新国立劇場 2026/2027シーズン バレエ&ダンス ラインアップ説明会レポート~チャップリンの映画『街の灯』世界初のバレエ化など意欲的な発信に注目!
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吉田都 新国立劇場舞踊芸術監督
新国立劇場 2026/2027シーズン バレエ&ダンス ラインアップ説明会が、2026年1月20日(火)の午後に開かれた。吉田都 舞踊芸術監督 によるラインアップ説明と質疑応答、フォトセッションが行われた。新国立劇場主催の2026/2027シーズン バレエ&ダンス公演は計9演目72公演、主催全国公演は計1演目4公演、「こどものためのバレエ劇場」は計1演目8公演を予定する。
■チャップリンの名作『街の灯』がバレエに!
シーズン開幕を飾るのが『街の灯』<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>(2026年10月~11月/オペラパレス10回公演)。バレエのシーズンオープニングに世界初演の全幕作品を据えるのは久方ぶりだ。『街の灯』は、喜劇王チャールズ・チャップリン(1889-1977)による同題のサイレント映画を原作とし、振付は英国の振付家アラスター・マリオット。マリオットは2022年に初演された吉田都 演出『ジゼル』でステージングと改訂振付を担当した。
企画の発端はマリオットからの提案だという。吉田はマリオットのメッセージを朗読し、彼が長年にわたり『街の灯』のバレエ化の構想を温めていた旨を紹介。マリオットによれば「『街の灯』は哀愁にみちた美しいロマンティック・コメディであり、映画のシーンを綿密に振付されたダンスとして捉えていたので、この物語を発展・脚色させバレエに仕立て上げることは私にとって理にかなっている」とのこと。そして無事にチャップリン財団からバレエ化の許可を得た。
吉田は「許可していただけて最初は驚きました。チャップリンみずから作曲した音楽も使わせていただき、チャップリンのスコアを復元されているティモシー・ブロックさんが編曲し指揮もしてくださいます。全2幕の作品です。劇場にとって財産となるでしょう。いろいろなメッセージが込められているので、それをダンサーたちがどのように表現してくれるのか楽しみです。今のバレエ団にとってちょうどよい作品に出会えた気がします」と喜ぶ。
吉田都 新国立劇場舞踊芸術監督
■新版『くるみ割り人形』や『ロメオとジュリエット』など充実のバレエ公演
続いて他のバレエ公演に触れる。いずれもレパートリー作品だが、古典名作から演劇的バレエの傑作、現代バレエまでバラエティに富む。
2026年12月~2027年1月の『くるみ割り人形』(オペラパレス/18回公演)は、2025年12月に新制作したウィル・タケット版の再演。古典の土台を保ちながら色彩豊かな演出で魅せる舞台が話題を呼んだ。「おかげさまで3万人を超えるお客様にお越しいただけました」と胸を張るように、初演では幅広い観客層を動員することに成功した。「一から作るのは大変な作業でしたが、自信をもってお届けできる作品になったのではないかと。まだこれからバレエ団と共に進化・成長していく作品だと思うので、修正をしながらよりよくしていきたい」と意気込む。
『くるみ割り人形』撮影:鹿摩隆司
2027年2月の『ラ・シルフィード』/『精確さによる目眩くスリル』(オペラパレス/6回公演)は、11年ぶりの上演となるオーギュスト・ブルノンヴィル振付によるロマンティックバレエの名作と、現代バレエに新機軸をもたらしたウィリアム・フォーサイスによる評判作の二本立て。「まったく違うタイプの二つの作品で今のバレエ団をご覧いただきたい。『ラ・シルフィード』に出るのが初めてのダンサーも多いので、ブルノンヴィル・スタイルを学んでほしい」と紹介する。
『ラ・シルフィード』撮影:瀬戸秀美
『精確さによる目眩くスリル』撮影:鹿摩隆司
2027年3月には『ホフマン物語』(オペラパレス/6回公演)を上演する。英国の振付家ピーター・ダレルが遺した、E.T.A.ホフマンによる3つの愛の物語を扱う物語バレエで、ダレル作品を数多く踊った前舞踊芸術監督の大原永子の在任時代にレパートリーに入った。「またできれば大原前監督にお越し願い、コーチングしていただければ」と考えている。
『ホフマン物語』撮影:鹿摩隆司
2027年5月はケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』(オペラパレス/10公演)。シェイクスピア原作、プロコフィエフ作曲によるドラマティックバレエの最高峰で、新国立劇場バレエ団では2001年のバレエ団初演以後、数々の名舞台を生んできた。8年ぶりとなる今回は、マクミラン版の本家である英国ロイヤル・バレエ&オペラの制作協力を得て、ニコラス・ジョージアディスが手がけた壮麗で重厚な美術・衣裳を使用。深みのある愛のドラマを堪能できそうだ。
『ロメオとジュリエット』撮影:鹿摩隆司
2027年6月の『ドン・キホーテ』(オペラパレス/10回公演)は、新国立劇場開場初期の1999年以降再演を繰り返す古典名作( 改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ)。スペインを舞台にした明るく華やかな舞踊劇で、踊りの見どころも豊富だ。「チャレンジングなキャスティングもできるのではないか」と気鋭や若手の抜擢に含みを持たせる。
