五感を刺激する斬新なミュージカルに大興奮! 井上芳雄、生田絵梨花ら出演『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』いよいよ開幕
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2019年1月4日(金)、東京芸術劇場プレイハウスにてミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』の公開ゲネプロ(通し稽古)が行われた。ゲネプロの前には囲み会見が催され、井上芳雄、生田絵梨花(乃木坂46)、霧矢大夢、小西遼生、武田真治が出席し、翌日に迫った初日に向けて意気込みを語った。
(左から)武田真治、霧矢大夢、井上芳雄、生田絵梨花、小西遼生
本作はトルストイが生んだ世界的な名作『戦争と平和』の2巻第5部をもとに、全編に渡って歌で綴ったスピード感溢れる現代的で情熱的なミュージカル。2012年にオフ・ブロードウェイで誕生、その後2016年にはブロードウェイへと進出、翌年のトニー賞では最多12部門でノミネートされている。今回が日本初演となる。
井上芳雄
初日への意気込みを聞かれると、ピエール役の井上は「劇場の作りも見た事のないものとなっていて、ドキドキはしますけれど、すごく面白く出来上がってると思うので早くお見せしたいですね」と語り、この作品に携われる事を「幸せ」と表現した。井上が語った劇場の作りだが、今回の舞台は2個、2個、3個と四角い通路がくっついたような変形ステージとなっており、通路でかこまれた客席「コメットシート」が設けられている。井上は「コメットシートは全部の席が最前席のよう。僕たちは近くから見られまくるんですが、その臨場感を共に体験し、作品の中に入り込めるんじゃないかな?」と観客の気持ちになってコメントしていた。
生田絵梨花
ナターシャ役の生田も「劇場に入った時にこんなにワクワクしたのは初めてで、それくらい客席と一体型になっていたり、距離感がすごく近いのでお客様が入られてから作品がどう作られていくのか、ここからがさらに楽しみです」と胸の内を語る。また「それぞれのキャラクターが人間らしく語っているのでそのメッセージも皆の心に届けば」と思いを伝えた。
小西遼生
霧矢大夢
婚約者がいるナターシャと恋に落ちる、ピエールの義理の兄・アナトール役の小西は「舞台とは非日常を見せる場所でそこに足を運ぶ楽しさもあると思う。お客様が観た事のないような舞台を見せることができるように頑張りたい」と意気込み、アナトールの妹でありピエールの妻・エレン役の霧矢は「この作品がブロードウェイで上演されているのを観て、斬新さに感動を覚えたんですが、日本版は凄く誇らしい仕上がりになっていると思います」と胸を張った。
武田真治
そしてナターシャの婚約者・アンドレイ役の武田は「この歳になるといろいろな役をやらせていただいていますが、『こんなの初めて!』と思うくらいの舞台セットや内容なんです。本当に楽しんでいただけると思います」と自信を見せていた。
井上が今回演じるピエールは「サエない男」。これまで井上が役柄的にほとんど見せた事がない眼鏡姿にボサボサ頭、そしてちょっと猫背というスタイル。だがミュージカル界のプリンスと呼ばれてきた井上は「どうしてもサエてしまうところがあるのでカッコイイところが出ないようにしないと」と笑いを誘う。が「でも実はしっくりきます。仕事でもサエなくていいという安心感があるんです。サエる部分はすべて小西くんに任せます」そう語ると小西が慌てる姿も。
舞台では初共演となる生田について、井上は「才能豊か。今回の役は直接の絡みは少ないがどこかで見守っている(役どころ)。ただただ眩しいですね。今の年齢のいくちゃん(生田)だからこそ出せるナターシャの輝きが、今しかない唯一無二の輝きですね。失ってしまったものを懐かしく思い出すくらい眩いですね」と自虐的に話すと、武田たちから「まだ! まだあるよ!」とフォローされ苦笑していた。
一方、生田は「芳雄さんは、共演させていただく前は『プリンス』という感じだったので緊張していたんですが、この稽古場ではご自身の眼鏡をかけて、頭もボサボサした感じであえてオフの感じでいらっしゃったので、安心感が大きくて。カンパニー全体のことも常に広い目で見守ってくださるし、何でも頼らせていただける空気感を出してくださいました」と全幅の信頼を寄せていた。
