吉岡里帆、あふれるバスキア愛を語る 『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』記者発表会レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
吉岡里帆
2019年9月21日(土)から11月17日(日)の期間、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』が開催予定だ。2か月弱の期間で本会場のみの実施であり、日本オリジナルの内容という、見逃せない要素が詰まった本展に関し、音声ガイドを務める吉岡里帆も登壇した記者発表会の模様をお伝えする。
皆が待っていた“生バスキア”、世界中から約130点も集結
グラフィティ・アーティスト「SAMO(C)」としても活動したジャン=ミシェル・バスキアは、その後絵に転じ国際的な評価を獲得、名高い画商が彼の作品を取引するようになった。アンディ・ウォーホルと共同制作を行い、マドンナと交際し、画家のキース・へリングらと親交を結ぶなど、華やかな私生活を送りながら3,000点以上の作品を制作するが、わずか27歳で早すぎる死を迎えた。彼の劇的な人生は、鮮烈な才気と衝撃的な作風と相まって、半ば伝説となっている。
アメリカの80年代アートシーンの中心だったバスキアの作品が一堂に会する本展は、バスキア研究の世界的権威であるディーター・ブッフハートに協力を仰ぎ、何年も前から進められてきたもの。もともと80点の出品を予定していたが、大幅に出品数が増え、約130点の展示となった。この数は、先日パリで行われたルイ・ヴィトン財団のバスキア展に匹敵するという。
展示会場では、2017年に株式会社ZOZOの代表取締役社長・前澤友作氏が約123億円で落札した《Untitled》も見ることができる。前澤氏は記者発表会には来場しなかったが、バスキア展開催にあたって「大変うれしく思います。気軽に見るだけでも発見や感動があるのがバスキアの魅力。是非多くの方々に足を運んでいただきたい。“生バスキア”、本当にすごいですから」というメッセージを寄せ、今回のバスキア展に込める期待を述べた。
風刺詩人にして天性のカラリスト、バスキアの多彩な魅力
本展の監修を務める神戸大学教授・美術史家の宮下規久朗氏によれば、バスキアの作品は絵と文字を組み合わせるのが基本的なスタイルで、王冠が一種のトレードマークだとのこと。バスキアの文字はポエムのようなものであり、俳句のようにその時々の考えや風刺をあらわしている。黒人として最初に成功したアーティストのひとりでもあるバスキアの作品には、人種差別やアフリカの彫刻などの影響も色濃く表れており、それが評価が高まる理由のひとつになっている。
神戸大学教授・美術史家 宮下規久朗氏
バスキアの母マチルダはファッションデザインが好きで、息子と共に絵を描いていた。バスキアは母に連れられ、幼い頃からニューヨーク近代美術館(MoMA)やメトロポリタン美術館、ブルックリン美術館などに足を運んでおり、最良の芸術作品を見ていた。稀代のカラリストである彼の絶妙な色彩感覚は、恐らくそこで培われたのだろう。また、写真で見ることができるバスキアのダンディな着こなしは、母の影響がうかがえる。
親日家のバスキア、日本との深い繋がり
バスキアは短い生涯の中で、1983年から3回にわたって来日している。彼は日本の通貨単位であるYENの文字やひらがなを作品に採り入れ、また日本の最先端のテクノロジーなどからインスピレーションを得た。1980年代の日本はバブル景気でまさに円が活性化しており、作品の中に当時の熱気が反映されていることがわかる。
また、バスキアが活躍した時代に好景気だったこともあり、日本の公立美術館のいくつかはそれほど値上がりする前にバスキア作品を所持している。しかしバスキアの作品は全国に散らばっている上、いつも常設展に出ているとは限らない。ひとつの会場に集結したバスキア作品に囲まれ、その力を肌で感じられる今回の展示は、非常に貴重な機会と言えよう。
バスキアは訪日時に多くのスケッチを行なっており、表参道のスパイラルのレストランに寄せ書きを残した。このエピソードは、バスキアが名声を獲得してからも、グラフィティの資質を失わなかったことを示すように思う。表参道でバスキアの描いた絵は、店の改装工事の時に切り取られて残されており、本展で見ることができるそうだ。バスキアは人の家に泊まった時、いろいろな場所に絵を勝手に描いてしまい、トラブルになることもあったという。その行為は、バスキアが愛好したジャズの即興も影響しており、彼はジャズを流しながら絵を描いていたそうだ。
吉岡里帆もリスペクト、バスキアのエネルギッシュな魅力
吉岡里帆
記者発表会当日は、本展の音声ガイドを務める女優の吉岡里帆も登壇。吉岡はガイドを担当したことに関し、「バスキアという素晴らしいアーティストの作品のガイドを務めることができて、とても光栄」と熱弁。あふれるバスキア愛をにじませながら、自由で色彩豊かなバスキアの作品の魅力を強調した。
両親ともに絵が好きで、自身も書道を嗜んでいるためアートに近しく、月に1~2回は美術館へ行くという吉岡。マーク・ロスコの絵画やジェームズ・タレルのインスタレーションなど、最近は現代アートをよく見ているとのことだ。そんな吉岡はバスキアに対し「エネルギッシュで彼にしか描けない絵を描いた。作品を早く見たいとワクワクしている」と絶賛。そして本展に関し、「バスキアは短い生涯の中で、数多くの名作を残し、今もなお愛し続けられているアーティスト。今回は会場が東京だけなので、是非この機会を逃さず足を運んでいただきたい」と熱い思いを語った。
吉岡里帆
本展は、吉岡の声を聞くことができる音声ガイドが来場者全員に無料で提供され、一度来場すると平日の17時以降にもう一度鑑賞できるなど、素晴らしい特典がついている(詳細は公式サイトにて)。常に新しいファンを獲得し、子どもから大人まで惹きつけてやまないバスキアの魅力を体感できる熱い内容の『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』を、是非お見逃しなく。
吉岡里帆
イベント情報
※入場は閉館の30分前