『ドン・キホーテ』撮影:鹿摩隆司
■異才たちの新作がめじろ押しのダンス公演
ダンス公演には意欲的な演目が並ぶ。
2026年11月は「DANCE to the Future 2026」(中劇場/4回公演)。新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てる「NBJ Choreographic Group」発の創作を上演する人気企画だ。アドヴァイザーはネザーランド・ダンス・シアターで活躍した小㞍健太。今回は近年の「NBJ Choreographic Group」で精力的に作品発表を続けてきた新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト木下嘉人への委嘱作品も上演する。「いつも素敵な作品を作ります。今回はいつもより長めで、人数ももう少し使った作品をお願いしています」と木下へ期待を寄せる。
2027年2月には小㞍健太新作 <新国立劇場委嘱作品・世界初演>(小劇場/4回公演)。現代ダンスの名門ネザーランド・ダンス・シアターで踊り、帰国後は振付家としても躍進する小㞍が、渡辺レイ,、鳴海令那、新国立劇場バレエ団ダンサーほかの出演により新作を発表する。「新国立劇場からも数名参加することになっていますので、興味深いコラボレーションになるのではないか」。
2027年8月の伊藤郁女『喧嘩(仲直り)』<新国立劇場委嘱作品・世界初演>(小劇場/4回公演)は、ストラスブール・グランテスト国立演劇センター「TJP」のディレクターである伊藤の新作。2025年12月に上演された伊藤のソロ作品『ロボット、私の永遠の愛』に続き、振付家として二度目の新国立劇場登場だ。今回は5名ほどが出演予定で「喧嘩」「仲直り」がテーマ。昨年末、伊藤と対面し「監督としても素晴らしい仕事をされているなと、私も刺激を受けました」と話す。
吉田都 新国立劇場舞踊芸術監督
■世界を驚かせたロンドン公演の凱旋企画『ジゼル』を福岡・兵庫で
主催全国公演として、ロンドン公演凱旋企画『ジゼル』福岡公演・兵庫公演を行う。福岡公演は2026年11月(福岡市民ホール大ホール/2回公演)、兵庫公演は2027年1月(兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール/2回公演)に開催。2025年7月、英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演時には、英米の有力紙をはじめ各メディアから大絶賛が相次いだのは記憶に新しい。「ロンドン公演はNHKでのテレビ放映もありますが、やはり生(の舞台)をお届けしたい。福岡と兵庫で公演ができるのをうれしく思います」とほほ笑む。なお、この公演は、株式会社 木下グループがオフィシャルスポンサーとなり、またクリエイター支援基金の助成を受けて実施する。
『ジゼル』福岡公演・兵庫公演 Photo by Tristram Kenton
2027年7月には、こどものためのバレエ劇場 2027『竜宮 りゅうぐう~亀の姫と季の庭~』(オペラパレス/8回公演)を上演する。鬼才・森山開次が日本の御伽草子「浦島太郎」に取材して創り上げる幻想的な物語バレエは、2020年に初演され翌2021年に再演された。この度三度目の公演においても、オリジナルの音楽や斬新な映像もあいまって、異世界へと自然と引き込まれていくだろう。日本発のイマジネーション豊かな創作バレエとしてあらためて注目される。
こどものためのバレエ劇場 2027『竜宮 りゅうぐう』撮影:鹿摩隆司
■次世代の観客育成や映像配信への取り組みにも積極的
新国立劇場開場から30年近くなる。「バレエ団の層も、ダンサーの層も厚くなってきています。若手にもどんどんチャレンジしてもらいたいですし、ベテランにはそれぞれ今踊ってほしいものがあります。全員をハッピーにすることはなかなか難しいですが、ダンサーたちのことも考えて、このようなレパートリーを選んでいます」と演目選定の狙いを述べる。
公演以外の取り組みについても話した。
2024年6月に上演したバレエ『アラジン』公演映像を2024年9月~2025年3月まで6か間無料公開したところ、世界中で70万回以上の視聴があったと報告。「新国立劇場、新国立劇場バレエ団を知っていただくよい機会だったので、今後も続けたい」と表明した。
バレエを習う子供たちを公演に招待しダンサーと触れ合う機会を設ける「バレエみらいシート」、一般の子供たちを公演に招待する「新国立劇場こども観劇プログラム」を協賛企業のサポートを受けて実施していることにも触れ、「続けていきたい」と前向きだ。
その後「劇場より公演に関わる事項についてご報告」(司会者)ということで、営業担当の常務理事より
吉田都 新国立劇場舞踊芸術監督
■大成功を収めたロンドン公演のさらなる先に向けて
質疑応答では『街の灯』や好調な観客動員について、首都圏の劇場の休館が相次ぐ問題やベテランダンサーのキャリアをめぐる考え方などが問われたが、なかでも昨年7月の『ジゼル』ロンドン公演に関わる話題が続いた。
