まるで春の女神! ソプラノ歌手鈴木玲奈の圧巻の歌声

2018.8.2
レポート
クラシック

鈴木玲奈

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「サンデー・ブランチ・クラシック」2018.4.22 ライブレポート

クラシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート「サンデー・ブランチ・クラシック」。4月22日に登場したのは、ソプラノ歌手の鈴木玲奈だ。
東京音楽大学声楽演奏家コース及び同大学院を共に首席にて修了した鈴木玲奈は、第86回日本音楽コンクール声楽部門優勝をはじめとした数々の受賞歴と、日生劇場でのオペラ『後宮からの逃走』ブロンデ役をはじめ、『ランメルモールのルチア』タイトルロール、『ラ・ボエーム』ムゼッタ役、『愛の妙薬』ジャンネッタ役、歌劇『BLACKJACK』彩香役など、歌唱と共に豊かな演技力で活躍の場を広げている。現在、日本での多くのコンサート活動等と並行して、明治安田クオリティオブライフ文化財団海外音楽研修生としてウィーンに留学中で、正確なコロラトゥーラの技術で観客を魅了する、ソプラノ歌手の新星として喝采を集める存在だ。

そんな鈴木が、現在アンサンブルピアニストとして、また二期会、日本オペラ振興会等で、平成生まれの新生コレペティトール(オーケストラに代わって稽古場でオペラの伴奏ピアニストを務めるなどの、音楽スタッフ)として高い評価を受けている天日悠記子のピアノとの共演で、サンデー・ブランチ・クラシックに2回目の登場を果たすとあって、この日のリビングルームカフェには男性の姿も多く見られる。今か、今かと高まる熱気の中、鈴木が天日と共に登場。演奏がはじまった。

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

春爛漫の季節に合わせた、オール「春」づくしのプログラム

まず最初に歌われたのは、ヴァイオリニストとして、また指導者としても活躍したイタリア人、ティリンデッリの代表曲の1曲「おお春よ」。春の訪れの喜びを歌ったこの曲が、天日のピアノの華やかな前奏から鈴木の豊かな歌声で響き渡ると、カフェが瞬時にして音楽にあふれ、聴衆が聞き入るのが伝わる。曲はゆったりした部分から、後半へと徐々に盛り上がり、輝く高音が伸びてフィニッシュを迎えた途端、早くも「ブラーヴァ!」(女性アーティストに向けた「ブラボー!」)の声があがった。

鈴木玲奈

鈴木玲奈

鈴木玲奈

「春爛漫のサンデー・ブランチ・クラシックにようこそおいでくださいました」との挨拶から、今日のコンサートがこの季節に合わせた春の歌を集めたプログラムであることが、鈴木から話されて、続いたのは日本の歌。まず歌われたのは中田喜直の「ゆく春」。春の訪れと共に咲く桜ほど、日本人の心を浮き立たせる花も少ないが、その分美しく咲き誇り、あまりにも潔く散っていく、その桜の散る様に切なさを覚えた経験もまた、多くの人が体験していると思う。その散りゆく桜への哀しみを表現したこの曲を、鈴木は実に表情豊かに歌う。「さくらさくら」のメロディーと「ちょうちょ」のメロディーが巧みに織り込まれた曲の美しさを、歌声と伴奏がひとつになって届けてくれ、蝶が舞う姿にも短い命への哀切が込められていく。コロラトゥーラソプラノの鈴木にとっては、相当に低い音域であろう終盤にも深みがあり、哀しみに満ちた曲の終わりに深い余韻が残った。

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

そのまま引き続いて、山田耕筰の『風に寄せてうたへる春の歌』より「君がため織る綾錦」へ。山田が新劇運動を興した演出家土方与志の結婚祝いの為に書いた楽曲で、色とりどりの美しい春の野山を、春が織りなす錦の衣とたとえた、文学的な楽曲。鈴木の声にも、天日のピアノにも気品と清楚さがあるのが、この曲に何よりも相応しかった。

鈴木玲奈

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

もう1曲日本の歌を、とのことで歌われたのは、小林秀雄の「すてきな春に」。演奏会用のアリアとして書かれたこの曲は、オペラアリアと同じく、語るように歌われるレチタティーボ=叙唱からはじまる。「ある朝わたしは街かどで、すてきな春にあいました」は、もちろん春にはじまった恋を描いた比喩表現。その出会いの衝撃を、鈴木は歌のヒロインになりきり演じているように届けてくれ、まさにオペラアリアの趣。メロディーが進み、恋する喜びとときめきが春を謳歌する様が実に華やか。ピアノも存分に歌って、瑞々しくも華麗な歌唱にひと際大きな拍手と歓声が湧きおこった。場面がストレートに伝わる日本語歌詞の良さが、全面に出た1曲だった。

