ウォーリー木下が語る! 『リューン』再演の見どころは「藤原丈一郎と大橋和也の深化と成長」
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ウォーリー木下
2018年2月に上演され好評の内に幕を閉じた、ミュージカル『リューン~風の魔法と滅びの剣~』が熱い再演希望の声に応え、2019年6月に帰ってくる! なにわ男子/関西ジャニーズJr.の藤原丈一郎と大橋和也が初演に続きW主演を務め、また新たなキャストを迎えパワーアップ! 再演に向けて稽古真っ只中のとある日、演出を務めるウォーリー木下に話を伺った。
ーー初演をご覧になったファンの方々の感想を調べたところ、歌よし、芝居よし、殺陣よしと絶賛の嵐でしたよ!
本当(笑)? 歌は僕も気に入っています。作詞の森雪之丞さんと作曲の和田俊輔くんのコンビは好きですね。この作品はオリジナルミュージカルであり、オリジナルミュージカルは日本ではなかなか定着しづらい傾向があって。でも本作を作っている時から「これは長く再演され、日本に定着するような作品にしたいねえ」って話をしていたので、今回再演が決まった時は皆で喜んでいました。
ーーウォーリーさんにとって自分が手掛けた作品が再演となる事をどのようにとらえていますか?
自分の作品が再演されることは基本的に大歓迎です。……というか、20年くらい前から「再演はしたほうがいい」と思っている方なんです。僕は関西の小劇場の劇団をずっとやっていたんですが、毎年新作を3、4本作ってお客様を増やしていく慣例のような仕組みがありました。でもそれって、作って出して、作って出して、の繰り返しで、大げさに言えば「消費しているだけ」。それが作り手側の心を消耗しているような気持ちになったんです。
その頃、ヨーロッパなどで仕事をする機会が増えました。基本的に向こうはレパートリーシステムで、いい作品が出来たらそれをずっとやり続ける仕組みなんです。劇場側が主体的に作品を抱え込むという仕組みが出来上がっているんです。それ故「うちの劇場では毎年同じ時期に『クリスマス・キャロル』をやろう!」という事も可能になるんです。だからキャストが変わっていても「あの作品のあの役、よかったよねえ」という話がいつまでも出来るんです。でも日本では劇団やプロダクションが作品を抱えるので、目新しいものをもっともっと作ろうという発想になるんです。
僕としては再演を繰り返す文化のほうが心が穏やかだなあと思っていて、積極的に再演を勧めていたりするんです。
ーー興味深い話ですね。ちなみに先ほどお名前が出ました森さんはオリジナルミュージカルを作りたい!と様々な作品を手掛けている事で有名な方です。そんな森さんとウォーリーさんとの作品作りはどのように進んだんですか?
初演時には森さんとたくさん雑談をしていたのが印象的でした。「打合せしよう!」と顔を揃えてもアタマの2、3時間は「オリジナルミュージカルがさ~」とか「僕はファンタジーはこう思うんですが」という話をしていまして(笑)。森さんからすれば雑談の中から僕が何を考えているのか聞き出していたんでしょうね。実際のところ森さんは演出家を非常に立ててくださる方で、そこから出来上がったものはどれも素晴らしい物ばかりでした。
ーーいろいろな想いが巡る中、再演が決定した『リューン』ですが、初演との違いはどういうところに見えてくるでしょうか?
初演の時って一生懸命作っているし、時間もない。どこか突貫工事のように皆でガーッと作っていて。その分勢いはあった(笑)。観てくださったお客様からは「すごいテンションだったね!」と声をいただき、またやっている自分たちも「クリエーション・ハイ」になっていて楽しかったですが、今回の再演ではもう少し落ち着いて、一度出来上がっている作品を全員で外から見てみようと思っています。「勢いで作ったこの部分はよく見るとアラがあるね」とか「役作りについてもっとこういう風にしたほうが物語としては正解じゃないのかな」などと皆で細部を点検し、その上で熱量は初演と変わらず出していく。初演の評判を聞いて今回観にきてくれた人が「なるほど!」と思ってくれる、そんなものを作りたいと思っています。
ーー特にもっと深く詰めていきたい、と考えているところはどこですか?
やはり主人公の二人、リューン・フローとリューン・ダイの人物造形ですね。演じた藤原くんと大橋くんにとっても初主演だったので、物語を背負って語る事は相当大変だったと思うんです。歌も多いし殺陣もあるし。今回はそういった物事が基礎となった上で改めてやる事になります。この二人がまたリューン・フローとリューン・ダイという役にそれぞれ向かい合おうとしています。とても面白くなるんじゃないかな?
ーーそんな藤原さんと大橋さんの魅力とは?
二人はテクニックではなく気合いでステージに立てる人ですね。初演の時からこの人物はどういう気持ちだからどう動くか、それを考えて舞台に立てた人だったので、僕らも好感が持てますし、お客様もこの二人に感情移入出来たと思うんですよ。そんな二人がこの一年の間にいろいろな舞台を観たり、経験も積んで「見せる」勉強をしてきたと思うので、再演では「気合い」+「見せる」という点で深化、成長した姿を見せてくれるといいですね。
ーー藤原さんと大橋さんを個別に見ていくとどのような持ち味があると思いますか?
丈(藤原)は全体を観て芝居をしたりモノを作ったりできる子。責任感がとても強くてそういう点がリューン・フローという役に合っています。子どもなのに大人な部分がたくさんありますね。
逆に和也(大橋)は根っこがすごく子どもっぽい。基本的にふざけている事が好きだけど、遊び感覚で演技をするし、その場で起きた事に丁寧に反応できるから、そこはすごいと思います。
そんな二人と改めて本作の解釈をしていきたいです。初演の時はそれぞれに「自分としてはこうだ」という答えを持ってはいたんですが、ある意味勢いでやっていたところもあったので、今回は他の人の台詞とか、出来上がった演出を踏まえて考えていく事が必要になりそうです。
ーー最後に、今回の再演に向けて、楽しみにしている方々へメッセージをお願いいたします。
全員がそれぞれこの一年間で何かしら変わっていますし、生身の人間がやる芝居なので、バージョンアップされていると思いますよ! 前回の稽古期間が2か月でしたが、今回はある意味「1年と2か月」かけているような作品となるので、観に来てくださったお客様にとっては舞台上の人物がよりいきいきとそこにいるはず。ファンタジーものやミュージカルが苦手だと言う方であっても、観に来ていただければ違う印象を持たれると思います。劇場でお待ちしています。
取材・文・撮影=こむらさき