シド×河村隆一、MUCC逹瑯らによるイエモンコピーバンド、『JACK IN THE BOX 2018』オフィシャルレポート
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『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
12月27日(木)、日本武道館にて、『MAVERICK DC GROUP PRESENTS JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』が開催された。L'Arc~en~Cielやシド、MUCCらの所属事務所主宰恒例のライブイベントで、今回のキャッチフレーズは「平成最後の年末緊急招集」。結成15周年のアニバーサリーイヤーを駆け抜けたシドをトリに、河村隆一をスペシャルゲストに迎える豪華な内容で、約6時間のステージを繰り広げた。
NOCTURNAL BLOODLUST『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
トップバッターはNOCTURNAL BLOODLUST。定刻の15時を迎えると、イベント名を大きく刻んだ幕越しにライトが明滅。衝撃音と共にSEが切り替わると、幕が上がり赤く染められたステージが出現。滴る水音が響く不穏なSEの中メンバーが登場し「武道館!」と尋(Vocal)がシャウト。Masa(Bass)、サポートのミヤ(MUCC/Guitar)、DAIKI(HER NAME IN BLOOD/Guitar)、Ryutaro(Guitar)の前列5人が一列に並び、激しいヘッドバンギングを繰り返しながら、「Punch me if you can」をのっけから最高潮のテンションで鳴らし始める。尋は「飛べ、飛べ~!」と曲間で煽り、ラウドでヘヴィな音の渦の中に観客を引き込んだ。
NOCTURNAL BLOODLUST『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続く「銃創」は眩しく明滅するライトの中、尋はハイトーンで咆哮。超ハイテンポかつ激しいサウンドの中にも、哀切を帯びたメロディーには、暗黒の美と情緒が宿っていた。その勢いにあっけに取られていると、「the strength I need」はミディアムテンポに乗せ、切々と訴え掛けるような歌を届けた。「今年最後の1曲、全力を込めて歌います!」(尋)と披露したのは「VENOM」。再び超高速の裏打ちのリズムをNatsu(Drum)は打ち鳴らし、Masaが前方へ歩み大きく足を開いてパワフルにプレイ。床が揺れるほどの重低音である。ミヤは走り回ってDAIKIと向き合ったり背中合わせになったりしてプレイ。Ryutaroは緻密な演奏に集中していた。緊迫感と、メロディアスなサビによってもたらされる解放感。そのコントラストがダイナミックで痛快。エモーショナルな歌と演奏と、ラウドさの中に宿るピュアな透明感、そして華やかなステージング。そして「また来年もよろしくお願いします!」という締め括りも含め、挨拶には礼儀正しさを感じる、あらゆる面で真っ直ぐなステージだった。
ユナイト『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
ディスコティックなSE「funky!!!」に乗せ、色とりどりのライトに照らされたステージに、2番手ユナイトが登場。客席でも観客の手元のカラフルなサイリウムが一斉に灯った。一人一人センターの台に立って礼をして、最後に結(Vocal)が「それでは武道館の皆さま、イタダキマス!」と開演の第一声。「ice」を放つと、髪を振り乱して音に乗る観客たち。結は早速アリーナにせり出す花道に進み、華麗なターンをしながら歌い歩いた。「武道館、会いたかったよ~!」(結)などと曲間で盛んにファンへと言葉を掛けながら、メロディアスでキラキラとしたユナイト色のサウンドを届けていく。「武道館、ゴチソウサマデシタ!」(結)で締め括ると、「平成最後にここ武道館でライブをすることができてすごくうれしいです。ありがとうございます」と挨拶。続けて最新アルバム『NEW CLASSIC』から「栞」を披露。ミディアムテンポの四分打ちで、和の情緒が漂う、しっとりと聴かせる曲。転調は劇的で、ところどころ拍子が変わる複雑さも良いアクセントとなっていたし、彼らのテクニックの高さを示してもいた。アンサンブルも美しく、披露し終えると大きな拍手が送られた。「手拍子下さい!」(結)の呼び掛けで始まったキュートなエレクトロポップロック「隕石系スタジオパンダ」からはダンサブルな楽曲を怒涛の畳み掛け。椎名未緒(G)やLiN(G)も頭上で自らハンドクラップして観客をいざない、ハク(B)はセンターの花道へと歩み出て、チャイナ調のフレーズを織り込んだ小気味よいこの曲を、大いに盛り上げた。
