日本唯一のタイル専門博物館で、タイル愛に目覚める!?
美しいタイルが彩った懐かしの風景とタイル装飾の魅力に迫る
日本には明治初期に西洋建築と共にもたらされ、高い防水性や優れた断熱性から瞬く間に普及したタイル。とりわけ昭和30~40年代の高度経済成長期には、銭湯や美容院、喫茶店、タバコ屋など、タイルをふんだんに使った建物が街のあちらこちらに登場した。そんな懐かしの風景に着目した企画展『I LOVE タイル -タイルがつなぐ街かど』が、愛知県常滑市のINAXライブミュージアム内にある「世界のタイル博物館」にて来春まで開催されている。
本展は、会社員のかたわら全国各地の街を巡り、表情豊かなタイルが施された懐かしい建物を撮影している岡崎紀子(みちこ)さんとの出会いによって企画されたもの。彼女が撮りためた写真の数々が、<タバコ屋><美容院と理容店><銭湯・風呂屋><映画館・喫茶店・帽子店・写真館など>と業種別に紹介され、併せて博物館が収蔵する装飾タイルコレクションから当時のタイルの実物や見本帳なども展示されている。
企画展示室に入ると、懐かしいタバコ屋さんがお出迎え
一つひとつ写真や展示を眺めていくと、改めてタイルのバリエーションの豊かさに驚かされ、色と形の組み合わせの妙、タイル文字やタイル絵といった繊細な仕事ぶり、凝った工夫など、タイル装飾の魅力を再認識させられる。新しい建物への建て替えとともに失われつつあるどこか愛らしい昭和の光景を前に、来場者の中には「懐かしい!」と声を上げ感慨にふける人も。鑑賞を機に、近所に残るタイルが使われた建物を探してみるのも面白いかもしれない。
立体的で華やかな色と鮮やかな発色が目を引く、和製ヴィクトリアンタイル(明治の初めにイギリスから入ってきた装飾タイル「マジョリカタイル」を模して日本で製造されたもの)
当時の建物に使われた多彩なタイルの見本帳なども展観
昭和初期に製作された「佐治タイル」の商標レリーフタイルは、今みてもお洒落
また、ターコイズブルーのタイルで作られたエントランスアーチが目を引く常設展示室では、世界最古とされる4600年前のエジプトのタイルから近代に至るタイルの歴史や、オリエント、イスラーム、スペイン、オランダ、イギリス、中国、日本でつくられた多種多様なタイルを紹介。2フロアに渡る見ごたえたっぷりの展示で、こちらも必見だ。1階には多彩な品揃えのミュージアムショップもあるのでお土産にぜひ。
常設展示室の1階にある、イスラームのタイル張りドーム天井を再現した部屋。天窓からの外光を照明で表し、朝、昼、夕方、夜…と移り変わる光と影を体感できる
ステーショナリーや手ぬぐいなどのオリジナルグッズ、モザイクアートキットや企画展の関連商品などが揃う「ミュージアムショップ」
収蔵タイル約7000点の中から選りすぐった100点のポストカードも
岡崎さんのタイル愛が詰まった正方形サイズの可愛い図録は入手必須。手軽なブックレットタイプの図録「Tile Folio」は企画展ごとに発行される
土とやきものの魅力を体感できるINAXライブミュージアムは、「世界のタイル博物館」の他にも「窯のある広場・資料館」「建築陶器のはじまり館」「土・どろんこ館」「陶楽工房」「ものづくり工房」と全6施設で構成され、いわば“やきものの街・常滑”の特色を集約した文化施設になっている。見学だけでなく、「土・どろんこ館」や「陶楽工房」では<光るどろだんごづくり>や<モザイクアート体験>など(いずれも要予約)ができるほか、博物館内には薪窯で焼くピッツァが自慢のレストランもあるので、1日ゆっくり楽しみに出掛けるのもおすすめだ。
「陶楽工房」では、予約なしで体験可能な<自由時間>も実施。フォトフレームやクリップなどにモザイクタイルを貼って、オリジナル作品づくりを
高さ21mの煙突がそびえる「窯のある広場・資料館」。敷地内には季節ごとに見どころを迎える100種以上の植物が点在し、やきものを使ったカラフルな公衆トイレ「トイレパーク」や休憩所もあるので散策を楽しむのも
■会期:2015年10月10日(土)~2016年3月20日(日)
■会場:INAXライブミュージアム「世界のタイル博物館」企画展示室(愛知県常滑市奥栄町1-130)
■開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
■休館日:第3水曜、年末年始(12/26~1/4)
■共通入館料:一般600円、高・大生400円、小・中学生200円
■アクセス:名鉄線「常滑」駅または中部国際空港より知多バス「知多半田駅」行きで「INAXライブミュージアム前」下車、徒歩2分
■公式サイト:http://www1.lixil.co.jp/museum/current/020_special/003333.html