Dragon Ash、ネバヤン、竹原ピストル、レキシ、ぼくりり…過去最多22組の競演に1万2千人が熱狂 『ビクターロック祭り2018』
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Dragon Ash Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
3月17日(土)、『ビクターロック祭り2018』が千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催され、過去最多22アーティストが出演。約12,000人を集客した。
『ビクターロック祭り』は音楽事業で80年を超えるレコード会社・ビクターが「ずっとロック、これからもロック」を合言葉に開催する”ロックのお祭り”。2014年の初開催から5回目となる今年は、昨年に引き続き2ステージ制での開催となった。
5年連続出演のDragon Ashを筆頭に、これまでにロック祭りに出演したことのある雨のパレード、サンボマスター、四星球、竹原ピストル、never young beach、レキシに加え、ORANGE RANGE、KICK THE CAN CREW、GRAPEVINE、SOIL&”PIMP”SESSIONS、ぼくのりりっくのぼうよみ、RHYMESTER、ROTTENGRAFFTY、Yogee New Wavesがロック祭り初出演。さらに、オープニングアクトに“初代 お祭りハッピーガール”の吉田凜音、ハーフタイムアクトにReolを迎え、今年で4回目となるDJダイノジの出演、そしてビクターロック祭りへの出演をかけた『ワン!チャン!!』オーディションでグランプリに輝いた「琴音」、超能力戦士ドリアン、kobore、SILYUSの4アーティストの出演など、過去最多の22アーティストが競演した。会場内のサテライトスタジオでは、LINE LIVE特番がビクターエンタテインメントチャンネルで生配信され、出演アーティストが多数出演。会場に駆けつけることができないファンにも、会場の熱気や出演者インタビューが現地より届けられている。
BARK STAGE
吉田凜音
吉田凜音 Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
ビクターロック祭り2018のオープニングアクトを務めるのは、現役女子高生アーティスト・吉田凜音。4代目ニッパー大使として、2人の女性ダンサーとニッパー君と一緒にステージに登場し「みなさんこんにちは!吉田凜音です!」と元気いっぱいの挨拶で、BARK STAGEをスタートさせた。1曲目「STAY FOOL!!」で、まずは早起きしてきたであろう観客たちの眠気を吹っ飛ばす。所々にラップを織り交ぜたアグレッシヴなダンスナンバーと、吉田とダンサー、そしてニッパー君の軽快なダンスに誘われ、会場の温度が徐々に上がっていくのが分かる。すると2曲目「パーティーアップ」では、ちょっとオトナなモードへチェンジ。ダンスも重力を感じさせる振付に。シニカルな歌詞も韻を踏むことでポップに聴かせ、17歳の彼女ならではの魅力が開花した。そして、最後は「それではこれからもビクターロック祭り、楽しんでいってください!」と締め括り、ステージを後にした。
Text by イシハラマイ
never young beach
never young beach Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
開幕を告げるオープニング映像が流れたのに続き、鳴り響いたSE。するとステージにnever young beachの安部勇磨(Vo&Gt)、松島皓(Gt)、阿南智史(Gt)、巽啓伍(Ba)、鈴木健人(Dr)が登場。彼らを出迎えた歓声がものすごい。そして「おはようございます!」、安部の挨拶と共に「なんかさ」がスタート。瑞々しいメロディ、歌声、グルーヴィーなサウンドに身を任せて身体を揺らす観客の表情が実に気持ちよさそう。我々がいるのは屋内会場だが、爽やかな青空の下で風を感じながら過ごしているような気持ちになるオープニングであった。
穏やかに躍動するビートが身も心もリラックスさせてくれた「なんもない日」、会場内をますます開放感に溢れたムードで包んだ「どんな感じ?」。さらに2曲が届けられた後に迎えたインターバル。「改めてどうも。never young beachです。いやあ早いよね。出られて嬉しいし、みんが来てるから言うもんじゃないけど……早いよね(笑)。結構おかしな時間だけど、こんなに来てくれてありがとう。みんなも相当眠いだろうし、身体が起きてない人がいっぱいいると思う。だから、今日はわりとおっとりめに始めてみました。でも、身体起こさないと。というわけで、ここから元気もりもり。元気頂戴!」、安部のMCを経て「どうでもいいけど」へ突入。すると掲げた腕を力強く振って盛り上がる人々の輪がどんどん広がっていった。そして、「気持ちいい風が吹いたんです」と「あまり行かない喫茶店で」も立て続けに披露。会場内は笑顔に満ちた昂揚感で完全に包まれた。
「今、“やるぞ!”って思って前へ出たら結構距離があってびっくりしちゃった」――ステージと観客のいるフロアまで意外と距離があることを突然ぼやき始めて、和やかな笑いを誘った安部。松島と阿南が、先ほど演奏した曲のギターソロの時にお互いに表情を窺い合いつつ、ユルユルと前へ出たことに対して突っ込みが入れられたりもしつつ、メンバー同士の和気あいあいとした会話が展開したMCタイム。そして、「明るい未来」と「SURELY」を届けて熱い歓声を巻き起こした後、満足した表情を浮かべながら去っていったメンバーたち。とても心地よい空間を作り上げたライブであった。