ユナイト『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
「Cocky-discuS」ではタオル回しで一体感、参加感をますます高めていく。莎奈(Dr)が繰り返す高揚感に満ちたリズムを軸に、ユナイトの音楽は、まるで野外スタジアムでパフォーマンスしているかのような、解放感のある空気を醸し出していた。「2018年1年掛けて育てて来た曲をやります。受け取ってください」(結)と放ったのは、ラストの「-ハロミュジック-」。メンバーが腕を大きく動かすアクションを見せるダンサブルな楽曲で、莎奈もスティックを舞わせるような動きを交えてドラミング。日常生活の煩わしさや苦しみをひと時忘れされてくれるような、楽しさに溢れた曲だった。「ありがとうございました、二番手ユナイトでした! 今日は最後の最後まで楽しんでいってください」(結)と挨拶。エンターテイナーとして益々の進化を見せた、ファンタジックで華やかなステージだった。
SORA Session『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続いて幕を開けたのは、『MDC SUPER ALL STARS』のコーナー。トップバッターは、SORA with Naughty "RESPECT" stars。SORA(DEZERT/Dr)の敬愛するミュージシャンが集ったスペシャルユニットで、ボーカルはKen(L’Arc~en~Ciel)が務めた。ミヤ(MUCC)のギターアルペジオに合わせ、Kenが歌い始めたのはMUCCの「勿忘草」。それと判った瞬間、会場からは大きな歓声が沸き起った。ユラユラと身体を揺らしながら歌い、とりわけ高音部で情感の迸りを感じさせるKenのボーカル。SORAは丁寧に一音一音、その歌声に寄り添うようなドラミングを聴かせた。ミヤのギターソロでは、Kenがミヤの真前へと移動ししゃがんで凝視。ミヤは笑いを堪えるような表情でプレイ、その2人の様子に会場は沸いた。Sacchan(DEZERT/B)は俯いてプレイに集中し、深く落ち着いた音色で曲を支えた。
SORA Session『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
4人の歌と演奏は、一つのイメージをしっかりと共有し合っているかのように、呼吸の合った心地よいうねりを生み出していた。続いて次の曲、DEZERTの「TODAY」へ。KenとSacchanは、ジャンプを繰り返し全身で音に没入。Kenは、もがきながら生きる苦悶と葛藤を感じさせる歌詞を、随所でハイトーンのフェイクも織り交ぜながら、咽び泣くように、時に叫ぶように、情熱的に歌い上げていく。アンサンブルも熱く、その熱量に深く引き込まれていった。そしてKenが突然、明希(シド/B)の名を呼びどよめく観客の中、助っ人として明希を招き入れた。「見ての通り、今日はベースではございません」(明希)との言葉通り、赤いライトに射られながらスタンドマイクで歌い出したのは、Kenのソロ曲「Speed」。Kenはステージ下手側の花道へと進み、明希の歌に合わせ身を揺らしていた。2番ではその場でKenが青いライトに照らされて歌唱。艶があって深く響く、色気のあるヴォーカルは健在である。ミヤが奏でたギターソロはKen節をリスペクトして再現したような澄んだクリアな音色。その間にステージ中央へと戻ってきたKenは、明希から大サビを歌い繋ぎ、ラストは2人で声を合わせて力強く、「祈りを」と歌詞の最後の言葉を放った。「サンキュー、明希!」と送りだすと、「サンキュー、ミヤくん、サンキューSacchan、サンキューSORA」とKenは一人一人に感謝を述べて、SORAの周りに3人が集まってフィニッシュ。大きな拍手と声援の中、貴重な顔ぶれによる一度きりのセッションは幕を下ろした。
