松井周、松原俊太郎、森山開次、長塚圭史、杉原邦生、木ノ下裕一、そして白井晃! 2018年度KAAT神奈川芸術劇場ラインアップ
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(左から)白井晃、松井周、松原俊太郎、森山開次、長塚圭史、杉原邦生、木ノ下裕一
2018年2月7日、KAAT神奈川芸術劇場で、同劇場の2018年度ラインナップ発表会が催された。今年度の上演内容を手掛ける松井周、松原俊太郎、森山開次、長塚圭史、杉原邦生、木ノ下裕一がKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督・白井晃と共に登壇し、それぞれが手掛ける作品について説明した。
以下、白井が司会を務め、発表会に同席したクリエイターから自身が手掛けた作品についてコメントが入る流れでラインアップが紹介された。全容は本ページ末尾にてご確認を。以下では、クリエイターからのコメントを中心に紹介する。
◆KAAT×サンプル『グッド・デス・バイブレーション考』
【日時】5月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【作・演出】松井周
【出演】戸川純、野津あおい、稲継美保、板橋駿谷、松井周
松井:僕は「楢山節考」という作品が好きで、日本文学の中ではいつまでも心にひっかかり自分のベースとして考えている作品でもあります。以前台湾で仕事をした時、台湾ではサンドイッチ世代(三世代が同居する中年夫婦)が話題となっており、子育てが始まるとすぐに介護も始まることが問題となっていました。それは日本も同じ状況だと思います。この作品は近未来の話なんですが、近未来で「楢山節考」のように親を捨てに行くということがあるとしたら『安楽死』の話になるのではないか、と考えました。安楽死というブームがあり、それに直面する貧困家庭の話を描きたいと思います。
松井周
◆KAAT×地点『山山』
【日時】6月6日(水)~6月16日(土)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【作】松原俊太郎
【演出】三浦基
松原:舞台『忘れる日本人』を作った後、次に何を作ろうかと思っていましたが『忘れる日本人』が海の話だったので「次は山だろう」と言われてまして。山が二つ並ぶと可愛いらしく、そこからイメージを膨らませていくと「~したいのはやまやまですが」という決まり文句がモチーフとして使えるなあ、と。そしてアメリカの作家・ハーマン・メルヴィルの『バートルビー』の主人公の決まり文句が「~できれば○○したいのですが」。何かにつけてそう答えをし、でも何もしないという「受動的抵抗」をする姿も使えそうだと感じ、『山山』に関するそれらのモチーフを集めていくとおもしろいものが書けそうだな、と思いまして、今書いているところです。
松原俊太郎
◆KAATキッズ・プログラム2018『不思議の国のアリス』
【日時】7月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【原作】ルイス・キャロル
【テキスト】三浦直之
【演出・振付】森山開次
【出演】森山開次、辻本知彦、島地保武、下司尚実、引間文佳、まりあ
森山:今年『不思議の国のアリス』を全国の子どもたちと大人たちに向けて再演することが出来、嬉しく思っています。私たちダンサーはたった6人ですが、それぞれ個性あふれる強者たちでクリエイションしている間も私自身、高揚を抑えることができないくらい。僕たちの最高のパフォーマンスを子どもたちの前で見せる、それを子どもたちが見入っているという姿に感動しました。作品のテキストを劇団ロロの三浦さんに紡いでいただき、へんてこりんな世界を身体と言葉で綴っている作品です。昨年よりパワーアップしていきたいと思います。
森山開次
◆KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『華氏451度』
【日時】9月~10月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【原作】レイ・ブラッドベリ
【上演台本】長塚圭史
【演出】白井晃
白井:近代文学の読み直しという視点で舞台化するその一環として本作を選びました。言論統制や情報操作ということが取り正されている中で、そういう内容の作品『1984』をやろうと当初考えていたんですが新国立劇場さんでやることが発表され「えー!」となり(笑)。でもわざわざ同じ作品をやるなど、喧嘩を売るようなことはせず(笑)。もう一つ同じテーマの作品でやりたかった『華氏451度』に目を向けたところ、長塚さんが「これは前から僕がやってみたかった作品です。僕が書かずして誰が書く!?」と言ってくださったのでお願いしました。
白井晃
長塚:僕が別の打ち合わせをしている時に、白井さんが『華氏451度』をやるという話を聞いて「冗談じゃない!待ってくれ!僕に書かせてくれ!」と(笑)。昨年6月にKAATに籠って上演台本を書きました。僕は白井さんが演出する上演台本を書くときは一週間ほど拉致されるんです。一週間二人で籠って白井さんの目の前でずっと僕が本を書き続けるというすごく気持ち悪い時間を過ごしました(笑)。
長塚圭史
◆KAAT DANCE SERIES 2018 伊藤郁女・森山未來『新作』
【日時】11月1日(木)~11月4日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【演出】伊藤郁女
【振付・テキスト・出演】伊藤郁女・森山未來
(伊藤・森山からのコメント映像が流れる)
伊藤:今回、三島由紀夫の「美しい星」をベースに作っています。この物語は家族皆が宇宙人だと思って生活している設定なのですが、その中で宇宙人同士が「人間を救う意味があるのか、地球を救う意味があるのか」と話をする場面があるのですが、その場面を膨らまして作品を作りたいと思っています。