コロラトゥーラソプラノならではの技巧と表現が際立つオペラアリア

ここでひと息いれて、鈴木と天日が改めて経歴と自己紹介を。二人は同い年で、とても仲が良くディズニーが大好きという共通点もあるそう。地方での演奏会の折にはホテルの一室で夜が更けるまで語り明かしたというエピソードが微笑ましく語られる。またコンサートホールとは違うリビングルームカフェの、気軽に訪れられるコンサートだからこその再会として、鈴木のご友人が10年ぶりに聴きに来てくれているという紹介もあり、和やかな雰囲気の中コンサートは終盤に。ヴェルディのオペラ『リゴレット』から「慕わしき人の名は」が歌われる。ジルダという若い娘が、毎週通う教会で片思いを募らせていた男性から、いきなり恋を打ち明けられた二重唱に続いて、初々しい初恋の喜びととまどいを歌うアリアで、鈴木の清楚な雰囲気に楽曲がベストマッチ。後半にはコロラトゥーラソプラノならではの、軽やかに転がるような高音の魅力が満ちあふれる、素晴らしい歌唱になった。

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

そして、いよいよプログラムの最後はベッリーニのオペラ『夢遊病の女』から「気も晴れ晴れと」。結婚を前にした村娘が村人からの祝福を受け、喜びを歌うアリアで、前半は美しい高音にしっとりとした想いが。後半にはコロラトゥーラソプラノの技巧的なテクニックがふんだんに入り、天日の華やかなピアノ演奏に乗って、鈴木が徐々に心の内の喜びを爆発させていく様に、こちらの気持ちまで浮き立つよう。高らかな歌声がフィニッシュを迎えた時には、鳴りやまぬ拍手と「ブラーヴァ!」「ブラーヴァ!」の歓声がいつまでも続き、やがてアンコールを求める手拍子へ。

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

鈴木玲奈

その拍手に応えてのアンコールはアルディーティ作曲の「くちづけ」。軽やかなワルツに乗った、鈴木の表現はとてもキュート。天日のピアノも明るく大きな演奏で、互いが呼応し合うように盛り上がりながらあくまでもチャーミング。クライマックスが華麗なカデンツァで歌われた歌唱の輝かしさに、リビングルームカフェ全体が春色に包まれたコンサートは終わりを告げた。実に贅沢で豊かな40分間だった。

鈴木玲奈、天日悠記子(ピアノ)

クラシックの魅力を様々なかたちで伝えていきたい

華やかな演奏を終えたお二人にお話しを伺った。

ーーお二人共、サンデー・ブランチ・クラシックには2回目の登場ですが、会場の雰囲気や、演奏していて感じたことなどから教えてください。

鈴木:前回同様お客様がリラックスしてお聴きくださっているのが肌で感じられて、会場がアットホームな雰囲気に包まれていたので、私自身も楽しく演奏させていただくことができました。

天日演奏していてお客様のお顔が見えるところ、というのはなかなかないですし、しかもそのお客様がリラックスされていて、演奏が進む毎に表情が豊かになられるのが見えるので、私も演奏していてとても嬉しかったです。

(左から)鈴木玲奈、天日悠記子

ーー久しぶりのご友人も駆けつけてくださったそうですね!

鈴木そうなんです!しばらく会えていない友人が、私のSNSの投稿を見て、「コンサートホールに足を運ぶのは少し緊張してしまうからクラシック音楽を聴く機会が少ないけれど、『サンデー・ブランチ・クラシック』は気軽に行けそうかな?」とご連絡をくださり、とても嬉しかったです! また、小さなお子さまがいらしても気軽にお越しいただけることも魅力の一つだと思います。このような機会をきっかけに様々なコンサートをお聴きくださる方々がさらに増えてくださったら幸せですね。

ーーまた今日は春をテーマに、バラエティーに富んだ曲目でしたが、選曲にあたってはどんな工夫を?

鈴木前回出演させていただいた際にはオペラアリアだけを歌わせていただきましたので、今回は日本歌曲も選曲しました。このような身近な場だからこそ、日本語の歌でダイレクトに心に響いていただけたら嬉しいなと思いました。あとは、やはり歌曲だけではなく、オペラアリアも入れたいと思いましたので、人生の春がくるという意味で、恋のアリアも入れさせていただきました。

鈴木玲奈

ーーそうした様々な曲をご一緒されていかがでしたか?

