“どんな自分も、urata naoyaだ” — アルバム『unbreakable』に込められた確固たる意志とは

インタビュー
音楽
2018.9.3

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今秋から全国でドームツアーを開催するパフォーマンス・グループ AAAのリーダー・浦田直也は、グループとしての着実なステップアップと並行して、ソロアーティストurata naoyaとしても約10年に渡り精力的に活動している。コンスタントなリリースに加え、趣向を凝らしたライブツアーも行い、日本語で丁寧に綴る歌詞と包容力のある歌声で聴く者を魅了し続ける彼が、今年7月に3枚目のオリジナル・アルバム『unbreakable』を世に送り出した。重ねてきた経験により培われた揺るぎなき意志と、独自の言葉選びを全面に活かした全7曲。今回のインタビューではその『unbreakable』を切り口に、彼がもつ「言葉」と「表現」へのこだわりに迫る。

ーー ニューアルバムのタイトルは「壊すことのできない」を意味する『unbreakable』。確固たる決意を感じる言葉ですが、まずはこのタイトルに行き着いた経緯を聞かせてください。

前作 『unlock』も全曲作詞をしたんですが、これをリリースしたころはグループとしては10年以上、ソロでも8年くらい活動した段階でした。グループの楽曲では作詞せず、書いていただいた歌詞を自分なりに解釈して歌うことが多いので、ソロの作品では自分のことを赤裸々に書いても良いのかなと思って、心の中にある言葉を解放したんです。だからこそ前作は感情を叫ぶ楽曲が多かったし、それを提げた昨年のツアーは、「こんなにメッセージ性の強い曲ばかりを歌っていると、楽しむために来てくれるお客さんが疲れてしまうのではないか」という不安もありました。でも実際にステージに立つと、来てくれたかたたちは笑ったり、涙したり、楽しんでくれて。プレッシャーがなくなって、「どんなことを経験しても、urata naoyaは簡単には壊れない」と思えたので、今作のタイトルは『unbreakable』に決めました。

urata naoya 撮影=渡邉一生

urata naoya 撮影=渡邉一生

ーー 今作は、昨年のライブツアーでバンドマスターを務めた宗本康兵さんが全曲を作曲され、前作『unlock』に続き浦田さん自身が全曲の作詞をされました。

そうなんです。康兵くんとは10年くらいの仲なのですごく話しやすくて、昨年初めて一緒にツアーを回ったんですが、その中で「来年アルバムを作りたいと思ってるんだ」という話をしていて。「こういう曲があると盛り上がるよね、それならこういう曲もほしくない?」と相談するうちに、「これを全部作ったら、アルバム1枚できちゃうね」ということになり、一緒に作ることになりました。自分は楽譜を読んだり書いたりできないので、「こういう音がほしい」というのを言葉で伝えるしかないんですが、「ライブで例えるなら最後のほうで、ミュージカルっぽくエンディングに持っていきたいんだ」というふうに自分が思い描いていることを話すと、康兵くんが「じゃあこういう感じかな?」とその場ですぐ音にしてくれました。

ーー 「ミュージカル」という言葉がありましたが、このアルバムの1曲目「unbreakable -introduction-」は管弦楽を用いたシンフォニックなイントロで、そのサウンドのまま2曲目「Checkmate」へ移ると初めて浦田さんの歌声が登場します。まさに「ミュージカルが始まったようだな」と感じました。

康兵くんにトラックをオーダーするとき、「映画でいうと、主人公が登場するまでに2〜3分の映像があって、主人公が出てくる瞬間にドンッと音が始まるんだけど、カメラは主人公の足元から映していって、やっと顔が見える……みたいな感じにしたい!」と話したんです。悲しんだり、楽しんだり、いろんな感情を纏った自分がいる中にurata naoyaという王様のような存在がいて、その王様が「どんな自分もurata naoyaなんだ」と力強く言っているイメージが浮かんだので、それを元に1曲目から2曲目への流れを作りました。

ーー 続く3曲目に収録されている「you are my xxxxx」は、ラテン調のギターが情熱的なナンバーですが、歌詞も意味深で、刺激的ですね。

僕は歌詞を書くときに何かに例えるのが好きなので、聴いてくださるかたが「これってな何のことを歌っているんだろう?」と、それぞれが想像できるポイントを作ります。この曲は恋愛じゃない事柄を恋愛に聞こえるように書いているんですが、恋愛と捉えるなら恋愛でもいいし、友情でなら友情でもいいし。実は自分だけが知っている裏テーマみたいなものがあるんですけど、それを明かすことはないんです。

ーー私も何のことを歌っているのか、核心には迫れませんでしたが、ある意味それで正解ということですね。特に気になったのは《鏡写る切な可愛いさで 味方だったはずが敵》というフレーズなんですが、「切な可愛いさ」とはどういったものなんでしょうか。

言葉を選ばずに言ってしまうと、ぶりっ子で自分のことを可愛いと思っている人は、「切な可愛い」ではないですよね。逆に周りからは「可愛い」と言われるのに自信がなくて、自分のことを鏡で見ても「私なんかを、みんながどうして褒めてくれるのかわからない。」と思ってしまうような人が「切な可愛い」であって、男性からすれば「君は本当に可愛いんだよ」と、支えてあげたくなる存在なのかなと思います。ただ、「わたしなんて」と謙遜しているのも実は魅力的に見せるための計算かもしれないという、心の駆け引きを描きたかったんです。

urata naoya 撮影=渡邉一生

urata naoya 撮影=渡邉一生

ーー 浦田さんならではの表現ですね。作詞をする上で、特に影響を受けたソングライターはいらっしゃいますか?

