シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第三十三沼(だいさんじゅうしょう) 『galcid世界ツアー沼!1』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第三十三沼(だい33しょう)『galcid世界ツアー沼!(1)』
皆さまおげんこ?
今回の沼は齋藤久師ではなく、私、galcidのlenaが書いております。
この度galcidは、モントリオール〜スイス〜ベルリンとツアーをしてまいりました。
その17日間は非常に濃厚で、たくさんの人の力を借りて、成り立ったものです。
その経緯、感謝、愛を込めてツアーの振り返りを沼でしたいと思っています。
きっと、沼の愛読者にも受け入れられるであろう、と願っていおります!!
この濃厚な17日間を2回に渡り、前編、後編でお届けします〜!
人生はインプロヴィゼーション!
galcidの音楽のスタイルの最大の特徴はインプロヴィゼーションということなのだけど、これが、音楽だけではなく、今回、自分の人生もそうなのだということを痛感したのもこのツアーの学びだった。
まずは最初から。
ミネアポリス経由でモントリオールへ向かう飛行機に乗る予定だった私は羽田空港へ向かっていた。
その電車の中で何か胸騒ぎがした。
カナダのビザもイベント側が取ってくれているし、入国には問題ないはず。
しかし、アメリカで乗り継ぐ、というその点に何故か疑問を持った。
そして、「アメリカ 乗り継ぎ 入国」というキーワードでサーチした途端、出てくるじゃないか、Ya●oo!知恵袋!!
「乗り継ぎでも入国許可ESTAの事前申請が必要です。二週間を目安に〜〜」という文言を見た瞬間に血の気が引いたw。
その場でESTAに申し込み、多分30回はメールチェックしただろう、ESTA無しでは飛行機に乗れないというのだから!!
そして忘れもしない30分後、無事に申請が通ったというメールが届く。
インプロでは対応力が問われる。
その場で対処しなければ、時間は無駄にすぎる。
そして何かにしくじったまま放っておくと決して結果は覆らない。
No Plan! No Preparation! No Phone!
galcidは3つのNo Pを掲げている。
「No PC! No Presets! No Practice」だ。
そして、今回のツアーでの出来事を帰国したその日、日本とベルリンのアンバサダーを務め、尊敬するDJ Tobyさんに話したところ
「No Plan! No Preparation! No Phone!」とからかわれてつけられたw。
そして、この言葉、悔しいけど的を得ているw。
このNo Phone!については後編で述べることになると思いますが、No Plan! No Preparation!については前述した内容で皆さまにも少しわかっていただけたと思います。
旅は続いて乗り継ぎのミネアポリスへ・・・。
ミネアポリスでiPhoneのSIM解除手続きをしていなかったことに気がつき、わざわざアメリカの空港でマイソフトバンクに繋ぐも、SIM解除は営業時間内に行うように・・・とのエラーメッセージ。
加えて、Eをミネアポリスまでしか用意していないことに気づき、カウンターでわたわた。
乗り継ぎ時間の2時間半はあっという間にすぎた・・・・が
今度は遅延。
更に2時間待つことになるのだが、その間にSIM解除もできたし〜〜と考える私のポジティブ思考はおめでたいと自分でも感じている。
そして、夜22時頃にやっとモントリオールのホテルに到着。
もうヘトヘトw。
そこでまたびっくらすることとなる。
フロントで
「君の部屋、予約されてないよ!」
とほぼ死刑宣告・・・。
「まあ、今夜は一部屋だけ空いてるけどね」
と不幸中の幸い??な状況に。
フェス側が取ってくれる良いホテルを断って、現地ホテルを長めに自分で取ったのが運の尽きか?
なんてこったい!!
部屋にチェックインしてあと2日のホテルを色々探すも一泊8万円のスイートルームとか!
おいおい!待ってくれよ!
実はこの夜会う予定だった現地のアーティストには遅延で到着が遅くなったために翌日の朝に会うことになるのだが、ここでまた急展開。
初対面で色々話して音楽の趣味も合って和気あいあい!
そこで何気に話したホテルトラブルに対して、
「あ、そういうことなら僕、家族で週末は出かけるからウチを使いなよ!猫の面倒だけ見てくれない??」
・・・・って、これ、ドラマか?
そんなわけで急遽この彼のうちへ移動。
めちゃくちゃ居心地の良いゲストルームであとの2日間を過ごすこととなった。
いやー、捨てる神あれば拾う神あり、とはこのことだな。
本当に、人生は、旅はインプロですよ。想定外!
いきなりドラマーが入ってきていい感じのフィルインを入れてくれたようなこの流れ。
そうして、モントリオールのギグはうまくいき、超満杯!楽しみまくりました。(肝心なこの部分を一文で終わらせて良いのか??)