THE YELLOW MONCHHICHI2 『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続いて始まったのは、THE YELLOW MONCHHICHI2。逹瑯(MUCC)をボーカルに、生形真一(Nothing's Carved In Stone、ELLEGARDEN)、明希(シド)、足立房文(ex.フジファブリック)、松田晋二(THE BACK HORN)というメンバーで送る、THE YELLOW MONKEYへの愛を炸裂させるコピーバンドである。白い衣装で登場した逹瑯が、手をかざして客席を見渡すと、1曲目の「JAM」へ。「逢いたくて 逢いたくて」と繰り返し訴え掛けるように歌うクライマックスでは、逹瑯は胸元に左手を当て、右足を台に乗せ、切々と歌唱。松田は晴れやかな表情で明希を見やり、呼吸を合わせながら心地よい三連のリズムを繰り出していく。メンバー全員が音に身を委ねるように、5人一緒に、心で歌っているような歌と演奏だった。
THE YELLOW MONCHHICHI2 『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続く「SPARK」では激しくライトが明滅し、疾走感あるパフォーマンスを展開。生形が華麗にギターソロを奏でる間、逹瑯はセンターの花道へ。パワフルであると同時に適度にリラックスしたような、楽しんでパフォーマンスしている様子が印象的だった。「はい、どうも、THE YELLOW MONCHHICHI2です」(逹瑯)と挨拶すると、メンバー紹介。「明日ここで本人たち(THE YELLOW MONKEY)が歌うということで、まさに、デッカい前座みたいな(笑)。本人たちの前日にこんなデカいステージでやること、ないよな?」と喜びを興奮気味に語ると、「まさに、メカラウロコ的な(笑)」とTHE YELLOW MONKEYのライブタイトルを引用して笑いを巻き起こしていた。足立の優しいピアノのフレーズが奏でられ、スタートしたのは「バラ色の日々」。メジャーコードのメロディーを、泣いているような潤んだ声や、がなるようなパンチの効いた声で、実に表現豊かに歌う逹瑯。明希のベースも音は太く、フレーズは滑らか。硬質な、1音1音粒立った音色で奏でられたアウトロの生形のギターソロも圧巻だった。ラスト、「もう1曲だけ、行ける? 武道館、LOVE LOVEしよう!」(逹瑯)との掛け声から「LOVE LOVE SHOW」。花道へ歩み出た逹瑯は、滑らかに手を動かして観客たちを指し示し、「私は、あなた〝たち″の馬~!」と歌詞をアレンジし、叫ぶようにして歌った一幕も。足立の前でギターソロを奏でる生形、その生形の前に跪いてプレイする明希。レアな顔合わせによるレアな場面に、観客は沸き立った。最後は松田の前に全員が集まり、キーボードから離れられない足立も顔をそちらに向け、想いを一つにしてキメの音を鳴らした。THE YELLOW MONKEYの大ヒット曲を、愛とリスペクトに満ち、力と想いのこもった歌と演奏で体感できる、充実のステージだった。
シャムシード『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
ALL STARSシリーズの最後は、シャムシードが登場。栄喜(Vo)、NATCHIN(B) (共にex.SIAM SHADE)を迎え、Shinji(G)、ゆうや(Dr)(共にシド)が憧れるSIAM SHADEの楽曲をカヴァーするスペシャルバンドである。アタック映像で初めて出演が明かされたタイゾ(Kra/G)を交え、5人はまず「グレイシャルLOVE」を披露。ポップでメロディアスな無敵の歌と、滑らかさの中にも音が粒立ったタイトな演奏を届けていく。「SIAM SHADEは僕もゆうやも大好きで。ちょっとだけ想い出話させてもらっていいですか」と語り始めたShinji。「20年前テレフォンアポインターのバイトをしてまして。職場での友だちが全然いなくて、おかんにつくってもらった塩むすびを公園で一人で食べてて。その時、ポータブルMDでSIAM SHADEさんを聴いてたんです。本当にいい曲が多くて、一人で泣いてて…塩むすびが涙でグズグズになってしょっぱくて、おかんに『塩要らんよ』と言って、普通のおにぎりにしてもらいました(笑)」と笑わせ、メンバー紹介へ。タイゾは、「シドのゆうやさんにお誘いいただいて、このSIAM SHADEセッションに。大先輩方に囲まれてのステージ。“グレイシャル”な気持ちで頑張りたい」と挨拶。ゆうやが「SIAM SHADEを観に来た武道館でSIAM SHADEを演奏できるのが、すごく感慨深いです」と語ると、栄喜も拍手を送った。
