THE ORAL CIGARETTESレポート 「ReI-projectに終わりはありません」全ての人に捧ぐ曲とその志

レポート
音楽
2018.6.29
THE ORAL CIGARETTES / ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES / ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

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ReI project coupling tour ~Piggybacking Together~
2018.6.13  新木場STUDIO COAST

「ReI」という楽曲は、いつ災害や戦争が起こるかわからないという宿命を背負い、それでも今日を生き続ける私たちの未来のための楽曲だ。この曲は、THE ORAL CIGARETTESが、初めて“誰かのため”の想いを込めて完成させた曲でもある。それを少しでも多くの人に届けるために、今年オーラルは「ReI-project」を立ち上げた。2月15日に開催された大阪城ホール公演の翌日から、「ReI」のフリーダウンロードが始まり、そのプロジェクトに端を発したツアーが、今回の『ReI project coupling tour ~Piggybacking Together~』になる。「Piggybacking」とは、“背負う”を意味する。垣根なく音楽を届けたいという想いから、オーラルが初めてロックバンド以外の相手とまわる東名阪ツアー。名古屋にはLiSA、大阪には元SuGの武瑠のソロプロジェクトであるsleepyhead、そして、東京にはぼくのりりっくのぼうよみを迎えた今ツアーは、音楽だけがつなぐことのできる絆と、その大きな可能性を再確認するものになった。

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

満員の新木場コーストのフロア。照明が落とされた会場に、ぼくのりりっくのぼうよみがサポートメンバーと共にステージに現れた。上物にはベース、キーボードとDJ、リズム楽器にはドラムとパーカッションを加えた変則的なバンド編成だ。静寂を美しいピアノの旋律が破り、「sub/objective」のイントロが鳴った瞬間、会場からはワッと大きな歓声が湧いた。ブラックミュージックの匂いも色濃い洗練されたサウンドにのせて、メロディとラップの中間のような柔らかいフロウを繰り出すのが、ぼくりりのスタイル。
THE ORAL CIGARETTESはバキバキのバンドということで、僕もバキバキで、今日は強めのセトリとなっております」と伝えると、ファンキーなグルーヴに大人の色香が絡み合う「Butterfly came to an end」から、オリエンタルで情熱的なリズムが躍動する「playin’」へと、多彩な進化を見せた最新アルバム『Fruits Decaying』からの楽曲を続けて披露した。オーラル主催の対バンだけに、ぼくりりからすれば「アウェイ」と呼ばれる状況だろうが、それでも初見のお客さんをしっかりと自分のペースに巻き込むぼくりり。そのパフォーマンスに、ジャンルは違えど、素直な感性で体を揺らすお客さんの反応も良かった。

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

ぼくのりりっくのぼうよみ 撮影=AZUSA TAKADA

「高校3年生でメジャーデビューをしたんですけど。この音楽が誰かに届くのかな?と思って作っていた時に、ミュージックビデオをリツイートしてくれる方がいて。それが、あきらかにあきらさんでした。認めてくれる人がいることが、すごく励みになりました」。
歌う姿は大人びたクールな佇まいのぼくりりも、喋る姿は等身大の20歳の青年へと戻る。続けて届けたのは、そのあきらが好きだという「Black Bird」。ピアノだけのシンプルな演奏に、逃げ場のない閉塞感を綴る言葉が鋭い。混沌とした闇がフロアを包み込む「liar」では、強烈な孤独感を語彙力に富んだリリックで切り込んでいく。決してきれいごとだけではなく、自分自身の心を抉り、曝け出す表現は、オーラルと深く共鳴する部分だと思う。ハイスピードなビートにフロアが大きくうねった「For the Babel」のあと、「ぼくりりでモッシュが発生する日が来るとは露とも思わず……感動です!」とはにかむと、ゴージャスなビックバンド風のラストナンバー「罠」で終演。オーラルが、「未来に新しいものを提示した人間だからこそ、このイベントに誘いたかった」と、強いリスペクトを寄せる、才気に満ちたシンガーソングライターは、その期待に十二分に応えるパフォーマンスを見せてくれた。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

