Rhythmic Toy Worldが過去最大の会場・Zepp DiverCityで示したバンドの決意とロマン
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Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
SHOOTING TOUR FINAL 2018.10.29 Zepp DiverCity TOKYO
「Zepp DiverCity、最高の時間にしようぜ!」、内田直孝(Vo/Gt)の叫び声から、Rhythmic Toy Worldの、バンド史上最大キャパに挑むワンマンライブが幕を開けた。4月にリリースしたメジャーデビューアルバム『SHOT』を携えて、対バンで16公演、ワンマンで10公演をまわり、辿り着いたツアーファイナル。ステージにはバンド名を印刷した巨大なフラッグと、バンドの合言葉「ASOBOYA」(遊ぼうや!)の文字が書かれたタペストリーが飾られていた。ライブの1曲目は、「BOARD」。岸明平(Gt)、須藤憲太郎(Ba)、磯村貴宏(Dr)が繰り出す、ギミックに富んだバンドサウンドにのせて、内田の伸びやかな歌声が会場の隅々まで響きわたっていく。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
バンドが所属する事務所「Team ぶっちぎり」の頭文字をタイトルに掲げた「Team B」では、コミカルなフレーズに合わせて、内田が変顔でおどけるのが見せ場だが、この日は、いつも以上に大きな会場ということもあってだろう、メンバー全員が演奏に合わせたコミカルな動きを見せる。そんな変化に「ああ、ついにリズミックもZeppでライブをできるバンドになったんだ」という実感が湧いてくる。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
内田が「遊ぶ準備はできてる?」と言って突入した「いろはにほへと」では、岸がリーダーシップをとって、シンガロングの練習をしたあと本番へ。キャッチーなメロディにのせて、須藤と岸は楽しそうにツーステップを踏みながら演奏していた。「お台場いこうぜ!」。内田の煽り文句が会場の熱狂をさらに加速させながら、「ラストオーダー」「十六夜クレーター」へと、アグレッシヴなナンバーが続く。暴れまわる重低音がカオティックな世界へと導いていく「JIGOKU」、須藤のスラップベースが狂暴に唸りをあげた「ブッシャカ」から、岸が奏でる伸びやかなギターソロが日常生活で溜め込んだ鬱屈を一気に外へと解き放つような「S.F.」へ。天井知らずの盛り上がりのなかで、内田が「ひとつ憧れてることがあって、男の子と女の子にわけるってやつやってみたいから」と言い出すと、オイ!オイ!のコール&レスポンスで会場が一体になった。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
続く「とおりゃんせ」は1曲丸ごと演奏したあと、「まだ足りない!もう1回「とおりゃんせ」やってもいいですか?」と、まさかに2回連続で演奏するという流れに。ふつうライブで同じ曲を続けてやるなんて、なかなかないことだけれど、そんな型破りな2回目の演奏では、内田がフロアに全力でダイブ。このとき、内田の歯が欠けていた――というのは、ライブの終盤に明かされた衝撃の事実だった。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
「は~、バンドって楽しいよね」。怒涛のような勢いで13曲をぶっ飛ばして、しみじみと口にした内田。MCでは、ここ数日間、久しぶりに母親が東京に来て一緒に暮らしていることを明かすと、「母さんに……」と伝えて、温かいミディアムテンポ「リバナ」を届けた。<あなたの子です ずっとあなたの子です>と繰り返し、そのラストを<ありがとう>で締めくくる母親への感謝の歌で、会場が温かい空気で包み込まれると、続いても、ゆっくりとしたテンポの「27時」へ。<一人きりじゃ越えられない/そんな夜はそばにいたい>と、バンドの決意を込めたバラードには、内田の伸びやかな歌声が本当によく映える。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
リズミックのライブと言えば、「いろはにほへと」や「とおりゃんせ」のような盛り上がり必至の曲もいいが、やはり内田の歌の訴求力を生かした、メッセージ性の強い曲こそ本領を発揮する。ライブの後半にかけては、そんなボーカリストの魅力を全面に打ち出した楽曲を積み重ねていった。遠のく夢の在り処へとガムシャラに走り出す「描いた日々に」、そのラストの<動き出した僕等が輝けるようにと>というフレーズを引き継ぐように歌い出した「輝きだす」。流れゆく時間のなかで絶対に忘れてはいけない想いを綴った「いつか」。それらはすべて彼らがライブハウスで大切に歌い続けてきた楽曲たちだ。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
