odol、2018年の集大成的ファイナル――あらゆる人や物との“往来”が彼らにもたらした変化

レポート
音楽
2018.12.20
odol 撮影=今井駿介

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odol TOUR 2018 “往来”  2018.12.16  渋谷WWW

一昨年から、年末には自らの1年を振り返るようにodolのワンマンライブが恒例のものとして定着してきた印象がある。中でも今年は、ライブを自然と意識するようになった結果生み出されたフルアルバム『往来するもの』を携えた福岡、大阪、東京をめぐるツアーのファイナルとしての位置付け。リリースとツアーをテンプレートのセットで活動してきた訳ではないodolにとって、音楽の送り手と受け手、加えて様々なタイプの共演者を迎えて開催してきた自主企画『O/g』(Overthinking & great ideas)での他アーティストとの交流や、フジロック・フェスティバルなどで不特定多数のオーディエンスと気持ちを“往来”させてきたからこそ生まれたアルバム『往来するもの』であり、今年のodolのあり方を全て見せるツアー『往来』だったと言えるだろう。

odol 撮影=今井駿介

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ライブの前半は『往来するもの』からの選曲で、ストレートに新しさを体感させていく。1曲目に演奏した「大人になって」では、遠くに放つようなミゾベリョウ(Vo/Gt)のピンボーカルの安定感がグッと増したことによって、6人全員のグルーヴが以前とは比べ物にならないほど増したことを実感。平たく言えば堂々としているのだ。すかさず「four eyes」のイントロが流れ、男性ファンの歓声が上がる。端正なダンスチューンであるこの曲のライブでの定着が窺い知れる場面だった。幾何学的な譜割りの曲だが、ミゾベはそのことを消化した上で、R&Bシンガー的な抑揚すらみせる。アウトロからの重低音が、パラノイアックな「four eyes」の世界から次の世界へのトンネルのようにフロアを覆い、アップデートしたギター・オーケストレーションともいうべきアレンジで「綺麗な人」を届けた。

odol 撮影=今井駿介

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曲が終わるごとにミゾベが短く「ありがとう」と言うたびに弾けるように起こる拍手。演奏に聴き入り、思い思いに体を揺らすオーディエンスのあり方は不変だが、明らかにオープンなムードへと変化している。言葉には出さないがそれこそ気持ちが往来しているという感じなのだ。

odol 撮影=今井駿介

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シーケンスとピアノをメインにした森山公稀(Pf/Syn)らしい現代音楽的なナンバー「人の海で」では、打ち込みのストリングス、垣守翔真(Dr)のドラムパッド、井上拓哉(Gt)、早川知輝(Gt)、Shaikh Sofian(Ba)もシンセやシンセベースに向かい、エレクトロニックだが人間味のある抜き差しを行う。人の海ならぬ、まさに海や水中を思わせる照明も効果的だ。「発熱」もミニマムにして、イメージの広がる演奏で、まさに熱を出して寝落ちして見た夢のような感覚をもたらす。そう感じられるのもミゾベの歌が素朴なまま安定感を増したからだろう。生楽器とエレクトロニクスの融合の域を超え、メンバーは歌を活かすサウンドとアレンジを曲ごとに極め尽くす。odolのユニークなところが明確に浮かび上がった2曲だった。

odol 撮影=今井駿介

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懐かしさを超えてアップデートされた「狭い部屋」と「夜を抜ければ」。特に「夜を抜ければ」の歌メロとそれを疾駆させるビートやコード・ストロークは、何らかの不安をくぐり抜けてきた体感が以前より増している。晴れやかな気持ちになれるこの曲を折り返し地点に置き、珍しくミゾベの「みなさんそれぞれ自由なリズムで観てください」という言葉から、インストのセッションに突入。井上の非ロック的なプログレッシヴなフレーズや音色も、森山が敬愛するY.M.O.の楽曲を彷彿させるプロフェット5の音色を鳴らしていた点も、バンドの自由度とメンバーそれぞれの個性が際立ち、歌モノでも細やかなアレンジに魅了されているファンには楽しめるパートになったようだ。熱を帯びる演奏がフィニッシュした時の歓声の大きさがそのことを証明していた。

odol 撮影=今井駿介

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その熱量のせいか、思わず「時間と距離と僕らの旅」をシンガロングしてしまいそうな開放感に自ら気づく。ピアノが彩りを加えるギターバンドとしての疾走感を味わう「退屈」、ピアノもギターもベースも一つのリフとして聴こえてくるのが心地いい「憧れ」。転調を含むサビメロが心地いい違和感を生むこの曲も、淡々としたミゾベの歌声がぶれないことで、その効果をライブでも100%味わえた。ただアーティなロックなら、演奏のスキルやアレンジ力を磨けばいい。でもodolの面白さは、ミゾベの声質とロックにもポップスにもあまりないメロディの組み合わせから生まれる不思議な体感こそがキモだ。その強みをこの日のライブでは度々実感できたのだ。

odol 撮影=今井駿介

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本編ラストには『往来するもの』のリード曲であり、バンドが今年到達できた開かれた側面を持つ「光の中へ」をセット。垣守のスネアに加えて、井上もタムをマーチングのリズムで刻み、冬でも春の光が感じられるような鮮やかな音が躍動する。大地のような安定感を醸すShaikhのベース、手を伸ばしたくなるような眩さを放つ早川のギター。自然の営みのようにループする森山のピアノ。本編は12曲、1時間ほどだったが、ともに旅をしてきたような清々しさが残った。

odol 撮影=今井駿介

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が、シンプルにまだまだ演奏を聴きたいフロアからはアンコールが起こり、何とまるでそこから第二部的に5曲もが披露されたのだった。今のodolを代表する「GREEN」以外は少し懐かしいレパートリー。違う時間を過ごしてきた大事な誰かに“会って話したい”“会いたい人がいる”ことの温かさに気づかせてくれる「years」や、温度を伴う記憶を蘇らせる「生活」といった、そもそもodolに触れるきっかけになった曲に宿る強さ。その想いを再確認するように聴き入るフロア。最後まで様々な時間軸を超えてここにいる人たちの想いが往来する、そんなライブが完成したのだった。

odol 撮影=今井駿介

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この後は再び新曲の制作期間に入り、それらも交えたライブを来春には行うとのこと。当初はライブがそれほど得意ではなかった彼らだが、それが双方向の表現だということに気づいてからのodolのライブは、オープンでユニークなものに変化してきた。これからどんな感情や感覚のやり取りができるのか?  早くも来年が楽しみだ。


取材・文=石角友香  撮影=今井駿介

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セットリスト

odol TOUR 2018 “往来” 2018.12.16  渋谷WWW
1. 大人になって
2. four eyes
3. 綺麗な人
4. 人の海で
5. 発熱
6. 狭い部屋
7. 夜を抜ければ
8. 時間と距離と僕らの旅
9. 退屈
10. 憧れ
11. 声
12. 光の中へ
[ENCORE]
13. あの頃
14. 飾りすぎていた
15. GREEN
16. years
17. 生活
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