ポーラ美術館「アトリウム ギャラリー」で、半澤友美『The Histories of the Self』展
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半澤友美「The Histories of the Self」の連作より 2019年 (C)tomomihanzawa
ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)の現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」にて、半澤友美『The Histories of the Self』展が、 2019年8月10日(土)〜12月1日(日)まで開催される。
半澤友美(1988-)は、紙漉きの手法で、紙の原料となる植物の繊維から独自の造形物を制作するアーティストだ。漉いたばかりの紙は水分を含み不安定な状態だが、乾燥するにしたがって密度の高い強固な物質になる。半澤はそのような紙の性質を活かしてさまざまな形や大きさの作品を生みだしてきた。紙を構成する繊維どうしの交わりや、紙と紙そのものがおかれた空間との関係性を自己の存在する社会に見立て、おもに立体やインスタレーションとして発表している。
本展では、開放的な展示空間の特性を考慮しながら丹念に制作された、約300枚の紙で構成するインスタレーションを初公開。「The Histories of the Self」というタイトルは、このインスタレーションの制作方法に由来するもの。半澤は、植物の繊維が絡み合った、着色された原料を平らな板の上にスポイトで点々と垂らし、それを幾層も重ね、プレスにかけて1枚の紙を作る。紙はその場の環境(天候や温度、湿度など)に応じてゆっくりと乾燥し、それぞれに固有の色味や凹凸などの様々な変化を見せるが、彼女はその制作過程と紙の思いがけない変化のなかに、人と人との関係性や、人が積み重ねる時間のイメージを見いだしているのだ。
半澤友美「The Histories of the Self」の連作より 2019年 (C)tomomihanzawa
こうして制作された数多の紙は、赤や朱、紫、褐色などの紙の原料の選び方や厚み、プレスのかけ具合などの条件によってそれぞれ異なる。人それぞれに個性があるように、自身が手がける紙にもそれぞれ個性がある、と半澤は言う。紙の素材感豊かな本作品は、素材のもつ儚さやまだらな色のありようによって、不穏な雰囲気を漂わせ、観る者それぞれが積み重ねてきた時間の存在と向き合うことをうながしている。