Text by 田中大
ROTTENGRAFFTY
ROTTENGRAFFTY Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
BARK STAGEの3組目は、京都発のミクスチャーロックの騎手・ROTTENGRAFFTY。熱烈な手拍子でメンバーを迎えた観客に「やりたいようにやってくれ!」とN∀OKI(Vo)が一吠えし、壮絶なラウドナンバー「STAY REAL」にて狂乱の幕が上がる。ステージから迫りくる嵐のような轟音と、それに負けじと合いの手を返す観客たち。その光景にフェスの一幕であることを忘れてしまう。N∀OKI(Vo)とNOBUYA(Vo)の声がピタリと重なり〈僕等は今ここに立つ〉と歌いあげるシーンには、思わず鳥肌が立った。勢いをそのままにN∀OKIが「知ってるヤツも知らないヤツもノリでノリこなせ!」と煽り、始めたのは「響く都」。京都出身の彼らならではの、地元愛に満ちた最高に騒がしい祭り囃子が炸裂する。曲途中では「お前ら音楽は好きかー!」とN∀OKIが呼びかけ、コールアンドレスポンス合戦が始まり、会場の熱はこれでもかと上がってゆく。その後も「D.A.N.C.E.」では観客を一度座らせてから飛び上がらせたりと、煽りの手を緩めない。やわらかなアルペジオが流れる中「今からやる曲は大人しい曲なんですけど……」とNOBUYA。ようやく落ち着いた曲調が来るのかと思いきや始まった「THIS WORLD」では、観客たちが高々と拳を突き上げる熱狂ぶりを見せる。確かにメロディアスではあるが、まあ大人しくはない。そしてとうとう、NOBUYA(Vo)がフロアに乗りこんだ。これにより、前方は完全にモッシュピットと化したのだった。そしてラストは、盛大なシンガロングと共に始めた「金色グラフティー」。侑威地(Ba)とKAZUOMI(Gt / Prg)も会場を見渡すようにお立ち台に上がって演奏する。ここでも「でっかい渦巻き作れるか!」とN∀OKIが煽ると、すぐさま高速のサークルが生まれた。ライヴハウスで観客と近い距離で音楽を鳴らしてきた叩き上げのバンドだからこその説得力と巻き込む力。それを目の当たりにしたステージだった。
Text by イシハラマイ
SOIL&”PIMP”SESSIONS
SOIL&”PIMP”SESSIONS Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
never young beach〜ROTTENGRAFFTYと熱気のバトンを受け継いできたBARK STAGEには、今回がビクターロック祭り初出演のSOIL&"PIMP”SESSIONSが登場!
「DEATH JAZZ! 始めるよ!」。幕張メッセを貫く社長(Agitator)のコールとともに、珠玉のデスジャズ・アンセム「SUMMER GODDESS」へ突入。タブゾンビ(Tp)とサポートプレイヤー=栗原健(Sax/Mountain Mocha Kilimanjaro)のホーンサウンドがホール狭しと鳴り渡り、秋田ゴールドマン(Ba)&みどりん(Dr)のスリリングなリズムが熱気をかき混ぜていく。そして、丈青(Pf)の流麗なピアノさばきが、狂騒の坩堝と化したアンサンブルに妖しくも美しい凄味を与えている。
スタンダードナンバー「Moanin'」のリズムを刻んでいたみどりんが ♪縄文土器 弥生土器 どっちが好き? とレキシ「狩りから稲作へ」のフレーズを忍ばせてフロアを沸かせたところで、「この歴史があるフェスティバルに、ようやく呼んでもらうことができて、嬉しく思ってます」「友達に自慢したくなるような一夜にします! だから、みんなも力を貸してくれよ!」と呼びかける社長の言葉に、熱い歓喜の声が巻き起こる。続けての「POP KORN」ではDragon Ash・ATSUSHI(Dance)が乱入、キャッチーな旋律と華麗な演舞とオーディエンス一面のコール&レスポンスが共鳴する最高の風景が展開されていく。
そして、「おいしいお酒を飲み始めた、この男を紹介しましょう!」と社長がぼくのりりっくのぼうよみを呼び込んでコラボ曲「罠」を鮮烈に披露。さらに最後はキング・オブ・ステージ=RHYMESTERがオンステージ、「ジャズィ・カンヴァセイション」のゴージャスな熱演で大団円! バンド剥き身のサウンドでも最高、コラボでも最高なソイルのタフネスを全方位的にアピールしていった。
Text by高橋智樹
ORANGE RANGE
ORANGE RANGE Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
