ミュージカル『レベッカ』シアタークリエ公演開幕! 山口祐一郎「10年前とは全く違う『レベッカ』になっている」初日前囲み会見&ゲネプロレポート
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(左から)桜井玲香、大塚千弘、山口祐一郎、平野綾
2008年にシアタークリエで初演を飾り、2010年に再演されたミュージカル『レベッカ』が東京・シアター1010のプレビュー公演、愛知、福岡、大阪の全国公演を経て、再び東京・シアタークリエに帰ってくる。シアタークリエ10周年記念公演のファイナルを飾る本公演だが、開幕に先立ち初日前囲み会見と公開ゲネプロが行われたのでその模様をレポートする。
初日前囲み会見には、初演から主演のマキシム・ド・ウインターを演じている山口祐一郎とトリプルキャストで「わたし」を演じる大塚千弘、平野綾、桜井玲香が登場した。3人の「わたし」に囲まれるように登場した山口。会見で「チャーミングな3人の炎に燃えつくされないように楽日まで頑張りたい」と語るのもうなずけるぐらい華やかな雰囲気があった。
再再演となる今回の作品の見どころについて質問されると、山口は「ミュージカルをご存じの方もあまりミュージカルを見たことがない方も、(わたしを演じるのが)この3人ですからどういうことになるのか、むしろそっちのほうが楽しみなんじゃないかなと思っております」と妻である「わたし」が3人になったことを楽しんでいる様子。その一方で「それぞれ全く違う個性ですから、なかなか厳しいですよ。芝居で良かったです」とコメントし、笑いを誘った。
山口のコメントに笑顔になる3人の「わたし」
登壇した4人の主なコメントは以下のとおり。
山口祐一郎:3人の「わたし」のエネルギーに圧倒されないように、楽日まで生き残れるように、そんな意気込みで頑張っています。初演からマキシムを演じていますが、僕の骨も細胞も10年前と全く違うものになっていると思います。演じるものは『レベッカ』ですが、存在自体が別物になっているので、皆さまと一緒に全く違うものに出会えてその時間を楽しめればいいなと思っています。
大塚千弘:8年ぶりに「わたし」をやらせていただいていますが、やりながらこんなにドキドキハラハラする作品だったんだなと8年大人になったので改めて思いました。皆さんも「わたし」の目線になって一緒に楽しんでいただけるのではないかと思います。また山口さんもおっしゃいましたが、初演から10年経っているので演じる人の解釈が変わり、より深みの増した『レベッカ』になっていくと思います
平野綾:山口さんの相手役をさせていただけるのは夢のようなので、その時間を大切にしたいなと思っています。昨年末から全国ツアー公演をやらせていただいて、ものすごくいい形で東京にきたと思うので、1カ月魂を注ぎ込んで頑張りたいと思います。
桜井玲香:今回本格的なミュージカルに初めて挑戦させていただいているんですけど、皆さんに助けていただきながら、どうにか踏ん張って毎回舞台に立っている状態です。明日から東京での公演が始まりますが、少しでもこの期間に成長できるように頑張りたいと思っています。
同日シアタークリエで行われたゲネプロでは、「わたし」役に桜井玲香、ダンヴァース夫人役に涼風真世(ダブルキャスト・保坂知寿)が登場した。この作品は女流小説家ダフネ・デュ・モーリアのサスペンスをベースに、ミュージカル界のゴールデンコンビ、ミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイがミュージカル化したものだ。
主役のマキシムを演じる山口は、上流紳士の役どころがぴったりはまるたたずまい。スーツをビシッと着こなすところはさすがだ。秘密を抱えている影のある男性なのだが、「わたし」と出会い心の安らぎを得る。実際に「わたし」を見つめるまなざしは優しい。しかし時折感情を爆発させるシーンがあり、起伏の激しい性格であるマキシムを上手く演じ分けている。ソロで歌う場面はさすがの声量で聞かせるのだが、桜井とのデュエットも聞いていて心地良い。
(左から)山口祐一郎、桜井玲 写真提供:東宝演劇部
失礼ながら山口と桜井が並ぶとさすがに違和感があるのでは……と思ったが、意外なほどお似合いだった。2人がチェスを楽しむシーンで、桜井と一緒に無邪気にはしゃぐ山口から少年らしさを感じたほどだ。
山口祐一郎 写真提供:東宝演劇部
本格的なミュージカルに初めてチャレンジしている桜井は、1曲1曲を丁寧に歌い、透きとおるような声はこれからの成長が楽しみだと感じた。そしてマキシムと出会いときめく少女の気持ちや、先妻レベッカの影に悩み苦悩する姿をみずみずしく演じている。またマキシムの秘密を知ったあと「わたし」が変わっていく様子も見どころだ。
そして「わたし」を追い詰め、この作品におけるもう一人の主役ともいえるダンヴァース夫人を演じる涼風真世はさすがの風格。黒づくめの衣装で無表情に「わたし」を見つめるさまは不気味で恐ろしい。背の高い涼風が桜井を見下ろすのでなおさらだ。歌は見せ場が多く低音を響かせるナンバーが多いため、ダンヴァース夫人のレベッカに対する愛情や「わたし」に対する憎しみがひしひしと伝わってくる。
この作品はサスペンス仕立てなので決して明るい話ではない。しかし「わたし」を世話係として雇っていたアメリカ人の富豪ヴァン・ホッパー夫人を演じる森公美子はいつもながらのコメディエンヌぶりを発揮して笑いを誘い、マキシムの姉・ベアトリスを演じる出雲綾が愛情深く「わたし」に接することで観客をホッとさせる。そしてなんといっても出演者それぞれに歌の見せ場があり、そろいもそろって歌に定評がある人たちばかりなので、満足度がかなり高いところがこの作品の最強のアピールポイントといえるだろう。
大塚千弘 写真提供:東宝演劇部
『レベッカ』という作品を映画や小説ですでに知っている人もいるかもしれないが、美しいメロディにのせて物語が進んでいくこの作品をぜひ劇場で堪能していただきたいと思う。きっとこれまでと違う『レベッカ』に出合うに違いない。
平野綾 写真提供:東宝演劇部
取材、文、撮影(一部):吉永 麻桔
公演情報
■公演日程:2019年1月5日(土)~2月5日(火)
■場所:東京日比谷・シアタークリエ
■脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
■演出:山田和也
■出演:
山口祐一郎 大塚千弘/平野綾/桜井玲香 石川禅 吉野圭吾
今拓哉 tekkan KENTARO 出雲綾 森公美子 涼風真世/保坂知寿