Mr.Childrenの桜井和寿さんや、槇原敬之さんでしょうか。僕が学生のころに聴いた槇原敬之さんの 「Hungry Spider」 は、歌詞の意味を知って驚きました。1999年の作品で、この曲では、蝶と蜘蛛の関係を禁断の恋になぞらえていて、蜘蛛が好きになってはいけない相手である蝶を好きになるんです。あるとき蜘蛛の巣に蝶がかかってしまって、蜘蛛の「生き抜くためには蝶を食べなければいけないけど、好きだから逃がしてあげたい」という葛藤を描いていて。「恋愛をこんなふうに例えるなんて、すごいな」と思いました。

ーー 私も改めて聴き返したくなりました。「you are my xxxxx」のあと、疾走感のある「once in my life」とバラードナンバー「orange」の間には、ピアノの旋律が美しい「twilight -interlude-」が挟まります。このインタールードにはどういった意図があるのでしょうか?

「once in my life」のあと、すぐに「orange」の切なさに引っ張りこむのではなく、「切なくなる前の切なさ」に拘りたかったんです。友達と泊まりがけで海に行ったときって、朝から昼にかけては海で泳いだりビールを飲んだりして思い切り遊ぶじゃないですか。昼下がりになるとだんだん疲れてきて、夕暮れを迎えるころに一旦ホテルに戻って、シャワーを浴びてリフレッシュするんですけど、ふと一人になると「これから楽しい夜が始まるってことは、今日が終わるってことだ」と思って、切なくてぼーっとしちゃいますよね。その1時間くらいの気持ちを、「twilight -interlude-」で表現したかったんです。

ーー とても想像しやすい例えですね。「orange」では主人公と愛するひとが永遠の愛で結ばれ、その2人の明るい未来を描いているようにも聴こえる「under the same sky」で、アルバムが締めくくられます。言葉を丁寧に綴ったこのアルバムを提げ、12月からはライブツアーを開催されますが、どのようなパフォーマンスが観れそうですか?

ソロで行うライブはもちろん楽しんでもらうことを大前提に考えているんですけど、ライブが終わったあとに「楽しかったから、もっと毎日を楽しめるように考えよう」とか、「楽しい」以上に残るものがあってほしいんです。そのために、ライブの中盤は盛り上がっても終盤は、グッと落ち着いた楽曲で締めくくったり、本編は挨拶をせずにステージを後にしたり、単純な終わりかたをせずに、観ている人に「なぜだろう?」と引っかかるポイントを作ることを意識しています。ライブを観に来るひとはステージに立つ人のことを、キラキラしたアーティストだったり、アイドルだったり、自分たちとは別モノとして見ているかもしれないんですけど、自分もみんなと同じ浦田直也という人間で、いろんな辛い経験もしたし、毎日キレイなものを見て美味しいものばかり食べてきたわけじゃない。それを少しでも伝えて、共有することができれば嬉しいです。

urata naoya 撮影=渡邉一生

urata naoya 撮影=渡邉一生

ーー 最後に、ご自身の意志がより色濃く反映されるソロプロジェクトにおいて、今後目指すものがあればお聞かせください。

ソロとしてもグループとしても、デビューしたときから、目標を作らないことを目標にしています。ゴールはここと決めてしまうと、達成した瞬間に燃え尽きてしまう気がするんです。まさか自分がドームツアーをするなんて思っていませんでしたが、もし、「こんな会場でライブがしたい」という夢を持っていたら、叶ったときに「もう歌わなくていいや」と思っていたかもしれないですし。ここまで続けてこれたのは、この状況が目標だったわけではなく、目の前にあること1つ1つを楽しんできたからなんです。これから先も何があるかわかりませんが、常に「走り続けている今が1番気持ち良い」という、ランナーズ・ハイでいたいです。

urata naoya 撮影=渡邉一生

urata naoya 撮影=渡邉一生

取材・文=河嶋奈津実 撮影=渡邉一生

リリース情報

NEW ALBUM "unbreakable"
01 unbreakable -introduction-  
02 Checkmate  
03 you are my xxxxx  
04 once in my life  
05 twilight -interlude-  
06 orange  
07 under the same sky  

ツアー情報

urata naoya LIVE TOUR 2018-2019 - unbreakable -
2018.12.08 (土) 東京国際フォーラム ホールC 17:00 / 18:00
2018.12.09 (日) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール 17:00 / 18:00
2019.02.09 (土) 福岡国際会議場メインホール 17:00 / 18:00
2019.02.10 (日) NHK大阪ホール17:00 / 18:00
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