【RIZIN.17 開催直前見どころコラムVol.2】日本勢生き残り賭けるライト級戦とロシアンハルク&“愛の戦士”に注目!
『RIZIN.17』が7月28日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される
■北岡ワールド展開なるか? 強者ケースを相手にGP査定マッチ
今年後半にライト級GPの開催を予定するRIZIN。28日に行われる「RIZIN.17」ではそんなGPを占う試合が3つマッチメイクされている。
休憩前の第7試合、前半戦を締めくくるのは北岡悟。RIZINでは2勝4敗と黒星が先行しているが、毎回好勝負・熱戦を展開。入場から目の離せない唯一無二の“北岡ワールド”を繰り広げ、フロントチョークや足関節技で一本を狙う“ザ・グラップラー”だ。
そんな北岡の相手となるのがアメリカのジョニー・ケース。元UFCファイターで、UFC時代には後に北岡を破る徳留一樹にもギロチンチョークで黒星をつけている(14年9月)。RIZINには昨年大晦日に初参戦し、1Rからペースを握って右目じりのカットで矢地祐介を破り実力を見せつけた。
打撃ではケース、寝技に持ち込めば北岡有利と見られるが、徳留をギロチンで仕留めているようにケースはグラウンドワークも持ち合わせている。ケースが北岡の狙いを許さずフィニッシュするか、北岡が隙をつき、あるいはパワーと執念で寝技へ引きずり込み極め切るのか。
■川尻達也「ファイター人生最後のチャレンジ」
2000年4月にデビューし来年プロ20周年を迎えんとする中、「ファイター人生最後のチャレンジ」と語り、ライト級GPを目指すのが川尻達也。修斗で世界王者となり、PRIDE・DREAM・UFCと大舞台を経験し、さらにK-1ルールで武田幸三、魔裟斗とも対戦。まさにジャパニーズMMAの20年を凝縮、体現するかのようなキャリアを歩んできた。
16年10月にUFCの契約を自ら解除、日本を盛り上げるべくRIZIN参戦を開始したがそこから1勝3敗。“クラッシャー”らしさは見られておらず苦しんでいる。これまで階級を下げ戦ってきた川尻だが、昨年大晦日の北岡戦でライト級に復帰。デビュー当初の体重に戻して集大成の勝負に臨む。
そんな川尻だがすんなりGP参戦とさせてもらう流れにはならず、難敵が用意された。散打の世界的名手であり、MMAでは7戦7勝と無敗を誇るロシアのアリ・アブドゥルカリコフ。15年4月には後のUFCファイター、ヨエル・アルバレス(スペイン)に対し、煽りVやハイライトで必ず使われるであろうスピニング・ヒール・キックでのKO勝利を上げている。
川尻としては離れた間合いから繰り出されるアリの打撃をかいくぐってグラウンドへ持ち込み、“クラッシャー”のパウンドを打ち込みたい。アリがこれまでの7戦で経験したことのない圧力と展開を与えれば、一気にほころびを見せる可能性は大きい。ライト級GPへの扉を自らこじ開けたい。
■極めのサトシか、打撃の廣田か
どちらもライト級GP有力候補である両雄の一戦が決定した。ホベルト・サトシ・ソウザはボンサイ柔術創始者であるアジウソン・ソウザの三男で、幼少の頃より道衣を与えられグレイシー一族のように英才教育を受けてきた。その教えを実らせたサトシはブラジリアン柔術世界選手権、ワールドプロ柔術世界選手権といった大会を制覇。13年にMMAデビューを果たすと、ここまで8戦全勝、8勝全てがKOか一本勝ちというパーフェクトレコードを誇っている。
RIZINには今年の4月に初参戦。強者・北岡との一戦に臨み、得意の極めをしのがれる苦しい展開となったが、フックからのパウンドでTKO勝ち。柔術で培ったパワーを打撃に活かし、MMAでのポテンシャルを感じさせた。
対する廣田瑞人は今回がRIZIN初参戦。朝倉(未来&海)兄弟のように幼少期に相撲を経験したことから容易にテイクダウンを許さない重い腰を持ち、インターハイに2度進出したボクシングをベースとする。これまでCAGE FORCE、戦極(SRC)、DEEPでライト級王座を獲得しており、その後はUFCで戦績を重ねてきた。寝ても立っても相手を打ち倒しに行く、典型的なファイターだ。