シャムシード『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
「一見さんが選ばないようなものをチョイスして…」と区切って会場を沸かせつつ、「…いたんですけど(笑)。この続きは、曲を聴いて理解してほしい(笑)」と含みを持たせた。NATCHINが「照れ臭いね、褒められすぎじゃない?」と謙遜すると、Shinjiは「好きなんだもん!」と強い愛を表明。NATCHINはシドとシドファンに向け「15周年おめでとうございます。これからもずっとずっとメンバー仲良く頑張って下さい」とエールを送った。
栄喜が「僕らの“マニアックな”曲を聴いてください」といたずらっぽく微笑んで披露したのは、不滅の代表曲「1/3の純情な感情」。栄喜の美声が響き渡り、メンバーはプレイする喜びが溢れ出すような表情を浮かべ、瑞々しい音を鳴らしていた。会場はもちろん大歓声。「最後、もう一曲聴いてください」(栄喜)と「PASSION」を放つと、Shinjiとタイゾは頭を振って荒ぶったパフォーマンスを見せつつ、集中度の高い緻密なプレイを聴かせた。栄喜はゴリッとした力強い歌声を轟かせ、NATCHINはゆうやとアイコンタクトを取ったり、Shinjiと向かい合ってプレイしたりと、パワフルな中にも穏やかなムードを漂わせ、セッションを楽しんでいる様子が窺えた。Shinjiは、ステージを去る栄喜とNATCHINと握手。こちらもまた愛とリスペクト、楽しさに満ちた稀有なコラボレーションだった。
DEZERT『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
18時20分頃、DEZERTの出番が訪れた。不穏なSEに乗せてゆったりとステージに姿を現した4人。闇の中で手探りするように少しずつ音を出し始め、千秋(Vocal)がギターで3音を繰り返し爪弾くと、徐々にメンバーの音が重なり、「新曲」がスタートした。高音部を目掛けて想いを投げ付けるような歌声と、手を前へ伸ばし、捧げるようなハンドモーション。掻き毟るようなギターソロ、バンド全体の演奏と相まって、言いようのない胸苦しさに圧倒された。
「ハロー東京、生きてるかい? 武道館生きてるかい? 『JACK IN THE BOX』生きてるかい? 人生いろいろありますが、今日を楽しみましょう。よろしくお願いします、DEZERTです」(千秋)と挨拶して、「TODAY」へ。赤いギターを掻き鳴らしながら激しくも透明な歌声を響かせる千秋の姿からは、迸る激情と繊細さが見て取れる。SORAのツーバスが怒涛の昂ぶりを見せていき、音圧に圧倒されると同時に、「生きててよかったと思える夜を探している」という名フレーズが耳に、心にすっと飛び込んで来た。
「生きててよかった、そんな日を、今日12月27日、『JACK IN THE BOX』に。精一杯丁寧に生きましょう。もがいてもがいて、どうせあっという間に死ぬんだから。今日は
DEZERT『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
「短い間でしたけど、あと1曲。この後も楽しんで行ってください。僕は明日ライブがあるから帰るけど…」「今日も全然楽しみじゃなかったけど、始まってみたら、いいと思うよ」などと、飾り気のない千秋のMCに続き、放ったのは「ピクトグラムさん。」。全身全霊で打ち鳴らされるSORAのドラム、細かく動き回るMiyakoのギターフレーズ、グルーヴィーに歌うようなSacchanのベース。髪を掻き毟るアクションやハンドモーションも交えた千秋の歌唱は、表現というよりも、「自然とそうなってしまう」といった感があり、ヒリヒリするような痛みとピュアさがあった。純粋さは保ちながら、以前よりもライブでの伝わりやすさが飛躍的に高まっていることにも驚く。どんなに混沌とした音の渦の中からも、歌詞は不思議と、真っ直ぐに聞こえて来たのである。過去も未来も〝今″に掛かっている、という重要なメッセージを残し、轟音の中、千秋は大きく両手をはばたかせるような動きを見せた。「Thank you。また生きてるうちにお会いしましょう」と挨拶して、千秋は一人先に去り、3人で最後の音を鳴らした。強い印象を残して終えた、DEZERTのステージだった。
