3年に一度の夢の饗宴が到来! 第15回世界バレエフェスティバル開幕会見レポート
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2018年7月30日(月)午後、東京文化会館大ホール舞台上にて第15回世界バレエフェスティバル開幕記者会見が行われた。世界バレエフェスティバルが始まったのは1976年。以来3年ごとに時代を代表するスターたちが夏の東京に集い白熱した名演を披露している。今回は8月1日(水)よりAプロ(5公演)、8日(水)よりBプロ(5公演)を行い、15日(水)の〈ガラ ─Sasaki GALA─〉で幕を下ろす。会見では主催者代表である公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)専務理事の高橋典夫、特別協賛の株式会社コーセー 代表取締役社長の小林一俊が挨拶&質疑応答を行った後、Aプロ出演者の大半となる34名が登壇して一言ずつコメントした。
高橋典夫
まず高橋が「ここのところバレエに追い風が吹いているのではないかと思っています」と切り出す。各テレビ局がバレエ公演を放映したり情報番組を始めたりしている状況や日本人が国際バレエコンクールで受賞し、それをマスコミが大きく取り上げていることを例に挙げる。そして「近年アジアでもバレエが活発になっていますが、これも世界バレエフェスティバルが果たした影響だと自負しています。日本が世界に誇る文化資源になっているのではないかと思います。バレエはスポーツにたとえればサッカーと一緒で、世界中でやられているグローバルな芸術。今回のバレエフェスティバルを機にもっとバレエが一般的に浸透していってくれれば」と語った。
小林一俊
日本を代表する化粧品メーカーであるコーセーは、バレエだけでなくフィギュアスケートをはじめとするスケート競技やアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミングから名称変更)に協賛してきた。小林は「美の創造企業として一人でも多くのお客様がバレエを見て本物の美に触れ、少しでも心豊かになっていただけたらと思っております。今回29歳以下の方々に向けて当社がコーセーU29シートを少しお安い価格で販売しました。若い方にも本物のバレエを、舞台芸術を身近に感じていただければ」と協賛に至る経緯を説明した。
(左から)レオノール・ボラック、ミリアム・ウルド=ブラーム、ドロテ・ジルベール、オレリー・デュポン
質疑応答時に高橋は世界バレエフェスティバルの新展開・方向性について聞かれ、先日終了した全幕特別プロ『ドン・キホーテ』等で実施したライブビューイングの反響に触れながら「ライブの力はやはり大きく、可能性は凄くあると思うんです」と人間が身体で表現する美の世界の魅力をアピールし、「先々のことを考えると若い観客を開拓しバレエに接する機会を作るのが我々の大きな仕事です」と未来を見据え活動する意思を示す。小林はコーセーの今後のバレエへの関わりを問われ、「アーティスティックスイミングやスケートに十数年協賛しています。(世界バレエフェスティバルは)3年に一度ですが、単発に終わらずに何らかの形で引き続き応援させていただきたい」と表明した。
(左から)タマラ・ロホ、サラ・ラム
高橋と小林の退出後、34名のダンサーがドレス姿から浴衣まで思い思いの衣装に身を包んで登壇した。それぞれが並ならぬオーラを漂わせるが、皆リラックスした表情で、所属や国籍を超えた“バレエ・ファミリー”の親密なつながりが感じられた。
ロベルト・ボッレ
今回はBプロやガラ公演に参加する人を含めベテランから若手まで著名な踊り手が集うが初出場者が少なくない。登壇者のなかでもエリサ・バデネス、レオノール・ボラック、ドロテ・ジルベール、メリッサ・ハミルトン、ミリアム・ウルド=ブラーム、ダニエル・カマルゴ、デヴィッド・ホールバーグ、イサック・エルナンデス、ジェルマン・ルーヴェ、ダニエル・プロイエットが初参加。近年進境著しい新星に加え、ジルベールやウルド=ブラーム、ホールバーグといった実力者が「初参加です」と自己紹介するのを聞くと意外な感じも受けるが、フレッシュであると共に層の厚い出演者が揃っているのは間違いない。
アレッサンドラ・フェリ
いっぽうで重鎮も存在感を見せつけるだろう。パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督オレリー・デュポン、イングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督であるタマラ・ロホのように有力バレエ団を率いる人たちもいる。奇跡のカムバックを果たした名花アレッサンドラ・フェリはまさに生ける伝説だ。そのフェリが「今回はササキさんのために心を込めて踊りたい」と心の内を明かし、パリ・オペラ座バレエ団の最古参のエトワールとなったマチュー・ガニオらもオマージュの言葉を捧げた“ササキさん”とは、世界バレエフェスティバル創始者であるバレエ&オペラプロデューサーの佐々木忠次氏(2016年没)のこと。佐々木氏は“日本のディアギレフ”の異名を持ち、最高レベルの舞台芸術の紹介に力を尽くした。佐々木氏没後初めての世界バレエフェスティバル開催となるが、クオリティや出演者の士気の高さに揺るぎはなさそうだ。
マルセロ・ゴメス
壇上に居並ぶダンサーの顔ぶれは壮観。出演者リストを見るだけでも豪華な顔ぶれに胸弾むが、彼らが一堂に会しているのを至近で目の当たりにすると、半端なく凄いことなのだと興奮した。あらゆる芸術ジャンルを見渡しても、これだけのアーティストが集う場はそう多くはあるまい。舞台への期待が高まると共に、極東の日本において世界最大級のバレエフェスティバルが長年続けられ世界のバレエを刺激している事実の凄さをあらためて実感させられた会見だった。
アリーナ・コジョカル
取材・文・撮影=高橋森彦
公演情報
Presented by KOSE
8月1日(水)18:00
8月2日(木)18:00
8月3日(金)18:00
8月4日(土)14:00
8月5日(日)14:00
<Bプロ>
8月8日(水)18:00
8月9日(木)18:00
8月10日(金)14:00
8月11日(土・祝)14:00
8月12日(日)14:00
指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団