アジアのメディアカルチャーが渋谷・表参道に集結! 『MeCA』で触れる21世紀のアート

2018.2.11
レポート
アート

Bani Haykal「眠らない者のネクロポリス」2015年

画像を全て表示(14件)

2018年の2月9日〜18日の10日間にわたって開催される、アジアのメディアカルチャーを総合的に発信するイベント『MeCA』。「MeCA」とは「Media Culture in Asia: A Transnational Platform」の略称で、展覧会と音楽プログラムをはじめ、トークプログラムやシンポジウム、子どもも参加できる教育普及プログラムなどが開催される。「表参道ヒルズ スペース オー」、「ラフォーレミュージアム原宿」をメインに、「Red Bull Studios Tokyo」、「WWW」、「WWW X」などが会場となる。アジアや欧米からのアーティストが参加する展覧会の見どころを、初日に開催されたプレスツアーよりレポートする。

21世紀の社会の不均衡をチェスで表現

冒頭、『MeCA』のプロデューサーである廣田ふみ氏から概要説明が行われた。

「今回の展覧会のタイトルは“self-reflexivity: Thinking Media and Digital Articulations”となっています。日本語にするとそれぞれ、“自己反映”、“メディアを考えること”、“デジタルで表現すること”という直球のタイトルをつけています。メディアアートとひとことで言っても、いろいろな表現があります。メディア自体を考えるものであったり、デジタルな表現を追求したり。その多様性自体を表現しました。8組の参加アーティストは、フィリピンの『WSK(ワサック)』やフランスの『ビエンナーレ・ネモ』などのメディアアートフェスティバルから推薦された作品をもとに、皆で話し合い選定しました」

Bani Haykal「眠らない者のネクロポリス」2015年

シンガポール出身のアーティストBani Haykalが手がけたのは、2本のロボットのような手がチェスをしている「眠らない者のネクロポリス」。作品のチェスは片方が一方的に不利な状況に立たされているが、それはグローバリゼーションと重ね合わせて社会の不平等を表現している。Bani Haykalは作品が生まれた経緯を説明する。

Bani Haykal

「この作品は1770年にウォルフガング・フォン・ケンペレンが作った自動チェス人形『機械じかけのトルコ人』からインスピレーションを受けました。それは、チェスの台が置いてあり、一方には人形が立っていて実際にその人形と対戦できるんです。本当にその人形が対戦しているように見えるけど、実はチェスの達人が机の下に隠れていたと言われています。その仕組みが印象的で、なにか“見えない手”のようなものを彷彿とさせました。AIやAmazonなどはいろいろな情報を入手しているけど、そういったことを考えさせられました」

京都の庭園、プラトンの宇宙論など、作品のインスピレーションは多種多様

坂本龍一+高谷史郎「WATERSTATE 1(水の様態1)」2013年

坂本龍一+高谷史郎による「water state 1(水の様態1)」は、波紋と音を楽しむインスタレーション作品。東京では初公開の作品となる。高谷史郎は作品の意図を以下のように語る。

高谷史郎

「今回の作品は、地球環境や気象変化などを音楽にできないか、という発想から始まりました。アジアの気象データを元に音として作り直しましたが、そのアルゴリズムを坂本さんが担当しています。京都を2人で旅行して、庭園の石や水面に映る自然の変化を作品に取り込めないかとか、いろいろ話し合って生まれた作品です。皆さんには静かに長く見てもらいたいですね」

Guillaume Marmin and Philippe Gordiani「TIMÉE」2015年

フランスの作家Guillaume Marmin and Philippe Gordianiの「TIMÉE」は、300の穴から光が投射される約13分のインスタレーション。Guillaume Marminは、プラトンの宇宙論に影響を受けたと話す。

