浦島坂田船 “楽しい”が溢れたツアーファイナル・両国国技館公演をレポート
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浦島坂田船
浦島坂田船 Spring Tour 2019 ―斬(ZAN)―
2019.4.4 両国国技館
この夜、浦島坂田船が東京・両国国技館にて執り行ったのは、『Spring Tour 2019 ―斬(ZAN)―』と題された全国行脚の千秋楽公演だ。
なんでも日本にはかつて初桜、桜丸などと桜の名を冠した名刀が実在していたらしいのだが(いずれも現存はしていない模様)……これまでにもツアーごとにコンセプトを掲げ、テーマ性の高いライブアクトを展開してきた浦島坂田船がこの春に展開してみせたのは、ライブタイトル通りの鋭い切れ味と、和の世界を表現していくうえでは欠かすことの出来ないワビサビの感覚をあわせもった、いわゆるクールジャパン的テイストを醸し出したパフォーマンスだったのではなかろうか。
浦島坂田船
ちなみに、今さらではあるが念のため。浦島坂田船とは浦=うらたぬき、島=志麻、坂田=となりの坂田。、船=センラによって構成された4人組ボーカルユニットで、現在までには日本武道館、幕張メッセといった大舞台を続々と完売させてきた実力と経歴を持つ。この両国国技館の舞台に彼らが立つのも初めてではない。そればかりか、前回に続いて今回も2デイズ公演が行われていたことを考えても、彼らの多大なる人気ぶりは察するにあまりある。
そんな中、いよいよ2日目に入って本当の意味での千秋楽を迎えた今宵の幕開けとして彼らが我々に提示してくれたのは、儚き四季の移ろいを風雅に描いた「花鳥風月」と、今この季節にこそ美しく映える名曲「千本桜」で、幕末の志士として有名な新選組をオマージュしたと思われるダンダラ模様の羽織はかまに、キラリと輝く刀剣を携えての凛々しい姿で登壇した4人の姿を目にしたクルー(浦島坂田船のファンの名称)たちからは、初っぱなから割れんばかりの拍手喝采が湧き上がることに。
うらたぬき
志麻
「浦島坂田船、国技館に来ちゃいました! 皆さん、楽しみにしてましたか? もちろん、俺らもめっちゃ楽しみにしてました!」(うらたぬき)
「いやー、春ツアーもいよいよファイナルですよ。我々も思いっきり盛り上げていきますので、ぜひ皆さんも力を出し切って……(と、なぜかここでゴホゴホと急にむせてしまう」(志麻)
「というわけで、みんなもちゃんと力を出し切れますか? 今のは志麻の代わりに言いました(笑)」(となりの坂田。)
「ありがとう。頼れる仲間がおってよかったわ(笑)」(志麻)
「とにかく、今日もこれだけたくさんの人たちがこうして見守ってくれているわけですからね。僕らとしても、絶対に負けるわけにはいきませんよ!」(センラ)
「それじゃあ、さっそく次の曲にいっちゃいましょうか!!」(うらたぬき)
となりの坂田。
センラ
いつも通りに和気あいあいとしながらも、しっかりと気合いの入ったMCを展開したあとは「虎視眈々」や「百花繚乱」など、これまたそれぞれに日本的情緒の漂う楽曲たちを歌い上げてみせた4人。それに続いての「吉原ラメント」では番傘をもちいた舞踊で華麗に魅せる一幕も。
また、このあとにはうらたぬき+となりの坂田。による「やっぱ最強!」や、志麻とセンラによる「ジグソーパズル」が披露されたほか、本編中盤での大きな見せ場としてはダンサーたちを従えての大胆かつ派手な殺陣が4人によって繰り広げられたことも、この公演での非常に大事なポイントであったはず。
うらたぬき、志麻
浦島坂田船
さらには、今ツアーに向けての新着動画として3月に公開された前山田健一の作詞・作曲による新曲「誠-Live for Justice-」も、キレのある殺陣をまじえての歌舞をもって観衆へと供され、このくだりでは4人による息のあったチーム力がオーディエンスを沸きに沸かせるに至った。
だが、それでいて単にカッコイイだけでは終わらないのも浦島坂田船の“らしさ”にほかならない。前半戦と後半戦の衣装替えタイミングをつなぐ幕間では、恒例のバラエティ番組風動画が場内の巨大ディスプレイにて上映された。その名も『お相撲の聖地!浦島坂田船の横綱は誰だ?ローション相撲トーナメント』という読んで字の如くのヌルヌルツルツルな対戦模様が、国技館内に集った人々の笑いをおおいに誘ったのである。