スイスでの素晴らしい出会い
スイスではこれからのgalcidの海外マネージメントを考えてくれている人が全てを仕切ってくれていた。
その人のアレンジでスイスのジェネーヴでは現地アテンド兼ドライバーがずっとついてくれている、というので、モントリオールのホテルみたいな惨事になることはないだろう、と安心はしていた。
とは言え、そのドライバーの名前は聞いていたものの、顔までは知らされていなかった。
なので私は空港の到着口で周りをキョロキョロしていた。
まあ、ドライバーと聞いていたので、いかにもなローディーの若者が現れるかと思ったら、小洒落たイカしたオヤジが声をかけてきたのでビックリした。
取り敢えず、喉が乾いただろうと空港のカフェに連れて行ってくれたのだけど、まずメニュー見てびびったよね。
何、このスイスの物価の高さ。
コーヒー一杯1500円とか、銀座を軽く超えてる!!
そんで、座った瞬間からこのジェントルマン、エディとは気があうと思った。
なんか5分後にはSPKとかノイバウテンの話ししてたかな。
話が尽きないのでまあ移動しましょう、と駐車場に行ったら、ハイエースではなくて、ポルシェのカイエンだったw。
なんか分からないけど、取り敢えず安心w。
僕のアパートへ、というので、1つの大きな部屋をシェアさせてくれるのかと思いきや、同じビルの中に部屋を3つ持っていて、その1室を貸してくれた。
その部屋はイームズなどのミッドセンチュリー家具に囲まれた素晴らしい趣味の世界。
なんだこりゃ!
まあ、エディのリッチさは別として、彼はとても人格者だった。
幼少期はそれこそ母親がアルコール中毒で寂しい思いをしたらしいが、そんな事を微塵も感じさせず、近所の人に会うたびに全員に大きな声で挨拶をし、
「僕はとてもラッキーで、本当に周りの人たちが皆んないい人なんだ!!」
と言っていたので、
「違うよ。エディがいい人で、皆んなをいい人にさせているんだよ!」
と言ったら泣きそうになりながら、有り余る言葉だ、って言ってた。
そして、このエディはモジュラーの収集を始めているそうで!
モジュラーの話にユング、カフカ、アドラー心理学、リンチ監督にノイバウテン・・・
育った環境、日本の話、スイスの話・・・・
車の中で、アルプスの頂上で、1812年創設のクラシックなホテルのバーやレストランで・・・
と、とにかく話は尽きなかった。
音響が良すぎる!スイスのハコ!!
ちょっとはライブの話も書かねば・・・という事でw、スイスでは3本のギグを連日やったわけだけど、強烈に感じたのは、
音がめちゃくちゃ良すぎる!!!
電圧のせいなのかな??すごい音圧なんですよとにかく。
しかも、超でかい音!!!!だけど耳が痛くない!身体に響く!!
というのが別に特別なわけではなくて、普通、って感じだったのが驚き!
これはビビったね!
ステージでリハやってると音の振動で机から機材が落ちるんじゃないかとハラハラしたほど。
そんな経験は日本では変友のCRZKNYと共演した時くらいw。
そして、そんな音響ならば音はとてもシンプルにまとまる。
1つ1つの音が粒立ち良いので、それだけで気持ちいい。
3音もあれば十分、ってな感じで。
ライブに関してはすごく度胸がついた気がする・・・。
そして、良い音を爆音で体感できるのって、ミュージシャンにとっては一番の学びの場に、披露の場になると痛感したのでした。
まあ、ライブハウスやクラブであれば、良い音の環境を整えるのは話はわかるんだけど、今回、Fri Burgという場所でアートフェスにも参加し、その会場はいわゆる音を扱う場所ではないのだけど、今回はアコースモニウムというスピーカーを24個使った特別な会場に作り上げてくれたわけなんだけど、これまた凄く音が良くて!
本当に気持ちよかったね。
そして、お客さんもモジュラーとか機材とかよく分からないんだけど、取り敢えず鳴ってる音で盛り上がる!!
みたいな感じですごく良い感じで個人的に非常に楽しめたイベント。
ラインナップも良くて、皆んな素晴らしかったので、すぐに友達になった。
その中の一人はイタリア人のロレンツォ・センニ。
あのワープレコードからリリースしていて、galcidのライブの時にノリノリでしたw。
あと、このライブの空き時間を利用して、近所の個人のシンセ収集家のところに招待してもらったので行ったのだけど、
もう、圧巻・・・。
Facebookに投稿すると瞬く間に300シェアを超えたw。
みんな、好きねぇ。
モントリオールからスイスまでのまとめ
そんなわけで、出国前からスイスの最後までをちょっと小走りで進めましたが、本当に出会いは楽しいし、ツアーも本当に楽しかった。
スイスでは「肉」「肉」「チーズ」「肉」「チーズ」という食事を繰り返してましたが、なんか、意外と大丈夫だったので、逆に周りが心配していたくらいw。
郷に入っては郷に従え、というか、ローカルな物を楽しむのが一番の旅の醍醐味かと。
そして、この機会をサポートしてくれたクラウドファンディングの支援者の皆さん、
ニルバーナ・コンサルタントKKの原さん、MEG、Marc、Edi、家族にこの場を借りて本当に感謝を伝えたいと思います。
そして、旅は後半へと続きます!!
次回をお楽しみに!!