舞台初主演・板谷由夏が我が道を歩き続ける女性科学者を熱演!『PHOTOGRAPH51』開幕
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『PHOTOGRAPH51』
男性社会の中で己の意志を貫き、遺伝子の正体を掴もうと科学の道をひたむきに歩き続けた女性ロザリンド・フランクリン。彼女の生涯を描いた舞台『PHOTOGRAPH51』(フォトグラフ51)が、2018年4月6日(金)より、東京芸術劇場シアターウエストにて開幕した。
本作は2015年秋にロンドン・ウエストエンドにて、オスカー女優ニコール・キッドマンを主演に迎え上演されると大好評。そんな本作が日本に上陸した。主人公のロザリンド役を務めるのは本作が初舞台となる板谷由夏。またロザリンドを取り巻く5人の男たちを神尾佑、矢崎広、宮崎秋人、橋本淳、中村亀鶴が演じる。初日前、公開ゲネプロ(最終総通し稽古)が行われ、舞台の全貌が明らかとなった。
『PHOTOGRAPH51』
序盤、やや硬さが見られた板谷だったが、その硬質さがむしろ男性社会での“異物”として扱われるロザリンドの生き様と重なり、良い効果を出せているようだった。その後は周りに左右されず、己の道を歩き続ける熱い女性科学者を魅力的に演じ切っていた。
神尾佑
『PHOTOGRAPH51』
当時の科学界は男性社会であり、女性の存在が軽んじられていることはウィルキンズの態度で明白。ロザリンドに失礼な態度を“悪気なく”取り続けるものの、徐々に新たな想いを芽生えさせるウィルキンズ役を、神尾が自然な“上から目線”で演じていた。その“上から目線”がときにはコミカルに映り、そして後半では切なさにも変わって見えた。
矢崎広
『PHOTOGRAPH51』
ロザリンドとウィルキンズの間に挟まれるゴズリング役の矢崎は、安定した演技力で二人の間に挟まれ、ときに振り回されるも、ロザリンドを気遣う味方として存在し支えていた。物語には描かれていないが、その姿からゴズリングはロザリンドに上司に対する忠誠以上の好意を持っていたのかも、と思わせるほどだった。
橋本淳
『PHOTOGRAPH51』
ロザリンドが唯一好意をもつキャスパーは、ステージの端からロザリンドを常に見守るように存在し、やがて彼女の世界の住人となる。演じる橋本はほぼずっとステージ下手に座っているが、ストーリーの流れの中で、気配を自由自在に消したり出したりできる。だからこそ次にどのような形でロザリンドの世界に関わってくるのか、非常に気になる存在となっていた。
宮崎秋人
『PHOTOGRAPH51』
ロザリンド・ウィルキンズチームの研究を脅かすライバル、ワトソンとクリック。若さゆえか持って生まれた人格のせいか、相手を選ばず不遜な態度を示し、自分にとって有益なことは見逃さず無邪気に食いつく。人としてはいかがなものか、という言動と態度に思わず笑いが零れてしまう。(余談だが、実際のワトソンも発言にかなり問題がある人だったとのこと)ワトソンを演じる宮崎は、どうにもイラっとさせる嫌な役どころ見事に演じていた。
中村亀鶴
『PHOTOGRAPH51』
そして中村亀鶴は暴走野郎のワトソン、そして上から目線のウィルキンズを時には煽り、時にはブレーキを踏みコース変更をささやく。表情豊かにバランサー役を務めていた。
『PHOTOGRAPH51』
『PHOTOGRAPH51』
男たちは「もしも彼女が……だったら」と「もしも」をたくさん投げかける。まるで研究者が仮説を立てて研究に臨むように。またロザリンドたちは、顕微鏡を使わなければ見えない微細な何かを始終見ているのに、互いの心は見えていない。「もしも、それが見えていたのなら……」そんな皮肉な「仮説」も、本作に込められているのかもしれない。
ゲネプロ後、演出卓にいたサラナ・ラパインに、エンディング前のロザリンドとウィルキンズの言葉のやり取り、そして動きについてこの物語に登場する「あるもの」を彷彿した、と伝えると「そのとおり!」と笑顔で返された。それが何なのか、ぜひ劇場で確認していただきたい。
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
■作:アナ・ジーグラ
■演出:サラナ・ラパイン
■出演:板谷由夏、神尾佑、矢崎広、宮崎秋人、橋本淳、中村亀鶴
<東京公演>
2018年4月6日(金) ~ 22日(日)
■会場:東京芸術劇場シアターウエスト
■料金:8,500円(全席指定・税込)
<大阪公演>
2018年4月25日(水) ~ 26日(木)
■会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
■料金:8,500円(全席指定・税込)
■オフィシャルサイト
http://www.umegei.com/photograph51/
女性科学者がほとんどいなかった1950年代、ユダヤ系イギリス人女性科学者ロザリンド(板谷)は遺伝学の最先端・ロンドンのキングスカレッジに結晶学のスペシャリストとして特別研究員の座を獲得する。当初、彼女は独自の研究を行う予定でキングスのポストを引き受けたのだが、同僚のウィルキンズ(神尾)は出会って早々に彼女を「助手」として扱いロザリンドを不快にさせる。この出会いが、その後彼女たちのチームワークの歪みを作るきっかけとなる。形式上、共同研究者となったロザリンドとウィルキンズだが、二人は常に衝突を繰り返す。助手で指導学生のゴスリング(矢崎)が二人の間を取り持とうとするが、まったく効果なし。やがてぶつかり合いながらも、ウィルキンズはロザリンドに密かな恋心を抱くようになり、幾度も関係の改善を試みるが徒労に終わる。ロザリンドが唯一心を許すのは、彼女に憧れを抱く若きユダヤ系アメリカ人科学者キャスパー(橋本)だけ。この事実もウィルキンズにとってはおもしろくない。子どもじみた嫉妬をあらわにするが、ロザリンドにはウィルキンズの思いはまったく通じない。ロザリンドが特殊なカメラを駆使して撮影するX線画像は、明らかにDNA構造の謎解きの鍵を映し出しているのだが、協力体制の取れていないロザリンド&ウィルキンズチームはその謎の解明に到達できない。そうしている間、野心家のアメリカ人若手科学者ワトソン(宮崎)とウィルキンズの旧友クリック(中村)がチームを組み、DNAの謎の解明に挑み始める―。