新制作の『街の灯』が今のバレエ団のダンサーたちにぴったりだと考える理由を問われ、吉田は「この5、6年、演じるということ、表現を重視してやってきましたが、それがだんだん実を結んでいると感じます」と自負した。その大きな契機となったのがロンドン公演だという。「ダンサーたちが本当にみるみる変わっていくのが見えましたし、萎縮することなく楽しかったようです。それが舞台にも出ていましたし、評価をいただいて自信になったと思うんですよ。今シーズン、自信を持って舞台に立っているのを感じています」と語った。
『ジゼル』福岡公演・兵庫公演 Photo by Tristram Kenton
いっぽう、ロンドンで公演して見つかった課題はあるのか?という質問に対して、吉田はこう答える。「先ほどお話したことと矛盾するかもしれませんが、ダンサーは皆真面目で、変な主張をしなくて、いろいろなことを受け入れます。ある部分では「自分はこうやりたい!」ともっと主張してもいいのではないでしょうか。変えなければいけない部分ではありますが、最近ではそこが日本人のよさ、素敵なところでもあるなとも感じています」と胸中を明かした。
これからの海外展開を問われると、制作担当の常務理事が「監督ともよくお話し、今後も海外公演をやっていく方向で進めていきましょうと申し上げております」と回答。準備に数年を要したというロンドン公演のような大規模公演に限らず「数人がいくパターンもあり得る」との見解も示す。また「『アラジン』の映像配信のようなものも含めて発信に努めたい」と話した。
ロンドン公演を経て、一回りも二回りも大きくなった新国立劇場バレエ団の充実と、さらなる躍進を実感できそうなラインアップに注目が集まる。
取材・文・撮影=高橋森彦
公演情報
『街の灯』City Lights
[新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演]
■公演期間:2026年10月23日[金]~11月1日[日]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/citylights/
新国立劇場バレエ団
『DANCE to the Future 2026』
■公演期間:2026年11月27日[金]~11月29日[日]
■会場:新国立劇場 中劇場
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/
新国立劇場バレエ団
『くるみ割り人形』The Nutcracker
■公演期間:2026年12月18日[金]~2027年1月3日[日]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/
新国立劇場バレエ団
『ラ・シルフィード/精確さによる目眩くスリル』
La Sylphide / The Vertiginous Thrill of Exactitude
■公演期間:2027年2月19日[金]~2月23日[火・祝]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/lasylphide/
[新国立劇場委嘱作品・世界初演]Kojiri Kenta New Work
■公演期間:2027年2月26日[金]~2月28日[日]
■会場:新国立劇場 小劇場
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/kojirikenta-newwork/
『ホフマン物語』Tales of Hoffmann
■公演期間:2027年3月18日[木]~3月22日[月・休]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/hoffmann/
『ロメオとジュリエット』Kenneth MacMillan's Romeo and Juliet
■公演期間:2027年5月1[土]~5月9日[日]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/romeoandjuliet/
『ドン・キホーテ』Don Quixote
■公演期間:2027年6月5日[土]~6月13日[日]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/donquixote/
『喧嘩(仲直り)』KENKA(Battle to be solved)
[新国立劇場委嘱作品・世界初演]
■公演期間:2027年8月6日[金]~8月8日[日]
■会場:新国立劇場 小劇場
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/kenka/
『ジゼル』 Giselle
【福岡公演】
■公演期間:2026年11月14日[土]~11月15日[日]
■会場:福岡市民ホール 大ホール
【兵庫公演】
■公演期間:2027年1月23日[土]~1月24日[日]
■会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/giselle/
『竜宮 りゅうぐう』~亀の姫と季ときの庭~
Ballet for Children 2027 RYUUGUU ─ The Turtle Princess
■公演期間:2027年7月24日[土]~7月27日[火]
■会場:新国立劇場 オペラパレス
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/