「歌舞伎座は聖地、平成中村座は夢の小屋」勘九郎と七之助『芸術祭十月大歌舞伎』『十一月大歌舞伎』勘三郎七回忌追善の決意語る

2018.7.27
レポート
舞台

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2018年7月26日(木)に都内にて中村勘九郎と中村七之助が会見を開き、10月の歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』、および11月の平成中村座(浅草寺境内)『十一月大歌舞伎』において、十八世中村勘三郎七回忌追善公演を行うことを発表した。製作発表記者会見には、勘九郎、七之助、そして松竹株式会社取締役副社長の安孫子正氏が登壇。

勘九郎、七之助は父・勘三郎への思いと、2カ月連続の追善興行に向けた決意を語った。あわせて安孫子氏より発表された配役には、松本白鸚、片岡仁左衛門、坂東玉三郎らの名があがった。

二カ月連続追善興行の演目と配役(一部)

安孫子氏が発表した演目と配役は、下記のとおり。

■歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』10月1日~25日

《昼の部》
一、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
  お嬢吉三…七之助
 
二、大江山酒呑童子
  酒呑童子…勘九郎
 
三、東山桜荘子 佐倉義民伝
  宗吾…松本白鸚
  妻おさん…七之助
  徳川家綱…勘九郎

《夜の部》
一、宮島のだんまり
  (多くの俳優が華を添える予定)

 
二、義経千本桜 吉野山
  忠信…勘九郎
  静御前…坂東玉三郎

 
三、助六曲輪初花桜 三浦屋格子先の場
  助六…片岡仁左衛門
  揚巻…七之助
  白酒売新兵衛…勘九郎
  意休…中村歌六
  満江…玉三郎
 
■平成中村座『十一月大歌舞伎』11月1日~26日

《昼の部》
一、源平布引滝 実盛物語
  実盛…勘九郎
二、近江のお兼
  お兼…七之助
三、狐狸狐狸ばなし
  伊之助…中村扇雀
  おきわ…七之助
  重善…芝翫
《夜の部》
一、弥栄芝居賑
  (一座総出の芝居前。「湿っぽくならずお祭りに。お弟子さんもひっくるめて総出で」と勘九郎)
二、舞鶴五條橋
  弁慶…勘九郎
三、仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場
  由良之助…芝翫
  お軽…七之助
  平右衛門…勘九郎

 

お客様に喜んでいただけるいい興行を

勘九郎は、はじめに、父・勘三郎の追善興行を二カ月連続、歌舞伎座と平成中村座で上演できることへの感謝を述べた。

「祖父は父に『追善興行ができるような役者になっておくれ』という言葉を残しておりました。皆さまのおかげで、その言葉のとおりになり嬉しさでいっぱいです。けれども、あまりにはやく逝ってしまった父を思うと、なんで追善…という悔しさ、悲しみがまだまだあります。相反する2つの感情はありますが、父のことを愛してくれた、父も大好きだった先輩、後輩、同輩の皆さまが2カ月の興行に力を添えてくださいます。父のモットー『来てくれたお客様に喜んでいただける、いい興行』を目指したいです」

勘九郎は、演目と役について問われると、中村屋に縁ある演目が並んでいることに言及。

『助六』では「まさか、仁左衛門のおじさまのお兄さん役をやらせていただくとは」と場を和ませつつ、「祖父や父が醸し出していた柔らかい、白酒の匂い。白酒売りは、幼い頃から『楽しいな、いつかやりたいな』と思っていた役です。仁左衛門のおじさまと、しかも女形の大役・揚巻を七之助がやらせていただく中で」と喜びを語る。また11月の『実盛物語』は、「大好きな演目であり、中村座の空間にもマッチした演目」と紹介した。『七段目(一力茶屋の場)』は、初心に帰ったつもりで演じたいと語った。

震え上がるような役ばかり(七之助)

七之助もまた、感謝の意を述べ「今、演目と配役が読み上げられるのを聞いていても、震え上がるようなお役ばかりです。父のため、祖父のため、そして父を愛してくださったお客様のために命がけで一生懸命つとめます」とコメント。

中村七之助

10月の『桜義民伝』では、白鸚が演じる宗吾の女房・おさんを演じる。「祖父を亡くした時、父は白鸚のおじさまには『本当にお世話になった』と僕ら兄弟によく話しておりました。今回は僕が白鸚のおじさまの女房役をやらせていただくことになりびっくりしました。本当にありがたいの一言」という。『助六』で勤める揚巻については「仁左衛門のおじさまの優しさ、父に対する愛でしかない」と、役の大きさを噛みしめている様子。「玉三郎さんによく教わり演じたい」と語った。

11月の『近江のお兼』は、大力無双の娘と暴れ馬が登場する舞踊。「平成中村座にぴったりの、華やかな舞踊です。馬と息をぴったり合わせなくてはならず、馬をやるにも技術が必要。でも今、それができる役者がそう簡単に見つからず、一度はこの演目を断念しかけました。しかし先人たちが築き上げてきたものを受け継ぐためには、馬が出来る役者を作らなくては」と、今、新たに人選し育成を検討しているそう。「馬の人も、初役になると思います」と締めくくり、一同の笑いを誘った。

