『アートフェア東京2019』開幕レポート 古今東西のジャンルを踏み越えたアートが大集結!
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2019年3月7日(木)〜3月10日(日)まで、東京国際フォーラムのホールE & ロビーギャラリーで『アートフェア東京2019』が開催中だ。2005年から行われているアートの国際見本市である『アートフェア東京』の今年のテーマは「Art Life」。人生に影響をもたらし、より豊かな未来を導く役割を担うアートを紹介する本イベントは、古美術から最新鋭の現代アートまでを幅広く扱っている。ホールEのエキシビションエリアには、国内外の29都市から160軒もの美術商が集結しており、見どころ満載だ。以下、古今東西の彩り豊かなアートの中から、見逃したくない作品を紹介する。
天才芸術家とマンガの神様が魅せるファインアート
現代絵画の大家と漫画界の大御所の名品に圧倒される「ギャラリーオリム」のブースには、濃密な空気が漂っている。壁面にずらりと並ぶのは、パブロ・ピカソや手塚治虫の作品だ。手塚治虫はギャラリーのオーナーがもっとも尊敬する漫画家であり、今や彼の漫画は日本の誇るファインアートだといえる。本ギャラリーでピカソと手塚を扱ったのは、両者がそれぞれのジャンルにおいて、歴史的なキーパーソンであるためだという。手塚の作品はオーナー個人の持ち物であり、できれば手放したくないそうだが、アートフェアのような場で多くの人の目に触れてほしいという思いがあって出品されたそうだ。オークションにて数千万円以上で落札されたという原画などは、保存状態もすばらしい。
パブロ・ピカソ ギャラリーオリム
手塚治虫 ギャラリーオリム
西欧の名品と気鋭の現代作家を味わう贅沢
日本における洋画商の大御所である「日動画廊」は、左側のブースではレオナール・フジタとシャガールの絵画などを展示し、右側では大学在学中の現代作家・美馬匠吾の絵画や立体を置いている。安定した大御所の絵画と、現代の空気を反映した勢いのある作家の作品を同時に見ることができる、贅沢な空間だ。
レオナール・フジタ 日動画廊
美馬匠吾 日動画廊
人気画家の作品に囲まれる、庭のような空間
岐阜からの参加となる「柳ヶ瀬画廊」の展示『熊谷守一の庭 熊谷守一秀作展』では、熊谷守一の絵画13点等が出品されている。昨年国立近代美術館で開催された熊谷守一展には多くの人が来場し、好評のうちに幕を閉じた。柳ヶ瀬画廊のブースに足を踏み入れると、熊谷作品の親しみやすい伸びやかな雰囲気に満ちており、まさに庭の中にいるような落ち着いた気分を味わうことができる。
熊谷守一 柳ケ瀬画廊
国や時代を越えた工芸品の数々
京都にあるギャラリー「古美術 鐘ヶ江」のブースには、蝙蝠や蛇、髑髏など、インパクトあふれる新旧の工芸品が並んでいる。こちらでは「100年後に残るものをつくりたい」という願いのもと、現代の作家たちに作品を依頼しているのだという。制作時には具体的なオーダーを出すのではなく、ただ「現代の風を感じさせる、いいものをつくってほしい」という依頼しかせず、作家と相談しながら制作を進行させるそうだ。
古美術 鐘ヶ江
滑らかに動く蛇の自在置物や、鉄瓶や油滴天目茶碗を精巧に再現した漆器など、超絶技巧の作品を見て仰天するばかり。しかも今回は、作品に触れることもできるのだ。工芸品に込められた技巧や美に直接触れるという贅沢を味わう、またとない機会となるだろう。
錆塗鉄瓶 彦十蒔絵 若宮隆志 古美術 鐘ヶ江
古美術 鐘ヶ江
ドイツの名窯・マイセンの作品を扱うのは、恵比寿にある西洋骨董陶磁器専門店の「ロムドシン」。今回が初参加となる「ロムドシン」のブースには、日本ではあまり見ることができないマイセンのシノワズリのシリーズや動物の陶器などが並んでいる。リアルな蝙蝠を描いた食器や、複数のトカゲが円陣をつくる「三匹のトカゲディッシュ」など、マイセンと聞いて思い浮かぶイメージを打ち砕く斬新な作品に驚かされる。
マイセン ロムドシン
マイセン ロムドシン
気鋭のアーティストたちのボーダレスな作品を目の当たりにする
