幻の童話作家・大海赫の絵本「ビビを見た!」が舞台化 台本・演出に松井周、岡山天音、石橋静河ら出演
2019年7月上旬、KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて、大海赫原作の絵本「ビビを見た!」が上演台本・演出に松井周、そして岡山天音、石橋静河ら注目の俳優陣で舞台化されることが決定した。
本舞台の原作である、「ビビを見た!」は幻の童話作家と言われた大海赫の絵本。よしもとばななが絶賛し、Amazon のカスタマレビューは驚異の星 4.9 知る人ぞ知る、絵本業界の傑作だ。
盲目の少年・ホタルが7時間だけ目がみえるようになることから始まる物語は、全身緑色の少女・ビビ、鎖をきひずった大男・ワカオなどが登場し、一見ファンタジックにもみえるが、その衝撃的なストーリーと、強烈な色彩感は大人も強くひきつけ、神秘的とすら思える。圧倒的な爽快感と息苦しさを美しく両立させた伝説の絵本だ。
本作の台本・演出を務める松井は、2010年『自慢の息子』で、第55回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、現代の歪みを象徴する人々のエピソードをサンプルの様に呈示し、現代社会のあり様をありのままに受け止める作風で人気注目を集める作家・演出家・俳優。最近では、故蜷川幸雄氏の次を担う作家・演出家の一人として『レインマン』(ホリプロ制作、主演:椎名桔平・藤原竜也)の台本・演出を手がけるなど、活動の領域を広げている。
松井周 (C)平岩亨
そして、主演・ヒロインには若手俳優として注目を集める岡山天音・石橋静河。二人は同じ年の24才で、初競演となる。鮮明な存在感と確かな演技力からドラマ・映画に引っ張りだこの岡山はこの作品で本格的な演劇作品としては、初舞台、そして舞台初主演。主人公の少年ホタルを演じる。
「映画 夜空は最高密度の青色だ」、「きみの鳥はうたえる」など、注目作品のヒロイン役を次々に演じ、実力派若手女優として確固たる存在感を放つ石橋は、舞台作品としては初ヒロインとして、緑色の妖精「ビビ」を演じる。
注目の若手俳優二人の共演を取り巻くのは、元宝塚スターの樹里咲穂小林賢太郎演出作品など、舞台を中心に多岐に活躍する久ヶ沢徹個性的な演技で注目をあつめる瑛蓮、師岡広明。無二の個性で注目を集める俳優が集まった。
(左から)岡山天音、石橋静河
本公演は松井が長年あたためていた、原点とも言える本。松井は本作で描かれるパニックに陥った社会・集団心理の中に、今の全体主義的な社会風潮へつながる予兆を感じている。現在の社会風潮に疑問を抱いた松井は、この現状・社会を問う作品をと、「ビビを見た!」の舞台化を思い立った。松井は本作に何をこめるのか? 舞台化を通じて、社会へ一石を投じてくれるだろう。
松井周 コメント
僕にとってこれはもはや絵本ではないです。
世界のおわりとひみつが描かれた預言書です。
岡山天音 コメント
このような深く衝撃的な作品にめぐり合えたことを幸せに思います。
「ビビを見た!」という鮮烈な世界を僕の肉体を通して表現する。未知への恐さと楽しみが身体の中で渦巻いています。今の僕にできる全力で、主人公ホタルを演じられるよう精一杯がんばります。
石橋さん演じるビビと一緒に描く世界がとても楽しみです。
石橋静河 コメント
今回、ビビという特別な役に出会えたことをとても嬉しく思います。
私がビビとして舞台に立つまでまだ少し時間がありますが、ビビとホタルを乗せた列車が小さな音を立てながら、すぐそこまで来ているような気配を感じます。まるで美しい悪夢のようなこのお話に、同い年の岡山さんと切磋琢磨しながら時に助け合いながら、身体と心を目一杯使って挑みたいと思います。
公演情報
舞台『ビビを見た!』
上演台本・演出:松井周
出演: 岡山天音 石橋静河 樹里咲穂 久ヶ沢徹 瑛蓮 師岡広明
盲目の主人公ホタルに「7 時間だけ見えるようにしてやろう」と言う声が聞こえた。ホタルの目が見えるようになると同時
に、まわりの人は光を失ってしまう。母も猫も、町の人も・・・。
ホタルの住む町が正体不明の敵に襲われるとテレビ放送が始まった。
人々は町を脱出するための列車に乗り込もうとする。ホタルも母を連れて、街にでて、電車にのりこもうとする。街はパ
ニックに陥り、警察署長が叫んでいる。
列車に乗り込んだホタル、いろいろな人がいる。赤い帽子をかぶった女、太った男の子……
でもだれも目が見えていない。
ホタルは不思議な緑色の少女ビビと知り合う。
天真爛漫で無邪気なビビ。ビビはやぶれた美しい羽と触覚を持っている
周りへの迷惑も考えず行動するビビに手を焼きながら、一緒にいるホタル。
突然、ホタルの乗った列車を巨人が追ってくる。この巨人が敵のことなのだろうか?
ビビは巨人のことをワカオだと知っていた。巨人・ワカオはビビを探して、列車を追いかけてきていた。
ワカオはあっさりと列車を脱線させてしまう。人がたくさん傷ついて、ホタルはワカオに捕らえられてしまう。
そこにビビが現れる。ワカオをなだめられるのはビビだけ……。
ビビはホタルと一緒にいたいとワカオに願う。
次第に、ホタルもビビといたいと思うようになっていた。
しかし、ホタルが「見える」時間はあと 1 時間……。
場所:KAAT 神奈川芸術劇場 <大スタジオ>
問合:かながわ 0570-015-415