全員に2019年の目標は? という質問が飛び、武田から答える流れとなると、すかさず井上が「筋肉に関しての目標ですって!」と『みんなで筋肉体操』(NHK)で話題となった武田に水を向ける。武田は照れ臭そうな顔をしつつ「最近筋肉について触れていただく機会が多いので、本業を見失いつつある(笑)。この作品でしっかりと爪痕を残し、シフトを正しく戻したい」と噛みしめていた。
芸能生活25周年を迎える霧矢は「今年の上半期は悪女続きで。私は良い人の役が多かったので、今年は悪女で行くぞ!と思っております。今回演じるエレンは、愛がなくお金目当てでピエールと結婚した酷い悪妻。悪い役って演じるのが楽しいので新年早々満喫したい」と笑顔。生田は「ナターシャは歌も感情も幅が広い役。今年はこういう一面もあったか、こういうイメージもあるのか、と思ってもらえるようになりたい」と女優業の目標を掲げる。
小西は「先輩方が輝いてますので、負けずに頑張れたらと思うんです。今回井上さんがサエない役なので、サエてる井上さんファンをかっさらおうかな」と強気の発言!すると井上は「そんなにうまくいくかな(笑)? サエない男子ファンもいるかもしれないよ」とニヤリ。
最後に井上は「ミュージカルが注目してもらえるようになって、ここ2、3年すごくよい追い風が吹いていると思うので、上手にそこに乗りつつ、日本の文化としてミュージカルが定着するようになったら。2.5次元に負けないように、共存して頑張りたいなと思います」とミュージカル界のけん引役の一人として力を込めていた。
さて、ゲネプロの模様をレポートしよう。
会場に足を踏み入れた瞬間、思わず子どものように歓声を上げたくなるくらい、会場中が金色のオーナメントで眩く飾りつけられていた。ステージの上にも星のような金色の球がいくつもぶら下がり、その中にはとびきり大きな球体も。これが何を意味するのか、どう使われるのか、と想像が膨らむばかりだ。
開演前からアンサンブルキャストたちが鮮やかな色の衣裳に身を包み、何かを入れた籠を持って客席通路を賑やかに歩いている。運がいいと何かがもらえるかも!? コメットシートでなくても十分楽しめる趣向だ。
キャストたちは通路状のステージを、そして客席通路をも目まぐるしく動き回る。時には観客のすぐそばに座ったり、絡んできたりもする。そんな驚きの連続で、ついどこまで話が展開したのか、現在地を見失ってしまいそうになること請け合いだ。
彼らの台詞は全て歌になっており、その内容も日本語、英語、ロシア語などが入り混じっている。また歌のメロディもロシア風あり、どこかロックテイストなものや、教会で耳にする讃美歌のようなものも。さらに半音ずつ上がり下がりする不思議なメロディラインや、あえて不協和音で聴かせるハーモニーなど、今までのミュージカルでは聞いたことが無い刺激に五感が震える。その衝撃になかなか身体が馴染まない観客もいるかもしれないが、2幕になるとまるでここまでの話をまとめるようなやり取りもあるので、一幕が始まるまではあらすじや登場人物の役どころを事前にチェックしておくことをお勧めしたい。
松原凜子
水田航生(手前)
はいだしょうこ
メイリー・ムー(中央)
原田薫
キャストは会見に登場した5人はもちろん、ナターシャの従姉妹ソーニャ役の松原凜子、エレンの浮気相手ドロホフ役の水田航生、アンドレイの妹マリア役のはいだしょうこ、アナトール達の御者バラガ役のメイリー・ムー、そしてナターシャの名付け親マーリャ D.役であり、本作の振付を担当する原田薫、そしてアンサンブルキャストたち。日本初演となる本作を作り上げたオリジナルキャストたちによって、物語がどのような結末を迎えるのか、楽しんでいただきたい。
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
日時:2019年1月5日(土)~27日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
音楽・作詞・劇作・脚本:デイブ・マロイ
演出:小林香
原案・原作:レフ・トルストイ
出演:井上芳雄 生田絵梨花 小西遼生 霧矢大夢 松原凜子 水田航生 はいだしょうこ メイリー・ムー 原田薫 武田真治 ほか