現代アートの気鋭のギャラリーとして名を馳せる「SCAI THE BATHHOUSE」では、神谷徹の作品を展示している。神谷作品の美しいグラデーションはスプレーではなく、筆を使って描かれたもの。キャンバスも作家自ら作っており、横の部分は画材の流れをコントロールするために斜面になっていて、平面と立体の要素を感じさせる。ブースの壁に描かれた模様も神谷の手によるもので、色彩や模様に対する確かなセンスを感じることができるだろう。
右:神谷徹 SCAI THE BATHHOUSE
神谷徹 SCAI THE BATHHOUSE
東京の国立新美術館で2019年6月12日(水)から開催される企画展のアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーは現代のフランスを代表するアーティストだが、「ボヘミアンズ・ギルド」では、このボルタンスキーのインスタレーションを展示している。祭壇を思わせる本作の写真は、ナチスによって迫害された子どもたちの姿だ。「ボヘミアンズ・ギルド」は神保町で古書店とギャラリーを営んでおり、ゲルハルト・リヒターやアニッシュ・カプーアなどの名だたる現代アートの作家たちの作品を扱っている。
Untitled from the Monument Odessa クリスチャン・ボルタンスキー ボヘミアンズ・ギルド
華やかな会場でひときわ目立っているのは、東京天王洲のTERRADA Art Complexに昨秋オープンしたギャラリー「KOTARO NUKAGA」のステファン・ブルッゲマンの作品。「headlines & Last Line in The Movies」は鏡にカラフルな文字が描かれており、文字はニュースのヘッドラインと映画の最後のセリフなのだという。ニュースというリアル、映画というフィクションを映しこんだ鏡は観客の姿も映し出し、すべてが一瞬で過ぎ去ってしまい、あらゆる事象に対して表面的な反応に終始する現代を反映しているように見える。本作品は8枚で2,600万円程度の価格で、ばら売りも可能とのことだ。
headlines & Last Line in The Movies ステファン・ブルッゲマン KOTARO NUKAGA
過去の芸術品から最新鋭の現代アートまで、和洋や新旧、ジャンルを踏み越えてアートを幅広く扱う『アートフェア東京2019』。多種多様なアートを知ることができるだけではなく、近い距離で作品を見たり、作品に触れたり、気に入った作品があれば購入できるなど、普段できない体験が可能となる貴重な機会だ。一般公開は2019年3月8日(金)〜3月10日(日)の3日間と短いので、是非見逃さずに足を運んでいただきたい。
イベント情報
4日間 (最終入場は各日終了30分前)(※3月7日は招待制)
会場:東京国際フォーラム ホールE(東京都千代田区丸の内3-5-1)
ホームページ:http://artfairtokyo.com
160軒(国内145軒、海外15軒) (「Galleries」138軒、「Crossing」10軒、「Projects」12軒)
【初出展】
「Galleries」(13軒)
104GALERIE/DKARTE GALLERY/ガレリア・グラフィカ/銀座一穂堂/古美術 鐘ヶ江 Japanese Sculpture
Next 100 years project/ロムドシン/Gallery NAO MASAKI/オリエント考古美術・太陽/Christine Park Gallery
s+arts/提物屋 SAGEMONOYA/現代美術 艸居 / コレクション・ギャラリー/Tsubakiyama Gallery
「Crossing」(3軒)
香川県漆芸研究所/金沢クラフトビジネス創造機構/株式会社よしもとアートエンタテインメント
「Projects」(6軒)
Wooly & CLEAR/ex-chamber museum/JINEN GALLERY/木之庄企畫/Maki Fine Arts/TAV GALLERY
【参加都市】
国内:17都市
岐阜、京都、金沢、軽井沢、高崎、高松、札幌、神戸、川口、大阪、東京、藤沢、奈良、富山、福岡、平塚、名古屋
海外:12都市
シンガポール、ソウル、テグ、ニューヨーク、パリ、ボゴタ、マニラ、ロンドン、香港、太原(中国)、台北、北京