声優・櫻井孝宏、音声ガイドインタビュー 『ムーミン展』の見どころと、櫻井が心寄せるキャラクターとは?

2019.3.29
インタビュー
アニメ/ゲーム
アート

櫻井孝宏

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声優として第一線で活躍を続ける櫻井孝宏が、2019年4月9日(火)~6月16日(日)に森アーツセンターギャラリー(六本木)で開催される『ムーミン展 THE ART AND THE STORY』の音声ガイドを担当する。

この展覧会は、ムーミンとなかまたちの原画やスケッチなど、作者トーベ・ヤンソンの創作活動にまつわる約500点の展示品を通し、彼女の多彩なアートと物語の魅力を紹介するというもの。音声ガイドの収録を終えた櫻井孝宏が、展覧会の見どころやムーミンの魅力、思わず心を寄せてしまうキャラクターについて語った。

「素の僕により近い」音声ガイド

トーベ・ヤンソン≪スウェーデンの日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」広告≫1957年 印刷 ムーミンキャラクターズ社 (C)Moomin Characters TM

——収録はいかがでしたか?

ムーミンはアニメ作品としてだけでなく、イラストやデザインとしても様々なところに起用され、誰もがどこかで目にしたことのある存在ですよね。しかしその物語については、意外と知られていないように思います。僕自身、まだまだ知らない部分はありますが、原稿から学ぶことがたくさんありました。今回の音声ガイドを通し、トーベ・ヤンソンさんの輪郭が見えてきたような気がします。

——どのような内容のナレーションになるのでしょうか?

作品の説明はもちろん、トーベ・ヤンソンさんについての情報を解説したり、クイズがあったり。ポップで聞きやすい内容になっています。

——声のお仕事の中で、音声ガイドだからこそ意識することはありますか?

アニメーションの場合、役を演技しています。喋っているのは、作品の中に生きるキャラクターであり、声は登場人物たらねばならないと思います。

一方で美術展の音声ガイドの場合、僕自身がナレーターとして参加します。その意味では、素の僕により近い、ナチュラルな声や読み方が大事。また、展示の情報を伝え、見る方をサポートする役割ですから、聞きこぼしのないテンポやスピード感が求められ、クリアであると同時に、作品にあった温度感であるべき。そのようなことを意識するので、お芝居とは違ったスイッチを入れる必要がありますね。

ムーミンの原画から感じる、ひんやりとした温もり

櫻井孝宏

——『ムーミン展』は、どのような展覧会になりそうですか?

ムーミンの向こうに、創り手であるトーベ・ヤンソンさんが重ねてみえてくるような展覧会だと感じました。トーベ・ヤンソンさんの生い立ちから、その作品の制作時期に彼女がどんな環境にあったか、それがどう作品にリンクしているかが、丁寧に語られています。

——原画も展示されるそうですが、作品についてはどのような感想を持ちましたか?

目に涼しいんです。原画にも、どこかひんやりとした印象がありました。生きものの気配はあり、絵にうつっているキャラクター以上の、なにか生きものがいるという気配はすごく感じられる。でもそれが、なんとなくひんやりとしていて。

——無機質とは異なる“ひんやり”なのですね。

音声ガイドでも紹介しますが、厳しい環境の中で作られた作品があったとして、その時の厳しさが、直接作品を厳しいものにしているかというと、そうではない。トーベ・ヤンソンさん本人は、その環境を好ましく思い「好きだ」という言葉で語ることもあり、体温のようなものは感じられる。ただ僕の感覚として、手をかざすとひんやりと、ちょっと冷たく感じられそうな印象を受けたんです。

北欧の寒い場所で育ったこと、その文化や民族性、両親の人となりや、その作品を作った時点で環境は、作品に影響するでしょうね。妖精をキャラクターにしようと考えた時に、このムーミンのフォルムになることからも、すでに文化の違いを感じませんか? ムーミンって、妖精ですよ?

——たしかに、南国では生まれない世界観ですね。“ひんやり”のイメージがわかってきた気がします!

沖縄なら、ハブにキジムナーに、カチャーシーですからね(笑)。この展覧会には、日本の文化にはちょっとないような面白さがいっぱい詰まっていると思います。

櫻井孝宏が思いを寄せるキャラクターは?

トーベ・ヤンソン≪スナフキン スケッチ≫制作年不詳 インク・紙 ムーミンキャラクターズ社 (C)Moomin Characters TM

——「ムーミン」の中で、気になるキャラクターはいますか?

