「冨田勲 映像音楽の世界」コンサート~手塚アニメから特撮音楽、大河ドラマ主題曲まで by 高木大地(金属恵比須)

コラム
クラシック
アニメ/ゲーム
2018.6.23


「従来の演奏会ではステージでの上にピアノがあり、演奏者がヴァイオリンやチェロをかかえて出てくれば、もうそれでどのような音がでてくるのか楽器としての音色そのものは聴衆にわかってしまう。しかし、ステージの上にポンと置かれたシンセサイザーは、いったいどういう音ででてくるのか、とにかく始まってみなければわからない(後略)」
『惑星/冨田勲』(1976年)「制作メモ――冨田勲」より

シンセサイザーの“魔術師” 冨田勲(1932-2016)は、オーケストラの名曲をシンセサイザー(と若干のキーボード)のみでつくりあげ、次々とヒットさせていたころ、こう語っていた。当時、シンセサイザーはナイーヴな精密機械だったのでコンサートで使われることはまれ。にもかかわらず冨田は当時から未来を予測し、現在はシンセがステージ上にてなくてはならない存在となり、予測は的中することとなる。

かくいう筆者は、小学校のころに『惑星』を聞いてシンセサイザーの無限大の可能性に惹かれ、シンセの虜となった。現在もプログレッシヴ・ロック・バンド「金属恵比須」を率い――冨田の予想通り――ステージ上で惜しげもなくシンセを使い倒している。スペイシーな音は確実に影響を受けている。

シンセの“魔術師”のイメージの強い冨田だが、映像音楽(いわゆるサウンドトラック)の作曲家でもある。1958年、映画『地獄の午前二時』を手がけて以来、数えきれないほどの映画・テレビの音楽をつくってきた。

代表的なのは手塚治虫の『ジャングル大帝』。オープニングの歌のメロディで、獣の雄叫びを再現すべく、音楽の常識ではありえない1オクターヴ以上開きのある「音飛び」を使い、音楽に造詣のある手塚治虫にダメ出しされたという逸話がある(結局〆切の都合上、冨田のメロディが採用されることとなる)。

ほかにも、1963年、記念すべきNHK「大河ドラマ」第1回である『花の生涯』を手がけ、以降1983年の『徳川家康』まで計5回も担当している。どれも音数が少なく、象徴的な「音飛び」を多用した覚えやすいメロディなのが印象的だ。『徳川家康』にいたっては、フルオーケストラと合唱団(慶應義塾ワグネル・ソサィエティー)に加え、シンセサイザーやシーケンサー(自動演奏機器)もふんだんに使用し、その後のサウンドトラックの方向性に影響を与えたであろうエポックメイキングな作風となっており、個人的には最もイチオシの曲である。

そのように冨田が1960~1970年代に作曲した映像音楽ばかりを集めたコンサートが催されることとなった。スリーシェルズ企画コンサート冨田勲 映像音楽の世界 SOUNDS OF TOMITA ~冨田勲メモリアルコンサート~特撮・アニメ・映画音楽特集~」である。

先に挙げた曲のほかにも、当時シンセサイザーの大胆起用で話題となった『ノストラダムスの大予言』(1974年)をフルオーケストラで演奏、円谷プロの特撮ドラマ『マイティジャック』(1968年)の映像付き演奏など、目玉はたくさん。

指揮は冨田が絶大な信頼を寄せていた藤岡幸夫。2012年度大河ドラマ『平清盛』の指揮を担当した人物である。プログレ・ファンであれば、吉松隆氏(『平清盛』作曲者)のアレンジによるエマーソン・レイク&パーマー「タルカス」のオーケストラ版を指揮した、と聞けばピンとくるだろうか。ちなみに、冨田も藤岡も吉松も慶應義塾大学出身で、綿々と連なる慶應の音楽歴史の系譜だというのも興味深い。

藤岡幸夫 (c)Shin Yamagishi

藤岡幸夫 (c)Shin Yamagishi

そして、このコンサートにおけるシンセサイザー担当は篠田元一。『キーボード・マガジン』(リットーミュージック)の連載で有名なシンセサイザー奏者の第1人者である。また、監修を映画監督・映画評論家の樋口尚文が務めるのも心強い。

樋口尚文

樋口尚文

冒頭の冨田の言葉では、オーケストラが出てきてもどんな音色が出されるかがわかってしまう、と述べていた。しかし、手塚治虫がメロディの奇抜さに驚かれたり、大河ドラマでシンセを使ってしまったりと、冨田の音楽はとにかくいい意味で裏切られることが多い。

よってこのコンサートは、ステージ上にフルオーケストラが登場しようが、合唱団が登場しようが、シンセサイザーを使おうが、まったく予想のつかない音が待っているに違いない。よく考えてみよう。シンセサイザーの原義[Synthesize]は、「音を合成する」という意味である。今回のステージに並べられている楽器すべての音がその場で合成され、「いったいどういう音ででてくるのか、とにかく始まってみなければわからない」状態になる、非常に興味深いコンサートになる事は間違いないだろう。