MUCC『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続くアクトはMUCC。「ホムラウタShort Ver.」をSEに、観客が「Oi!」と声を上げ、メンバーが登場。シンセサイザー的なエレクトロな響きを持つYUKKE(B)のフレーズで始まったのは「TIMER」。黒い衣装に着替えた逹瑯は、黒い手袋で強調される指先の動きも併せ、ある種演劇的なパフォーマンスで、表現豊かに歌唱し、観客を引き込んだ。随所でYUKKEにピンスポットが当たり、ベースのリフがより一層印象付けられる。SATOち(Dr)のドラミングは終盤に近付くに従って音数を増し、込められた熱量も高まっていった。ミヤがギターを胸元に抱き寄せ、水平に掲げると、最後の一弾き。3人でSATOちの前に集まった後、ミヤが倹弾き始めた怪しく揺らぐフレーズを導火線にして始まったのは、彼らのライブに欠かせない「蘭鋳」である。サウンドの重厚さに反して、逹瑯はふわりと空を舞うかのように、まるで天狗のような軽やかさでセンターの花道へ。下手側へYUKKE、上手側へはミヤがサッと散るように移動し、ダイナミックなステージングを見せる。観客が深く身体を折り曲げるようにしてヘッドバンギングし、風が発生。地獄なのか天国なのか…異世界へふっと迷い込んだような心地に誘われる曲である。
「全員座ろう。『JACK IN THE BOX』楽しんでますか? 誰よりも楽しんでますか? 絶対俺のほうが楽しんでる(笑)。君たち全員対俺。俺より楽しんでるヤツはかかってこい!」と焚き付ける。一斉に座った観客は、「全員死刑!」(逹瑯)という宣告とSATOちのドラムカウントを合図に、ジャンプアップ。演奏も歌も切迫感とスリルに満ち、痛快だった。
一変して、SATOちの乾いたマーチングドラムから「G.G.」へ。YUKKEは手拍子を先導し、観客との一体感を求めていく。リズミカルに足を高く上げて跳躍する逹瑯。ミヤ、YUKKE、続いて逹瑯もセンター花道へと歩み出て、3人が並ぶ佇まいは華麗だった。「自己嫌悪」は咽び泣くような逹瑯のヴォーカルと、ミヤのパンキッシュな語りのような魂の歌が合わさり、思いの丈を哀訴するような強烈なパフォーマンス。圧倒され、ただ茫然と見入っていた。
MUCC『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
ラスト、「まるで『JACK IN THE BOX』のような森の中、L'Arc~en~Cielには会えず、MUCCに会った。君たちは120%MAVERICKへの愛でできてる!」と歌詞を替えて逹瑯は歌い、観客を沸かせた。「ようこそ『JACK IN THE BOX』へ」と逹瑯は改めて挨拶すると、「『JACK IN THE BOX』はこうして新しく顔を並べた仲間が増えましたけど。ノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)とか、DEZERTとか。ユナイトとMUCCとシドと、あとKenさんで迎えて。入って来た若手を思いっきりぶっつぶしたいと思います(笑)!」と勇ましく語ったかと思えば、「ま、つぶすと言ってみたり、柔らかく先輩の懐を広げて包み込んだりとか…」と言葉を続けると、会場からは歓声が起こった。
「包み込むほうを見せてみようかね? 冬らしい曲です」と披露したのは新曲「メルト」。逹瑯はハーモニカを吹いた後、ゆったりとした美しいメロディーラインを歌い始めた。アレンジ、演奏はロックバンド然としているのだが、降り注ぐ雪のような優しさ、柔らかさを湛えた曲。ライティングも上から下へと光が注ぐような繊細な動きをしていて、音楽に寄り添い、清らかな冬の情景を描き出していた。歌い終わると丁寧にお辞儀をした逹瑯。曲ごとに人格が入れ替わっているかのように、所作までも変わっているように見えたのが印象深かった。次曲「Mr.Liar」では再び激しく、EDM的サウンドを取り入れたヘヴィーな音像でテンションを上げていく。逹瑯は地底から唸り声のようなデスボイスを轟かせる。ミヤとYUKKEが共に台に乗り仁王立ちでプレイする凛とした姿には、目を瞠った。
「まだまだ行けるよな? 全部くれよ、武道館!」と煽る逹瑯。ミヤも「踊れ!」と焚き付ける。「掛かってこいよ、3、2、1、騒げ!」(逹瑯)と叫ぶと、観客は身体を深く前のめりにして髪を振り乱した。颯爽と駆け抜けていくように高まっていくSATOちのドラムはパワフル。メンバーはステージのあちこちを入り乱れるようにして動き回っていた。ラストの曲は「生と死と君」。ファイアーボールが絶え間なく吹き上がり、曲の宿す熱さ、メンバーの放つ熱を具現化したかのように燃え盛っていた。荘厳な聖なるコーラスと、激しさと…ドロドロとした闇に手を突っ込んで清らかな何かを掬い上げるような、MUCCらしい名曲。あらゆるジャンルを自由自在に行き来し、独自の配合バランスでどこにもない音楽を生み出してきたMUCC、その魅力を示したステージだった。