ちなみに、このあとに始まった後半戦では各メンバーがソロ歌唱を聴かせるコーナーが設けられ、おのおののキャラクターをより際立たせた歌とステージングを楽しむことが出来たのも大きな収穫であったように思う。
そして、この宴の本編を締めくくる楽曲として選ばれたのは、これも今回のツアーコンセプトに則った新曲「合戦」で、浦島坂田船としての“ここからに向けた志”がそこから濃厚に感じ取れたのだ。
となりの坂田。、センラ
「皆さん、ありがとうございます! 神戸から始まった今回のツアーは「皆にもっと楽しんでもらえるように」と、ダンサーさんたちやバンド陣もまじえながら4人で考えたうえで、このようなかたちになっていったんですよね。そして、今の僕らにとっての全力を出させていただきました。しかし! まだまだ浦島坂田船はこれからも皆さんに楽しんでもらえるように、どんどんいろんなことをやっていこうと思っていますので、これからもまた宜しくお願いします!」(センラ)
センラ
「浦島坂田船は、おかげさまで今年で6年目を迎えます。皆もきっと時間が経つうちにオトナになっていくだろうし、その過程ではもしかしたら好きだったものが続けられなくなる時が来たりすることもあるのかもしれないですけど、仮にそういう時が来ても「楽しかったな」という思い出とともに僕らのことを覚えてくれていたら嬉しいなと考えてます。今日は最高に楽しかったです、ありがとうございました!」(となりの坂田。)
となりの坂田。
「今回のツアーでは我々だけではなくて、ダンサーの皆さん、バンドメンバー、裏で頑張ってくれているスタッフさんたち、こうしてライブの場に足を運んでくれた皆と一緒に、こんなにも広い大きな空間をひとつのものとして共有出来ていることに対して、僕はある種の奇跡を感じています。この事実を、ぜひ皆さんも誇りに思ってください。自分たちはこんなに凄い浦島坂田船を推しているんだぞ、っていう風に。ただ、間違ってもそのことを就職する時の履歴書とかには書いたりしないでくださいね。書いても何にもならへんやろうから(笑)。
僕たちにとってはこうして皆と楽しめている時間が本当に人生で一番大事な時間です。まだ僕らも5周年をやっと過ぎたところですから、この先も10年とかまで行けるようにもっと突っ走っていきます! これからもよろしくお願いします!!」(志麻)
「うわー。3人がほぼまとめてくれたので、俺はなんも言うことがないぞ(笑)。でも、ひとつだけ言えることがある。このツアー、マジで楽しかった!!!」(うらたぬき)
うらたぬき
アンコールにて、最後の最後を締める曲として「SAILING!!!!!」が歌われる前に4人が口にしたこの言葉たちは、おそらく現時点での彼らにとっての本音そのものであったのだろう。と同時に、この『Spring Tour 2019 ―斬(ZAN)―』の無事終了をもって、浦島坂田船は自らに対して挑んだ“真剣勝負”に斬り勝ったとも言えはしまいか。
さらに、個としての力も着実に研鑽しつつ、そこで得られたことを浦島坂田船としての活動に反映させていきながら、彼らはここからその燦然と光る刃をさらに鋭いものとさせていくに違いない。
うららかなる春が終われば、やがて訪れるのは燃ゆる夏。その頃にまた浦島坂田船の雄姿を拝むことが出来たなら、之幸いだ。
文=杉江由紀 撮影=小松 陽祐(ODD JOB)、堀 卓朗(ELENORE)
※未掲載カット含む全ライブ写真は【こちら】
セットリスト
2019.4.4 両国国技館
1. 花鳥風月
2. 千本桜-guitar rock arrangement ver-
3. 虎視眈々
4. 百花繚乱
5. 吉原ラメント
6. やっぱ最強!
7. ジグソーパズル
8. 誠-Live for Justice-
9. スパイラル
10. セクトの誅罰
11. ボードゲームライフ
12. ねぇ、どろどろさん
13. 神のまにまに
14. 小さなライオン
15. Sailor’s High
16. わいふぁい暴想ボーイ
17. Peacock Epoch
18. 合戦
[ENCORE]
19. そらに、ひらり
20. Shoutër
21. SAILING!!!!!