『韻シスト 20th ANNIVERSARY~NeighborFood SPECIAL3DAYS~』 韻シスト×Chara “僕らだけのコミュニケーション"
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韻シスト×Chara
大阪を拠点に活動している日本最高峰のヒップホップバンド、韻シストが結成20周年を迎えた。しかも、『韻シスト 20th ANNIVERSARY~NeighborFood SPECIAL3DAYS~』と銘打って豪華なイベントも開催する。ゲストはChara、kenken、フジファブリック、PUSHIM、Rickie-Gなど、豪華な顔ぶれが揃った。今回は結成20周年とアニバーサリーライブを記念して、韻シストのTAKU(Gt)、SHYOU(Ba)、TAROW-ONE(Dr)とCharaの座談会を敢行。2組の関係から、20周年を迎えてどんなことを思ったのか、どうしてお互いに惹かれあっているのか、たっぷりと話を聞くことができた。
韻シスト×Chara
——Charaさんと韻シストの皆さんはいつから交流があるんですか?
TAKU:2013年ですね。元々はkenkenが僕らとCharaさんを繋いでくれて。
Chara:kenkenはね、アルバム『Cocoon』(2012年10月発売)の時に参加してもらってて。その流れで。
TAKU:紹介してもらった、その年にCharaさんと一緒に『JEWEL』(2013年11月)の「Junior Sweet」をアレンジすることになったんです。
SHYOU:初めてお会いしたのは下北沢の「440」ですよね。
Chara:マリさんのライブだっけ? 金子マリさんが「440」というライブハウスにレギュラーでライブをしてて。
TAROW-ONE:あの時のCharaさん、おでこにバンドエイド貼ってた。
Chara:それねぇ、コテで時々やっちゃうの。
一同:(笑)。
Chara:(2013年の)フジロックに出た年だからkenkenとかRio(下畑"Rio"良介)がサポートしてくれたりして、よく一緒にいたの。そのメンバーといる時に会ったよね。
SHYOU:まさかCharaさんがそこにいるなんて考えてもないというか、てっきりRioの彼女やと思ってて。帰りに「Rioの彼女、めちゃめちゃ可愛くない?」って話をしたら「いや、Charaさんやで」、「マジで‼」って。
Chara:紹介したじゃん!
TAKU:リーダー(SHYOU)が言うには「Rioくんが彼女連れてるわ」的に見えたらしいんです。だから、最初はCharaさんだと認識してなくて。
Chara:だからか。最初に紹介された時に「別に…‥」みたいな感じだったよね。
TAKU:アハハハハ。俺は初めて明石家さんまさんを見たときのような「あっ! さんまや!」みたいなノリで、「あ! Charaや!」って(笑)。ほんで「うわぁ! Charaと喋ってる、俺!」みたいな気持ちになって、帰りに「Charaと喋ったっすねぇ!」とリーダーに言ったら「え……あれはRioの…‥え! え!?」、「ちゃうで、Charaや!」、「ホンマや!」って(笑)。
SHYOU:その後、僕らのライブへ遊びに来ていただいて。
TAKU:その流れで『JEWEL』に参加させていただきました。
韻シスト
——じゃあ、Charaさんが韻シストのライブを観に行って、演奏が良かったからアルバム制作に誘ったんですね。
CHARA:それもあるし。まぁ、いろんな人との出会いを大事にしてて。気が合うとか、グルーヴが合うとか、みんなのそういう部分も惹かれた。
——知り合ってすぐに声をかける、その行動力はすごいですね。
Chara:なるべく初めての体験を作るようにしてるのかも。だから、世間で売れてるプロデューサーじゃなくても自分がやりたいと思えば連絡を取ったり、ライブを観に行くようにしてる。それは音楽を嫌いになりたくないし、飽きたくないので。バンド内だったら「このバンド良いから聴けよ」とか「このライブが良いから、行こうぜ」ってあるかもしれないけど、私はChara1人しかいないから。そういう刺激を求めるのは好きなのかもね。
——その後、「Junior Sweet」で初めて共演された時はどんな手応えを感じました?
TAKU:初めてのことがすごい多かったです。
TAROW-ONE:スタジオも豪華だし。
Chara:どうやって進めたんだっけ? 私が「Junior Sweet」をやってほしいって言ったんだっけ?
SHYOU:そうですね。
韻シスト
——そして2014年に「I don't know」をリリース。そのあとにChara×韻シストBANDとして多くのツアーやフェスに出演されましたよね。
TAKU:そうですね。フェスとかツアーで一緒にライブをさせていただきつつ、同時進行で「I don't know」も録ってました。
SHYOU:そう考えると、「I don't know」からというよりも『JEWEL』からいろいろとご一緒してる感じですね。
TAKU:2014年と2016年もビルボード、ブルーノート、夏フェスもご一緒させていただいて。
——そこまで親しい関係になったのはどうしてなのでしょう?