シド『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
続いて、2018年は結成15周年のアニバーサリーイヤーを駆け抜けて来たシド。虹色のライトに照らされて登場すると、メンバーは大歓声で迎えられた。最後に姿を現したマオ(Vo)は、耳に手を当てファンの歓声を求めるポーズ。Shinjiのアルペジオで「紫陽花」が始まると、滑らかな澄んだ歌声を響かせたマオ。水彩絵の具を重ね塗りするようなShinjiのギターフレーズは雨音のように美しい。赤紫、青、白といった紫陽花カラーを用いた照明ワークにも溜息。息がしっかりと合った演奏と歌で、トリという大役を務めるシドは、落ち着いた滑り出しを見せた。次曲「アリバイ」は軽やかでシャレた、ポップ色の強い曲。Shinjiは上手側花道へ、マオはセンターへと歩み出て、甘い歌声を響かせながら、手を振るなどしてファンに近付いていく。「歌ってくれる~?」とマオは問い掛け、ファンの声も求めた。
この後も彼らは頻繁にステージを動き回り、働き掛け、会場の隅々までその想いを届けようとしていた。そのままゆうやのドラムカウントから、アンセム「Dear Tokyo」へ。マオは手拍子を先導し、Shinjiはセンターへと歩み出ていった。ファンは楽し気にジャンプし、声を合わせて歌っていた。マオも後にセンターへ歩み出て、指揮するジェスチャーをしながら、観客の歌声を味わっているようだった。クライマックスで銀テープがアリーナで噴出。序盤から早くも、会場は多幸感に満たされていた。「こんばんは、シドです!」とマオは挨拶。「結成15周年ということで、たくさんの人に祝ってもらって、15周年の締め括りをここ武道館で迎えることができて、幸せです」と感謝を述べた。
ライブ三昧で過ごしたこの1年、シド史上最長の31本からなるツアーを駆け抜けたと振り返り、「グランドファイナルとして3月10日(日)に横浜アリーナでのライブが決定しています。実はタイミングがなくて横浜アリーナでは開催したことがないので、初となりますので、応援しに来てください、よろしくお願いします!」と語り掛けた。「今年最後のライブ、我らがMAVERICKのイベントをバッチリ盛り上げて帰りたいので」と意気込みを新たにし、続けて披露したのはジャジーな名バラード「ミルク」。温もりを湛えた歌と演奏で、会場を落ち着いたムードで包み込んでいった。ミディアムテンポの「その未来へ」へとなだらかに繋げ、シンプルなサウンドの一音一音に想いをしっかりと封じ込めたような、丁寧なプレイで魅了。未来へと向かい一歩一歩進んでいく着実な足取りのような、キャリアを積んだバンドにしか出せない味わいのある演奏だった。
シド、河村隆一『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
「楽しんでますか? さあ、いよいよ次がこのイベントのピークなんじゃないですか?」と語り掛けたマオ。「皆さんお待ちかね、河村隆一さんの登場です!」と敬愛する大先輩を招き入れた。河村はマオと握手を交わすと、「まさかシドのメンバーに呼んでもらえるなんて、光栄です。15周年おめでとう」と述べ、「これから20周年、30周年と続いていくと思うから、楽しみだね」とエールを送った。
「緊張してきた…」とこわばり始めるマオに、河村は「マオも明希もライブに来てくれて。気楽に付き合ってもらえたら」と優しく語り掛けたが、「気楽は無理です(笑)」とマオ。河村は11月に開催されたシドのマイナビBLITZ赤坂公演にも足を運んだと言い、「最高のバンドだよね。カッコいいと思った」と讃えた。この日のセッションにあたり、マオは「バラードを持ってきました。怖いもの知らずの俺です(笑)」と笑う。リハーサルを聴いたという河村は、「声質の違いがあって、合うよね。狩人とかクリスタルキングとかみたいに(笑)。違う声で、いいなって」とマオの声を評した。マオは「2000回ぐらい練習してきた」と言い、河村も「50回ぐらい聴いた。名曲ですよね」と絶賛。ますます緊張を強めるマオに、「隅っこでずっと緊張してます」と明希も言葉を添えた。大らかに「垣根がないのがロックの世界ですから」と笑う河村の胸を借り、「普通の奇跡」のコラボレーションがいよいよ始まった。