文=高木大地(金属恵比須)

公演情報

スリーシェルズ企画コンサート
「冨田勲 映像音楽の世界 SOUNDS OF TOMITA ~冨田勲メモリアルコンサート~特撮・アニメ・映画音楽特集~」


■日時:2018年9月17日(祝・月)15:00開演 (14:15開場)
■会場:東京国際フォーラム・ホール C
■席種・料金:
S席7,500円 A席5,500円
【アフターパーティ付チケット】
¥18,000(コンサートS席チケット+パーティー参加費)
※未就学児童入場不可
■チケット発売:2018年6月24日(日)10:00~
※イープラス先行受付:2018年6月23日(土)21:00~6月24日(日)9:00

 
■指揮:藤岡幸夫
■監修:樋口尚文
■演奏:オーケストラ・トリプティーク(コンサートマスター:三瀬俊吾)
シンセサイザー:篠田元一、エレクトーン:竹蓋彩花、ドラム:重本遼大郎
■主な演奏予定曲目
【アニメ音楽】
手塚治虫作品より、ジャングル大帝のテーマ、リボンの騎士、リボンのマーチビッグX
【NHK作品より】
新日本紀行テーマ、大河ドラマ「花の生涯」テーマ、大河ドラマ「徳川家康」テーマ、大河ドラマ「勝海舟」より
【映画音楽より】
 映画「ノストラダムスの大予言」組曲
【特撮作品より】
「キャプテンウルトラ」より 
「マイティジャック」より(映像とともに演奏)

 
■主催:キョードー東京、ぴあ
■協力:日本コロムビア、円谷プロダクション
■企画・制作:スリーシェルズ/キョードー東京
■問い合わせ:キョードー東京 03-3407-8833
■公式サイト:https://www.3s-cd.net/concert/jpn/it/

リリース情報

「MISSING LINK of TOMITA~冨田勲 日本コロムビア初期作品集 1953-1974~」


2018.5.23 Release
COCQ-85418 ¥3,000+税
◇同CD収録の幻のシンセサイザー作品「愛 《コムポジション―習作》」に、日本を代表するダンサー/振付師の辻本知彦が振付した映像がコチラ↓

■タイトル:冨田勲×辻本知彦「愛 《コムポジション―習作》」(1974-2018)
 (オリジナル音源:1974年1月発売『中学・高校・大学及び一般のための創作ダンス =ダンスイメージと創作過程=』)
■音楽:冨田勲 http://columbia.jp/tomita/
■演奏:モーグ・シンセサイザーとコロムビアオーケストラ
■振付:辻本知彦 https://www.tsujimoto.dance/profile-1/
■ダンス:大妻嵐山高校ダンス部
■冨田勲・日本コロムビア特設サイト:http://columbia.jp/tomita/

 
辻本知彦コメント
冨田勲さんと出会った事は、振付師としての可能性をプレゼントして頂いた事、そしてなによりも、運命だと感じています。
今回の映像、最初の仕上がりを見て涙が溢れて止まりませんでした。個人的な感情が湧いてきて、こんなにも冨田さんへの思いが強いのかと感じた瞬間でした。
「冨田さんがみたら喜ぶだろうなあ」「あなたの曲がこんなダンスになりましたよ」「時代を感じるでしょう?」「あなたの曲はこうして僕のダンスと共にいまを生きていますよ」「映像で残ることで、未来の人々もこれを見ることができるんです」「これは僕という人間がこの時代に生きた証でもあります」「なにより、見る者それぞれの心の中に、なにかが生まれますように」……ふと気づくと、もうここにはいない冨田さんに向けて、さまざまな思いを伝えている自分がいました。
あなたと出会えていなかったら、この振付が生まれることは無かったでしょう。先生ありがとう!またね!!

リリース情報

執筆者・高木大地の率いる金属恵比須『武田家滅亡』
2018年8月29日(水)発売
CD(Ryouki-World Records)
定価:2,500円
取扱予定店舗:ディスクユニオン、HMV、タワ―レコードほか
■ソングリスト
1. 新府城
2. 武田家滅亡
3. 桂
4. 勝頼
5. 内膳
6. 躑躅ヶ崎館
7. 天目山
8. 道連れ
9. 罪つくりなひと
10. 大澤侯爵家の崩壊
11. 月澹荘綺譚

 
■金属恵比須 メンバー:
稲益宏美  ヴォーカル
栗谷秀貴  ベース
後藤マスヒロ  ドラム(元・頭脳警察、人間椅子)
髙木大地  ギター
宮嶋健一  キーボード

 
■公式サイト:http://yebis-jp.com/
<数量限定!!角川文庫「武田家滅亡」付きセット>あり
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