続いて登場したのはビクターロック祭り初出演の、ORANGE RANGE。昨年発売のEP『UNITY』の収録曲から歴代のヒット曲を網羅したセットリストで、会場に集う幅広い世代の観客たちを一人残らず踊らせてみせた。この日のパフォーマンスで彼らが目指したのは、会場をひとつにすること。2曲目には早くも「上海ハニー」を披露。キラーチューンの早速の登場に、観客たちは顔を見合わせ笑顔を浮かべながら、掌をステージに向け、右に左に振りまくる。すると今度は、「沖縄には祭りに欠かせないダンスがあります」と沖縄伝統の踊り・カチャーシーのレクチャーが始まった。イーヤーサーサー、の合いの手を入れながら踊る3MCにならい、観客たちも見様見真似で手首をヒラヒラ。RYO(vox)は、観客たちにそれぞれの地元を愛してほしいと語った。YAMATO(vox)が指笛を鳴らし「上海ハニー」を再開させると、音楽に合わせ出身も年齢もバラバラの観客たちが、揃ってカチャーシーを踊り始めた。たったひとつの簡単な踊りを覚えただけで、会場の雰囲気が一変したのだ。まるで、顔見知りのご近所同士が集う地元のお祭りのような、そんなアットホームな空気が会場を満たした。すると、「お祭りはひとりじゃできないんだよね」と、当イベントの公式HPでの公募により選ばれた男性4人のダンスグループ・Attraqt.がステージに呼び込まれ、総勢10名での「SUSHI食べたいfeat.ソイソース」が始まった。
NAOTO(gt)はギターではなくパッドを操り、デジタルなサウンドを展開させてゆく。「NO SUSHI! NO LIFE!」のコールアンドレスポンス、そして「SUSHI食べたい」の大合唱と、会場は大盛り上がりとなった。蛇行するベースラインと不穏な変拍子で、リズム隊の見せ場が目白押しの「アオイトリ」を経て、いよいよラスト。「お祭りだからね、みんな騒ぎたいんだよな?ラストこの曲で暴れていけ!」と「キリキリマイ」をぶちかます。3MCがフロアを背に、ドラムセットに向き直り「行くぞ!」の号令と共に、最前線まで踊り出てきたときのカッコよさたるや……。フロント5人が一直線に並んで演奏する様は、ロックヒーローそのもの。燃え尽きることのない真夏の太陽が残していった熱は、彼らがステージを去ったあともフロアから消えることはなかった。
Text by イシハラマイ
サンボマスター
サンボマスター Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
タイムテーブルも折り返し地点に達したところで、BARK STAGEにはサンボマスターが登場。「ビクターロック祭り、お祭りで一緒にワッショイできる人~⁉」という山口隆(唄とギター)の叫びとともに豪快に鳴らされたのは「世界をかえさせておくれよ」だった。陽気なビートで幸福感を生み出す、最高の幕開け。山口は歌の合間にも言葉を詰め込みながらフロアを煽り、腕を高く上げ飛び跳ねるオーディエンスもまた、そのリアクションを大きくさせていく。バッチバチの3ピースサウンドが爆音で鳴らされるなか、「光のロック」「できっこないを やらなくちゃ」ではオーディエンスのシンガロングがそのサウンドを彩った。「ワッショイ!」コールを巻き起こしながら、また、時にはオーディエンスが手に持つ稲穂をイジりながら、セットリストは進んでいく。じらしにじらしまくって始めた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」までの5曲を終えたところで、長めのMC。山口がこう語り始めた。
「おめえが笑った顔の方が俺が救われるからさ、また一緒にここで笑ってくれな。誰目当てとかクソどうでもいい。俺とおめえがここにきて息を合わせて音楽鳴らしてることがスゲー幸せだって。これをやりに来たんだからな」「クソみたいな毎日を本当だと思うなよ。笑った、この時間だけを本当だと思えよ」
そうしてラストに鳴らされたのは、最新アルバムの表題曲「YES」。刻みつけるような「届け」の連呼は、笑顔で満開になったこの場所を越え、日常に戻ったあとの私たちの心をも救ってくれることだろう。くだらないものも何もかも吹っ飛ばすように駆け抜けたステージに、サンボマスターの真骨頂を見た。
Text by蜂須賀ちなみ
竹原ピストル
竹原ピストル Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
頭にタオルを巻き、アコースティックギター1本を手にしてステージに立った竹原ピストル。この大きなステージでは異例とも言えるラフな姿だが、演奏が始まった瞬間、この空間は完全に彼の色彩で鮮やかに染まった――「よろしくお願いします!」と挨拶をして、力強くアコギをストロークして歌い始めた1曲目「LIVE IN 和歌山」。全身全霊を絞り上げるようにして届けられる歌声は、耳を傾けていると心を丸ごと鷲掴みされたような気がしてくる……。彼が桁外れのスケールを持ったシンガーソングライターであることが、いきなり強烈に示されたオープニングであった。
2曲目に届けられたのは「よー、そこの若いの」。ライトを浴びながら歌っている彼の全身から放たれる熱が、遠方にいてもまざまざと伝わってくる……。続いて「みんな~、やってるか!」と「Forever Young」も披露された後、短いインターバルを挟んで突入した後半戦も素晴らしかった。心をこめて祈るかのように歌っていた「Amazing Grace」。「くれぐれも身体気をつけて。まだ何も恩返しできてないですから」と言ってから歌い始めた姿が、温かさと優しさに満ちていた「俺のアディダス~人としての志~」。あの場にいた誰もが瞳を潤ませながら見つめているのを感じた「ゴミ箱から、ブルース」……などなど、印象的な場面ばかり。曲が披露される毎に湧き起こる拍手は、どんどん大きくなっていった。
「ビクターロック祭りにまた出させてもらって嬉しいです。またライブに足を運んで頂けるように精進しますので。あの……僕の性格上、夜、悔しくて寝られなくなっちゃいそうだから、もう1回歌わせてください」と言い、先ほど披露した時、実は少しつっかえてしまった「よー、そこの若いの」を再び歌って締め括ったステージ。「今度は上手くいきました。これでぐっすり眠れそうです」と言って照れくさそうに去った彼を、力強い拍手が見送っていた。
