栗原類、味方良介らが向き合う“差別”『Take Me Out 2018』稽古場レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
『Take me out 2018』
2016年に日本で初上演され、その年の第51回紀伊国屋演劇賞 団体賞にもノミネートされた『Take Me Out』の再演が、2018年3月30日(金)より始まる。メジャーリーガーの華やかな選手たちの関係を捉えながら、そこに渦巻く閉鎖性によって浮き彫りになる人種問題やLGBTなどの社会的マイノリティに深く切り込んだ本作。その稽古場の模様をレポートする。
『Take Me Out』は、2003年にブロードウェイで初演され、第57回トニー賞で演劇作品賞を受賞したリチャード・グリーンバーグによるコメディ。出演者は、栗原類、味方良介、小柳心、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘が前作に続いて出演するほか、新キャストとして玉置玲央、浜中文一、陳内将が新たに加わった。演出は初演と同じく藤田俊太郎が務める。この日の稽古には、栗原、味方、小柳、陳内、章平が参加していた。
男たちの魂と身体が燃えたぎる「ロッカールーム」。彼らにとってそこは、すべてをさらけ出せる楽園だった。ひとりのスター選手による、あの告白までは―。
黒人の母と白人の父を持つメジャーリーグのスター選手、ダレン・レミング(章平)は、敵チームにいる親友デイビー・バトル(Spi)の言葉に感化され、ある日突然「ゲイ」であることを告白する。それは、150 年に及ぶメジャーリーグの歴史を塗り替えるスキャンダルであった。しかしダレンが所属するエンパイアーズ内には軋轢が生じ、次第にチームは負けが込んでいく・・・。
そんなときに現れたのが、天才的だがどこか影のある投手、シェーン・マンギット(栗原)。圧倒的な強さを誇る彼の魔球は、暗雲立ち込めるエンパイアーズに希望の光をもたらしたのだが―。
公開されたのは、第1幕の終盤。負けが込んできた「エンパイアーズ」を救った天才的な投手だが、どこか影があるシェーンがどんな人物なのか、チームメイトたちは計りかねていた。そこで、キッピー・サンダーストーム(味方)やダレン(章平)らチームメイトはシェーンの過去を根掘り葉掘り問いただすというシーンだ。
『Take me out 2018』
このシーンは、演出の藤田が2016年の初演時から解釈を変えたシーンだという。藤田の思い描く関係性を体現するため、俳優たちは動きを何度も確認。やがて藤田は、新たな可能性を探るため、シェーン役の栗原とジェイソン・シェニアー役の小柳が役を入れ替えて演じることを提案。小柳は、自分なりの解釈でシェーンを演じて見せた。そのシェーンは、栗原がそれまで演じていたシェーンとはまた違う一面を見せる。藤田はこういった試みから、さらに深く戯曲を読み進めていく。
小柳が演じたシェーンを受けて、藤田はそれぞれの役に対して、自身の考えを丁寧に俳優たちに伝えていった。それを繰り返しながら共通認識を増やし、深め、各々が役を掘り下げていく。
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
続いて、1幕ラストの場面転換のシーンに。本作では、野球チームの「ロッカールーム」が主な舞台になっている。チームのメンバーはそれぞれ1つずつロッカーを持っており、この場面転換では舞台袖に並べられていたロッカーを動かして配置を変えていく。動きを確認する中で、小柳から「シェーンは最後に動かすのがいいのではないか?」という提案が上がっていた。藤田はそういった俳優たちの意見も取り入れながら、よりよい作品にするために入念に検討する。カンパニー全員で真摯に作品に向き合っている姿が印象的だった。
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
『Take me out 2018』
コメディと題しながらも、人間の本質をえぐり出した重いテーマが流れる本作。俳優陣がどんな心の叫びを聞かせてくれるのか、公演を楽しみに待ちたい。
取材・文=嶋田真己 撮影=岡 千里
公演情報
■日時:2018年3月30日(金)~5月1日(火)
■会場:DDD青山クロスシアター
■作:リチャード・グリーンバーグ
■翻訳:小川絵梨子
■演出:藤田俊太郎
■出演:玉置玲央、栗原類、浜中文一、味方良介、小柳心、陳内将、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘
■主催:シーエイティプロデュース
■公式サイト:http://www.takemeout-stage.com/