「今日、ライブの最後に言おうと思っていたことがあるんですけど。みんなの顔を見てたら、いま言いたくなったので言います」。本編ラスト2曲を残して、おもむろに切り出した内田は、「手を挙げてくれる? 関係者も、メンバーも、スタッフも。その手を胸にあててくれる? ……その手で触ったもの、それが俺の宝物です」と語りかけた。どこまでもロマンチックな内田らしいセリフ。たぶん日常生活は恥ずかしくて言えないようなことも、ライブハウスという特別な場所が言わせるのだと思う。そういうリズミックの“ライブハウス愛”がストレートに詰まった「ライブハウス」では、ステージから身を乗り出すようにして歌いかける内田に、須藤がベースを弾きながらピッタリ寄り添い、内田がちょっと驚いたような表情を見せるシーンが印象的だった。そこに予定調和はない。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
そして、本編のラストは「僕の声」。何の衒いもない“がんばれ”というフレーズも、がんばれない夜を何度も越えてきたバンドが歌うことで、より説得力のある言葉として伝わってくる。その曲のラストで、「終わりじゃねえよ、俺たちとお前たちはどこまでも走り続ける」と即興のメロディを歌い上げて、本編は終了。会場は割れんばかりの歓声で包まれていた。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
「遊ぼうや!遊ぼうや!」の掛け声で突入したアンコールでは、「今回はいままでで一番大変で、何を届けるのかを考えたツアーだった」と振り返った内田。おそらくメジャー一発目のツアーだからこそ思うこともあったのだろう。多くは語らなかったのが、その答えのひとつとして披露されたのが、新曲「ヒトノカケラ」だったと思う。弱さも強さも自分の一部であること。等身大であること。過去と共に生きること。ひとりじゃないこと。つながっている、ということ。リズミックが大切に歌い続けてきたことを改めて強く伝えるような楽曲には、「これからも自分が信じることを歌い続ける」という決意も刻まれていた。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
「時間が許す限り歌いたい」という言葉のとおり、アンコールは「さなぎ」「フレフレ」なども含めて全6曲。MCでは、「次がいつになってもいい。またお前らのペースで会いに来てくれよ。その代わり、元気でいてくれよ!」と、真摯な言葉で語る姿も印象的だった。「次も来てくれよ」とか「ずっと応援してくれよ」と言うのは簡単だが、伝えたいのはそんなことじゃない。もし毎日の生活でヘコタレそうなとき、何かを諦めそうになったとき、自分たちの音楽が寄り添っていることのほうがRhythmic Toy Worldにとって大事だということだ。
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
「会えるように」まで終えたあと、まさかのダブルアンコール。このとき、ライブ開始時からステージに飾られていた黄色いTシャツについて初めて説明があった。「埋めようぜ! Zepp」という文字が印刷されたそのTシャツは、この日のためにお客さんが作ってくれたものだという。今回、残念ながら、Zepp DiverCityは完全には埋まらなかった。内田はそのことに触れてこなかったが(そんなことよりも、この日のステージで伝えるべきことがあるからだ)、ライブの終盤になって、「いつか“埋めたぜ”って言えるときまで、俺はこれを宝物にする」とだけ伝えた。そして、須藤が「あなたたちに出会えてよかった。これからもよろしくね」と叫んで、ラストソング「あなたに出会えて」で終演。これまでリズミックが大切に歌い続けてきた、絶対に曲げられないものを貫いたライブには、泣き笑いを引っ提げて夢へと向かおうとするロックバンドのロマンが詰まっていた。
取材・文=秦理絵 撮影=佐藤広理
Rhythmic Toy World 撮影=佐藤広理
セットリスト
1. BOARD
2. Team B
3. ペーパー人間
4. いろはにほへと
5. ラストオーダー
6. 十六夜クレーター
7. 終末のカンヴァセ―ション
8. s.m.p
9. JIGOKU
10. ブッシャカ
11. S.F
12. 波紋シンドローム
13. とおりゃんせ(×2)
14. リバナ
15. 27時
16. 描いた日々に
17. 輝きだす
18. いつか
19. ライブハウス
20. 僕の声
[ENCORE]
21. ASOBOYA
22. ヒトノカケラ(新曲)
23. さなぎ
24. フレフレ
25. 会えるように
[ENCORE 2]
26. あなたに出会えて