Text by田中大
KICK THE CAN CREW
KICK THE CAN CREW Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
昨年8月、14年ぶりに復活。アルバム『KICK!』をSPEEDSTAR RECORDSからリリースしたKICK THE CAN CREWがついに「ビクターロック祭り」に登場だ。昨年はKREVAが単独で出演していたが、3人揃うのは今回が初めてである。
「KICK」の文字が点灯し、春らしくパープルの衣装で合わせたKREVA、LITTLE、MCUがオンステージ。オーディエンスの興奮が静まるのを待つことなく、「千%」をスタートさせた。〈経て からの ここ、2018!ビクターロック祭り!〉と替えたラストフレーズで歓声を巻き起こしたあとは、あの三三七拍子から「地球ブルース~337~」へ。センターに立つメンバーがメインになるシーンでは三者三様の美学を見て取ることができるし、フレーズの受け渡しや3人がユニゾンになるシーンでは一糸乱れぬ連携プレイを目撃することができる。そうして黄金のトライアングルを生で体感できるのももちろんライブの醍醐味だが、「TORIIIIIICO!」でのソロプレイが最高にクールだったDJや、テンションが上がり積極的に声を上げるオーディエンスをも巻き込みながら、グルーヴがむくむく拡大していく感じも堪らない。
そしてこのあと間髪入れず「マルシェ」が始まるのだから、そりゃあ上がるに決まっているでしょう。この日のセットリストはベストヒット・オブ・KICK THE CAN CREW的な内容。KREVAは「まだ(SPEEDSTAR RECORDSからは)アルバム1枚しか出してなくていろいろ言いたいことはあるんですけど、喋るよりも曲聴いてもらいたいなと思ってるので、曲を詰め込んでます。時間が余ったらレキシに譲ってもらって……笑」と話していた。
ということで、MCらしいMCはその1回のみ。ラストの「アンバランス」まで、全7曲、怒涛に次ぐ怒涛。ぐうの音も出ないようなステージは、さながら春の嵐だった。
Text by蜂須賀ちなみ
レキシ
レキシ Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
ステージ上には幟(のぼり)が並び、観客がいるフロア内では稲穂(オリジナルグッズ)が揺れるという……これから戦が始まるのか? それとも稲刈りが始まるのか? 全くよくわからないムードで包まれてしまった会場内。フロアの後方までギッシリと人で埋まっていて、数々の音楽フェスへ爪跡を残してきたレキシへの期待の桁外れの高さが窺われた。
やがて、鳴り響いた勇ましい法螺貝の音。今日のステージを支える頼もしいメンバーたち・3健介さん格さん(Gt/奥田健介 from NONA REEVES)、元気出せ!遣唐使(Piano & Cho/渡和久 from 風味堂)、御恩と奉公と正人(Ba/鈴木正人 from LITTLE CREATURES)、伊藤に行くならヒロブミ(Dr/伊藤大地)、TAKE島流し(Sax & Flute/武嶋聡)、鉄剣通(Trumpet/川上鉄平)に続いて、池田貴史が十二単を身に纏って飛び込んできた。「紫式部に想いを馳せてけ!」といってスタートした1曲目は「SHIKIBU」。稲穂、掌、様々なアーティストの色とりどりのタオルなどを掲げて踊る観客の勢いが凄まじいオープニングであった。
会場をますます明るいパーティー会場と化していた2曲目「KATOKU」を経て迎えたインターバル。「どうもー! ケビン・コスナーです! レキシ、今年のフェスはじめです。ということは、稲穂はじめということです。今年でビクターロック祭りに出るのは4回目。じゃあ、稲穂はじめしようか!」と言ってから演奏へ突入した「狩りから稲作へ」は、観客が大切そうに握りしめている稲穂が大活躍。「稲穂の気持ちになって」と言われて、すっかり稲穂に成りきってユラユラさせている人々の無邪気な表情が実に楽しそう。池ちゃんによる今回のビクターロックフェスの出演者たちの歌のモノマネ、繰り広げたマニアックなコール&レスポンス、危険過ぎるパロディの数々も不敵に炸裂していた。
Text by田中大
Dragon Ash
Dragon Ash Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
いよいよここBARK STAGEもフィナーレの時がやってきた。最後を飾るのは、唯一ビクターロック祭り5年連続出演となるDragon Ash! いきなりバンドの原点でもあるミニアルバム『The Day dragged on』(1997年)から叩きつけた「天使ノロック」のソリッドな激走感で、ホールの熱気をでっかくかき回し、「行け! 幕張メッセ!」のKj(Vo・G)のコールで観る者の魂を震わせていく。さらに、最新アルバム『MAJESTIC』から轟かせたのは「Mix It Up」! ツアーを経て格段にハイパー&ブルータルに生まれ変わったこの曲が、フロアを見渡す限りの狂騒空間へと塗り替えてみせる。
そのまま「For divers area」でBARK STAGEを灼熱の歓喜で包み込むと、「最後ですよみなさん!」と観客を煽るKenKen(B)をフィーチャーしてメッセ震撼級の「The Live」の痛快なカオスへと突入。ヘヴィにして清冽なアンセム「百合の咲く場所で」のイントロに湧き上がった大歓声は、Dragon Ashがロックシーンと、ビクターロック祭りと培ってきた信頼関係を何より明快に物語るものだった。
