【劇レポ】近未来の『ロミオとジュリエット』~オクスフォード大学演劇協会
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『ロミオとジュリエット』(OUDS)、ロミオもジュリエットも女性が女性として演じた。 撮影・引地信彦(Nobuhiko Hikiji)
近未来のヴェローナにおける性別を問わない結婚
今年もイギリスからオクスフォード大学演劇協会(OUDS)が来日した。
わたしがOUDSを初めて見たのは、東京グローブ座で上演された『お気に召すまま』だが、しっかりした技術がある学生劇団で、数々のアイデアに満ちていた。
たとえば、なにもない舞台前方中央に、みかんを一個置き、照明を変えるだけで、そこはアーデンの森に早変わりした。自由な見立てが、新しい世界を創出させる。小さな仕掛けにより、大きく世界を変えてみせるのだ。
今年は『ロミオとジュリエット』を上演したが、やはり、その設定に注目させられることになった。
なんとロミオが女性で、ジュリエットも女性なのだ。そして、ロミオは女性が男性役を演じているのではない。女性としてロミオを演じているのである。つまり、同性婚であり、さらに興味深いのは、登場人物の全員が、それを自然なこととして受け入れているのである。
劇中、ロミオは「彼女(she)」で呼ばれ、ジュリエットの「愛しい人(love)」だが、女性であることを強調してふるまうことはない。一方、ジュリエットもロミオから「愛しい人」「妻(wife)」と呼ばれる。ロミオもジュリエットも、それぞれが「彼女」であり、そのことを特別視する登場人物はいない。
そのように考えると、OUDSによる『ロミオとジュリエット』は、近未来のヴェローナの設定で、結婚する権利の平等(marriage equality)に基づく新しい家族のかたちを描いた舞台に見えてきた。
今年の3月には、渋谷区で「同性パートナーシップ条例」が成立し、6月にはアメリカ連邦最高裁で同性婚に合憲判決が出されたが、まだ性的マイノリティの人権がじゅうぶんに保証されたとはいえないだろう。
OUDSの『ロミオとジュリエット』の世界では、性別に関係なく結婚する権利の平等は認められているが、モンタギュー家とキャピュレット家の確執は依然として残ったままだ。そして、性に関する先進的な設定が、長年にわたる両家の対立を、より無意味なものとして見せることに成功していた。
観劇日:2015年8月19日(公演期間:2015年8月19日(水)~8月20日(木))
会場:東京芸術劇場シアターウエスト
<オックスフォード大学演劇協会(OUDS)プロフィール>
オックスフォード大学演劇協会 Oxford University Dramatic Society(OUDS)は、1885年に創設された英国・オックスフォード大学で最も大きな演劇組織。創設130年の歴史と伝統を誇り、常に若い才能を育み続けている。OUDSの卒業生には、映画『Mr.ビーン』の‘Mr.ビーン’ことローワン・アトキンソン、『ラブ・アクチュアリー』のイギリス大統領役、『ブリジット・ジョーンズの日記』のダメ上司役など今やラブ・コメディには欠かせない俳優の一人となっているヒュー・グラント、2014年アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、「スター・ウォーズ」スピンオフ作品(2016年公開予定)にもヒロイン役として出演が決定し、今まさにハリウッドで注目を集めている若手女優フェリシティ・ジョーンズなどがいる。(東京芸術劇場公式サイトより引用)