江戸東京博物館が再オープン! 記念すべき二大展示『写楽の眼・恋する歌麿』&『大江戸』展レポート
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昨年10月から休館していた東京都江戸東京博物館(東京都墨田区)が、半年の月日を経て、2018年4月1日(日)に再オープンした。1階と5階のミュージアム・ショップがリニューアルし、1階レストランには銀座の老舗「銀座洋食 三笠會館」「カフェ三笠」が新オープン。ほか、エレベーターやトイレなどの館内施設を更新し、東京の文化創造の拠点としてさらなる快適な場所づくりを目指す。
再オープンを記念し、特集展示『写楽の眼・恋する歌麿-浮世絵ベストセレクション-』(4月1日~5月6日)と題し、東洲斎写楽の《市川鰕蔵の竹村定之進》、喜多川歌麿の《歌撰恋之部 物思恋》を常設展示室にて初公開している。
また、東京のルーツである江戸がいかにして政治・経済・文化の中心へと発展していったのかを紐解いていく番組『NHKスペシャル シリーズ大江戸』(4月29日~放送予定)と連動した『大江戸』展(4月1日~5月13日)や、“美意識”と“サステナブル”をキーワードに、江戸からつながる今とこれからの東京を考えるクロストークやパフォーマンスイベントも実施する。
今回の再オープンで、江戸・東京の歴史に触れて理解を深められる場所としてよりパワーアップした江戸東京博物館。その見どころを、3月31日に開催されたプレスプレビューの内容を通じて紹介しよう。
写楽と歌麿の新コレクションお披露目
博物館がやっとの思いで入手した浮世絵は必見!
江戸時代、庶民も楽しめる娯楽として爆発的に広まり、西洋の画家たちにも多大な影響を与えた浮世絵。なかでも東洲斎写楽(生没年不詳)と喜多川歌麿(1753?-1806)は最前線で活躍した浮世絵師である。
ふたりの共通点、それは半身やバストアップなど顔を大きく描いた「大首絵」だ。それぞれの代名詞、写楽の「役者大首絵」、歌麿の「美人大首絵」は、革新的な人物画として当時の人々に新鮮な驚きをもたらし、200年以上たった現代でも高い人気を誇っている。
本展は4つの章からなり、本館所蔵の写楽・歌麿浮世絵版画作品と、厳選した関連資料30点を公開する。なかでも特に注目したいのが、写楽の《市川鰕蔵の竹村定之進》、歌麿の《歌撰恋之部 物思恋》で、いずれも初公開となる。
市川鰕蔵の竹村定之進 東洲斎写楽
写楽の《市川鰕蔵の竹村定之進》。「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」の一場面、「道成寺」の主役で能師役の竹村定之進を描いたものだ。竹村定之進は不義密通が明るみになった娘・重の井の身代わりとして、道成寺の鐘の中で切腹する役である。
演ずる市川鰕蔵(前名・五代目市川圑十郎)は、当時の歌舞伎役者の中でも随一といわれた名優で、この絵はその風格が十二分に表されている。写楽の作品の中でも最高傑作のひとつで、国内のみならず海外でも有名な作品だ。その力のこもった目の形象が本館ロゴマークのモチーフとなっているいきさつもあり、本館が25年かけてようやく収集できた思い入れの強い作品でもある。
裏の落書きから、浮世絵がいかに庶民の暮らしになじむアートだったかがわかる
歌撰恋之部 物思恋 喜多川歌麿
歌麿の《歌撰恋之部 物思恋》。「歌撰恋之部(かせんこいのぶ」は、恋する女たちの表情の奥にある心の動きを描写した5つの主題による連作で、そのうちの「物思恋(ものおもうこい)」は、歌麿絶頂期の美人大首絵として特に名高い。剃り落とした眉、燈籠鬢(とうろうびん)に結った髪から年増(既婚)の女性ということがわかる。頬杖をつき、物思いにふけるその一瞬を描くことで、女性の心の内面を見事に表現した作品だ。
写楽・歌麿が活躍した寛政年間は、「質素倹約」をうたう寛政の改革が行われ、抑圧された時代であった。浮世絵にも規制が及び、それまで全身を描くのが常識だった美人画に大首絵の手法がとられたのは、規制をくぐり抜け、より印象強い美人画を描くためだ。そのため、歌麿は吉原の遊郭に通い、女性の仕草や表情の観察をしたという。
高島おひさ 喜多川歌麿
本展ではほかにも寛政の三美人のひとり、高島屋おひさをモデルにした《高島おひさ》なども公開されている。浮世絵の歴史を変えたともいわれる「大首絵」を、ぜひその場で堪能してほしい。
「江戸」から「大江戸」へ
史上最大のロスト・シティーの歴史を追う
小さな城下町だった「江戸」が、次第に上方を凌駕する経済力を持ち、独自の文化を成熟させて「大江戸」として繁栄するまでを5つの章立てで追うのが、この『大江戸』展である。展示する87点のなかには当館所蔵の資料に加えて重要文化財が含まれるほか、新たに発見された貴重な歴史資料も公開される。そのひとつが、徳川家康の慶長期江戸城を描いた絵図 《江戸始図(えどはじめず)》だ。
江戸始図(松江歴史館所蔵) 展示期間4月24日~5月13日
《江戸始図》は江戸時代初期の江戸城を描いた絵図で、昨年、島根県松江市の松江歴史館が所蔵する資料のなかから発見され、ニュースになった。江戸城は改修が繰り返されるなどし、家康が築いた創築期の江戸城の詳細は謎に包まれていた。だが、この《江戸始図》によって、家康が築いた江戸城中心部の詳細をはじめて的確に把握できるようになったという点で、非常に画期的な資料といえる。
本展では一連の「慶長江戸図」を展示しており、順を追って見ていくことで、江戸城本丸の構造の変遷について理解を深められる。
帰りはフォトスポットで決めポーズ!
両国といえば、“国技館”や“相撲”のイメージが強く、逆にいえばそれ以外の印象はやや控えめな印象であった。しかし、本館のみならず、刀剣博物館、すみだ北斎美術館と文化的素因は整っており、JR駅には商業施設がオープンするなど、この街はめざましい発展をとげている。本展を訪れる際には、両国という街の再発見もおすすめしたい。
イベント情報
会期:2018年4月1日(日)~5月13日(日)
会場:東京都江戸東京博物館 常設展示室内 5F企画展示室
料金:常設展観覧料(一般:600円)
会期:2018年4月1日(日)~5月6日(日)
会場:東京都江戸東京博物館 常設展示室5階 江戸ゾーン「江戸の美」、「芝居と遊里」コーナー
料金:常設展観覧料(一般:600円)