桜井誠(Dr)&BOTS(DJ)のハイエナジーかつ鋭利なリズムワーク。ロックのダイナミズムの結晶のようなHIROKI(G)&KenKenの硬質なアンサンブル。燃え盛る衝動の化身の如きATSUSHI(Dance)&DRI-V(Dance)の華麗なる演舞。そして、観る者の情熱と真っ向から響き合うKjの絶唱――。それらが渾然一体となって渦巻く「Fantasista」が、眩しいくらいの祝祭感とともに鳴り渡った。
「俺とサクがまだ16歳か17歳ぐらいの時に、原宿のルイードっていうライブハウスでライブをやってて。そのライブを観たビクターのディレクターが、『俺のとこでCD出してみないか』って言ってくれて、Dragon Ashはデビューできました。天国にいるから、拍手してあげてください」と呼びかけるKjの言葉に、一面の拍手が広がる。「ロックの上では、音楽の上ではみんな平等! すべてを曝け出してください!」のシャウトととに、「A Hundred Emotions」の痺れるような轟音が会場を包み込んでいった。
7人が一度舞台を去った後、「1曲だけやらせてください!」とこの日の最後に披露した楽曲は、初期の蒼きマスターピース「陽はまたのぼりくりかえす」(1998年)だった。Kjの歌が、胸震わすアンサンブルが、満場のクラップ&シンガロングと共鳴しながら、フェスの終幕を美しく彩っていった。
Text by高橋智樹
ROAR STAGE
Yogee New Waves
Yogee New Waves Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
ここROAR STAGEの幕開けを飾るのは、3月14日にメジャーデビューEP『SPRING CAVE e.p.』をリリースしたばかりのYogee New Waves! 昨年5月にリリースされた最新2ndアルバム『WAVES』の「Fantasic Show」の肉感的なグルーヴ&角舘健悟(Vo・G)の豊潤な歌声に応えて、オーディエンスの軽やかなクラップが広がったところへ、『WAVES』からもう1曲「Ride on Wave」の心地好いヴァイブと躍動感でメッセの空気を震わせていく。広大なホールはいつの間にか、陽光あふれるビーチのような開放感に包まれている。
さらに1stアルバム『PARAISO』から「Good Bye」を披露。「短い間ですけど、楽しんでいってください」という角舘の言葉に続けて響かせたスロウナンバー「Climax Night」で、妖艶な白昼夢の如き音風景を描き出していく。ラストは最新作『SPRING CAVE e.p.』から「Bluemin' Days」。熱気を刻むタイトなビートとアンサンブルが、一歩また一歩と歓喜のその先へと駆け出していくような多幸感とともに広がり、最高の1日の始まりを晴れやかに彩っていった。
Text by高橋智樹
雨のパレード
雨のパレード Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
早めに来てくれた観客のために「You & I」(ラジオライブ以外で披露するのは初だったらしい)と「epoch」を演奏するという粋なサウンドチェックを経て迎えた雨のパレードのライブ。上手側=大澤実音穂(Dr)、下手側=是永亮祐(Ba)、中央・前方=福永浩平(Vo)、中央・少し後方=山崎康介(Gt & Syn)――というあまり見慣れないフォーメーションが目を引く。「調子はどうですか? 雨のパレードです。どうぞよろしく!」、メンバーを代表して福永が挨拶。そして、1曲目に届けられたのは「Tokyo」だった。ハンドマイクで歌いながら身体を揺らし、雄大に広がるサウンドの中を漂うように歌う福永の姿が眩しい。息を呑んでじっくり噛み締めたくなるオープニングであった。
瑞々しいメロディが印象的な「Shoes」も届けられた後に迎えたインターバル。「楽しんでますか? ビクターロック祭り、5周年らしいですね。俺ら、初回からお客さんとして来ていて、去年連続から出させてもらってます。このステージに立てることを誇りに思います。ビクターは面白い人ばかり。いつも感謝してます。3月14日に『Reason of Black Color』というアルバムをリリースしました。その中から1曲。僕たちの初めての卒業ソングです」というMCを経て届けられた「MARCH」は、先ほどまでシンセサイザーを弾いていた山崎がギターをプレイ。切なさと力強さが融け合ったサウンドが、とても心地よかった。
「今日はここに集まってくれてありがとうございます。4月21日に日比谷野外大音楽堂でワンマンライブをやるので、よかったら来てください。宜しくお願いします!」と観客に呼びかけた福永。そして、ラストは「new place」が飾った。サンプリングパッドと生ドラムの両方を駆使して放つビート、神々しく響き渡るギターサウンド、妖艶に躍動するベースラインに誘われて踊り始めた観客が、一斉に掲げた掌の数がものすごい。会場内に幸福感に満ちたダンスフロアが生まれていた。
Text by 田中大
RHYMESTER
RHYMESTER Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
