富士を背にSKY-HIが吠え、稲穂が揺れ、マンウィズが豪快に締め 『SWEET LOVE SHOWER 2018』DAY1

レポート
音楽
2018.9.1
MAN WITH A MISSION  Photo by 古溪一道

MAN WITH A MISSION Photo by 古溪一道

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SWEET LOVE SHOWER 2018・DAY1 2018.8.31  山中湖交流プラザ きらら

山中湖畔にて開催されるスペースシャワーTVの主催フェス『SWEET LOVE SHOWER 2018』が今年も始まった。富士山を望むことのできる絶好のロケーション、「全てのライブを観ることができる」というタイムテーブル設計などが人気を博し、毎夏ロックファンから注目を集めているこのフェス。今回の記事では、3デイズのうちの1日目=8月31日に出演したアーティストのうち6組のライブレポートをお届けする。空は快晴。フェス日和と言って差し支えない天気だ。

KEYTALK  Photo by 古溪一道

KEYTALK Photo by 古溪一道

トンボまでもが舞い踊るLAKESIDE STAGE、トップバッターを務めたのはKEYTALK。「SWEET LOVE SHOWER~♪ みんな元気ですか!」と寺中友将(Vo/Gt)のスキャット混じりの挨拶を機に、まずは「桜花爛漫」、そしてEDM融合型の強力なダンスナンバー「Summer Venus」へ繋げる流れだ。パワフルなビートを繰り出す八木優樹(Dr)はホイッスルも兼任しているため、懸命に吹き鳴らすその表情がときどきモニターに大きく映る。前の3人はノリノリで踊っていて、よく見たらDA PUMP「U.S.A.」の振り付けだった。

KEYTALK  Photo by 古溪一道

KEYTALK Photo by 古溪一道

この流れで行くと次は秋の曲で、その次は冬の曲か?と言いたいところだが、ここから先は夏、夏、夏!  開放感に任せてハメなんて外してしまえと歌うKEYTALKのサマーチューンは、フェスのオーディエンスとの相性も抜群。首藤義勝(Vo/Ba)がバチバチ鳴らすスラップにも、小野武正(Gt)のソロにも大歓声が上がった。そしてみんなまるごと踊らせる「MONSTER DANCE」で堂々フィニッシュ。

真昼のMt.FUJI STAGEには、Fear, and Loathing in Las Vegas。太陽の下、電子音を重ねたラウドなサウンド、目の周りを真っ黒に塗ったMinami(Vo/Key/Prog)のデスボイスが轟いた。1曲目は「Return to Zero」。ボーカル陣がパラパラを披露し会場を沸かせる。彼らのライブを観るのは久々だったのだが、オーディエンスの方をよく見るようになったなあと感じた。特にSo(Vo/Prog)は、その表情一つひとつを確認しながら歌っているような感じがある。ここまでまっすぐにぶつかってくる人たちだったっけ?と思っていたら、終盤、Soがこんな話を始めた。

Fear, and Loathing in Las Vegas   Photo by 古溪一道

Fear, and Loathing in Las Vegas Photo by 古溪一道

「俺らね、ちょっと前にメンバーが脱けてしまって結構バタバタしたんですよ。でもね、メンバーそれぞれがバンドのこと、みんなのことを改めて考えて。それで思ったのは、みんなをもっともっと楽しませられるバンドになりたいなって。今日はそういう気持ちをぶつけにきてます!」

飾らない言葉に温かな歓声。目まぐるしくビートの変わる多展開の楽曲を、ノリこなし踊りこなすオーディエンスの熱量は凄まじく、そこには確かな絆が在った。

Fear, and Loathing in Las Vegas   Photo by 古溪一道

Fear, and Loathing in Las Vegas Photo by 古溪一道

初出演のSKY-HIは、ベース/ドラム/キーボード/DJという編成で臨む。定刻を迎える前、バンドメンバーと音出しをしながらフリースタイルを披露していたため、オーディエンスが拍手したところ、「まだリハだから!」とフランクなテンションで恐縮していた。そして本編へ。前半戦では畳み掛けるように楽曲を連投していった。疾走感溢れる「Driver's High」。艶やかさと冷たさを感じさせる「Stray Cat」。冒頭の伴奏はドラムのみ、鋭い眼光で高速ラップを放った「RAPSTA」——。上着の裾をはためかせながら壇上でステップを踏む彼が、瞬間ごとに見せる様々な表情に、私たちは揺さぶられっぱなしである。

