのために生まれてきたと思うような歌手です。ブルガリアの歌手は体格が大きく、骨が強くて、タフなのです。歌劇場のオーケストラもレベルが高い。レパートリーが広く、何でもやれる。とても振りやすいオーケストラでした」
ブルガリアの巨匠カルターロフと原田慶太楼とのコラボレーションによる新しい『カルメン』。気鋭のマエストロが名門歌劇場を相手にどんな演奏を繰り広げるのか注目である。
原田慶太楼(撮影:中田智章)
取材・文=山田治生
人物写真撮影=中田智章
劇場写真 ©Sofia National Opera & Ballet
■主催:ジャパン・アーツ 特別協賛:株式会社 明治
■日程・会場:
2018年10月5日(金) 18:30 東京文化会館
(カルメン:ナディア・クラスティヴァ)
2018年10月6日(土) 15:00 東京文化会館
(カルメン:ゲルガーナ・ルセコーヴァ)
■日程・会場:
2018年10月8日(月・祝) 15:00 東京文化会館
(トゥーランドット:ガブリエラ・ゲオルギエヴァ)
■劇場総裁・演出:プラーメン・カルターロフ
■指揮:原田慶太楼(『カルメン』)/グリゴール・パリカロフ(『トゥーランドット』)
10月 7日(日)<名古屋> 日本特殊陶業市民会館 『カルメン』 [問] ※後日発表
10月10日(水)<福井> ハーモニーホールふくい 『カルメン』 [問] 0776-38-8282
10月11日(木)<三重> 三重県文化会館 「トゥーランドット」 [問] 059-233-1122
10月12日(金)<福岡> アクロス福岡 『カルメン』 [問] 092-725-9112
10月13日(土)<兵庫> 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 『カルメン』 [問] 0798-68-0255
10月14日(日)<岩国> シンフォニア岩国 『カルメン』 [問] 0827-29-1600
10月16日(火)<越谷> サンシティホール 「トゥーランドット」 [問] 048-985-1112
10月17日(水)<水戸> 茨城県立県民文化センター 『カルメン』 [問] 029-241-1166