アンドリューW.K. × PassCode パーティー野郎とアイドル、異色対談で明かされる両者のショーマンシップ

インタビュー
音楽
2018.4.25
アンドリューW.K. / PassCode 撮影=風間大洋

アンドリューW.K. / PassCode 撮影=風間大洋

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2018年4月1日、『WARPED TOUR JAPAN』で同じステージに立ったアンドリューW.K.とPassCode。サウンド面がハードでラウドという共通点はあるものの、片やアメリカ発の暴走パーティ野郎、片やジャパニーズ・アイドルという、なかなかありえない組み合わせの対談が実現した。PassCodeからは南菜生と大上陽奈子が参加し、お互いの印象からステージングのワザ、パフォーマンスする上での心構えまで、ジャンルも国境も超えて語り合う。パブリックイメージからすると意外なほど真摯な語り口のアンドリュー兄貴から、2人に贈られた金言とは。

 

■自分がバンドから離れたものとして捉えられるのは嫌

――アンドリューとPassCodeは初対面ですよね?

アンドリュー:いや、昨日も会ったよね?

大上:はい。『WARPED TOUR JAPAN』のライブの後に楽屋までご挨拶に行かせてもらって、一緒に写真を撮ってもらいました(笑)。

――ああ、そうだったんですね。PassCodeから観たアンドリューのライブはどうでしたか?

:すごい迫力でした。あんなに人数が多いバンドもなかなかないじゃないですか。編成は違えど、PassCodeも8人でステージに上がっているので、自分たちのライブもお客さんからはこういう雰囲気に見えてるのかな、とかそんなことを考えながら観てました。

大上:ベースがすごくヘビーでカッコいいなと思ってたら、その上にキーボードのキレイな音が乗っかってきたり、音の幅がすごく広くて聴いてて楽しかったです。

――では、PassCodeに対するアンドリューの感想は?

アンドリューPassCodeのライブはさっき映像で観たんだけど、振り付けがすごく印象的だね。

南・大上:うれしい!

アンドリュー:もちろん、ダンスだけではないよ。音楽とダンスは離れた存在だけど、バンドの演奏から歌、ダンス、エフェクトまで全ての要素がひとつになっている素晴らしいショーだと思ったよ。あと、ショーへのアプローチがまるで映画を作っているようで、1秒1秒がしっかりしてると思った。

:ありがとうございます!

アンドリュー:こういうショーをするためにはリハーサルがたくさん必要だろうし、集中力もすごく必要だと思う。それに、練習を通して全てを頭や体に覚えさせないといけないわけだよね?  それを思うとなおさらすごいエネルギーがあると思う。

PassCodeみたいなグループだとバンドから離れたものとして語られることが多いんですけど、全てひとつとして考えてもらえるのはうれしいです。

アンドリュー:俺も自分がバンドから離れたものとして捉えられるのは嫌だから、ステージの上ではそこにいるメンバーみんなが寄り添うようにする努力をしているんだ。昨日もすごく大きいステージだったけど、お客さんがひと目でメンバー全員のことを見られるように意識したよ。

:すごくわかります。

アンドリューW.K.  撮影=風間大洋

アンドリューW.K.  撮影=風間大洋

――PassCodeも、バンドセットのライブのときはフロントに立つ4人だけでなく、バンドメンバーも含めてひとつだという意識がありますよね。

アンドリューPassCodeはライブビデオの編集もそういうことを意識していると思う。ギタリストやドラマーのプレイを頻繁に映していたし。

――大所帯のメンバーをまとめる上で意識していることはありますか?

アンドリュー:長年いろいろ試したけど、さっきも話したように、メンバーみんながより近くで演奏するようにしてるし、そのほうが見栄えがいい。バンドによるとは思うんだけど、みんなが寄り添ってるほうがパワフルに見えると思うんだよね。

――PassCodeはどういうことを意識してますか?

:アーティスト写真は4人だけだから、4人編成っていう雰囲気がすごく出ちゃうんですけど、ライブではそう見えないように。元からこういう編成だっていうふうに見えるようにやっていかないと、勝っていけないと思ってます。さっきおっしゃっていたように、バンドメンバーも含めてみんなでステージに立っているし、それでひとつのグループであるべきだと思ってるので、そういう思いをしっかりと届けるために今、本当に試行錯誤しています。

――なるほど。

:あと、バンドの編成によってもメンバーのアプローチが変わっちゃうから、それもよくないなと思っていて。どんな編成でもチームとして一体感の出るようなライブをしないといけないと思ってるんで、今の話を聞いて「なるほどなぁ」って。

アンドリュー:逆に自分の場合はソロアーティストとしての利点もあって。例えば、インタビューのときは一人で話すことができるし、バンドだと誰かが脱退することはすごく大ごとになるけど、自分もバンドメンバーもそういうプレッシャーはないし、お互いが自由にできる。だから、俺はソロでもあり、バンドでもあるっていうことを堪能してるよ。

PassCode・南菜央 撮影=風間大洋

PassCode・南菜央 撮影=風間大洋

■地球に住んでる人をグループに分けるとするなら、俺たちは同じチームにいる人種

――昨日のライブの手応えは?