キング・オブ・ステージ=RHYMESTER、満を持してビクターロック祭り初出演! 「ビクターロック祭り2018、始めるぜ! ザ・キング・オブ・ステージ!」(DJ JIN)のコールとともに宇多丸(RAP)&MUMMY-D(RAP)が登場、挨拶代わりに繰り出した「マイクの細道」の時点でフロアは満員。そのまま「Future Is Born」のファンキーなリズムへと流れ込むと、オーディエンスのジャンプとハンドウェーブでROAR STAGEがでっかく揺れていく。
間髪入れず突入した「Back & Forth」のアグレッシブなビートを切れ味鋭いラップで乗りこなすと、「梯子酒」の文字の染め抜かれた扇子を手にした3人は、ヒップホップ酔いどれ賛歌「梯子酒」へ。「みんな、いろんなバンドを見て、梯子酒状態だと思いますんでね……」という宇多丸の言葉から、「セレブりたい時何飲むの?」「ペリニヨン ペリニヨン」のコール&レスポンスを巻き起こしてみせる。
「ロックバンドで言えば3ピース、生身の演奏でやってるってところをお見せしようと思います!」の宇多丸の宣誓から「The R」「K.U.F.U.」でROAR STAGEをパワフルにアゲ倒す! 「RHYMESTER!」「ビクター!」と次々に放つコールに応えて「No.1!」と一面に湧き上がる観客の大合唱が、迫力の熱演を讃えるように響いていた。
Text by高橋智樹
Reol
Reol Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
ROAR STAGEのhalftime actとして登場したのは、金髪のショートカットが印象的なシンガーソングライター・Reol。3人組ユニット・REOLとしての活動を経て、2018年よりソロアーティストReolとしてCONNECTONEレーベルに所属。この日が所属後初ライヴとのことだったが、そんな気配は微塵も感じさせない堂々たるステージだった。無音のまま、真っ白なギターを携えステージに現れたと思えば、そのままアカペラで「エンド」を始める。ダークな雰囲気を纏いつつも、凛とした力強い歌声に、通行客も次々と足を止め、ステージに吸い寄せられてゆく。「はじめまして、Reolです。よろしくお願いします!」と、初々しい挨拶を終えての「ミッシング」は、打って変わってアッパーなロックチューン。ハイトーンであどけなさの残る歌声と、アップテンポな曲調が彼女のキュートさを引き立てた。そしてあっという間の最終曲。ギターを手放しハンドマイクで披露した「平面鏡」は、まさかのラップ!これには驚いた観客も多かったことだろう。わずか3曲ながらも、引き出しの大さを見せつけた初舞台となった。
Text by イシハラマイ
ぼくのりりっくのぼうよみ
ぼくのりりっくのぼうよみ Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
ROAR STAGEにはぼくのりりっくのぼうよみが登場! 今年2月に20歳になったばかりながら、すでにアルバム3作品をリリース、次世代の牽引者としての熱い支持を集めているぼくりりが、いよいよビクターロック祭りに初出演。脇山広介(Dr)、須藤優(B)、タケウチカズタケ(Key)、宮本仁(Perc)、DJ HIRORONのフルバンド編成でオンステージすると、「Be Noble」の辛辣な時代観/世界観をこの上なくグラマラスに響かせ、一気にメッセの空気を掌握してみせる。
メロディアスなヴォーカリゼーションと緻密なフロウを巧みにスイッチしながら、その歌で聴く者の心の奥底にぐいぐいと入り込んでくる図は、さながらポップの魔術師そのものだ。
さらに「sub/objective」で会場のテンションをさらに高めたところで、「ビクターロック祭り、盛り上がってるかー?……って、盛り上がらない曲やった後にすみません(笑)。今から結構楽しい曲やるんで。踊りましょう!」と最新アルバム『Fruits Decaying』から「Butterfly came to an end」を披露、アッパーなビートとラップでフロアを熱く震わせてみせる。
続けて「アネッサ」CMでもお馴染みの清冽なダンスナンバー「SKY's the limit」で一面のハンドウェーブを巻き起こし、超絶ハイパーな「For the Babel」の加速感でフィナーレ! クリエイターとしての才気のみならず、シンガー/パフォーマーとしての劇的進化ぶりもリアルに感じさせるひとときだった。
Text by 高橋智樹
四星球
四星球 Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
ROAR STAGEも佳境を迎えた時間帯。この日一番の笑い(と小道具の数)で観客を魅了したのは四星球。大いに笑った。でも今日の彼らのステージは、それ以上にグッとくる場面が多かったのだ。謎のアナウンスが今年のビクターロック祭りの裏テーマは「四星球売れに売れました祭り」であることを告げると、ハッピ姿の人々(実はビクターの社員)を引き連れ、金色のハッピを纏ったメンバーが登場。ドラムのモリスはテングになったとのことで、長鼻&全身赤タイツ仕様である。そして四星球が売れに売れたことを称える表彰状が、ビクターの岩渕氏からまさやん(Gt.)へと授与されたところで、ようやく1曲目・宇宙に詳しいと言い張るおっさんの歌「Mr. Cosmo」へ。「今年35歳!同級生はファミリーコンピューターと東京ディズニーランド。同期に負けないように四星球頑張ります!」と北島康雄(シンガー)。後方の物販ブース近くまで達した観客たちが、一斉に手を振り始める。そして「本当はニッパーを動かしたかったんだけどそれがムリとのことで」と、舞台ソデから持ち出したのは段ボールで出来た工具のニッパー。ステージを降りた北島の後を観客たちが、ニッパー(工具)を掲げて追いかけるという摩訶不思議な時間が発生する事態に。当初のUFOを呼ぶ云々という設定はもはや跡形もない。そしていよいよ、この男の出番である。全ての段ボール小道具を手掛ける、まさやんを歌にした「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」。不覚にもこの曲でグッとくるスイッチを入れられた。