まだ粗い印象もあるサトシの打撃だが北岡を倒したように当て勘とパワーは優れており、それがどこまで廣田に通用するのか。打撃である程度渡り合うことができなければ廣田をテイクダウンするのは困難と見られ、強打の餌食となるのも予想される。サトシがMMAファイターとしての未来をさらに見せるか、あるいは廣田が歴戦で磨いた強さでサトシにMMAの難しさを教えるのか。
■SNSアピールと直談判を実らせた愛の戦士シュメトフに注目
最高の緊迫感で行われる矢地vs朝倉、バンタム級四天王のサバイバルマッチ2戦、さらにライト級GP査定マッチ3試合と十分な陣容で臨む「RIZIN.17」だが、まだまだ見どころは尽きない。中・軽量級だけでなく93㎏契約による迫力の重量級ファイトもマッチメイクされている。
注目はロシアサンボ選手権王者であり、アントニオ・シウバ(エメリヤーエンコ・ヒョードルに勝利)、石井慧といった錚々たるメンツを降し、16戦15勝1分、無敗を誇る“ロシアンハルク”イヴァン・シュトルコフ。パワーはもちろん当て勘にも優れ、今後RIZIN重量級の牽引を期待される選手である。韓国のキム・フンとのRIZINデビュー戦で何を見せ、いかなるインパクトを残すのか。
同じく93㎏契約で行われる一戦で、そのキャラクターおよび参戦経緯から注目を集めるのがこちらもロシアのビタリー・シュメトフ。極寒の地シベリアに生まれたシュメトフはPRIDEを見て育ち、その後継団体ともいうべきRIZINに強い憧れを抱き、兄のセルゲイとともにアピールを開始。SNSを駆使してRIZIN愛と参戦を猛烈に訴え、遂には直談判のため来日を敢行(4月21日の「RIZIN.15」)。RIZIN本社への潜入や榊原信行代表と対面して直接のアピールにも成功し、遂に夢であったRIZIN参戦を現実のものとする。
キャラクター先行な感もあるシュメトフだがロシアのムエタイ王者に2度輝いており、2011年からはMMAで10連勝中。1度限りの思い出参戦となるか、あるいは定期参戦のを得るか、全ては今回のジェイク・ヒューン戦次第となる。
レスリング出身のヒューンだが打撃戦を好み、打ち合いも辞さないファイター。シュメトフが得意の打撃戦に持ち込み派手なノックアウトで沈めれば、そのバックグラウンドからも気に外国人スターとなる可能性もある。
RIZINマッチメーカーであるチャーリー氏が執筆する「チャーリーガイド」では、その秀でた能力として情熱・忍耐力・企画力・実行力・営業力・SNSと、試合に関係ない項目ばかりが列挙されているシュメトフだが、自身の勝利で「RIZIN参戦」という渾身の企画を完結させたいところ。はたしてシュメトフ兄弟のRIZIN参戦ストーリーはいかなる結末を迎えるのか。
■バチバチ打撃のキック戦、女子マッチ2試合も
大会は開幕にピッタリな打ち合い必至の渡部太基vsHidekiのキックボクシングマッチからスタートし、KINGレイナvsステファニー・エッガー、ハム・ソヒvs前澤智の女子マッチ2試合へと続く。
柔道出身で腰の強さと投げに強みを持つレイナだが、エッガーもスイスを代表する柔道家として活躍した過去を持ち、レイナはこれまでの強みが今回通用しない恐れもある。またハムは韓国女性ファイターとして初めてUFC参戦を成し遂げ、これまでDEEP JEWELES、ROAD FCで王者となったストライカー。前澤は柔道出身で寝技を得意とするため、ここは打撃vs寝技、両者の狙いが明確な一戦となるだろう。
休憩明けの第8試合では大雅vs町田光のキックボクシング戦も行われる。兄HIROYAの後を追い、Krush王者、K-1王者とステップアップしてきた大雅だが、最近はその勢いが失速気味。特異なキャラクターで「居合パンチ」などキックボクサーでは稀な必殺技を多く持つ町田がそのポジションを奪ってしまうのか。
全12試合、いずれもドラマ色濃い両者のぶつかり合いで冷夏を吹き飛ばす熱戦が連続しそうだ。
『RIZIN.17』が7月28日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される