森山:郁女ちゃんとの付き合いはもう6、7年くらいになります。フランスで活動する郁女ちゃんと、あちこちをフラフラしている僕という宇宙人と呼べなくもない二人がどうやってこの地球の中でサバイブしていくのか(笑)、切磋琢磨しながら作っています。
伊藤郁女、森山未來
◆KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『セールスマンの死』
【日時】11月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【作】アーサー・ミラー
【演出】長塚圭史
長塚:一人の男が帰宅してから自殺するまでの2日間を描いています。その2日間の中に彼の人生、彼の家族のすべてが集約されていて、その手法から圧倒されます。これほど優れた戯曲はほかにないと思います。本当のことを言うと恐ろしくてやりたくない作品でもあるんですが、僕がとても信頼する俳優さんが主演を務めてくださることが決まり、それならばこのタイミングしかないだろうと思いました。戯曲の手法そのほか、非常に現代的で時間が錯綜しているのに明瞭明快で、それでいて分かりやすいところにまったく収まらない作品です。
◆KAAT EXHIBITION 2018 「潜像」
◆KAAT EXHIBITION 2018 さわひらき展「潜像の語り手」
【日時】11月11日(日)~12月9日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
◆KAAT EXHIBITION 2018 島地保武『新作』パフォーマンス
【日時】11月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【振付・出演】島地保武
(さわからのコメント映像が流される)
さわ:普段は映像と空間を使ったビデオインスタレーションを主に発表しています。テーマの「潜像」ですが、これをどのように空間で表現できるかを中心に考えていこうと思います。またパフォーマンスとのコラボは私もしたことがなく、自分にとっても大きなチャレンジだと思って楽しみに取り組もうと思います。
さわひらき
◆KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オイディプス王』
【日時】12月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作】ソフォクレス
【演出】杉原邦生
杉原:一昨年、松井周さんと『ルーツ』という作品を作らせていただきました。白井さんの熱意とKAATスタッフのクリエイションに触れ、この劇場となら僕も挑戦が出来るかもと考え、いつかやってみたいと思っていたギリシャ悲劇『オイディプス王』をやってみようと。今回オイディプス王は若者にしようと考えています。オイディプス王は大御所の俳優さんが演じ、妻であり母であるイオカステも大御所の女優さんが演じるケースが多いのですが、その二人の近親相姦を想像するとなかなかハードだ、と感じまして(笑)。その違和感を解消したいと思い若者にしました。そしてその青年王が堕ちていく様を鮮烈に描きたいです。コロス以外の7役を3人の俳優で振り分けて上演し、コロスも一群衆ではなく一人一人の個性が見えるように描きたいです。この舞台を観終わった後、お客さんが皆(オイディプス王のように)思わず目をつぶしたくなるような、それでいてその先に希望や光が見えてくる作品に仕上げたいです。
杉原邦生
◆KAAT×まつもと市民芸術館『新作』
【日時】2019年1月~2月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ(予定)
【演出】串田和美
(串田からのFAXを白井が読み上げる)
串田:今、私はKAATで3月から上演する『白い病気』の稽古で頭がいっぱいなのですが、このラインナップ発表会にタイトル未定の『新作』と出すのはどうも格好悪いと思い頭をひねっていたところ、まさにこれが『危機一髪』だとひらめきました。『わが町』を書いたソーントン・ワイルダーのぶっ飛んだ作品、白井さんがKAATのテーマにしているアンチリアリズムを形にしたような作品が『危機一髪』です。これで行きたいと思います。タイトルは『冬のキャバレー 危機一髪』と発表してください。
白井:(苦笑いしながら)本当に先輩はやってくださいますね!ということで、皆様、お手元の資料に手書きで『冬のキャバレー 危機一髪』と書いてください(笑)。ちなみに『冬のキャバレー』というのは、串田さんはこの劇場をキャバレーの様に変えてへんてこりんな舞台をやりたいと話していたのでそのことではないかな、と思います。
◆KAAT×ロームシアター京都×穂の国とよはし芸術劇場 木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』(仮)
【日時】2019年3月14日(木)~3月17日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作】菅専助、若竹笛躬
【補綴・監修】木ノ下裕一
【上演台本・演出・音楽】糸井幸之介
木ノ下:木ノ下歌舞伎とは、歌舞伎の演目を現代劇に作り直して上演しており、毎回演目ごとに演出家を招いています。今回お招きした糸井さんは劇作に加え歌・音楽を作る方です。『妙ージカル』と称して作品を手掛けていらっしゃいますが、僕から見るとむしろそれは『本流』だと思います。西洋的なミュージカルより日本の歌物・・・『伊勢物語』のような和歌と普通の言葉が交互に入ってくる作品や、義太夫のようにナレーションに当たる「地の文」と台詞に当たる「語り」と歌である「節」という3つで構成されている音曲のロジックに近いと思うんです。その糸井さんと今回組んで作る本作ですが、ある母が義理の息子に恋をして、追いかけまわし、挙句には息子に毒を盛る、実はそれはお家騒動に巻き込まれそうになる義理の息子を助けようと仕組んだ継母なりの自己犠牲を描いた話です。
木ノ下裕一