色々ありまして、スナフキンに気持ちがいきがちです(笑)※。子どもの頃から、スナフキンはかっこよくみえました。いつも釣りをしていて、自由人で旅人で。「職業旅人」だなんて、羨ましいですよね。

※櫻井は、ムーミンバレーパーク(埼玉県飯能市)内のショーで、スナフキンのCVを担当。

——ムーミンバレーパークではスナフキン役を担当されました。その際、櫻井さんはスナフキンのミステリアスな部分を、どう解釈されましたか?

実際、……どうでしょうね(笑)。人によって、スナフキンに抱く印象は違うだろうと思うんです。何を考えているのかわからないところがあり、「自由気ままな旅人=大人」と解釈する人もいれば、「いい加減」「無責任」と受け取る人もいるかもしれない。ただ、そういった多面的なところを集約すると、僕の中では「かっこいい」になるんです。男性は特に、スナフキンに憧れる人も多いのではないでしょうか。

——かっこいい存在として、スナフキンを演じられたのですね。

実はもうひとり、スナフキンとは別に、親近感を抱くキャラクターがいるんです。ロッドユールって、わかりますか?

——(資料を確認し)“おたく的なコレクター気質でコーヒー缶の中で暮らすことを好み……”。

ガラクタばかりを集めるキャラクターです。僕自身、収集癖があり、レコードやアンティークの雑貨や飾りなどを集めてしまうんです。生活に必要のないものばかりで、人からみたらガラクタ。でも僕の中では価値があるもの。その感覚がわかるので、ロッドユールに、つい思いを寄せてしまいます(笑)

ライトな気分で、自分なりの掘り下げ方を

——今回のムーミン展の音声ガイドで、新たに気づいたムーミンの魅力はありますか?

もともとムーミンに対しては、平和で、のどかで、温かい、といった形容詞が思い浮かぶイメージでした。むかし見たムーミンのアニメーションの、ほのぼのとした絵のタッチや声のイメージの影響です。その後、どこかしらで見聞きし、実際の作品が少し大人向けの内容だと認識はしていました。

ではすごく大人っぽいかといえば、結構ポップ。トーベ・ヤンソンさんの少女然としたところとかが、創り出した作品と融合しています。同時に、思っていた以上に、トーベ・ヤンソンさんの自分の世界があり、哲学的でもありました。

とは日本の昔話でも、必ずしもハッピーな話ばかりではなく、登場人物が酷いめにあう話もありますよね? ムーミンにも、ダークサイドを感じさせるところがあります。たとえばムーミンのお母さんのが、最後、家じゅうに落書きをはじめて……というエピソードがあるんです。

——ここにきて、こわい話になるのでしょうか?

こわいと表現するのも、少し違う気がします。ダークでもブラックでもない。順序立てて掘り下げていけば、直感的に掴めて、「なるほど」と受け入れられる展開だったりもする。

——サイコパス的な……。

それもちょっと違います(笑)。でも今、こうしてエピソードひとつだけでも、展覧会に興味をもってくれるなら、きっかけとしてはいいのかなと思うんです。美術展って、いけば多少でも影響を受けるものです。きっかけは何でもよく、観にきて、それぞれに自分なりの掘り下げ方をみつけて楽しんでほしい。僕の場合、空いた時間にふと入った展覧会が、レイモン・サヴィニャックのキーホルダーに興味をもつきっかけになったり。

——櫻井さんならではの掘り下げ方ですね。最後に、櫻井さんをきっかけに、この展覧会に興味を持たれた方へメッセージをお願いします。

ムーミンに詳しい方はもちろん、友だちの付き添いとか、「ムーミンのポーチもってます」「ムーミンかわいいな」くらい、ライトな気分でかまいません。ふだん美術館に行くことがあまりないという方にも、たくさん来てもらいたいです。美術展や展覧会といったものに足を運ぶ、きっかけになればいいなと思います。そういう方々のために、僕の担当したような音声ガイドがあるんです。ぜひ気軽にお越しください。


ムーミン展 THE ART AND THE STORY』は、2019年4月9日(火)~6月16日(日)までの開催。オーディオガイドは会場入口にて、別途レンタル。櫻井孝宏が触れたムーミンの気配や、ひんやりとした温もりを、ぜひ会場で体感してほしい。

イベント情報

ムーミン展 THE ART AND THE STORY
開催期間:2019年4月9日(火)~6月16日(日)※会期中無休
時間:10:00~20:00※火曜は17:00まで(入館は閉館の30分前まで)
場所:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
料金:一般1,800円(1,600円)、中学・高校生1,400円(1,200円)、4歳~小学生800円(600円)
※( )内は前売・15名以上の団体
※3歳以下入館無料
※障がい者手帳をお持ちの方と介助者(1名まで)は、当日料金の半額
前売券・オリジナルグッズセット券が発売中
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