アンドリュー:すごく良かったよ。俺は自分に対してすごく厳しいほうなんだけど、バンドも上手くやってくれたと思う。

――たしかにいいライブでしたね。

アンドリュー:でも、毎回ベストなものにしようとは思ってるんだけど、「じゃあ、いいショーってなんなの?」っていつも考えてしまって、それが未だに自分のなかで解決できてないんだ。

:私たちも何がいいライブなのか悩むことが多くて。

大上:うん。

:でも、20年も活動を続けているアンドリューさんがまだ解決方法を探してるというなら、自分たちが分からなくても仕方がないというか、探していけることはいいことなんだなって今思いました。

アンドリュー:ショーで自分がどう感じたかと、ショーのクオリティ自体を分けて考えるのは難しいんだけど、みんなが楽しんでくれたなら、それは素晴らしいショーだったんだと思う。それに、毎回自分たちが満足できるショーっていうのはありえないし、だからといってそれが悪いショーだということにはならない。そういうことは悟ってきたよ。

大上:昨日もそうだったんですけど、自分ではあんまりよくできなかったなって思うライブでも、周りから「すごくよかったよ」って言われることがあって。

アンドリュー:「自分たちにとってはよくなかったのにリアクションがいいってどういうこと?」って考えてしまうことはあると思う。ショーをすることによって誰を満足させるのか?っていう答えは、簡単に見つけられるものではないからね。だけど、そこまで自分の時間を費やして考えるということ自体が素晴らしいことだと思っていいと思うよ。

:昨日は楽屋に帰ってからダメだったところを反省しちゃって。お客さんの反応と自分たちのステージングの完成度が比例しないというか、その感じにモヤモヤしちゃって、自分たちがどうやって見えていたのかも分からなかったから落ち込んじゃって。

大上:でも、今のアンドリューさんの話を聞いて、「ああ、そういう考え方もあるんや」って感銘を受けました。

PassCode・大上陽奈子 撮影=風間大洋

PassCode・大上陽奈子 撮影=風間大洋

――今の4人にとっては特に染みる言葉ですね。

アンドリュー:ああ、それはうれしいよ。共感できるってことはいいよね。地球に住んでる人をグループに分けるとするなら、俺たちは同じチームにいる人種だと思うんだ。ミュージシャンじゃないとしても、コメディアンだったり、パフォーマンスを生業にしている人はみんな同じチーム。こういう感覚って外の人にはわからない。だから、そういうつながりを感じられるのはうれしいよ。

――やっぱりアンドリューは兄貴感が半端ないですね! これまで世界中を何度もツアーで駆け回ってると思うんですけど、将来PassCodeが世界に出るときのために何かアドバイスはありませんか?

アンドリュー:うーん。俺は旅が好きだから特に困難なことはないんだよね……あ、でもひとつアドバイスがある。他の人の言うことは聞くな。もちろんツアーには大変なこともあるだろうし、そういう話をする人もいるかもしれないけど、そのマインドのままツアーに出てしまうと本当に大変だと感じてしまうから。自分のアドレナリンと自分の核となるエネルギーを信じて、とにかくショーを優先すること。せっかく旅をしているんだからこういうレストランに行きたいとか、美術館に行きたいとか、できるだけたくさんのことをやろうとしてしまうかもしれないけど、もしそういう場所に行くんであれば、それがショーを完璧にする助けになるようにすることだね。

――これは国内のツアーにもつながるアドバイスですね。

南・大上:はい。

アンドリュー:ショーに集中することを優先していると、ツアー先にいる友だちからの「うちに来なよ」とか「ご飯食べに行こうよ」っていう誘いを断ることに罪悪感を感じちゃうことがあるし、「せっかく旅をしているのに、これもしなかったしあれもしなかった」って考えちゃうと、仕事と旅のバランスが取れなくなってきて重荷になってしまうこともある。でも、自分は今、そういう場所に行かない、考えないようにするのはいいことだと思えてるよ。その分、いいショーができてるからね。

:いやぁ……すごい。

大上:ショーに対する気持ちの強さとか、大切にしてることの強さが伝わってきます。自分たちもライブに重きを置いてやっているので、そこまで考えられるようになりたいですね。

:あと、“ショー”っていう表現の仕方が素敵やなって思います。

アンドリューPassCodeのショーを観ていても分かるけど、俺と同じぐらいみんなも集中してると思うんだ。だからこそあんなに素晴らしいステージができるんだろうし、時間も体力もあらゆるものをショーに賭けてるんだと思うよ。

――将来、アンドリューW.K.とPassCodeの対バンが観てみたいです。今日の話を聞きながらそう思いました。

アンドリュー:それはグレイトだね。俺もまた日本でツアーしたいと思ってるから、もしそうなるなら自分たちにとってもすごくいいことだと思うよ。

:そのときはもっと大きくなって、もっと自分たちを誇れるぐらいになっていたいですね!


取材・文=阿刀“DA”大志   撮影=風間大洋

アンドリューW.K. / PassCode 撮影=風間大洋

アンドリューW.K. / PassCode 撮影=風間大洋

リリース情報

PassCode 3rdシングル「Ray」 
5月23日リリース
初回盤

初回盤

[初回限定盤DVD付]
価格
¥3,240 (税込)
品番
UICZ-9103
 
通常盤

通常盤

 
[通常盤]
価格
¥1,080 (税込)
品番
UICZ-5095

ツアー情報

「PassCode Presents VERSUS PASSCODE 2018」
2018年7月1日(日) 東京LIQUIDROOM 
2018年7月7日(土) 愛知CLUB QUATTRO
2018年7月8日(日) 大阪BIGCAT
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