白井は、KAATの芸術監督として「KAATはこの劇場でしか出来ないこと、東京の劇場では出来ないことをやっていきたい。東京の民間の劇場ではなかなか思い切ったことが出来ない、そう感じていたから。そしてKAATは先鋭的でありたい。我々は常に新しい物に取り込まれ、いつしかそれが『普通』になってしまうことがよくあるが、それ故、我々が『普通』と思っていることから少し離れて『普通を見直す』こと、これこそが先鋭的と思っており、そういった作品を今後も作っていきたい」とコメントしている。
白井晃
2018年度のKAAT神奈川芸術劇場が仕掛ける様々な活動に今後も注目したい。
取材・文・撮影=こむらさき
【日時】4月14日(土)~5月6日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作】エンダ・ウォルシュ
【演出】白井晃
【出演】草なぎ剛、松尾諭、小林勝也
【日時】5月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【作・演出】松井周
【出演】戸川純、野津あおい、稲継美保、板橋駿谷、松井周
【日時】6月6日(水)~6月16日(土)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【作】松原俊太郎
【演出】三浦基
【日時】7月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【原作】ルイス・キャロル
【テキスト】三浦直之
【演出・振付】森山開次
【出演】森山開次、辻本知彦、島地保武、下司尚実、引間文佳、まりあ
【日時】8月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【脚本】スザンヌ・ルボー
【演出】ジェルヴェ・ゴドロ
【日時】8月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【出演】キャサリン・ウィールズ劇団
【日時】8月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作・演出】ティム・ライス、アリエル・グレイ
【出演】ザ・ラスト・グレート・ハント
【日時】9月~10月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【原作】レイ・ブラッドベリ
【上演台本】長塚圭史
【演出】白井晃
【日時】9月下旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【演出】エリザベス・ルコンプト
【出演】エンヴァー・チャカルタシュ、アリ・フリアコス、ギャレス・ホブス、グレッグ・マーテン、エリン・マリン、スコット・シェパード、モーラ・ティアニー、ケイト・ヴァルク
【日時】10月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【演出】トゥアン・レー
【出演】ルーン・プロダクション
【日時】10月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【演出・構成・振付・出演】北村明子
【出演・振付】清家悠圭、柴一平、西山友貴、河合ロン、加賀田フェレナ、チー・ラタナ(カンボジア)、ルルク・アリ(インドネシア)
【出演(予定)】阿部好江(鼓童)
【日時】11月1日(木)~11月4日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【演出】伊藤郁女
【振付・テキスト・出演】伊藤郁女・森山未來
【日時】9月16日(日)・9月17日(月・祝)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【日時】9月22日(土)~9月24日(月・休)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【日時】11月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【作】アーサー・ミラー
【演出】長塚圭史
【日時】11月11日(日)~12月9日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
【日時】11月中旬
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【振付・出演】島地保武
【日時】11月23日(金・祝)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【出演】三宅純
【日時】12月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作】ソフォクレス
【演出】杉原邦生
【日時】2019年1月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ(予定)
【原作】J.P.サルトル
【構成・演出】白井晃
【出演】首藤康之、中村恩恵 ほか
【日時】2019年1月~2月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ(予定)
【演出】串田和美
【日時】2019年3月14日(木)~3月17日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【作】菅専助、若竹笛躬
【補綴・監修】木ノ下裕一
【上演台本・演出・音楽】糸井幸之介
【日時】2019年2月
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【振付・演出】山田うん
【出演】Co.山田うん
【日時】年間3回予定
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 アトリウム
【出演】白井晃、ゲスト1名
【日時】2019年2月9日(土)~17日(日)
【会場】KAAT神奈川芸術劇場 全館
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