シド、河村隆一『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
まずは河村が歌い始め、圧倒的な声量と艶、凛とした地声から柔らかいファルセットまで、表現の幅の豊かさに、観客はじっと身じろぎせず聴き入っていた。続いて、マオもややハスキーさのある独自の魅力を備えた声で、緊張の面持ちを浮かべながらも、喜びを溢れさせながら歌唱。河村はそんなマオを励ますように、オフマイクだが口を動かして共に歌い、寄り添った。また、河村はマオに対してだけでなく、バンド全員を見渡して温かい眼差しを向けていたのも印象深かった。サビでは2人で声を合わせ、ハーモニー(マオが上)を響かせる。2番ではハモりの上下を入れ替えて、互いに向き合い、熱く声を響かせ合った。歌い終えると拍手で河村を讃えたマオ。「この後、観てるからね!」との言葉を残し河村はステージを去った。マオはセンターの花道へと駆け出し、膝から崩れ落ちると、「ごめん! もうピーク終わっちゃった。ヤッベー!」と、まるで少年のように、緊張から解き放たれた安堵を隠さなかった。「緊張したけど、めちゃくちゃ気持ち良かったです」と語り、「事務所を通さずに、俺が直接オファーさせてもらったのね。電話したら、その場でマネージャーさんに『12月27日って空いてる?』って確認して、『お祝いしにいくよ』って、もう即答なの。そういう心が広いところ、包容力のあるところをめちゃめちゃ尊敬してる」と興奮気味に明かすと、「緊張の糸が緩んだから、ここからは盛り上がっていけるか!」とモードを切り替え。「君たちが俺たちのV.I.P!」と叫び、「V.I.P」をカラフルなライトの中、疾走感に溢れるパフォーマンスで披露した。Shinjiのギターソロはセンターステージで奏でられ、天高く昇っていくような瑞々しい音色を響かせる。マオは伸び伸びと歌い、思い切り喉を開き、長く伸ばした声で会場を引き付けた。アッパーなダンスパーティーチューン「MUSIC」では、まばゆく煌めいた音色をそれぞれに鳴らし、タイトな名演奏を披露。
「ベース、明希!」とマオにコールされ、センターの台に立ってプレイしたベースソロは伸びやかでパワフル。背後からマオが肩を抱くと大歓声が沸き起こった。「眩暈」へと雪崩れ込むと、ゆうやはスリルを孕んだひたひたと迫り来るようなドラミングを披露。Shinjiは激しく頭を振りながらプレイに没頭していた。「ラスト、行けるか? ここで、このイベントの一番てっぺんの高いところ、見せてくれませんか?」というマオの叫びから、「one way」を投下。エネルギー迸るアッパーチューンは、会場をこれでもかと沸き立たせ、ステージとの垣根を取り払い、一つの大きな塊にした。興奮冷めやらぬ中、「どもありがとう!」と叫んだマオ。それぞれに挨拶をして、シドはステージを後にした。
MDC SUPER ALL STARS『JACK IN THE BOX~LAST BUDOKAN~』
すぐにアンコールを求める声が上がり、再登場したシドのメンバーたち。「今日はメンバーといっぱい目が合って、シドいいな、と思った。メンバーの皆さん、来年もよろしくお願いします(笑)」とマオが挨拶すると、メンバーも「こちらこそ」と返し、「2019年も〝仲良シド″で行きたい」とマオは誓った。出演アーティストをマオが順に呼び込むと、ステージは壮観な眺め。「行けるか~!?」とのマオの掛け声に合わせ、Kenは手を動かして盛り上げていた。「ANNIVERSARY」の全員でのセッションがスタートすると、ヴォーカリストたちが順に歌い繋いでいき、時に声を合わせた。「君にありがとう」と歌う箇所ではマオが「逹瑯さんにありがとう」と歌詞を置き換える場面も。アーティストらは客席にボールを投げ入れ、ファンを沸かせ、最後まで喜ばせていた。
結成15周年のシドを大トリに据えた『JACK IN THE BOX』。若手からベテランまで、MAVERICK所属のアーティストを中心としながらも、河村隆一という偉大なボーカリストを筆頭に、事務所の垣根を超え、それぞれに個人的な交流のあるアーティストを迎えた賑やかで華やぎのあるイベントとなった。セッションは多岐に富み、先輩後輩という縦の繋がり、あるいは同志的な横の繋がりが生む音楽的豊かさを味わわせてくれた。足を運んだ観客にとっても、新たな発見や出会いがあったことだろう。このイベントが次回はどのような切り口で誰を迎えて行われるのか、今から楽しみである。