JABBA DA FOOTBALL CLUBを待ち受ける「新世界」 — メジャー進出を果たした現在の彼らを語る上で欠かせない3曲
JABBA DA FOOTBALL CLUB 撮影=森好弘
「俺らの歴史はどうだっていい。ただこれだけ聴いて、判断してくれ!」 自信に満ちた輝かしい目でそう話すのは、JABBA DA FOOTBALL CLUB。2014年に結成されて以降、幅広いサウンドとリスナーの心を掴むタイトなリリック、そして会場を一体にするライブパフォーマンスで人気を博す、4人組ヒップホップグループだ。今年6月に満を持してメジャーシーンへと踏み出したシングル「新世界」には、表題曲を含む、現在の彼らを語る上で欠かせない3曲が並んだ。メジャー進出後初の東名阪ツアーも開催し、さらなる飛躍が期待されるJABBA DA FOOTBALL CLUBのNOLOVとROVINが、影響を受けたミュージシャンや自身の音楽にこめる信念を語ってくれた。
JABBA DA FOOTBALL CLUB
—— 「新世界」をもってメジャーデビューを果たしたJABBA DA FOOTBALL CLUBですが、この作品には新曲「新世界」とともに、みなさんがインディーズ時代から歌い継いできた「君の街まで」と「i&i 」Remixed by naotohiroyama(ORANGE RANGE/delofamilia)が収録されました。メジャー1作目にこの3曲を選んだ経緯を教えてください。
NOLOV : 僕は島根県浜田市という田舎出身なのですが、TOWER RECORDSやTSUTAYAがなくて、インターネットも今ほど浸透していない当時は雑誌から情報を得るしかなかったんです。メジャーに行くというのは、そういう学生時代の僕みたいな人たちにも届く可能性があるということだと思って。だからインディーズの僕らを知らない人にもこの1枚で自己紹介ができるように、リードトラック「新世界」は新曲で、他にはこれまでにも歌ってきた「君の街まで」や「i&i」のリミックスを収録しました。「これだけ聴いて、好きか嫌いか判断してくれ!」という思いです。
ROVIN : 僕はこれまで4人でやってきたものを、メジャーで初めて知ってくれる人たちにも広げたいという思いがあって。「君の街まで」は僕らが結成して初めて作った曲で、以前リミックスをリリースしたことはあるのですがオリジナルバージョンを音源として届けられる機会がなかったので、「今しかないだろう!」ということで収録に至りました。
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—— メンバー4人で楽曲を作るにあたり、詞の題材やトラックがどのような順序で固まっていくのかが気になります。
NOLOV : 昔はビートが先にある状態で曲の中身を組み立てていましたが、昨年のEP 「FUCKING GOOD MILK SHAKE」の頃から変わっていきました。まず僕が「こういうイメージの曲にしたいからこういう音が面白い」というアイデアを出して、BAOBAB MCと一緒に曲のベースを作ります。それから4人でリリックを書ける共通のトピックを出し合って、テーマを固めていきます。
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—— 今作の収録曲のうち、「新世界」と「君の街まで」はROVINさん、「i&i 」Remixed by naotohiroyama(ORANGE RANGE / delofamilia)はNOLOVさんが歌い出しを担当されています。誰がどのパートを担当するかはどのように決まるのでしょうか。
NOLOV : 楽曲によって、リスナーに一番伝わりやすい方法をとっています。ROVINは声が高くてキャッチーでリズム感があるし、「新世界」の歌い出し<Hello bonjour コンニチワ>も「君の街まで」の<ワッサッ!>も、とにかくキャッチーで意味はわからなくても耳に残るんで。逆に僕が先陣を切った「i&i」 Remixed by naotohiroyama(ORANGE RANGE / delofamilia)は、楽曲のテーマに対して僕のリリックが一番強いアプローチを持っているので、頭の僕のバースだけ聴けばどんな曲かわかるんですよ。