TAROW-ONE:(キッパリと)僕らがめっちゃ好きだから!
TAKU:僕らが「Charaさ〜ん!」って駆け寄るので、Charaさんも「もぅ〜、しょうがないなぁ」という感じじゃないですか(笑)。
Chara:韻シストのみんなに囲まれていると、ホストクラブにいるような気持ちになるの……行ったことないけど。
韻シスト:アハハハハ!
韻シスト
——どう言うことですか?
Chara:みんな礼儀があって、しかも韻シストって女の人がいないからか、すごく丁寧に接してくださる(笑)。ただ年上だと遠慮しがちなんだけど、ちゃんとミュージシャン・シップもあるよね。あとはスタジオで私が言いたいことを通訳してくれる。「こういうことを言いたいんじゃないか」って。
TAROW-ONE:そうなんです。「こういうことっすよね!?」って。
——素晴らしい! 意思疎通がちゃんとできてるんですね。
Chara:バックバンドは嫌だから、ちゃんと思っていることをお互いに言うようにしたの。それが大きいかもね。
——ミュージシャンとしてはお互いをどう思ってますか?
SHYOU:(Charaさんは)楽曲はもちろんですけど、ライブも全部プロデュースしはるんです。誰か監督がいて「こういう風にしよう」、「ハーイ」の感じじゃない。ああいう大きなステージに立つ人なのに、全部1人で作ってはるのがすごいなと思いましたね。
TAKU:世代的にもどっぷりなので、高校生の時はクラスの女の子がこぞって自分のMDにCharaさんの曲を入れてて。
Chara:MD!
TAKU:ハハハハハ。それにカラオケへ行ったら、女の子は絶対に歌うみたいな感じやったんで。女子から超人気の可愛い歌のお姉さん、というイメージがあったんですけど、一緒に演奏した時に「サウンドをこんだけやらはんねや!?」って。全部の作詞・作曲もやってるし、ステージングまで全てにおいて刺激を受けました。
Chara:ソロだとそれが普通じゃない?
TAKU:曲を作るのはプロデュースしてる方だったりするじゃないですか。でも、Charaさんは大量に作ったデモの中から、ご自身で厳選してはる。
——『Sympathy』(2017年7月発売)でBASIさんと共演されましたよね。Charaさんには珍しく、作詞をBASIさんが担当して。
Chara:そうそう。あんまり人の詞って歌わないんだけど、彼はすごくロマチックで可愛いらしい歌詞を書くの。「I don't know」の時も彼の詞を歌って楽しかった。だから私が書かないこともある。
TAROW-ONE:それもすごいことですよね。
●それぞれの音楽との向き合い方●
韻シスト×Chara
——去年、BASIさんにソロアルバム(『LOVEBUM』)のインタビューをさせてもらって。そしたら「アルバムを作っていた時期は、ずっとCharaさんを聴いてた」と。理由を尋ねたら「Charaさんの音楽は、どこの国の音楽か分からないような他にない魅力があるんです」と話してて。
TAKU:あぁ〜〜!
Shyoudog:だからか! 前のアルバム(『Another Day』(2017年7月発売))の時に「どこの国か分からないようなジャケットにしたい」とBASIが言ってて。
TAROW-ONE:言ってた(笑)。
Chara:この間、(BASIから)LINEが来て「このアルバムはインスピレーションbyYEN TOWN BANDです」と書いてあって。それで出来上がったCDを聴いたら「あぁ、もしかして“She don’t care”のマイナーなギターコードの感じかな」って。でも、音の置き方は全然違うし、言われたら「そうなのかな」と思うぐらい。
TAKU:BASIは僕らと違って、Charaさんの歌詞にすごい影響を受けてて。
Chara:『Sympathy』に参加してくれた「Intimacy」がすっごい楽しかったの。“親密な関係”という意味があるんだけど、私はそういう詞を書かないから、私も影響を受けてると思う。
SHYOU:ボーカルに関しても唯一無二ですよね。Charaさんにしかない世界観はホンマに魅力やと思う。
Chara:私は歌だけだと本当にダメなんだよね。最近になって、ようやく人の作品に「歌だけでも参加して良いよ」と言えるようになったから。
TAKU:え! そうなんですか。
Chara:いやぁ、歌に関しては本当に自信ない(笑)。私は曲を作ることと、楽器を演奏することが好きなんだと思っていたから。20年目くらいから「歌もいけるかもしれない」とようやく思えた。
TAKU:すごい話ですね。
Chara:そもそも、YEN TOWN BANDの「あいのうた」(「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」)をChara名義で歌うことにも抵抗があって。20年目くらいで、やっと良い曲だなと思えるようになったの。振り返るとだいぶ時間がかかちゃった。
TAKU:名曲にドラマありですね。
Chara:韻シストも20年でしょ? それだけ経つといろいろね。
TAKU:わかります。曲作りはもちろん、音楽との向き合い方もめっちゃいろんなことが変わってきます。Charaさんはデビューアルバムから変わらない、たくましい姿勢がありますよね(笑)。
Chara:デビューの頃は大変だったの。まだ若かったし、ライブだって今よりも未完成だし。まぁ、周りのクリエイターの人に挟まれながら戦ってたね。
TAKU:当時は今よりも激しい時代ですよね。
Chara:女の子のソロだし、生意気と思われちゃうけど自分で「嫌だ」とハッキリ言わないと変な仕事をやらされる。……例えば、ちょっとセクシーなグラビア雑誌の撮影もあったわけ。
TAKU:あ、オファーが来たんですか?