続いて、THE ORAL CIGARETTES。ふたりの人間が手を取り合うイラストが描かれたバックドロップの下に、穏やかなSEで登場すると、山中拓也(Vo/Gt)が語りかけた。
「きっとこの世界の誰しもが弱い心を持ってる。今日は逃げたいなとか、やめたいなあとか。でも、いかに戦うか、いかに逃げないかが大事だと思う。あなたにとって、今日が何かを踏み出す日になれば。一緒にヤバい光を見に行きましょう」。
1曲目は「ReI」。山中が紡ぐ歌と、鈴木重伸(Gt)、あきら、中西雅哉(Dr)が鳴らす音の全てが“未来への希望”へと向かうような強い意思を持った楽曲に、フロアからは、その意思に賛同するような大合唱が巻き起こった。続けて、インディーズの頃から歌い続ける、大切な人への想いをテーマにしたバラード曲「エイミー」。アッパーなキラーチューンでライブを幕開けることの多いオーラルにとって、滅多にない始まり方だったが、“想いを届けること”を主軸に置いたライブだからこそ、意味のあるオープニングだった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

長髪を振り乱しながら奏でる鈴木の狂気的なギターリフ、やんちゃに暴れまわるあきらの躍動感のあるベース、アスリートのような体躯から繰り出す中西の弾丸のようなドラム。メンバーの個性をこれでもかと凝縮した「5150」からは、ロックバンド・オーラルの野性が一気に爆発した。小気味よいソロ回しも決まった「気づけよBaby」、あきらと鈴木が両サイドからクロスしながらの大ジャンプを決めた「Mr.ファントム」。メンバーのアグレッシヴな演奏を、レーザーを駆使したスタイリッシュな光の演出が鮮やかに彩る。やや声が本調子ではなかった山中だったが、「どんな声でも、どんな表情でも俺は俺。しっかり表現します」と真摯な言葉で伝え、この日も圧倒的なカリスマ性でライブを引っ張っていた。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

ライブの中盤に「エンドロール」を置いたことも印象的だった。大切なひとの人生の終わり(エンドロール)に自分の名前が刻まれていたい、という気持ちを込めたバラードは、山中が、祖父が亡くなった時に書いた楽曲だ。MCを挟んで、「逃げたくなることがいっぱいあるかもしれへんけど、逃げずに正面切って戦っていこうと思います。そうやって、あなたたちと隣り合って生きるという願いを込めて」と言って届けたのは「トナリアウ」。この日のセットリストは、オーラルが自分ではない誰かへの想いを綴った曲が多かったように思う。「Piggybacking Together」というツアー名のとおり、あらゆる悲しみを背負い、未来へ進むためには、“あなたと一緒に”ということがとても大切だからだ。 

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

このライブの当日にリリースされ、初のオリコン1位を獲得した最新アルバム『Kisses and Kills』からは、オーラル流のダンスナンバーとして新境地を開いた「容姿端麗な嘘」を披露。まだライブで演奏した回数は多くないはずだが、すでに彼らのニューアンセムに仕上がっていた。これ以上ないほどの熱気に包まれるフロアに向かって、「もっと来い!」と何度も挑発しながら、「カンタンナコト」「狂乱 Hey Kids!!」を畳みかけるラストスパート。最後に山中が「マジで出会えてよかったと思います。どこか完璧じゃないバンドだと思うけど、1日1日、120%の力でステージに立ちますから、また遊びに来てください!」と絶叫すると、ラストソングは渾身の「BLACK MEMORY」。最前列の柵へと身を乗り出した山中は、まさに“限界突破”の歌で締めくくる、完全燃焼のライブだった。

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA

アンコールでは、「伝えたい想いは死ぬほどあります。でも、やっぱり曲にして伝えていきたい」と、最後にぼくのりりっくのぼうよみを呼び込んで、この日のオープニングを飾った「ReI」をコラボで披露。山中が「どうだった? 楽しかった?」と聞くと、ぼくりりは「超楽しかったです。ありがとうございます」と無邪気な笑顔で答える。まるで兄弟のような関係性のふたりが、時々、肩を組みながら歌った「ReI」では、曲の途中にぼくりりがオリジナルのラップを挟むと、最後に銀テープが舞い、大きな感動に包まれて幕を閉じた。

最後に、アンコールで語った、大切な言葉を残しておく。

「ReI-projectに終わりなんてなくて、ずっと続いていくものです。自然災害とか戦争とか、いつ起こるかわからないから。俺たちは、そういうものを背負って生きていくと思います。だから、俺たちが死ぬまで、ReI-projectに終わりはありません」(山中)

「ReI」が東日本大震災の被災地を訪れたことがきっかけで生まれた曲であることは、ライブや取材で何度か話しているが、決してチャリティーソングではないし、東北のためだけの歌でもない。先日、大阪で大きな地震もあった。火山が噴火したり、豪雨に見舞われる地域もある。そういう、あらゆる悲しみを乗り越えて生きていく、全ての人に捧げる歌だ。悲しみに終わりがないように、「ReI-project」にも終わりがない。そういうことなのだと思う。


取材・文=秦理絵 撮影=AZUSA TAKADA

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