Guillaume Marmin and Philippe Gordiani

「私の作品は音楽と光、空間の関係性がテーマになっています。プラトンの『ティマイオス』という著作には宇宙についての説明があり、プラトンは、宇宙とは完璧な存在で神によって作られたと言っています。こちらの作品を作る上で天文学者と相談をして、プラトンの説が今日においてどんな意味を持つのかを考えて作りました。みなさんもそれぞれの解釈で見てください」

女性への社会的な負担を作家自身が体験

Kawita Vatanajyankur「SERIES: TOOLS / WORK」2012年〜

ラフォーレ原宿に展示されている、タイ人作家・Kawita Vatanajyankurの「SERIES: TOOLS / WORK」は、女性への社会的・肉体的な負担を自身のパフォーマンスによって表現している。Kawita Vatanajyankurは、制作時の心境などを以下のように語る。

ベレー帽をかぶっている女性がKawita Vatanajyankur

「日常の中で、女性にどれほどの負荷が生じているかを表現しました。それと同時に女性の強さも表しています。作品では、30キロのバナナや60個のスイカをどんどんカゴに入れられて、私は耐えています。自身を計りに例えているんですが、最初は本当に怖かったです。自分が人間として耐えているのではなく、本当に計りになって耐えているような気分になっていきます。この作品は身体や精神の限界を超えたところで、自分を物体化していくプロセスです」

平川紀道 「datum」2016年

このほか、会場には3次元以上の高次元空間の美を追究した平川紀道 の「datum」をはじめ、全8組の作家によるメディアアート作品が展示されている。テクノロジーをベースに、21世紀の社会を鋭く描写した最先端のアートが見られる、またとない機会だ。

Studio The Future - Klara van Duijkeren / Vincent Schipper「Film Fiat Lux」2017年

couch「TRACING SITES」2017年〜

Tad Ermitaño「Spinning Jimmy v. 2.0」

 
イベント情報
MeCA l Media Culture in Asia: A Transnational Platform

日時:2018年2月9日(金)~18日(日)
会場:表参道ヒルズ スペースオー、ラフォーレミュージアム原宿、Red Bull Studios Tokyo、WWW、WWW X 他
実施プログラム:展覧会、音楽ライブ、国際シンポジウム、公募型キャンプ(人材育成事業)、教育普及ワークショップ、トークイベント等

 
 
【展覧会プログラム】 
会期:2月9日(金)~2月18日(日) 11:00~20:00
(最終日18日(日)は17:00まで/11日(日)は表参道ヒルズ会場のみ18:00まで)
会場:表参道ヒルズ スペース オー、 ラフォーレミュージアム原宿
出展アーティスト:坂本龍一+高谷史郎[日本]、 平川紀道[日本]、 Guillaume Marmin and Philippe Gordiani[フランス]、 Couch[日本]、 Bani Haykal[シンガポール]、 Tad Ermitaño[フィリピン]、 Kawita Vatanajyankur[タイ]、 Studio The Future[オランダ]
 

【音楽プログラム】 
日程:2月9日(金)OPEN 20:00 / START 21:00(WWW)・22:00(WWW X)/ CLOSE 5:00
会場:WWW、 WWW X(渋谷)※2会場同時開催

「BORDERING PRACTICE」(WWW X)
プログラムディレクター:tomad(オーガナイザー、 DJ、 Maltine Records主宰) [日本]、 
出演者:tofubeats[日本]、 Meishi Smile[アメリカ]、 similarobjects[フィリピン]、 KimoKal[インドネシア]、 Ryan Hemsworth[カナダ]、 Meuko! Meuko![台湾]、 PARLGOLF[日本]

「Alternative SOUND + VISION」(WWW)
出演者:Morton Subotnick[アメリカ]、 Lillevan[ドイツ]、 Alec Empire[ドイツ]、 Jacques[フランス]、 Young Juvenile Youth[日本]、 Jean-Baptiste Cognet and Guillaume Marmin[フランス]、 X0809[タイ
  • イープラス
  • 坂本龍一
  • アジアのメディアカルチャーが渋谷・表参道に集結! 『MeCA』で触れる21世紀のアート