Chara:そうそう! 実際にやってたんだけど「もうちょっとスカート上げて〜」とか言われちゃってさ「え、私、脱いじゃうじゃん!」って(笑)。悔しいから「ちょっと、すいません」って何食わぬ顔で裏にはけて、泣いたりしてた。そういうのはいっぱいあったよ。みんなはないでしょ?
TAROW-ONE:そうですね。僕らが「スカート上げて〜」って言われても。
TAKU:むしろ「もっと上げましょか?」って言いそう(笑)。Charaさんにそんな要望をする人がいたんですね。
Chara:いるいる! そういうことを言ってくるカメラマンさんもいた。
TAKU:まじっすか!
Chara:今は何も言われないけど、当時は戦いだった(笑)。
Chara
——20年という話が出ましたけど、韻シストの皆さんは今年20周年を迎えられていかがですか?
TAROW-ONE:昔と感覚が何も変わってなくて。知らん間に大人になってた、という。
TAKU:知らん間に大人になっているのが、この仕事の怖いところですね。高校生とか若いバンドを見て「気持ちは全然そっち側やけどな」と思ってます。
SHYOU:元々、長く続けるつもりでバンドを始めたから、続いてること自体に驚きはないです。
Chara:今のメンバーになってから20年?
TAKU:初期メンバーはリーダーとMC2人(BASI、SAKKON)ですね。僕は2006年でTAROWくんが2008年くらいから加入しました。今のメンバーになってから10年近いんですかね。
Chara:最初はバンドでデビューしたかったから、バンドマンは憧れる(笑)。でも「バンドじゃなくて、ソロでどうですか?」って言われたから「やります!」って決めちゃったけど(笑)。
——Charaさんが20周年を迎えられた時はいかがでしたか?
Chara:ええ〜……あんまり良く分からない。45歳だったから、体力的な変化には驚いたけど、あとは特に。変化としては5年くらい前から携帯のボイスメモを使い始めた。それより前はエディロールで音を録ってたんだけど、そういうことが変わった。
●20周年の先にあるもの●
韻シスト
——韻シストの皆さんは、20周年を迎えて新しく見えた目標はなんでしょう?
TAKU:大人の階段を登りたいですね。おじさんになるという気持ちじゃなくて、バンドとしても大人なオモロさをどんどん見つけていきたいな、と思ってます。
SHYOU:今、20周年を記念してアルバムを制作してるんですけど。今までよりも、さらにアグレッシブに行きたいなと思って。とにかく、どんどん挑戦したい。「ランシドみたいな曲を作ったことないから、やってみるか」とか。
TAROW-ONE:そう考えると、約30年も第一線で活躍されるってすごいですよね。
Chara:昔から淡々と続けることが好きだから、今もお仕事できてるのかなぁ? どんな仕事でも続けることは大変だよね。まあ、私にとってはCHARAが仕事だと思ってる。最近、アルバムを作り始めたんだけど、やっぱり曲を作るのが一番好きなの。ほかには今年で27年目なんだけど、今、幸せになることが目標で……だけど何が幸せってさ、犬の散歩を1日2回に心がけてるんだけど、1回よりも2回の方が四季のちょっとした変化に気付くことができるとか、そういうこと。今は野菜を作るのが好きで、ブロッコリーを育てるのが楽しみ。美味しいものを食べたい人と食べるのが私の目標(笑)。
SHYOU:僕らも美味しいものはめっちゃ好きやんな。
TAROW-ONE:いつか麻婆豆腐対決をしたいっす。
Chara:そうだね。季節的にもいいし。今度ライブをするときもちょっと美味しいものを食べたいね。だってさ、デートに必要なことも、美味しいものとダンスでしょ(笑)?