天日やはり気心が知れているので、安心感があって、見えないところでも気持ちが通じると感じられるので、どの曲もとても楽しく演奏することができました。

ーーMCでも同い年でとても仲良しでいらっしゃるというお話がありましたが、演奏家としてのお互いの魅力をどう感じていますか?

鈴木とても優しくて真面目で、音楽に対して情熱的なので、忌憚なく言い合える仲でいられることをありがたく思います。

ーーそれは共に演奏される上では素晴らしいですね。どこかで遠慮があるというよりも。

鈴木そうですね、それは演奏にも表れてしまいますからね。これからも切磋琢磨できる間柄でいたいです。

ーー天日さんからは?

天日いっぱいあるんです! 何を言おうかな……(笑)。私は最近オペラの現場でやらせていただいているので、年齢層が違う方とご一緒させていただく機会が多いのですが、その中で同い年の鈴木玲奈さんが大活躍してくださっていて、ご一緒できると、こうしてみようかな? ああしてみようかな? と、私もどんどんアイディアが出てくるんです。なかなか伴奏家というのは、自分の意志でやりたいことをやるというのが難しいのですが、玲奈さんは私からの発信、アイディアをむしろどんどん引き出してくださるので、とても楽しませていただいています。

天日悠記子


ーーでは、お互いにとても良いパートナーなのですね。

鈴木はい。リハーサルの時間も、私たち結構長いよね?

天日あぁ、確かに!

鈴木色々と意見を交わしながらセッションできることが嬉しいです。

ーーディズニーが好きという共通点もあるとのことで、お二人共今日はディズニープリンセスのようですよ! 鈴木さんはウィーンでも研鑽を積んでいらっしゃいますが、その生活は刺激になりますか?

鈴木日本と行き来をさせていただいておりますが、やはりウィーンと東京では空気が全く違っています。東京ももちろん大好きですが、ウィーンにはウィーンならではのゆるやかな時間の流れがありますので、それも私にとっては心地よいです。両方の時間の流れの中で、現在様々に活動させていただけていることはとても貴重な経験で、感謝しています。

鈴木玲奈

ーーそれは貴重なものになっているでしょうね。お二人共、これからますます活躍が広がると思いますが、今後の活動に対しての夢や、目標などは?

鈴木より多くの方々にクラシック音楽をお聴きいただきたいと思っています。小さなお子さまから、コンサート会場へはなかなか足を運べないという地域の方や、ご年配の方々にも様々な形で私の演奏を通してクラシック音楽の魅力をさらに知っていただけるよう、国内外で幅広く活動していきたいと思っています。ですから今日のリビングルームカフェでの演奏も私にとって貴重なひとときでした。

天日私は前回こちらに出演させていただいた2ヶ月後からコレペティトールとして様々な団体で活動させていただいてきています。オペラの縁の下の力持ちとして、スタッフとして携わらせていただいていて、その道は是非究めたいと思っています。アーティストという立場であっても、スタッフという立場であっても、お客様に生の舞台、生の音楽に親しんでいただきたいという思いは前にも増して強くなっていて、クラシックオペラというのは人間の声をマイクを通さないでお届けする唯一のジャンルだと思うんです。ですからその魅力をもっとたくさんの方に知っていただきたいと思います。

ーーコレペティトールとして関わっていらっしゃる7月の二期会オペラ『魔弾の射手』には、元宝塚男役スターの大和悠河さんも出演されますね。

天日そうなんです! きっと大和さんを通して、初めてオペラをご覧になるというお客様にもたくさんいらしてくださると思うので、この機会を通してオペラの魅力に触れていただきたいです。

ーーでは、また是非お二人でのコンサートも企画されてください。そして、サンデー・ブランチ・クラシックにもまたいらしてくださいね!

鈴木それはもう是非!よろしくお願い致します!

天日はい! よろしくお願い致します!

(左から)鈴木玲奈、天日悠記子

取材・文=橘涼香 撮影=福岡諒祠

ライブ情報

『サンデー・ブランチ・クラシック』
 
 8月5日(日)
青木智哉/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: ¥500
 
8月12日(日)
13:00~13:30
田原綾子/ヴィオラ
MUSIC CHARGE: ¥500
 
8月19日(日)
飯尾久香/チェロ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: ¥500
 
8月26日(日)
長 哲也/ファゴット
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: ¥500
 
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
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