「M.A.S.A.Y.U.K.I」「竹田」!とメンバー、観客で熱烈にコール、こんな形のメンバー愛、最高じゃないか。そしてそこからラストまでの流れがもうズルい。自分たちのファンになってくれたビクターへの感謝と20周年ではBARK STAGEのトリを取ることを誓った「クラーク博士と僕」、「歌で何かを叶えたのは初めて」と番組出演の夢が叶ったことを告げて始めた「HEY!HEY!HEY!に出たかった(NEO!)」。これには観客たちも皆、胸にくるものがあったはずだ。「最後みんなでジャンプして終わろうか!」と北島は、観客たちを座らせた。そしてそのまま「この続きは来年あちらのステージでお願いします!」とステージを去っていったのだ。そんな肩透かしも、彼ららしい。愛と涙の段ボール劇場をありがとう、四星球。BARK STAGEのトリを特大の段ボールセットが飾る日を、楽しみに待つ。
Text by イシハラマイ
GRAPEVINE
GRAPEVINE Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
ここまで10組のアーティストが出演したROAR STAGEを締め括るのは、昨年9月にメジャーデビュー20周年を迎えたGRAPEVINEだ。定刻になると、SEなしで田中和将(Vo/Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr)、高野勲(Key)、金戸覚(Ba)が入場。「はい、こんばんは」と田中が軽く挨拶したあと、華やかなブラスの響きと肉体性を剥き出しにしたバンドサウンドが絡む、「Arma」で瑞々しく幕を開けた。続く「スロウ」では照明のトーンも落ち、サウンドのキレは保ったまま、アンサンブルがさらに濃厚かつ豊潤になる。アウトロに達した頃には音の渦が凄まじいことになっていたが、それに埋もれることなく、平然と浮かび上がるボーカルはさらりと、しかし圧倒的な声量を誇る。
GRAPEVINEがSPEEDSTAR RECORDSに移籍したのは2014年のことだが、この「ビクターロック祭り」に出演するのは今回が初めて。そのことに関して、田中は「なぜならば、我々はつい最近ビクターに入ったばかりぺーぺーなもんですから。ひとつこれからも、ビクターロックとしてよろしくお願いします」とコメントしていた。
この日のハイライトは間違いなく、4曲目「CORE」であろう。少ない音数の中でよく映える、風のようにどこまでも行ってしまいそうな歌声。幻想的な響きの冒頭数フレーズを終えたあと、ドラムのビートが加わることによりまた違う趣が生まれて二度美味しい感じになるが、サビに入ると各楽器の演奏が一層白熱。これは三度美味しいぞと思う間もなくセッション的な展開が始まり、バンドサウンドがどんどんサイケ寄りになっていくのだ。曲の尺を大幅に伸ばしながら魅せる、狂おしくも美しい、アンサンブルの妙。音が鳴り止んだあと、この日一番の喝采が起きた。
直後、次が最後の曲である旨を田中が告げるとオーディエンスの残念がる声が聞こえたが、これはもう無理もないだろう。ラストに「光について」を演奏し、5人はステージを去ったのだった。
Text by蜂須賀ちなみ
DJダイノジ
DJダイノジ Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
今年のビクターロック祭りの全体を締め括ったのは、ROAR STAGEの「DJダイノジ」。
大谷ノブ彦(DJ)と大地洋輔(エアギターとパフォーマンス)による「漫才師×DJのハイブリッドエンターテイメント集団」だ。「お手を拝借!」、今年のビクターロック祭りの成功を祝して行った大谷による一本締めがオープニングを華々しく飾り、最強のパーティータイムがスタートした。
ダンサーたちと一緒になって飛び跳ね、エアギター世界チャンピオンのプレイを炸裂させていた大地が初っ端からアクセル全開! あんな姿を見たら、ダンス衝動を抑えられる人類はこの世に存在し得ないだろう。朝からたくさんライブを観てきた観客たちのはずなのに、疲れなんて微塵も感じさせないまま踊り続けていた。そんな空間に放たれたのは、快感のツボを完璧に刺激するナンバー揃い――星野源「ギャグ」で胸をキュンとさせてくれたり、KEYTALK「MONSTER DANCE」で爆発的踊らせてくれたり、サカナクション「新宝島」が爽やかな音像とビートで我々の身も心も包んでくれたり……マックス状態の興奮が、山あり谷なしの状態で会場いっぱいに広がり続けた。
ラストにプレイされたのはサザンオールスターズ「HOTEL PACIFIC」。大谷と大地が「ビクターロック祭り~」と叫び、観客が「最高!」と一斉に叫んだ直後に漂っていた完全燃焼の余韻は、今日1日を楽しんだ観客にとって素敵な思い出となったに違いない。
Text by 田中大
ワン!チャン!!オーディション グランプリ