SKY-HI   Photo by 古溪一道

SKY-HI Photo by 古溪一道

後半戦では「この中にロックが好きなヤツ、ラップミュージックが好きなヤツ、音楽が好きなヤツ、どんだけいる?  それだけで十分だろ、俺とお前は兄弟みたいなもんだ!」と呼びかけながらオーディエンスと一体に。因みに途中には、セットリストに含まれていなかった「運命論」の一節を挟む場面も。富士山を背に<常に俺の後ろに神が立ってる>と言い放つシーン、めちゃくちゃカッコよかった。

SKY-HI   Photo by 古溪一道

SKY-HI Photo by 古溪一道

折坂悠太(合奏) Photo by 古溪一道

折坂悠太(合奏) Photo by 古溪一道

夕方に差し掛かると、WATERFRONT STAGEにシンガーソングライター・折坂悠太がバンドセットで登場。湖畔沿いにある遊歩道上に設置されたこのステージは、風に揺れる水面の音も聞こえてくるような最高のロケーション。そこでフォーク・民族音楽・ブルース等から強く影響を受けた折坂の楽曲が鳴らされたら、心地よくてしょうがないのだ。さらに、彼の歌は面白い。息の吹き込み方も抑揚の付け方も独特だし、その声をしゃがれさせることもあれば、演説のような語り口になることもあって、弾んだりしぼんだり転がったりする球体のように予測不能だ。マリンバやクラリネットの音色を取り入れたバンドサウンドもチャーミング。集まったオーディエンスへの感謝を口上に変え、「芍薬」へと繋げる締め方も粋だった。

折坂悠太(合奏) Photo by 古溪一道

折坂悠太(合奏) Photo by 古溪一道

レキシ  Photo by 上山陽介

レキシ Photo by 上山陽介

Mt.FUJI STAGE、1日目のトリはレキシ。定刻になると十二単姿の池田貴史が駆け込んできてまず「SHIKIBU」を演奏。さらにイルカ(の浮き袋)を投げ込み「KMTR645」へ。夜の闇に似合う「GET A NOTE」を終えると、キーボードが奏でるのはあのイントロだ。……と、いつもよりかなりスムーズに進んでいる。しかしやはりただで終わるわけはなく、「きらきら武士」で大団円を迎えるまでの約17分間、「狩りから稲作へ」タイムがひたすら続くのだった。

レキシ  Photo by 上山陽介

レキシ Photo by 上山陽介

コール&レスポンスしながら思わず笑ってしまっていた池田が、ポロッと「楽しすぎるわ!」と言っていたのが印象に残っている。因みに本日やっていたパロディは以下の通り。あとで読み返した時「何だこれは」と思ってしまいそうだが、映像には残らない可能性もあるし、一応書いておこう。

・絶え間なく注ぐ稲の名を~♪(GLAY「HOWEVER」/キー設定を誤るハプニング有り)
・君に稲穂を買ってあげる♪(グループ魂「君にジュースを買ってあげる」)
・稲~アゲイン いな~いなほ♪(MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」)

MAN WITH A MISSION  Photo by 古溪一道

MAN WITH A MISSION Photo by 古溪一道

LAKESIDE STAGEトリとして1日目を締め括ったのはMAN WITH A MISSIONだ。1曲目は「Emotions」。イントロのSEが鳴った時点であちこちから喜びの声が聞こえてきたため、この曲を待ち望んでいた人も多いのだろう。そして壮大なメロディが広大な空に広がり、ステージ上で炎が上がると大盛り上がり。「Singing!」の声に応え、辺りはすぐさま大合唱に包まれた。

先日イギリスツアーから帰ってきたばかりだというMAN WITH A MISSION。どれだけオーディエンスが歌おうとも掻き消されるどころかビクともしない強靭なバンドサウンド、そして今年リリースされた「Winding Road」や「Take Me Under」で起こった歓声が証明する通り、キラーチューンを更新し続ける姿勢からは、このバンドの凄みを感じざるをえなかった。「合言葉ハヒトツ。思ウ存分カカッテキテクダサイ!」というジャン・ケン・ジョニー(Gt/Vo/Raps)の言葉、さらに「datebase feat. TAKUMA(10-FEET)」での10-FEET・TAKUMAサプライズ登場も起爆剤に。そして鉄板の「FLY AGAIN」で豪快に締め括ったのだった。


取材・文=蜂須賀ちなみ

MAN WITH A MISSION  Photo by 古溪一道

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