SHYOU:ハハハ、間違いないです。
Chara:一緒に音楽をやっている人と、空間もクリエイトできたら楽しいよね。
——今日はせっかくの座談会なので、お二組で胸が熱くなったエピソードがあれば教えてください。
TAKU:Charaさんの曲がどうやって作られるのかが気になりすぎて、ツアー先の打ち上げでも「あそこのコードはどうやって思いついたんですか?」とか「コードを考える時はどんなことに注意されてますか?」とか聞いたら「そんなの考えてるわけないじゃない」と言われたのが衝撃でした(笑)。「え!? じゃあ、曲のキーとかコード進行を気にすることは?」って聞いたら、食い気味に「全然、考えてない」と言われて。
SHYOU:曲を作る上で「楽器やリズムはなんでも良い」と話してましたよね。だけど「私にとってピアノは故郷」という言葉はヤバイと思いました。
Chara
——ん? それって、どういう意味ですか?
Chara:ギターでも曲は作るけど、やっぱり私はピアノが原点という意味で「ピアノは故郷」って。
TAKU:その話を聞いて、Chara節をものすごく感じました。あと音色についても、「音色をこうしましょうか?」と聞いたら「そっちの方が可愛いね」って言わはるんです。
——「残響音が〜」とかの専門用語じゃなくて、ニュアンスなんですね。
TAKU:そうなんですよ。「可愛いか」か「可愛くないか」で判断してる。
TAROW-ONE:ドラムの音を「TAROWちゃん、もっとフワフワした感じで」って言う時は、だいたいシンバルと2分キックやねん。
一同:アハハハハ!
Chara:だんだん分かってきてるじゃん(笑)!
TAKU:他にもChara用語があって。ギターダビングの時にでる“シャキーン”って音を鳴らしたら「TAKUちゃん、恥ずかしいからパンツを穿かせてよ」って。
——すいません、話についていけてないです!
TAKU:“シャキーン”という音だったんで、要はエッジが効きすぎてたんですよ。「そのパートの子が恥ずかしがってるよ」と。
Chara:ああ、「パンツ1枚を穿かせる感じにして」って言ったかもね。
TAROW-ONE:その言葉で、なんとなく俺らも意味がわかるねんな。
TAKU:「そういうことか」と思って、音を変えたら「TAKUちゃん、良いんだけどそれだとゴムがちょっとキツい」って。
一同:アハハハハ!
TAKU:それで「なるほど。このフレーズはそんなにきっちり弾いたらアカんねんな」と。
——そこまで伝わってるのはさすがです! 普通は「ええっ……」って戸惑っちゃいますよ。
Chara:みんな、それでわかってくれるから楽なんだよね。
TAKU:そっちの方がロマンチックですよ。「そこを16分で」と言われるよりも「パンツのゴムが」って言われる方が。
Chara:毎回言ってるわけじゃないから(笑)! でも、そういうのが好きなんだよね。専門用語じゃなくて、日常の言葉で伝えたい。作詞もさ「カッコイイ詞を書くぞ」みたいな感じじゃなくて伝えたいことがあるから、どう伝えようか考えるの。だからこそ、最近は自分の歌詞って「一種のラヴレターだな」と思うんだけどね。
TAKU:そういう感性に刺激を受けてます。
——ありがとうございます。では、最後に『韻シスト 20th ANNIVERSARY~NeighborFood SPECIAL3DAYS~』に向けてのコメントをいただければと!
TAKU:いつもはChara×韻シストBANDとしてCharaさんに呼んでいただくことが多かったんですけど、今回は僕らから声をかけさせていただいて。韻シストのイベントで(Charaさんが)どんなライブをされるのかイチファンとして観たいですね。
SHYOU:僕も韻シストのメンバーでもあるけど、韻シストのファンでもあって。CharaさんとBASI、SAKKONの3人がおるステージを想像するだけで、もう1人の自分がめっちゃ嬉しいんです。SAKKONとは高校から音楽をやってるし、BASIも十代で出会ってる。そんなメンバーとまさか夢のような光景を味わえるのがグッときます。kenkenも一緒に出てくれるし、この喜びをお客さんと共有できたらと思っております。
——僕も音楽ファンとして、すごく楽しみです! 今日はありがとうございました!
取材・文=真貝聡 撮影=横井明彦
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