kobore Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
オーディション「ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2018への挑戦~」にてグランプリを獲得した「琴音」、超能力戦士ドリアン、昨年のグランプリのkobore、SILYUSが登場。
ROAR STAGEにて本日一発目の音を鳴らすのは、kobore、そしてSILYUSの2組。「ワン!チャン!! ~ビクターロック祭り2017への挑戦~」でグランプリを受賞して、昨年出演を果たした彼らが幕張に帰ってきた。
視線を合わせたメンバー4人がジャーンと音を合わせ、佐藤 赳(Gt.Vo)が「東京は府中からやってきました、koboreと申します。よろしくお願いします」と挨拶し、koboreのステージが始まった。連続で鳴らされたショートチューン「爆音の鳴る場所で」「君にとって」が伝えるのは、心から笑い合い泣き合える場所がここであり、目の前にいるのが君だからこそそれができるのだということ。このバンドがライブをやる理由そのものをまず初めに歌うことにより、koboreとは何たるかをまっすぐに伝えてみせた。そして早くもラスト、昨年も演奏していたバラード「ヨルノカタスミ」はドラマティックサウンドに変貌していて、この1年間でのバンドの成長をよく表していた。ROAR STAGE狭しと鳴りわたる、純度の高い4ピースサウンド。「ビクターロック祭り2018」はここからまだまだ続いていくが、全身全霊で鳴らされたその歌は聴き手の心に深い爪痕を残したのではないだろうか。
SILYUS Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
続いてはSILYUSの登場。水泡の効果音から始まるトラックを背に彼は登場し、深々とお辞儀。短く挨拶したあと、スタンドマイクにもたれかかるような姿勢で歌い始めた。後ろに引っ掛けるようなビートと重々しいサウンド。海の底に沈んでいくような音像のなか、アクセントを強めにしたボーカルがよく映えている。そしてkobore同様、SILYUSに関しても、昨年にも披露していた曲にこの1年での成長がよく出ていたように思う。「僕は今までずっと孤独と生きてきたんですよ。だけどみなさんと歌っている今だけは孤独じゃないと思ってます」「もしこの中に『寂しい』とか、昔の俺と同じように『死にたい』と思っている人がいるとしたら、君は独りじゃないってことを伝えたい」と語った後の、ラスト、「Monaural」。ボーカルは以前よりも安定し、言葉を明確に伝えることのできるようになっていたし、不敵なクールさと衝動に突き動かされているような情熱が共存する佇まいは思わず見入ってしまうほどだった。
お昼をまわったROAR STAGEには「ワン!チャン!! ~ビクターロック祭り2018への挑戦~」にてグランプリを獲得し、見事「ビクターロック祭り2018」への出演権を勝ち取った女性シンガーソングライターの「琴音」、そして大阪のコミックバンド・超能力戦士ドリアンの登場。振れ幅がものすごいこの2組のことをダイノジ・大谷ノブ彦が紹介したあと、いよいよライブのスタートだ。
超能力戦士ドリアン Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
「琴音」は、アコースティックギターを持った彼女+サポートキーボーディストという2人編成でステージに臨んだ。1曲目はしっとりとしたバラード「願い」。ある時には空気に混ざるようなハスキーボイスを、そしてまたある時には聴き手の胸にまっすぐ届けるように芯のある歌声を聞かせてくれる彼女。その歌声はとても繊細で、一度耳にしたら忘れられないほどの魅力を持っている。正面をしっかりと見据えながら実に堂々とした佇まいで歌っていたが、MCに入ると一転、喋り方はあどけなく、彼女がまだ高校1年生であることを改めて実感させられる。2曲目には爽やかなアッパーチューン「音色」を届け、先ほどとはまた異なる表情を印象づけた。
「琴音」 Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
続いては、超能力戦士ドリアン。メンバーにいないはずの自称ドラマー(誰だよ)によるアナウンスを経て、やっさん(Gt/Vo.)、けつぷり(Gt.)が入場。1曲目「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」が始まるとおーちくん(Vo.)が恐竜の着ぐるみ姿で登場し、あっという間にカオスな状況だ。と同時に、キャッチーなメロ、シンガロング、シンプルな振り付けなどで「楽しい」満載な状況も作り上げる。ラストはあの3人組になぞらえて自分たちの編成を紹介する「いきものがかりと同じ編成」。ドラムソロで派手なスポットライトが当たるがギターとボーカル以外は同期のためそこは空席、オーディエンスに名前を聞いては「そうですか、僕たちは超能力戦士ドリアンです!」と返すなど、この曲もボケを挟んで進行。そんななか、恒例だという「いいですか!?」「興味あるー!」コールが回を増すごとに大きくなり、どんどん味方が増えていっている感じがしたのが印象的だった。
超能力戦士ドリアン Photo by にしきゆみ(SOUND SHOOTER)
Text by 蜂須賀ちなみ
そして約12時間に及ぶ「ビクターロック祭り」は大声援の渦の中、音楽愛にあふれたイベントのフィナーレを迎えた。
セットリスト
BARK STAGE