SPICE音楽担当の超私的ディスクレビュー 3:米津玄師『Bremen』

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米津玄師

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力強く、過去最高に花開いたメロディセンス

シングル「Flowerwall」を聴いたときから、ずっと考えていた。「このポップさは何だろう」と。初期のイメージから脱却したいのだろうか、あるいは彼の思うポップネスと世間の感じるポップネスとの距離感を測っているのだろうか。

その答えが全て見えてくるような、そんなアルバムとなった。
 

アルバムを聴いてあらためて、僕が感じたポップさというのは彼の前向きさであったように思う。それは「人生は最高だ」的な安易で吹っ切れたポジティブではなく、自分や周囲や世界を受け止めて前へ進む、力強い「決意」といった類の。

それを高らかにうたうのが、M1「アンビリーバーズ」。信じない者達という名を冠したハウスを思わせる米津玄師流エレクトロで、彼は<どんな場所へ辿り着こうと ゲラゲラ笑ってやろうぜ><全て受け止めて一緒に笑おうか>と決意表明する。アルバムタイトルにもなっている「ブレーメンの音楽隊」にも通じる部分があるだろう。

彼の決意はM3「再上映」でも<そんな歌でも僕は歌うさ 何度でも繰り返し / たとえ世界が変わらなくても いつまでも叫ぶよ その答えを>と、最高にストレートな表現で歌われている。またM12「ミラージュソング」では<僕たちが生きるここは今 失望に満ちているだなんて そんなこと言いたくはないんだ それだけさ>と、「アンビリーバーズ」と対になるような力強い言葉が紡がれている。

サウンド面に目を向けるとM5「あたしはゆうれい」では彼らしい奇妙でコミカルなポップセンスが炸裂していたり、M8「Neon Sign」ではかつてないくらい硬質なギターサウンドが光るロックサウンドを見せていたり、M9「メトロノーム」では一転ピアノサウンドに乗せて、これ以上ないほどの美メロを響かせたりと、曲ごとに新しく色とりどりな、表現の幅広さを見せている。それでいて随所に「らしい」音作りやメロディのクセが垣間見えてくるのが心地よい。

そしてなんといってもラストナンバーのM14「Blue Jasmine」。これまでの作品を通しても初めてと言っていいくらい、ストレートなラヴソングが歌われて『Bremen』は締めくくられるのである。
 

彼の近作を「変わった」と評する声は聞く。

確かに「diorama」の頃のような、ある種の違和感を含んだような不穏なサウンドの印象は薄くなった。だがそれはもともと彼の全てでは決してないし、奇妙な音や不協和音的コードの陰にはとんでもないポップセンスが隠れていた。

「変化」とは、そもそも表現力がワンパターンに陥っていない証明であり、時が経つにつれて歳を重ねるにつれて変化してしかるべきである。つまり彼は「ポップな曲を作ろう」「作らなければならない」といった心境に至ったわけではなく、日々感じ表現するものの変化ーー見る景色の変化と、彼自身がその変化に対し正直に向かい合って作り上げたことが、作品の色を変え、こんなにも鮮やかで力強いアルバムを生んだのだ。『diorama』で乾いて無機質な世界を見つめていた同じ人間が、この前向きな決意に満ちた歌をうたうようになったのだ。
 

『Bremen』が米津玄師にしか作りえない作品であると同時に、米津玄師がこの作品を作り上げられたことが、いちファンとして何より嬉しい。


 
イベント情報
米津玄師3rdアルバム『Bremen』
『Bremen』

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■ 画集盤【初回限定】UMCK-9772 ¥3,900(tax out)
:CD
:紙ジャケ・ブックレット
:画集(大判ポストカード22枚)
:ブリスターケース
■ 映像盤【初回限定】UMCK-9773 ¥3,300(tax out)
:CD
:DVD (MUSIC VIDEO「アンビリーバーズ」「フローライト」「メトロノーム」収録)
■ 通常盤  UMCK-1522 ¥3,000(tax out)
:CD

■収録曲

1. アンビリーバーズ
2. フローライト
3. 再上映
4. Flowerwall
5. あたしはゆうれい
6. ウィルオウィスプ
7. Undercover
8. Neon Sign
9. メトロノーム
10.雨の街路に夜光蟲
11.シンデレラグレイ
12.ミラージュソング
13. ホープランド
14. Blue Jasmine

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