冒頭の配役紹介では、安孫子氏が『吉野山』について「勘三郎さん(十八世)は、お父さま(十七世)の一周忌の時に歌舞伎座で忠信役を勤めました。その時は歌右衛門さんが静御前でお付き合いくださり、素晴らしい舞台を見せてくださいました。思い出し、今お話しておりましても涙が出てきます」と思いを明かす一幕も。その言葉に勘九郎は軽く目を閉じうなずき、七之助は一点をみつめじっと耳を傾けていた。

聖地「歌舞伎座」と夢の芝居小屋「平成中村座」

2000年11月、浅草隅田公園内に立ち上げられた仮設の芝居小屋「平成中村座」。その魅力を安孫子氏は「大劇場では考えられないような歌舞伎の面白さを実現している空間」と紹介した。歌舞伎座と平成中村座での、二カ月連続追善興行は初めてのこと。以下、質疑応答と囲み会見でのコメントを紹介する。

——歌舞伎座と平成中村座、それぞれの会場にはどのような思いがありますか?

勘九郎 当初は平成中村座で2カ月連続の追善公演を考えていました。「そのうちの1カ月を歌舞伎座で」と松竹さんより言っていただいた時は、父は本当に喜ぶだろうなと思いました。歌舞伎座は聖地ですから。同時に、平成中村座も聖地です。父は19歳の時に唐十郎さんの赤テントでのお芝居をみて以来、『こういうテントでやりたい』という夢をもっていました。それが叶った夢の小屋が、平成中村座です。辛いことも震えるような喜びも、あの小屋で経験しました。これをずっと続けていこう。ここで色んな事ができる。そんな確信を得たところで、父は逝ってしまいました。少しブランクは空きましたが、僕らがその夢を引き継ぎ、これからも平成中村座という空間で芝居を続けていきたいです。

七之助 歌舞伎座と平成中村座は、違った意味で父が一番愛した2つの小屋です。(新開場を控え)工事中の歌舞伎座を見て、父が「宝箱だね。ここからどんどん、どんどん色んなものができていくね」といったことを覚えています。そう言っていた父が立てなかった歌舞伎座の舞台で、兄とともに、先輩をはじめ皆様のお力を借りして追善公演ができることはうれしく思います。父も喜んでいると思いますし、やらなくてはいけないことだと思っています。

——この七年で感じる変化はありますか?

勘九郎 いなくなって分かった偉大さもあります。僕らを守ってくれていたり、芝居のために戦っていたありがたみをあらためて感じる期間でした。それをただ感じるだけでなく、自分もそのように輝き、発信していく存在にならなくてはいけないと思う期間にもなりました。多分、一生そう思い続けるのだと思います。僕ら兄弟、極度のファザコンなので(笑)。芝居をするときも、やはりまず父に褒められたい。父はどんな言葉をかけてくれるだろうと、常に考えながら演じていました。(長男・勘太郎、次男・長三郎について問われ)いい環境を整えてあげるのも親の責任です。もし出演するならば、しっかり稽古をして臨んでほしいですね。

七之助 三回忌の時は父を愛した皆さまが力を貸してくださって、自分たちは何が何だか分からないまま、追善興行が終わってしまいました。七回忌は自分たちで興行ができるようになりました。すると父を追いかけるだけでなく、父の立場になり物事を考えるようになりました。父は、息子にも苦しい顔を見せなかったので「歌舞伎を愛しているから、苦しいことも苦しくはないんだな」と勝手に思っていたのですが、やはり辛いことも苦しいことも、孤独感に襲われることもあり、その中でも明るく人懐っこく、皆に対しての愛があり、舞台に立てば技術と精神面で皆を魅了していた。そういう父をあらためて感じ、人間的にもすごい役者だったんだと感じる7年でした。

最後は勘九郎より、「お客様の中には今でも、父の舞台を観てみたかったと、おっしゃってくださる方が大勢います。僕たちというフィルターを通し、父の精神、魂を感じていただければ。また追善興行では、父を愛してくださった先輩方が、父と縁のある役を勤めてくださいます。そこでも父を感じていただけると思います。ぜひ劇場に足をお運びください」と締めくくられた。

歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』は10月1日(月)、平成中村座『十一月大歌舞伎』は11月1日(木)の開幕。

『芸術祭十月大歌舞伎』『十一月大歌舞伎』十八世中村勘三郎七回忌追善 製作発表記者会見

取材・文=塚田史香

公演情報

十八世中村勘三郎七回忌追善公演
歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』
■2018年10月1日(月)~25日(木)
■会場 歌舞伎座(東京・銀座)
■昼の部(午前11時開演)
一、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
二、大江山酒呑童子
三、東山桜荘子 佐倉義民伝
■夜の部(午後4時30分開演)
一、宮島のだんまり
二、義経千本桜 吉野山
三、助六曲輪初花桜
■公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/
 
平成中村座『十一月大歌舞伎』
■2018年11月1日(木)~26日(月)
■会場 平成中村座(浅草寺境内)
■昼の部(午前11時開演)
一、源平布引滝 実盛物語
二、近江のお兼
三、江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし
■夜の部(午後4時開演)
一、弥栄芝居賑
二、舞鶴五條橋
三、仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場
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