ROVIN : それが先日、徳島のラーメン屋で初めて聴いたんですよ!! ラジオなどのキャンペーンが終わって気の抜けた状態で熱いラーメンをすすっていたら、急に隣でNOLOVが「ハッ!」と息を飲んだんで、俺は全然気づかずに「こいつどうした?」と思っていたら……
NOLOV : それこそROVINの<Hello bonjour コンニチワ>が聴こえてきて、一緒に来ていたマネージャーたちと顔を見合わせて「やべぇ……! メジャーだ!!」と言いながらラーメンずるずる、みたな(笑)。友達から「流れてるの聴いたよ」という連絡は来たりしたけど、自分で聴くのは初めてだったので、このタイミングか!と。
ROVIN : あの味は一生忘れないですよ。徳島ラーメン、味濃いしね(笑)。
NOLOV : そうです。僕が音楽に興味を持ったのは、グリーン・デイの『American Idiot』がグラミー賞を獲って世界を席巻したアルバムがキッカケなんですよ。そのタイミングでポップパンクにハマって、誰もが知っているサム41やシンプル・プランといったバンドをよく聴いていました。「i&i」のオリジナルバージョンを作るときに、ヒップホップで流行しているトラップのビートと、ポップパンクのアルペジオやスリーコードをミックスしたら面白いんじゃないかと提案しました。
ROVIN : SOUL'd OUTを筆頭に、RIPSLYMEやKICK THE KAN CREWが僕のルーツです。Diggy-MO'は僕の神様です!「だからピース」のミュージックビデオには僕の私物のSOUL'd OUTとRed Hot Chili PeppersのDVDが映るんですけど、レッチリにも心底ハマりました。ありとあるゆる文献を漁って歴史を研究した上で、「うわ〜この頃メンバー同士仲悪いんだよな〜」と思いながら昔のライブ映像を観るという(笑)。その流れでZebraheadなども聴いていたので、「i&i」のオリジナルバージョンでは、あのサウンドでラップができて僕にとっても嬉しかったです。
NOLOV : 今回収録したリミックスはクールなサウンドにしてもらったから、楽曲が二段構えになったのも良かったよね。
NOLOV : 何でもできるからこそ、「新世界」以降の曲作りは特に気をつけています。音楽的側面に気づいてくれる人ももちろんいるけど、わからない人にも「いいね」と言ってもらうためには、何を歌うかが一番大事なので。中学生の頃の自分が聴いても素直に「かっこいい」と思えるもので、さらにコアなリスナーを唸らせるポイントも必ず作る。どっちも意識しています。
ROVIN : かなり成長できたと思います。僕はどちらかというと、とっつきにくいと思われていたかもしれないんですが、大阪へ来てからファンの人生相談に乗るようになったんです。20歳くらいの子から相談を受けることもあったんですが、僕はその頃に人生最大の目標を失って一度は音楽を諦めているので、一番大変な時期だというのがよくわかります。相談を受けながら、僕自身も考えさせられました。
NOLOV : この試みによってROVINやASHTRAYのイメージは180度変わったと思うし、逆に僕らの東京以外の地域に対しての思い入れも変わりました。チャレンジするために上京して、東京をずっと拠点にしているけど、名古屋や大阪には東京ほど入りこめていなかったというか。メンバーが実際に住んでどんな土地か知れたことによって、各所がもっと好きになりましたよ。
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—— 最後に、JABBA DA FOOTBALLがメジャーシーンで次に目指すものは何でしょう。
ROVIN : ライブをたくさん数を重ねてきて自信もついた今思うのは、ミュージシャンはやっぱり「曲の力」あってこそだなということなんですよ。次の目標としてはとにかく、日本中の老若男女にフィットする良い曲をしこたま作る! それをいつかアルバムでなのか、メジャーでどかんと発信した後の僕らは、もう止まらないですよ。紅白歌合戦まで一直線です(笑)!
NOLOV : 間違いない。これからの僕らは、聴いてくれる人たちを常にワクワクさせますよ。
JABBA DA FOOTBALL CLUB
取材・文=Natsumi.K 撮影=森好弘